2018年6月5日更新

『シン・ゴジラ』ファンにオススメ!『ガメラ 大怪獣空中決戦』【平成ガメラ三部作を観る①】

子供以上に大人が熱狂した怪獣映画、それが通称「平成ガメラ」三部作です。こだわりの特撮、緻密な設定など、その完成度は、日本中が熱狂した『シン・ゴジラ』にも匹敵するレベル。その魅力を、まずは第1作めから解剖していきたいと思います。

30年目のバースデーを祝って「本気」の新三部作が始まった。

1954年、東宝が生み出したキングofモンスター『ゴジラ』の大ヒットを受けて、さまざまな怪獣映画が制作されました。「ガメラ」もその流行を受けて、大映が企画したもの。1965年の『大怪獣ガメラ』を皮切りに、1980年までの間に計8本がシリーズ化されています。 それから15年後の1995年、徳間書店グループとなった大映は「ガメラ誕生30周年」を記念する作品『ガメラ 大怪獣空中決戦』としてシリーズを復活させます。ゴジラ人気にあやかる形ではあったものの、怪獣映画好きの金子修介監督や特撮担当の樋口真嗣らの徹底した「怪獣映画らしさ」へのこだわりは、単なる子供向け映画のレベルを超えていました。 ブルーリボン賞での監督賞、助演女優賞の受賞をはじめ、ゆうばり、ヨコハマ、おおさかなど、権威ある各地の映画賞で高い評価を受けた本作は、日本アカデミー賞でも優秀助演女優賞を獲得しています。世界中の映画ファンが驚いたその高い完成度の秘密は、どこにあるのでしょうか。

緊張感溢れるストーリー。人類の命運はガメラに託された。

どんな映画でも、まずはツカみが肝心。本作の冒頭では、危険なプルトニウムを積んだ海上保安庁巡視船と謎の環礁の接触事故が発生、そこに強烈なインパクトのタイトルバックが浮かび上がる趣向です。ここから早くも劇的な展開が期待されます。 事故とほぼ同じ頃、小さな島では島民失踪事件が発生。住民たちが喰われてしまったことをほのめかすシーンは、そうとう不気味で緊張感を煽ります。 やがて日本は、旺盛な食欲で人間を襲い続ける怪鳥ギャオスとそれを追って姿を現した巨大怪獣ガメラとの、壮絶な戦いに有無を言わさず巻き込まれていきます。博多での死闘から舞台は東京へ。人口の密集した都会に飛来したギャオスによって被害は拡大、さらにギャオスは倒壊した東京タワーで繁殖を始めます。 自衛隊にはもはや打つ手なし。人類の命運は、ガメラに託されたのでした。

凛々しいヒロインたちが大活躍。中山忍の繊細かつ大胆な演技に拍手!

実は平成ガメラシリーズに共通する特徴のひとつが、強いヒロインたちの大活躍です。第1作での主人公は巡視船一等航海士の米森良成(伊原剛志)ですが、どちらかと言えば、ギャオスによる被害を回避しようと奮闘する凛々しい女性科学者・長峰真弓の活躍でしょう。 演じているのは、中山忍。当時はまだ20代前半でしたが、とても落ち着いた演技で、アカデミー賞やブルーリボン賞などの助演女優賞受賞を獲得しました。第2作『ガメラ2 レギオン襲来』では写真のみで顔を出し、第3作『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』では再び、ヒロインとして登場しています。 もうひとりのヒロインが、藤谷文子が演じる草薙浅黄。勾玉を通じてガメラと交信可能な「巫女さん」的立場の女子高生ですが、こちらも行動派で元気一杯。終始、腰がひけている田舎警部、大迫力(螢雪次朗)とは対照的な、勇ましい美少女を好演しています。 ちなみに藤谷と蛍は、三部作の全てに登場する「貴重な」キャラクターです。

