2026年1月22日更新

【ネタバレ感想】映画「でっちあげ」は実話?あらすじや元ネタとなった事件を解説

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でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男、柴咲コウ、綾野剛、亀梨和也
ⓒ2007 福田ますみ/新潮社 ⓒ2025「でっちあげ」製作委員会

「生徒を恐喝した教師」という衝撃的な実際の事件を題材にした、三池崇史監督作『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』が2025年6月27日に公開されました。 綾野剛演じる教師は本当に「暴力教師」なのか。マスコミの過熱報道で完全な悪者と言われる中、教師は犯行を否定します。 この記事では『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』のあらすじやキャスト、さらには原作となったルポルタージュをネタバレありで解説します。

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『でっちあげ~殺人教師と呼ばれた男~』作品概要・あらすじ!虐待は冤罪なのか?【ネタバレなし】

タイトル 『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』
公開日 2025年6月27日
監督 三池崇史
原作 『でっちあげ 福岡『殺人教師』事件の真相』(2009)
出演 綾野剛 , 柴咲コウ , 亀梨和也 , 大倉孝二 , 迫田孝也 , 木村文乃 , 光石研 , 北村一輝 , 小林薫
配給 東映

本作は20年前、実際に起こった国内初の教師から生徒へのイジメが認められた体罰事件がテーマです。体罰を「でっちあげ」と否定する教師役に綾野剛、教師を告発する母親役に柴咲コウ、といった実力派のキャスト陣が揃いました。 監督を務める三池崇史は「余計な演出をできるだけ排除し、冷静に作り上げたつもりです。ですから、この恐怖は本物です」と、リアルな空気感へのこだわりを語っています。

映画「でっちあげ」のあらすじ

2003年、小学校教諭の薮下誠一(綾野剛)は、児童への体罰を巡り、その保護者である氷室律子(柴咲コウ)に告発されます。 週刊春報の記者・鳴海三千彦(亀梨和也)による実名報道で、薮下は世間から誹謗中傷の標的となり、日常は崩壊。律子を擁護する550人もの弁護団も結成され、民事訴訟へと発展しました。 しかし、法廷で薮下は告発内容を「すべて事実無根の"でっちあげ"」と完全否定したのです。この男は最悪の暴力教師か、あるいはーー。

「でっちあげ」結末までネタバレ解説!事件の真相とは?

【起】母親・氷室律子の供述

『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』(2025年)、氷室律子(柴崎コウ)
ⓒ2007 福田ますみ/新潮社 ⓒ2025「でっちあげ」製作委員会

ある日の夜。氷室家に息子・拓翔の担任である薮下が家庭訪問にやってきます。薮下は「拓翔はADHDだから、他の生徒にも迷惑がかかっている」「アメリカ人の穢れた血のせいで頭が悪い」などと言います。 そして学校では、制限時間以内に帰り支度のできなかった拓翔のランドセルをゴミ箱に投げ入れたり、「ピノキオ」と言って彼の鼻を血が出るまで引っ張ったりと、ひどい体罰を行っていました。 あるとき拓翔は屋上から飛び降りようとし、律子が必死で止めます。すると拓翔は、薮下に死んだほうがいいと言われたと告白しました。

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【承】教師・薮下誠一の供述

『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』(2025年)、薮下誠一(綾野剛)
ⓒ2007 福田ますみ/新潮社 ⓒ2025「でっちあげ」製作委員会

家庭訪問から疲れて帰宅した薮下。そこへ氷室律子から電話があり、「家庭訪問は今日の17時からだったはず。今からでもいいから来てください」と言われます。しぶしぶ氷室家に行った薮下は、律子の長話に付き合わせれ、帰りは11時に。 その後、律子は拓翔が薮下から体罰を受けていると学校に乗り込んできました。全く身に覚えのないことに驚く薮下。ことなかれ主義の校長や教頭は、とりあえず謝罪するよう薮下に強要します。 しかし数日後、「教師が小学生に自殺を強要」という新聞記事が出てしまいます。

【転】歪められていく真実

『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』(2025年)、鳴海三千彦(亀梨和也)
ⓒ2007 福田ますみ/新潮社 ⓒ2025「でっちあげ」製作委員会

週刊誌の記者・鳴海はこの事件に興味を持ち、「殺人教師」として薮下の実名報道に踏み切りました。そのせいで、薮下は6ヶ月の停職処分を受けてしまいます。 一方律子は拓翔がPTSDを発症したと、薮下と教育委員会を相手取って損害賠償裁判を起こしました。なかなか弁護士を見つけられずにいた薮下でしたが、市の無料法律相談で出会った弁護士・湯上谷は「この事件報道にはリアリティがない」と薮下の弁護を引き受けてくれます。 順調に律子の嘘を突いていく湯上谷でしたが、あるとき薮下が拓翔の同級生の和也の母に証言を懇願しているところを鳴海に撮られ、またしても「異常な人物」のレッテルを貼られてしまいます。

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【結末】冤罪を立証できるのか?

