恐怖体験見本市とはこのこと!『ゴースト・ストーリーズ 英国幽霊奇談』レビュー【人間食べ食べカエル】
平成最後の夏も、ホラーの夏
暑いですね。そう、今年もホラーの季節です。先日も『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』が公開されたばかりだし、(超絶面白いのでみんな観よう!!)、ジャウマ・バラゲロ監督の予知夢ホラー『ミューズ』等、期待作が続々と控えている。 そんな中、灼熱の気候でも全身の鳥肌が止まらなくなる、メチャクチャ怖いホラーが新たに公開されるので、この機会に紹介したい。
人間食べ食べカエルが推す!『ゴースト・ストーリーズ 英国幽霊奇談』
あらすじ
イギリス各地でニセ霊能者たちのウソを暴いてきた、オカルト否定派の心理学者フィリップ・グッドマン教授は、憧れの学者から3つの超常現象について調査を依頼されることとなる。初老の警備員が深夜の倉庫で体験する恐怖、家族関係がガタガタの青年を襲う正体不明の脅威、妻が出産を控える地方の名士に迫るモノ。 いずれも科学では説明がつかない怪奇現象の正体を暴くため、教授はそれぞれの話を聞きに体験者のもとへと足を運ぶが、そこで彼を待っていたのは想像を絶する恐怖だった……。
人気舞台劇をセルフ映画化した珠玉のホラー!!
本作は、イギリスはじめ世界各国で上映した同名舞台劇を、原作者自らの手で映画化した作品だ。原作は、世界ツアーで100万人を動員しており、史上最も恐ろしい舞台と名高く評価されている。フォーマットを映画に移しても、その恐怖度は非常に高く、背筋が凍る上質なホラー作品に仕上がっている。
3種の恐怖……まさに、覚悟必須の恐怖体験見本市!
深夜の警備で……。家族との問題を抱える青年が……。豪邸を持つ男性に……。本作で語られる体験談は、それぞれ全く怖さの系統が違うが、そのすべてが最高レベルの仕上がりとなっている。 まず1つ目の話となる元精神病院での深夜警備エピソードは、不気味極まりない真っ暗でボッロボロの廃墟をたった一人で練り歩くさまを、延々と追体験させられる。何か起きそう、という最悪の心霊焦らしプレイを食らい、いつ終わるとも果てない恐怖を味わうこととなる。 個人的にこの1つ目の話が最も怖かった。観ている最中、何度「もう帰ろうよ、もう帰ろうよ」と心の中で祈ったことか。体験談が終わった際の安堵感はここ数年で1番デカかったかもしれない。暗い廃墟は行かない方が良いですよ、マジで。 2つ目の話も体験者となる青年の家庭事情に深い闇が垣間見られ、イヤ~~~~な恐怖が味わえる。最後を飾る、みんな大好きマーティン・フリーマンの話は色々な意味で衝撃的なので、ここでは一切の情報を伏せとこう。賛否が分かれそうではあるが、個人的には恐怖度MAXだったので全面的に支持したい。
恐怖を増幅させる怪演のぶつかり合い!
本作の高い恐怖度は、出演俳優たちの迫真の怪演によるところも大きい。主演のオカルト否定派教授を始めとして、基本的にマトモな人がいないため、恐怖体験が起きてなくても誰かしら画面に映っているだけで異様にスリリングだ。 怪奇現象と人間のヤバさが見事に合わさり、極上の恐怖が完成している。マーティン・フリーマンも、クセのある皮肉屋な名士キャラが中々のハマり役でしっかりと印象を残す。 その他にも奇人が多いが、特に2つ目の話に出てくる新星アレックス・ロウザー演じるハイパー神経質な青年はかなりキテるので、鑑賞する際にはぜひ注目してほしい。小刻みな震えや硬すぎる表情など、とても素面で演技しているとは思えない迫真の追い詰められっぷりで、本作ブッチぎりのヤバい人MVPだ。
英国本気の恐怖奇談
3つの珠玉の恐怖体験。それらは一見オムニバスのようでありながら、最後まで1本の芯が通った流れが見事だ。静かに、しかし着実に日常を蝕んでいく怪異は観る者を骨の髄まで冷やす事だろう。 オカルトの本場英国が本気で恐怖を叩き込む。ぜひ、この高品質な恐怖を体感してほしい。しばらく冷房はいらなくなるが、代わりに電気つけっぱなしじゃないと寝られなくなるので気を付けよう。 今年もかさむぜ、電気代!!!