2018年8月28日更新

名作エロス「エマニエル夫人」シリーズを徹底解説!

『エマニエル夫人』

ソフトコアポルノの名作として世界的ヒットを記録した『エマニエル夫人』。その後に製作されたシリーズ作品含め、女性を中心に愛される魅力とその秘密について徹底解説したいと思います。

女性向けソフトコアポルノとして世界で大ヒットした『エマニエル夫人』

1974年に公開された『エマニエル夫人』は、これまでなかった新しいエロティシズムとセンセーショナルな内容で、ヨーロッパはもとよりアメリカ、アジアなど全世界で大ヒットを記録したフランス映画です。 著名ファッション写真家だったジュスト・ジャカンがメガホンをとった美しい映像とアンニュイな雰囲気、ヒロインを務めたシルヴィア・クリステルが放つ透明感のあるエロス、ピエール・バシュレが手掛けた叙情的な音楽など、ソフトコアポルノの名作としてとりわけ女性から熱い支持を得ました。 大ヒットをうけてその後シリーズ化されたほか、世界各国で多くの派生作品も製作されている『エマニエル夫人』について、その魅力と全容に迫ります!

『エマニエル夫人』の内容・あらすじは?

原作はエマニュエル・アルサンが手掛けた同名小説です。アルサンはタイ・バンコクの名家に生まれ、16歳のときフランス人外交官と結婚したのち、女優や脚本家を経て執筆活動に入りました。 原作および映画第1作『エマニエル夫人』は、外交官である夫とともにバンコクに暮らす女性が体験する性愛を赤裸々に描いたものです。レズビアンやスワッピング、露出など新しい愛の在り方を模索する内容であり、半自伝的な意味合いが濃いものだと言えるでしょう。 ちなみに、アルサンは2005年にガンで他界していますが、後年、著作の大部分を実際に執筆していたのは夫であったことが明らかになっています。 また、実は同原作は1969年に一度イタリアで『アマン・フォー・エマニュエル』のタイトルで映画化されています。しかし、さしたる話題をよぶこともなく日本でも未公開です。

日本では大きな社会現象となった『エマニエル夫人』

『エマニエル夫人』は世界各地で大ヒットを記録しましたが、とりわけ日本では社会現象とも言えるほどの反響を巻き起こしました。 配給した日本ヘラルドは、映画の持つ雰囲気や当時の社会的背景を踏まえ、当初から女性の観客にアピールする宣伝を意図します。シルヴィア・クリステルがレースだけの半裸で籐の椅子に座っている有名なポスターは、実は本国のオリジナルポスターではなく、雑誌用に撮影されたものをわざわざ高額の使用料を支払って日本独自に採用したものでした。 その作戦は大当たり。1974年12月21日の公開初日は座席数の倍近い観客が押し寄せ、そのうちの7割が女性でした。 またピエール・バシュレの音楽も大ヒットし、籐の背もたれ椅子も「エマニエル夫人の椅子」として大人気となりました。

「エマニュエル」シリーズの紹介

1974年公開作品の世界的ヒットを受け、世界各国でさまざまな「エマニュエル」映画が製作されました。ここでは名前だけを使用したような派生作品を除外し、エマニュエル・アルサンの小説を原作とした7作をシリーズとしてご紹介します!

1. シルヴィア・クリステルをスターダムに押し上げた『エマニエル夫人』【1974年】

文字通りその後シリーズ化するきっかけになった記念すべき第1作目です。主演に抜擢されたシルヴィア・クリステルは、モデル出身で当時は女優としてほとんど無名でしたが、本作により一躍世界的名声を確立しました。 外交官の夫ジャンが赴任したタイのバンコクに遅れてやってきた若く美しい妻エマニエル。夫にすすめられるまま、また知人の導く性の儀式を重ねるうち、次第に内なる欲望に目覚め、大胆に変貌していく姿を描きます。 エキゾチックな風土を背景にした独特の映像美と、クリステルの醸し出す初々しいほどの官能で多くの女性たちを魅了した名作です。

2. 香港を舞台にした『続・エマニエル夫人』【1975年】

前作の続編として、今回は香港を舞台にエマニエルの性の彷徨が描かれます。エマニエルには引き続きシルヴィア・クリステルが扮し、夫ジャン役には新しくルキノ・ヴィスコンティ監督の作品に多く出演しているウンベルト・オルシーニが選ばれました。 香港に駐在する夫ジャンに会うため豪華客船に乗船したエマニエルは、出会ったドイツ人女子大生と早速関係を持ちます。ようやく香港に到着すると、夫の家に同居するパイロットの男、さらに上流階級の少女と出会い、奔放な性関係を持つことに……。 監督にはやはり写真家として活躍していたフランシス・ジャコベッティが抜擢されました。また音楽を『男と女』や『ある愛の詩』で知られる巨匠フランシス・レイが手掛け、美しい旋律を残しています。

3. 楽園の島が舞台!3部作の完結編『さよならエマニエル夫人』【1977年】

シルヴィア・クリステルがエマニエルを演じた3部作の完結編であり、今度はインド洋に浮かぶ南国の島セイシェルが舞台です。夫ジャンを引き続きウンベルト・オルシーニが演じていますが、役柄は建築家という設定に変わっています。 夫とともにインド洋のセイシェル島に暮らし始めて3年になるエマニエル。互いに干渉しない自由な性生活を営んでいましたが、ある日、映画監督のグレゴリーと出会ったことで心と身体に変化が訪れます。 フリーセックスを否定するグレゴリーに惹かれつつ、夫との三角関係に悩むエマニエルですが、グレゴリーの旅立ちを前についにどちらを選ぶかの決断を迫られるのでした。 監督はフランソワ・ルテリエ、そして注目の音楽を、フランスを代表する国民的アーティストであるセルジュ・ゲンズブールが担当しました。