着々と証拠を集めていく湯上谷。薮下は一度だけ拓翔が和也を殴っているのを止めるために、拓翔の頬を手の甲で軽くはたいたことがあると言います。 一方、拓翔はPTSDで入院が必要とされていましたが、その診断は律子の回答によって歪められたものだったことがわかります。また彼は186日の入院期間中106日「外泊」しており、実質的に入院しているとは言える状況ではありませんでした。 湯上谷は律子の戸籍謄本を取寄せ、彼女の血縁者にアメリカ人はいないことを裁判で指摘します。薮下の差別発言の根拠とされるこの発言が嘘だったことが証明され、次々と彼女の嘘が露呈することに。 最終的に判決は「体罰は非常に軽微」であり、「原告は賠償金を支払うこと」と決定されました。薮下は冤罪を晴らすことができたのです。

ラストを考察!奥さんは亡くなった?

裁判から10年後のシーンで、薮下は出かける前に仏壇の鈴を鳴らして「いってきます」と言っています。このことから、彼の妻・希美がすでにこの世を去っていることがわかります。 その後、薮下は湯上谷から教育委員会の薮下に対する処分が取り消されたこと、つまり彼が体罰を行っていないと認められたことを知らされました。 喜ぶ薮下でしたが、最初から最後まで夫の無実を信じていた希美は、その知らせを聞くことができないまま亡くなったと思うと、冤罪の取り返しのつかなさを考えさせられます。

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なぜ母親は事件をでっちあげた?最大の謎を解説

律子には虚言癖や妄想癖があったと思われます。つらい幼少期を過ごした彼女は、その記憶から逃れようとしていたのかもしれません。彼女は自分がついた嘘を、本当だと思い込んでしまったのです。 また律子の言いつけを聞かなかった拓翔が、その場しのぎで「薮下先生にえんぴつと消しゴムを捨てられた」と嘘をついてしまったことから、彼女は薮下が悪者だと思い込むようになってしまったのでしょう。 律子は、自分の正義を信じて疑わない恐ろしさを象徴しています。

母親と教師の視点から伝えたいことを考察

氷室律子視点が生む「殺人教師」像

物語はまず、被害児童の母親である氷室律子(柴咲コウ)の視点から描かれます。 夜遅い家庭訪問時、薮下は雨でびしょ濡れになったまま、横暴な態度で家に入ってきました。律子がコーヒーを出すも「インスタントは飲めない」と拒否。薮下は「拓翔くんはADHD」「穢れた血だ」といった差別的な発言を繰り返します。そして、翌日から息子に対するいじめが始まりました。 観客は完全に薮下を「最悪な人間」と認識させられます。しかしこの前半は、当時の報道とほぼ同じです。観客は無意識のうちに「殺人教師」のレッテルを貼られた、薮下を糾弾する「あの時の大衆」の感情を追体験することになります。

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薮下視点と裁判が示す「真実」

後半は薮下の視点に切り替わります。 薮下の記憶では、家庭訪問は律子からの急な呼び出しで、彼は雨の中を急ぐ「穏便に済ませたい人物」でした。差別的な発言も律子側から切り出され、薮下は相手に気を遣って対応していたのです。 律子視点では温厚だった彼女も、薮下視点では無表情で「異常」な存在へ一変。柴咲コウの180度変わる演技と、三池監督がスクリーンの色彩を白黒に変える演出はホラーにも近い恐怖を与えます。 法廷では薮下の供述により、息子・拓翔が「問題児」だったこと、そして体罰とされる行為が、彼なりの「教育」の一環だったと語られます。そして、ついに律子の嘘が暴かれていきーー。 本作は、観客を巧みに印象操作することで、「誤った情報の拡散」と「それに扇動される群衆」に警鐘を鳴らしています。

