2018年8月30日更新

実はあのジャンルも!マンガ界のカリスマ、永井豪が生み出したものとは?

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デビルマン
(C)Go Nagai-Devilman Crybaby Project

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偉大な漫画家・永井豪の偉業に迫る!

70年代に数々の金字塔を打ち立てたマンガ界のカリスマ・永井豪。彼はエロにパロディ・コメディ、ヒロイズムやグロテスクを縦横無尽に描き分ける偉大な漫画家です。 永井の作風は、先を決めずに連載を開始し、読者の反応を受けながらその後の展開を作っていくというものとなっています。作者の想定すら外れた展開を見せる事もままあり、読者は想像のつかない展開に魅せられるのです。 その影響力は21世紀に突入してもとどまることを知らず、多くのフォロワーが生まれ続けています。今回は永井豪の代表作とその偉業・影響力を見ていきましょう!

永井豪の経歴は?

永井豪は1945年に生まれ、石ノ森章太郎のアシスタントを経て1967年にデビューした漫画家です。1968年には自身のアシスタントを雇用し、共同執筆や出版社への斡旋を行う漫画プロダクション「ダイナミックプロ」を設立、後進育成や業界活性化に貢献しました。 1972年には代表作である『デビルマン』を東映動画と共同で企画し、アニメ企画業務も手がけるようになります。70年代は自ら興した映像作品の企画を担う「ダイナミック企画」と共にアニメ作品を多数手がけ、ヒットメーカーとなりました。 並行して漫画家としても活動し、主にバイオレンスやエロチックな作風を強めアニメ企画とは別の一面を切り拓いていきます。また、過去の作品の続編や完結編などを執筆し、自身の世界観を深める活動も増加しました。

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2つのジャンルの先駆けとなった『デビルマン』

永井の代表作の一つ、『デビルマン』はアニメ主導の漫画作品として制作された作品です。漫画はアニメとは繋がらない作品として1972年に少年マガジンにて連載開始され、直後にアニメが放送開始、どちらも1973年に終了しました。

ダークヒーローの原点!アニメ版『デビルマン』

本作は企画段階でアニメと漫画で全く別の設定・ストーリーで制作されることが決定されます。アニメは後に推理作家としても活躍する辻真先がほとんどのシナリオを執筆し、世界観を組み上げます。 永井のファンであった辻はデビルマンをダークヒーローとして描き、これがステレオタイプなヒーロー像に対するアンチテーゼとして視聴者の心を掴みました。不動明の体を完全に奪ったデビルマンが、人類のためではなく、愛する牧村美樹を守るためだけに戦う姿が印象的な作品です。 アニメはキー局と地方局で放送回数が異なることなどを理由に、戦いの結末を描かずに終了しました。その後に公開された『マジンガーZ対デビルマン』では、デビルマンが変わらず戦い続けている姿が描かれています。

終末もののビジュアルを完成させた漫画版『デビルマン』

漫画はアニメと違い不動明の意識も残り、人類のために戦う裏切り者の悪魔族としてデビルマンが描かれます。戦いが苛烈化し、終盤では黙示録的な世界の終末と、現代社会を反映した荒廃する都市の描写が合わさった世界の終わりが描かれ、後年の作品の描写に多大な影響を与えました。 漫画連載はアニメの終了に伴い打ち切りとなったものの、永井は単行本などで精力的な改定を行います。最終的には本作と並行して執筆が開始され、1990年に完結した漫画『バイオレンスジャック』に本作の世界観を組み込むことで作品をまとめました。

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パイロットが乗り込む「スーパーロボットアニメ」を生んだ『マジンガーZ』

21世紀になっても男のロマンと呼ばれ子どもから大人まで虜にするジャンル「スーパーロボットアニメ」。その第1作とされるのが、永井の『マジンガーZ』です。 本作は人が乗り込んで操縦するロボットという発想が画期的でした。それ以前のロボット作品は主人公がロボットそのもの、あるいは主人公とロボットが離れている形でしたが、本作は戦闘機のパイロットの概念をロボットものに導入、新たなジャンルを確立しました。 本作のフォロワーは一大ジャンルを築くほど多岐に渡ります。スーパーロボットアニメを共演させるゲーム「スーパーロボット大戦」シリーズが20年以上に渡り登場作品を変えて展開されていることが、作品の多さとジャンル人気の高さの裏付けと言えるでしょう。 本作は続編として『グレートマジンガー』『UFOロボグレンダイザー』が制作されました。21世紀にはリメイク作品である『真マジンガー 衝撃!Z編』、時系列が直接つながる新作『マジンガーZ/INFINITY』も作成されています。

