2019年7月20日更新

松岡茉優と『万引き家族』柴田亜紀の共通点。我々はなぜ彼女の演技に惹かれるのか

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『万引き家族』
​(C)2018『万引き家族』 製作委員会

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パルムドールに輝いた『万引き家族』で松岡茉優が魅せた女優魂

第71回カンヌ映画祭で最高賞パルムドールを受賞した映画『万引き家族』。日本映画が21年ぶりに同賞を受賞したことだけでなく、日本を代表する俳優陣による名演も話題となっています。特に安藤サクラの演技については、世界からも絶賛する声が寄せられています。 そんな中、樹木希林や安藤サクラといった名女優に負けず劣らず存在感を示しているのが、弱冠23歳の松岡茉優。芸歴15年というキャリアはあるものの、子役時代はさほど注目されていませんでした。そんな彼女は、不遇の時代を乗り越え、数々のドラマや映画で活躍してきました。 この記事では『万引き家族』での松岡茉優にフォーカスして、彼女の魅力を紹介していきます。

松岡茉優が演じたのは「柴田亜紀」

万引き家族 カンヌ
​(C)2018『万引き家族』 製作委員会

『万引き家族』で松岡が演じたのは、安藤サクラ演じる信代の妹・亜紀。風俗店で働いており、お店で特に人気があるわけではないようですが、常連客はいるようです。家族のなかでは、特に樹木希林演じる祖母・初枝と仲が良く、彼女を慕っています。 亜紀を演じるにあたって松岡は、今まで培ってきた演技のセオリーが全く通用しなかったと語っています。そのため、以前のセオリーの最終形態を示したという2017年の映画『勝手にふるえてろ』とは全く異なるアプローチで演技に挑んだそうです。 それがどのような形で異なるのか、『勝手にふるえてろ』と比べてみるのも面白いかもしれません。

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『万引き家族』監督・是枝裕和が語る松岡茉優

是枝裕和監督は本作のキャスティングにあたり、各世代で1番上手な役者を基準にしたと話しています。松岡茉優についても、ドラマ『問題のあるレストラン』や映画「ちはやふる」シリーズなどで見せた表情の演技に注目した結果のオファーだったそうです。 『万引き家族』の撮影が始まってからは、松岡が相手の反応に合わせて毎回演技を変える姿勢に感心したと、是枝監督はインタビューで語っています。 また、亜紀が「りん」と鏡に映るシーンで松岡は、台本にないセリフや動作で、りん役の佐々木みゆの笑顔を引き出したいという監督の希望を見事に実現しました。

「JK見学クラブ」で見せた体当たりの演技

劇中で亜紀が働く「JK見学クラブ」は、制服姿の女子高校生に扮した女の子たちがマジックミラーの向こう側の客のリクエストに応えるお店です。リクエストといっても、彼女たちに求められているのは自慰行為です。画面の隅で女の子たちは大胆な姿を見せています。 松岡茉優演じる亜紀も、リボンタイをほどいてシャツのボタンを外し、ブラジャーを付けたバストをあらわにします。その間は誘惑するような言葉遣いをし、常連客である4番さんの前で脚を開きます。 直接性行為をするシーンはないものの、風俗業界で働く女の子を演じ切った彼女の妖艶さには要注目です。

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カンヌ映画祭で樹木希林への思いが溢れ、思わず感涙

『万引き家族』
​(C)2018『万引き家族』 製作委員会

カンヌ映画祭の会見の場で、松岡茉優は大粒の涙を流しました。是枝裕和監督が樹木希林の演技や、芝居に対する姿勢について語っていた時のことです。 是枝監督は、本作における樹木希林の役割について語っていました。初枝が信代に対して呟く「きれいね」という言葉と、波打ち際で遊ぶ5人を眺めながら初枝が漏らした言葉が脚本を変えたと打ち明け、樹木希林の作品と向き合う姿勢に賞賛の言葉を並べました。 その時、樹木の存在の大きさを改めて実感した松岡茉優は感極まり、思わず泣いてしまいました。松岡自身も亜紀と同様に、樹木希林を心から慕っていたことがわかるエピソードです。

松岡茉優と亜紀の共通点【『万引き家族』のネタバレ注意】

『万引き家族』
(C) 2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

松岡茉優が芸能界に入ったのは、妹が先にスカウトされたことがきっかけでした。妹のついでで入ったこの業界では、妹と同じ役を奪い合うことになり、ライバルでもある妹と仲良くすることは難しかったそうです。 亜紀は実の妹と確執があります。妹や妹を可愛がる両親に反抗するように、亜紀は祖父の前妻である初枝の元に身を寄せ、妹の名前「さやか」を仕事場で名乗ります。 妹に複雑な感情を抱いている姉という役柄については,彼女自身も自分に通ずるところがあり、何かに引き寄せられたと感じたそう。そして、幼い頃に妹に向けることができなかった優しさを、りんに向けることで松岡茉優自身が救われたようです。

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女優として成長した松岡茉優の今後に注目!

松岡茉優は、自ら不遇の時代と呼ぶ期間の間、是枝裕和、三谷幸喜の2人と仕事をすることを夢見ていたそうです。『万引き家族』の撮影後、三谷幸喜作・演出の舞台『江戸は燃えているか』に出演した彼女は、女優人生の第1章が終わったと感じたそうです。 第2章に突入するにあたって、樹木希林や安藤サクラからの影響を口にした松岡茉優。本作で既に女優としての深みを見せた松岡が名女優たちとの共演を経て、今後女優として公私ともにどのように羽ばたくのか、是非とも見守っていきましょう。