映画「でっちあげ」は実話?元ネタを解説

本作は2003年に福岡市で起こった「福岡殺人教師事件」が元になった作品です。担当教師がアメリカにルーツのある生徒に対して、差別発言や体罰を行ったと報道され、裁判にまで発展した事件です。教師は裁判前に懲戒処分を受け、6ヶ月の停職が言い渡されました。 日本で初めて教師から生徒へのイジメが明るみに出たことで、報道が激化。世論も完全に被害者側に傾いている中、当初罪を認めいていた被告が裁判では一転否認したのです。 さらにジャーナリスト・福田ますみは事件直後から教師本人や教育委員会、児童らに取材を重ね、雑誌「中央公論」にルポを発表。のちに事件の真相に迫った『でっちあげ』(2007)を刊行しました。

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原作のルポルタージュから事件の詳細やその後を紹介

5つの刑による生徒いじめ

担任を受け持つ川上教諭が1人の男児に対して「10数える間に片づけろ」と命じ、間に合わないと自ら考案した「5つの刑」から一つを選ばせて虐待を加えたと、男児の両親が主張しました。以下が5つの刑です。 両頬を引っ張る、思い切り押し付ける「アンパンマン」、両耳を掴んで体を持ち上げる「ミッキーマウス」、鼻をつまんで振り回す「ピノキオ」、手のひらで顔を締め、突き飛ばす「アイアンクロー」、そしてこめかみをグリグリと圧迫する「グリグリ」。 男児は鼻血、耳の怪我、歯の折損など、連日傷だらけで帰宅したといいます。

川上教諭はいじめを否定

川上教師は、男児の両親が訴えたいじめを「全て事実無根だ」と否定しました。体罰や差別発言も一切否定し、「10カウント」は片付けを促す指示だったと説明。「アンパンマン」や「ミッキーマウス」は先輩に教わった軽い叱り方であり、「5つの刑」という言葉は使っていないと主張します。 そして、男児側が主張する「生きている価値がない」などの自殺強要発言についても報道で初めて知り、荒唐無稽だと語りました。

母親の主張

母親の告発内容は、いじめや自殺強要発言だけではありませんでした。 男児に対するいじめの発端となった家庭訪問では、アメリカ人の親族がいることを知った川上教諭が「穢れた血」と発言、そして児童に対しても「髪が赤い人」と呼んだと主張します。 これらの差別的な発言や「5つの刑」などによるいじめ、暴力を受けた児童はPTSDを発症した、と明かしました。両親は学校側に幾度となく抗議し、川上教諭は男児の担任から変更されています。また、当初はいじめに関しても、両親に謝罪していました(のちに否定)。

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「殺人教師」としてメディアで報道

両親が初めて抗議した約1ヶ月後には、朝日新聞(西部本社)がこの事件を報じ、さらに約3ヶ月後に「週刊文春」が「『死に方教えたろうか』と教え子を恫喝した史上最悪の『殺人教師』」というショッキングなタイトルで報じました。 これにより、事件は全国的に注目されはじめ、ついには世間からの大バッシングが巻き起こります。しかし、他の生徒から体罰の話が出ないことや、両親の主張に不可解な点が判明しはじめ、報道は次第に下火になっていきました。

事件の真相は?教師と母親のその後も解説

結果としては原告の主張はほとんど認められず、虚偽の内容も含まれていました。差別発言や体罰もほぼ認められなかったのです。 原告側の「アメリカ人にルーツ」の部分も、聞き込みの中でアメリカ人なのは「曽祖父」から「祖父」に変わるなど、事実かも疑わしくなります。 すると被告側の家族は勝ち目のない教師への控訴を取り下げ、PTSDを巡って福岡市のみの控訴に切り替えました。そして、330万円の賠償金が確定してしまいます。ルポ完成時には懲戒処分が残ったままでしたが、2013年ついに教師への懲戒処分も取り消されました。

映画「でっちあげ」が是枝監督作『怪物』に似ている?

『怪物』
©2023「怪物」製作委員会

SNSでは、『でっちあげ』が是枝裕和監督の映画『怪物』(2023)と似ていると話題になっています。両作とも、先生の加害とその真実が物語の主軸です。 『でっちあげ』は律子・薮下・裁判、一方『怪物』は母親・先生・子供たちという3つの視点で描かれ、視点が変わることで真実が異なるという構成もよく似ています。 『怪物』は映画監督・脚本家の坂元裕二によるオリジナル作品。一方で公開当時から「福岡殺人教師事件」が題材なのでは、と話題になっていました。坂元本人は言及していませんが、もしかしたら参考にしているのかもしれませんね。

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登場人物・キャストを一覧で紹介!息子を演じた子役は誰?