4. ミア・ニグレンが演じる新生『エマニュエル』【1984年】

3部作完結編から7年のブランクを経て、新しく製作されたシリーズ続編です。日本ではヒロインの名およびタイトルを「エマニエル」から原音に近い「エマニュエル」に表記を変えて公開されました。 ロサンゼルスのあるパーティーでかつての恋人マルコに偶然出会った35歳のエマニュエル。自身の衰えに気づいたエマニュエルはブラジルのリオに飛び、全身美容整形によって若さと美しさを取り戻すことで再び大胆な性愛を繰り広げます。 シルヴィア・クリステルが成熟した35歳のエマニュエルを演じ、美容整形によって生まれ変わった新しいエマニュエルをスウェーデン出身の女優ミア・ニグレンが演じました。

5. 新シリーズ1作目『エマニエル ハーレムの熱い夜』【1986年】

『エマニエル夫人』からシリーズ通算5作目となる作品であり、当初は『エマニエル5』のタイトルでしたがストーリー上のつながりはなく、新たな物語がスタートします。 本作では映画女優として華々しく売り出したエマニエルが、アメリカ人大富豪のもとで奔放な性愛に耽ります。列車の中でのセックスシーン、さらに50人の妻を持つ富豪にして性豪が営むハーレムが見ものです。 監督は、『インモラル物語』などで知られるエロス映画の巨匠・ヴァレリアン・ボロヴツィク。3代目となる新生エマニエルに、ペントハウス誌の人気モデル(ペントハウス・ペット)を務めていたモニーク・ガブリエルが抜擢され、セクシーな魅力を発散しています。

6. カリブが舞台の新シリーズ第2弾『エマニエル カリブの熱い夜』【1988年】

この後、さまざまな「エマニエル」ものを生み出すことになるアラン・シルッキーが製作を担当した「エマニエル」シリーズ6作目にして新シリーズの第2弾です。エマニエルをモデル出身のナタリー・エールが演じました。 モデル仲間5人で南米のベネズエラを訪れたエマニエル。そこで体験したある衝撃的な出来事がきっかけになって記憶喪失に陥りますが、精神科医の淫らな治療により徐々に記憶を取り戻します。それはジャングルの奥地で奴隷商人のもと凌辱されたという経験でした。 南米独特の風土のもとで繰り広げられる過激な体験が本作の見どころです。

7. 再びシルヴィア・クリステルが帰ってきた!『エマニエル パリの熱い夜』【1993年】

性の喜びに目覚めたバンコクでの官能体験から19年がたち、パリの大邸宅に暮らすエマニエル。女友達のソフィと一緒に、ヴァーチャル・リアリティの機器を使った快楽に耽る姿を描きます。 ヴァーチャルによって自身も自由に若返り、さまざまな場所でさまざまな相手とのセックスを繰り広げるという、現代の最新技術を駆使した異色の内容です。 久しぶりにシルヴィア・クリステルが出演し話題をよびましたが、同じく『続・エマニエル夫人』と『さよならエマニエル夫人』に出演していたカロライン・ローレンスが友人のソフィを演じています。

オリジナル版とテレビ版は違う!?日本のお茶の間でも流れた『エマニエル夫人』

『エマニエル夫人』は、これまで数度に渡ってテレビ放送されましたが、1977年5月15日、最初にテレビ朝日系列の「日曜洋画劇場」で放送された際には、なんと30%を超える高視聴率を記録しました。 1979年にテレビ東京系列「木曜洋画劇場」で放送された際も、2度目でありながら22.5%を記録し、同枠最大のヒットとなりました。 しかし、ヘアー解禁前でもあり、テレビ版は当然のことながらボカシや多くのカットが施されたものでした。のちにオリジナルビデオやDVDなどで無修正版が発売されると、再び話題をよんで大きなセールスを記録しました。 第1作公開から40年以上が過ぎた2015年には、人気の高い「日曜洋画劇場」で放送されたときにエマニエルの声を担当した山口いづみの吹き替え版を新しく収録したブルーレイが発売されました。当時カットされた部分は原語の音声のままという不思議な混在になっています。

今なお愛され続ける「エマニエル」とシルヴィア・クリステル

「エマニエル」ものでは、1993年にフランスでテレビシリーズ「エマニュエル・ザ・ハード」、翌年にはアメリカで「エマニュエル・イン・スペース」シリーズがスタートするなど、今なお衰えぬ根強い人気を誇っています。 それ以外にも各国でさまざまな「エマニエル」ものが製作され、日本でも1975年に『東京エマニエル夫人』のタイトルで日活ポルノが公開されています。 シルヴィア・クリステルは、咽頭癌や脳卒中を患ったすえ、2012年10月17日に60歳で亡くなりました。2008年にはフジテレビで放送されていた『SMAP×SMAP』の名物コーナー「BISTRO SMAP」にゲスト出演するなど日本でも多くのファンを抱えており、その死は大きな衝撃をもって受け入れられました。