2018年9月30日更新

超人?奇人?ドイツが誇る鬼才・ヴェルナー・ヘルツォーク監督の狂った映画10選

ドイツの鬼才と呼ばれる映画監督、ヴェルナー・ヘルツォーク。アカデミー賞をはじめとする数々の映画祭で評価されつつも、独特の感性で世界に衝撃を与え続けています。そんな彼が制作した狂った作品たちを紹介します。

ドイツの鬼才・ヴェルナー・ヘルツォーク監督について知りたい!

ヴェルナー・ヘルツォーク
©︎A3817 Tobias Hase Deutsche Presse-Agentur/Newscom/Zeta Image

ニュー・ジャーマン・シネマを代表する監督、ヴェルナー・ヘルツォーク。彼の独特の感性や視点で制作される作品は、映画界やアートシーンに衝撃を与え続けています。 そんなドイツの鬼才について、基本的なプロフィールと代表作をまとめました。

ヴェルナー・ヘルツォークのプロフィール

ヴェルナー・ヘルツォークは1942年にドイツのミュンヘンで生まれます。ドイツ人の父とクロアチア人の母を持ち、自由奔放な父の元、幼少期はドイツ南部の田舎を転々として暮らしたそうです。 成長してからはミュンヘン大学で歴史とドイツ文学を学びます。その後アメリカに渡り、ピッツバーグの大学で学んだのちに映画監督としてデビュー。独特な感性や視点にに基づいた映画を発表する傍ら、オペラ演出家としても活動しています。

動物が大好き!?

ヴェルナー・ヘルツォークの映像は、偏執的とも言える動物へのこだわりが現れています。特に鳥や猿、豚などの家畜が好きで、そう言った動物を作品中に頻繁に登場させます。 後述するアメリカのニューオリンズを舞台とした刑事ドラマ『バッド・ルーテナント』では流石に動物は出てこないだろう……と思いきや、ワニやイグアナが突然登場するため、油断は禁物です。 その理由として、彼が幼少期に田舎で動物と一緒に暮らしていたことの影響ではないかという意見があります。ヴェルナー・ヘルツォークはそんな人間と動物が共存していたユートピアを夢想し、作品で表現しようとしているのかもしれません。

怪優クラウス・キンスキーとの関係は?

ポーランド系ドイツ人俳優であるクラウス・キンスキー。舞台上や映画撮影中の過激な言動だけでなく、娘に対する性的虐待行為なども相まって“怪優”の異名を持つ人物です。 クラウス・キンスキーは、現在はポーランド領となっている自由都市ダンツィヒに生まれましたが、4歳の時ドイツのベルリンに移住しています。そして、ヴェルナー・ヘルツォークが13歳の頃、一時期共同生活をしていたという縁があるそうです。 のちに映画監督となったヴェルナー・ヘルツォークは、1972年に初めてクラウス・キンスキーを起用した映画『アギーレ/神の怒り』を発表。以降、クラウス・キンスキーはヴェルナー・ヘルツォーク作品には欠かせない俳優となっていきます。

1. 抑圧された小人たちの反乱

ヴェルナー・ヘルツォークが28歳の時に手がけた本作は、タイトル通り、小人症の人々が暴れまわる内容となっています。全編、小人ではない健常者は一切登場しません。 舞台は隔離された子人たちの施設。たまたま職員のほとんどが不在だった好機を狙い、13人の小人たちがクーデターを起こします。彼らは校長室を包囲し、電話線を切断。人質となっている仲間の解放を求めるあまり、暴力行為に拍車がかかっていきます……。 脚の折れたラクダを見て笑い転げる小人が延々と映し出されるラストシーンが印象的な作品です。その特徴ある笑い声が耳について離れないという人も多く、ある意味トラウマ映画とも言えるでしょう。