薮下誠一役 綾野剛
氷室律子役 柴咲コウ
鳴海三千彦役 亀梨和也
氷室択翔役 三浦綺羅
薮下希美役 木村文乃
段田重春役 光石研
大和紀夫役 北村一輝
湯上谷年雄役 小林薫

薮下誠一役/綾野剛

綾野剛

綾野剛演じる薮下誠一は、本作の主人公となる小学校教師。教え子の一人・氷室択翔への差別や体罰を訴えられ、被告となってしまいます。さらには「殺人教師」として全国で報道され、心が崩れてしまうのです。 綾野剛は本作の演技を「エンタメとルポルタージュの共存、共演者と芝居の総当たり戦」と振り返っています。

氷室律子役/柴咲コウ

柴崎コウ

柴咲コウ演じる氷室律子は、択翔の母親です。薮下の蛮行を告発するため、律子自ら学校に乗り込みます。

鳴海三千彦役/亀梨和也

亀梨和也

亀梨和也演じる鳴海三千彦は、律子の言い分を信じて取材する週刊誌記者です。張本人である薮下にも突撃取材を敢行します。

氷室択翔役/三浦綺羅

三浦綺羅演じる氷室択翔は、担任・薮下からイジメを受けた生徒です。度重なる暴言や暴力から屋上に上がっていきーー。

薮下希美役/木村文乃

木村文乃

木村文乃演じる薮下希美は、主人公・薮下誠一の妻です。誰も味方がいない状況でも、冤罪を訴える夫を支え続けます。

段田重春役/光石研

光石研

光石研演じる段田重春は、薮下が務める学校の校長です。自分の保身しか考えず、氷室律子の訴えに対して、一方的に誠一を糾弾します。

大和紀夫役/北村一輝

北村一輝

北村一輝演じる大和紀夫は、氷室側の弁護士。マスコミの報道で一大事件となり、弁護団を結成。その中心に立つ敏腕弁護士です。

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湯上谷年雄役/小林薫

小林薫

小林薫演じる湯上谷年雄は、誠一の弁護を引き受けた弁護士です。「暴力教師」のレッテルを貼られた誠一を救うため闘います。

監督は『クローズZERO』の三池祟史

三池崇史
© 2010 Sedic International.

本作のメガホンをとったのは、「クローズZERO」シリーズなどで知られる三池崇史です。 「バイオレンスの巨匠」とも称される彼は、その名の通り容赦ないバイオレンス描写で有名。しかしホラーやバイオレンス映画だけでなく、「ゼブラーマン」シリーズや『ヤッターマン』(2009年)などのコメディ作品でもその手腕を発揮しており、幅広いジャンルで活躍しています。

主題歌はキタニタツヤの「なくしもの」

エンディングテーマはキタニタツヤによる『なくしもの』です。 ボカロPとして「こんにちは谷田さん」名義で活躍していた彼は、2017年からシンガーソングライターとしてキタニタツヤ名義で活動するようになりました。 アニメ『呪術廻戦 懐玉・玉折』(2023年)のOPテーマ「青のすみか」などで知られています。

漫画版も紹介!最終回までのネタバレ解説

漫画版『でっちあげ』は、映画版の原作にもなっているルポルタージュを原作とした作品です。登場人物の名前や、教師が児童にしたとされる体罰の内容など、映画とは違う部分が多くあります。 担任するクラスの児童・沢渡秀二への体罰を理由に、彼の両親から告発された小学校教諭の杉谷。この事件がマスコミに取り上げられたことによって、日本全国で話題になります。杉谷は当初、ことなかれ主義の校長らに促されるまま謝罪。しかし問題は法廷論争にまで発展し、杉谷は裁判で一転無罪を主張するのでした。 杉谷の冤罪が晴れるまでは映画と同じですが、漫画ではその後、秀二が普通の生活を送っているところまで描かれ、冤罪事件の被害者と加害者のその後の人生への影響について考えさせられます。

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映画「でっちあげ」は冤罪の恐怖を描く社会派作品

『でっちあげ~殺人教師と呼ばれた男』(2025年)、ポスター
ⓒ2007 福田ますみ/新潮社 ⓒ2025「でっちあげ」製作委員会

『でっちあげ〜殺人教師と呼ばれた男』は、今で言う「モンスターペアレント」の恐怖と同時に、ろくに調べもせずにセンセーショナルな話題だけを取り扱うマスコミ、そしてその報道を鵜呑みにし、正義を振りかざす大衆の恐ろしさについて描かれています。 1つの冤罪事件に、多くの問題を孕んだ社会派作品です。