バトルヒロインの草分け『キューティーハニー』

アニメ・マンガ業界に根付く「バトルヒロインもの」というジャンル。これは文字通りヒロインがバトルを繰り広げるジャンルで、女性向けの「戦うヒロインへの憧れ」を狙った作品と、男性向けに「ヒロインのセクシュアルな魅力」を狙った作品が存在します。 これらをまとめて実現したのが『キューティーハニー』でした。アンドロイドの如月ハニーが「空中元素固定装置」というSF的ギミックを用いて変身し、犯罪組織パンサークローの刺客と戦いを繰り広げる作品です。 本作以前にも主人公である少女が戦う作品はありましたが、その多くは少女漫画で、前述の女性向けの作風でした。それに対して本作はハニーのセクシーな魅力を全面に押し出し、男性向けの要素を強く併せ持った最初の作品と言われています。 掲載誌が「週刊少年チャンピオン」だったことからもわかるように、本作は元々男性向けとして作られました。しかしアニメ版は女子の人気も掴み、戦うヒロインへの潜在的な人気を実証しました。 この作品の男性向け部分の影響を受けた作品が1980年代に生まれたOVA市場で爆発的に増えます。90年代には本作の女性向け部分が大きく現れた『美少女戦士セーラームーン』が大ヒットを飛ばしました。 2000年代に「プリキュア」シリーズの定着をもって女性向け、深夜アニメ諸作品をもって男性向けのバトルヒロインものが確立され、本作の影響力が改めて証明されることとなりました。

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『ハレンチ学園』PTAからの糾弾は事実無根だった?本当に永井を恐れた者とは

永井豪の伝説として語り継がれるのが、『ハレンチ学園』に対する抗議活動です。本作は1969年当時としては過激な破廉恥描写(タイトル通り)や、教師に反抗する生徒というプロットが議論を呼ぶこととなります。 特にやり玉に挙がったのはある話でスカートめくりを扱い、認知普及させたこと…とされていますが、実はこれは全くの冤罪だと言われています。該当話が掲載された当時、すでにスカートめくりは大流行していたのです。 永井はこの糾弾活動の本当の理由を、教師の描写にあると考えました。本作では反抗する側の生徒も反抗される側の教師もエキセントリックすぎるキャラクターとして描かれているのですが、後者が保護者や教職員の逆鱗に触れたのではないかという推察です。 永井は一連の講義を受け、1970年にハレンチ学園と教育関係者による戦争(実際に登場人物も命を落とす本物)が繰り広げられる「ハレンチ大戦争」を執筆します。これは永井が強権的で批判を許さない当時の教職員の態度に対する皮肉と批判も込めたものでした。 出版社と永井サイドは抗議に屈せず連載を続行します。90年代・2010年代の漫画表現問題のような有害図書指定や各種条例による規制も発生しなかったため、本作は1972年に堂々と連載を終了しました。

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影響力は絶大!今も色あせない永井の名作達を是非!

永井豪は後のクリエイターに大きな影響を与えています。永井のフォロワーを明言する著名人も多く、『シン・ゴジラ』で知られる庵野秀明がアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を制作した際、永井の影響が出すぎて模倣同然となったことを謝罪したという逸話がありました。 永井の影響を受けた作品の影響を受け、間接的に永井の影響を受けたクリエイターも現れています。近年では『進撃の巨人』作者の諫山創が『デビルマン』との類似性をファンから言及され、同作を手に取りその影響力を実感したという話が象徴的な例でしょう。 特にスーパーロボット作品はすべてが永井の影響下にあります。その影響は国外にまで及び、世界的にヒットした『パシフィック・リム』(主役ロボットの武装は完全にマジンガーZ!)の監督、ギレルモ・デル・トロは永井をモーツァルトだと絶賛しています。 近年では先述した『マジンガーZ/INFINTY』や『DEVILMAN crybaby』のように現代の技術やスタイルで永井の作風を再現・映像化したものも多く制作されています。ぜひ、今なお色褪せない永井の偉業をその目で体感してみてください。