2. 黄金郷を求めた一隊の狂気

ヴェルナー・ヘルツォークが初めてクラウス・キンスキーを起用した作品。16世紀に伝説の都市エル・ドラド発見を求めた探検隊たちの物語です。 本作は1560年にスペインからアマゾン奥地へ向かって厳しい道のりを歩んだ、探検隊の実話に基づいています。劇中ではクラウス・キンスキー演じる隊の副官、アギーレが次第に狂気に駆られて行く様子が描かれています。 本作の見どころは、なんといっても実際に南米のジャングルに赴いて撮影された幻想的な大自然。命懸けで撮影されたその驚くべき映像には、思わず圧巻されることでしょう。

3. 謎の少年の正体は!?

カスパー・ハウザーは19世紀のドイツに実在した少年です。素性不明で、発見された当初の見た目は16歳ぐらいにも関わらず、言語が不自由でした。のちに教育を受け、言葉を話せるようになりましたが、詳細が明らかになる前に暗殺されてしまいます。 そんな謎に満ちた少年を描いた本作で、カスパー・ハウザー役を演じたのはブルーノ・S。彼自身も障害を抱え、3歳から23年間もの間、施設に幽閉されていた経験を持っています。 全くのアマチュアだったブルーノ・Sを起用するあたりからもヴェルナー・ヘルツォークの奇才ぶりを感じます。

4. 有名な吸血鬼をクラウス・キンスキーが怪演!

1922年の映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』のリメイク版です。主人公であるドラキュラ伯爵は白塗り姿が印象的なクラウス・キンスキーが演じています。ヴォルナー・ヘルツォークと彼とは、これが2回目のタッグとなり、以降5作品を共作する名コンビとなっていきました。 また、ヒロインを演じたイザベル・アジャーニの妖艶な美しさも印象的です。 本作のペストが流行する場面の撮影には、大量のネズミが投入されたそうです。ネズミはハンガリーから輸送されたそうですが、輸送環境が悪く撮影地のオランダに着いた時には共食いを起こしていました。 また、ヘルツォークの命令でネズミは黒く染められ、その過程でも半数が死んでしまったそうです。この顛末を目の当たりにした生物行動学者のマールテント・ハートは、ラットの管理指導の役を辞退したという逸話があります。

5. アマゾンでの過酷ロケの賜物!

アマゾン奥地にオペラハウスを建設するという執念に燃える男の姿を描き、ヘルツォークがカンヌ国際映画祭監督賞を受賞した作品です。 19世紀末。アイルランド出身の男性ブライアン・スウィーニー・フィツジェラルド(通称フィツカラルド)は、アマゾン川上流にある街イキトスにオペラハウス建設を決意します。 まずは資金作りのため、ジャングルを切り拓いてゴム園を作ることにしたブライアン。しかし目的地である上流の地に、急流のため船で登ることができないという難問にぶつかります。果たして彼は、どうやって上流に向かうのでしょうか? 本作も『アギーレ 神の怒り』同様、南米のアマゾンでの過酷な撮影を敢行しています。特にクライマックスの「山越え」のシーンは、圧巻を通り越してドン引き。 主人公役には当初ジャック・ニコルソンが予定されていましたが病気を理由に降板。次に起用されたジェイソン・ロバーズも撮影に入ったものの赤痢に倒れ降板してしまいました。 結果、3度目に起用され、無事完成までたどり着けたのはクラウス・キンスキーでした。彼だけが過酷なアマゾンでの撮影に耐えられる器だったということなのでしょうか。

6. 自称“緑のコブラ”の顛末!

『アギーレ/神の怒り』と『フィツカラルド』でアマゾンにフィーチャーしたヴェルナー・ヘルツォークですが、本作ではアフリカを舞台に挑みます。 主人公は自分を緑のコブラを意味する“コブラ・ヴェルデ”と名乗る山賊のフランシスコ。放浪の末に農園の奴隷監督になりますが、素行が悪かったため奴隷商人としてアフリカ行きを命じられます。未開の地アフリカで、彼を待っていたのは、思いもよらない運命でした……。 コブラ・ヴェルデ役は、もちろんクラウス・キンスキー。しかし、彼がヴェルナー・ヘルツォークとコンビを組むのは本作が最後となりました。

7. いったい奇人はどっちだったのか?