着ぐるみなのに迫力たっぷり。「特技」に見る樋口真嗣の職人技

今やガンダムとメカゴジラがフルCGで戦う時代になりましたが、平成ガメラシリーズでは、精密に作られたセットと着ぐるみを使った「特撮」で、迫力たっぷりの戦闘シーンを完成させています。担当したのは、樋口真嗣。「特技監督」という肩書きにも、ちょっとアナログな雰囲気が感じられます。 こうしたどこか懐かしいタッチは、金子監督がこだわったポイントのひとつかもしれません。もともと幼い頃から怪獣映画に没頭しまくっていた「ヲタ」として、着ぐるみを使いながらも圧倒的な迫力溢れる戦闘シーンを作り上げているのはさすがです。 エンディングテーマは、サンプラザ中野がボーカルを務めるロックバンド、爆風スランプの「神話」。実はテレビのSFサスペンスドラマがモチーフとなっているとのことですが、平成ガメラの世界観にもしっかりマッチ。ラストをしっかり引き締めてくれます。

危険生物ギャオスの存在感は、シン・ゴジラを超える生々しさ

本作ではさまざまな「特撮」の魅力が感じられますが、際立っているのが、ギャオスの生き物としての生々しさでしょう。とくに人を喰う時の表情や効果音は、冷酷無比な猛禽類そのもの。 東京に出現する時には大きく成長を遂げていますが、どこか『シン・ゴジラ』の第二、第三形態を思わせる不気味なリアリティは変わりません。夕陽をバックに東京タワーで奇声を挙げるシルエットには、「親」としての気高さすら感じてしまうほどです。 なお自衛隊の協力による危機対応もまた、平成ガメラ三部作ではリアルに話を盛り上げてくれる重要かつ共通するエッセンスです。ただし第1作では突然の怪獣出現に政府とともに対処に苦慮、やや右往左往している印象も。本格的な活躍は、『ガメラ2 レギオン襲来』をお楽しみに。

笑えるけれど怖い名セリフ、「トキは人を喰いませんよ」

ギャオスは第3作でも登場しますが、怪獣としての正体不明さや謎めいた恐怖感はやはりこの第1作が強烈。登場人物たちのやりとりにも、得体の知れないものに遭遇して戸惑っている様子が伝わってくる「名セリフ」が飛び出します。 たとえば螢雪次朗が巨大な「鳥」の姿を初めて目撃した時。腰を抜かしてつぶやく「あいが犯人なら、オイたちの仕事じゃなか」は、まさに言いえて妙。真っ正直に生きてきた大迫らしい腰の引けようが、微笑ましく伝わってきます。 珍妙な官僚役で現場を混乱させる斎藤雅昭(本田博太郎)は、発言も混乱気味。ガメラとギャオスへの対応を巡って米森と一悶着。「トキ以上に貴重な野鳥と言えるかもしれない」(斎藤)「トキは人を喰いません」(米森)のやりとりは、シビアな話なのにズレた視点に苦笑してしまいます。

無敵ではない、けれど負けられないガメラの苦闘は続く

「昭和ガメラ」からのファンにとって「平成ガメラ」がササるもうひとつのポイントが、意外にガメラが強くない、という事実。かつて昭和のガメラは宇宙怪獣とか大魔獣とか大悪獣とかと戦ってきましたが、たいてい一度か二度はやられて瀕死の状態に陥っていました。平成版の悪戦苦闘ぶりも、まさにその伝統を継承しています。 たとえば『ガメラ 大怪獣空中決戦』でも、ガメラはギャオスの反撃を食らって派手に傷つきます。あげくの果てにコンビナートの大爆発で木っ端微塵!かと思いきや、なんとか復活。 そうした伝統的なガメラの「勝ちパターン」を守ることも、おそらくは金子監督のこだわりポイントのひとつなのでしょう。決して無敵ではなく、実は単純に人類の味方でもないガメラらしさは、続く『ガメラ2レギオン襲来』でさらにパワーアップすることになるのでした。