2018年9月26日更新

【ネタバレ感想】映画『累 かさね』を解説・考察!偽物は本物を超えてしまったのか?【評価】

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累 かさね
(C)2018映画「累」製作委員会 (C)松浦だるま/講談社

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【ネタバレ感想】映画『累 かさね』が公開!観客は間違いなくニナと累に翻弄される!

松浦だるま作の累計200万部突破のベストセラーコミックを原作とし、ドラマや映画のみならず演劇やCMなど、幅広いフィールドで活躍する若手人気女優の土屋太鳳と芳根京子のW主演で、公開前から話題を呼んでいた映画『累 かさね』。 容姿の美醜から発生する優越感と劣等感、次第に暴走していく人間の欲望が、豪華キャスト陣の迫真の演技と共についに映像化されました。 監督は『キサラギ』や『ストロベリーナイト』などの人気作で知られる佐藤祐市、脚本を大ヒットシリーズ『LIAR GAME』を手掛けた黒岩勉が担当するなど、強力なスタッフ陣が軒を連ねています。 2018年秋の期待作のひとつとも言われている本作の、鑑賞後の見どころや感想を、ネタバレを含みながら解説していきます。鑑賞前の方はご注意を!

累とニナを演じた主演キャスト2人に高評価が集まる!

1人2役で2人1役という巧妙さ

累 かさね
(C)2018映画「累」製作委員会 (C)松浦だるま/講談社

本作の最大の特徴で見どころでもあるのが、1人2役と同時に2人1役を確立させる主演ふたりの巧妙な演じ分け。キスによって毎日顔を入れ替えるというストーリー通り、主人公の累とニナを演じた芳根京子と土屋太鳳は、まるで実際に中身が交換されてしまったかのようにも感じられるほど熱い、迫真の演技を披露しています。 醜い顔と言われてきた劣等感ゆえに、常に下を向いていて自信なさげな累(芳根京子)。対して、恵まれた容姿のおかげで注目を浴び続け、自己主張の激しいニナ(土屋太鳳)。ふたりはそれぞれ正反対とも言える性格で、顔を交換し始めた当初は歩き方や佇まい、細かなしぐさなどはすべて中の人間と同じまま。 そのためシーンによってはお互いのキャラクターになりきっての芝居が必要であり、高い表現力と演技力が試されます。 過去にはNHKの朝ドラ『まれ』と『べっぴんさん』で、それぞれヒロインを務めた土屋太鳳と芳根京子。半年の間「朝ドラヒロイン」の看板を背負い続け、お互いに女優として大きく成長しました。そんな最高のタッグだからこそ、ニナと累というキャラクターを実写化することができたのです。

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圧巻の熱演で魅せる「サロメ」が物語を大きく加速させる

累 かさね
(C)2018映画「累」製作委員会 (C)松浦だるま/講談社

本編終盤、累はニナの姿でオスカー・ワイルド作の戯曲『サロメ』の主人公・サロメを好演しますが、そこでは土屋太鳳の役者としての実力の高さを窺い知ることができます。 鋭く危うい目つき、豊かで力強いダンス、しなやかながら存在感のある声といった、彼女の身体に備わったありとあらゆる才能が発揮され、奇跡の芝居となって観客の心に強い印象を残します。 またサロメの物語上でも最愛の者の首にキスをするシーンがあり、それと劇中の累とニナのキスシーンがリンクする様も非常に美しく、ふたつのストーリーが並行することで全体に鮮やかさを加えます。 『サロメ』は、映画を加速させ締めくくるのに最適な戯曲だったのではないでしょうか?

【ネタバレ】偽物は本物を超えてしまったのか。結末のニナは累?【解説・考察】

累 かさね
(C)2018映画「累」製作委員会 (C)松浦だるま/講談社

累の母親・淵透世が他人の顔で伝説の女優として活動していたこと、さらに累も過去に同級生の顔を奪っていたという事実を知ったニナ。自分の人生も奪われてしまうと恐怖を感じ、また片思いの相手との時間や思い出を累に取られたことに憤怒し、累から自分の顔を取り返すことを決意します。 口紅をニセモノとすり替え、『サロメ』の公演中に累が本当の顔を晒すよう仕組みますが、累に先手を打たれていました。ふたりは口論の末もみ合いとなり、その弾みでガラスに衝突。ニナは大けがを負って動けなくなってしまいます。その隙に累はニナにキスをして顔を奪って舞台に戻り、クライマックスを演じ切るのでした。 このシーンでは累がニナの顔でサロメを演じているという設定ですが、累の本当の顔が交互に映し出されるという演出が施されており、熱演のあまり累とニナの境界がぼやけていくようにも感じられます。 これは人間の中身はいずれは外見にもにじみ出てしまうため、容姿のみが美しくてもすべての願いは叶わないということを示唆しているのでしょうか。もしくはニナは累の顔のまま死んでしまい、累は永遠にニナの顔を手に入れることができたという結末を表しているのでしょうか。 果たしてふたりはどうなったのか、映画は観客に考察を委ねる形で結末を迎えています。

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映画『累 かさね』が問いかけた、人間の“本当の魅力”とは?

累 かさね
(C)2018映画「累」製作委員会 (C)松浦だるま/講談社

キスで顔が入れ替わる、美しい顔と醜い顔のふたりの人物が繰り広げる欲望と羨望、人間の劣悪に満ちた人間ドラマを描いた映画『累 かさね』。今最も注目すべきキャストとスタッフの強力タッグと、観客の心に一石を投じるストーリー展開が魅力的な一作となっています。 また原作コミックの最終巻が、映画公開日と同じく9月7日に発売されました。映画と原作本のフィナーレの違いを比べたり、共通点を見直してみてはいかがでしょうか。それぞれの『累 かさね』の世界観をさらに深めてくれるかもしれません。