自身の作品には欠かせない存在だった怪優クラウス・キンスキーについて、監督自らが撮影秘話を交えて語るドキュメンタリー。お互いの強烈な個性に魅せられながら、愛憎渦巻いていた2人の関係が暴きだされます。 本作でヴェルナー・ヘルツォークは、クラウス・キンスキーがどれだけヤバい人物だったかを告白。時には、命の危険すら感じていたようです。 しかし、そんな危険人物と5本も映画を撮った監督自身もまた、奇人以外の何者でもないことを実感させられてしまいます。

8. 衝撃的な人質の正体にも注目!

1979年に実際にアメリカで起きた実母殺害事件を元にした映画。ヴェネツィア国際映画祭で初上映され、金獅子賞にノミネートした作品です。製作総指揮をデヴィッド・リンチが務めたことも話題になりました。 主人公のブラッド・マッカラムは過干渉な母親と2人暮らしで極度のマザコン。しかし、ペルーに行ってから人が変わってしまいます。舞台役者だったブラッドは、母親殺しの役を演じることでさらに言動を異常にして行き、ついには剣で自分の母親を殺害してしまいます。 現場に駆けつけた刑事は、何者かを人質にとって立てこもるブラッドを説得しつつ、周囲に事件のあらましを聞きます。実は、ブラッドが人質にとっていたのはペットのフラミンゴ。ヴェルナー・ヘルツォークの動物へのこだわりがここにもあわられています。

9. 裏の顔を持つ刑事の運命は?

ニコラス・ケイジやエヴァ・メンデスというハリウッド俳優をメインに起用したクライム映画です。 舞台はハリケーンが襲撃し、荒廃したニューオリンズ。ニコラス・ケイジ演じるテレンス刑事は一見正義漢に見えつつも、賭博と麻薬に溺れる裏の顔を持っていました。しかしある時、不法移民一家の惨殺事件が起き、その陣頭指揮を務めることになったことから、彼の運命が動き出し始めます……。 一見するとよくあるハリウッド的な娯楽大作のようですが、射殺されたギャングの魂がブレイクダンスを踊りだしたり、物語に直接関係ないワニや蛇、イグアナなどが登場したり、突然舞台が水族館になるなど、魔術的なヘルツォーク節が炸裂。妙に中毒性が高い、ヘルツォークの新境地です。

10. 砂漠の女王となった貴婦人

2000年代に入って以降、ドキュメンタリー映画を中心に監督するようになったヘルツォーク。そんな彼が、6年ぶりに発表したフィクション映画です。2002年の『めぐりあう時間たち』でアカデミー主演女優賞を受賞したニコール・キッドマンを主演に迎えて制作されました。 ニコール・キッドマンが演じたのは、後に“砂漠の女王”と呼ばれるイギリス人女性、ガートルード・ベル。英国鉄鋼王の家庭に生まれ、オックスフォード大学を初めて主席で卒業した女性です。 そんな彼女にとって女性の成功をよしとしない社交界は退屈そのもの。そしてペルシャ旅行をきっかけに、彼女はアラビアの砂漠の魅力にとりつかれて行くのです。

日本で撮影していた新作にも注目!

2018年9月、ヴェルナー・ヘルツォークが日本で新作を撮っていたことが明らかになりました。なんと出演者は素人で、デジタルカメラを用いて人混みの中で行った撮影もあったと報じられています。 撮影は8月中には終了しているらしく、公開される日もそう遠くはなさそうです。 70代半ばを過ぎてなお、精力的に活動を続けるヴェルナー・ヘルツォーク。今後の動向にも注目したいですね。