批判の絶えなかった異色の朝ドラ『半分、青い。』から目が離せなかった4つの理由
『半分、青い。』はなぜ低評価?理由を考察
2018年前期に放送された『半分、青い。』は、観ていてヒリヒリするドラマでした。 ドラマの中でヒロインが繰り広げる恋愛模様、私たちが生活する現実にも横行する偏見、そしてドラマに対する視聴者の反応。 全てがヒリヒリしていて観ていて辛いくらいなのに、どうしても目が離せなかった。これはきっと、私だけではないはずです。 ドラマ放送後、連日繰り広げられたTwitterでの「#半分青い反省会」や、Yahoo!テレビでの評価が総合評価☆1.53と、朝ドラ史上最低評価を記録したことからも、この作品が視聴者に"愛されていた"とは考えにくいにも関わらず、平均視聴率は21%を超える好成績を記録。 本作は、多くの視聴者が「低評価」を下しながらも、目が離せなかった「異例の朝ドラ」だったのです。 では、なぜ目が離せなかったのか。本作の低評価の原因を考察しながら、異色の朝ドラ『半分、青い。』を振り返ってみたいと思います。
異色の朝ドラ『半分、青い。』はこれまでの朝ドラと何が違った?
朝ドラ『半分、青い。』は、今までの朝ドラと何が違っていたのかを調査しました。
「朝ドラのヒット法則」を全部外した挑戦的な脚本
「実在の人物をモデルにしたヒロイン」や「戦争のシーンを挟む」、「厳しい時代に果敢に挑むヒロイン」など、人気を博した朝ドラには共通する要素があったりします。「ヒットの法則」というものでしょうか。 このヒットの法則をNHKから聞いた脚本家・北川悦吏子は、「それらの要素を全てを外した」と週刊女性2018年5月22日号のインタビューで答えています。 実際、永野芽郁演じるヒロイン・楡野鈴愛はモデルを持たないキャラクターで、『半分、青い。』に戦争のシーンは描かれていません。視聴者のターゲットも、ドラマで描かれている時代を生きた40〜50代を想定し、とても挑戦的なものとなっています。 このような朝ドラの法則を破った例は、『まれ』や『純と愛』にも共通していますが、どちらも朝ドラで「ヒット」の基準となる平均視聴率20%越えを達成していません。 その中で平均視聴率21%を記録した本作は、異例と言えます。
北川悦吏子の巧みな恋愛表現はさすが
批判も目立った『半分、青い。』ですが、「恋愛の神様」北川悦吏子が手がけた作品とだけあり、恋愛模様の表現は素晴らしく、SNSでも賞賛されネットニュースにもなるほど話題となりました。 お互いのことを誰よりも知っている幼馴染の鈴愛と律(佐藤健)、「互いのことは大切だけれど、これが恋なのかわからない」序盤。「お互いの気持ちに気付きながらも、恋に発展できない」中盤。このもどかしい展開を半年間見守ったあとで訪れる「互いの気持ちが通いあう」ラスト。 2人の「くっつきそうでくっつかない」ビタースウィートな関係は、視聴者の関心を惹きつけた1つでもあります。 中でも、鈴愛が律の親友・朝井正人(中村倫也)に失恋をした時、涙が止まらない彼女を心配した律がわざわざ鈴愛の部屋を訪れて静かに背中をかしたシーンや、寝ている律にキスをしようとした鈴愛に、律が「来る?」と自分の毛布の中に鈴愛を招くシーンは、女性視聴者を中心に胸キュンの嵐を巻き起こしました。
毎朝開かれた「#半分青い反省会」批判の理由は?
『半分、青い。』の放送終了後、「#半分青い反省会」「#半分白目」などのハッシュタグが多く呟かれていたことが話題となりました。これらのハッシュタグは一体、なんなのでしょうか。
Twitterを騒がせた「#半分青い反省会」「#半分白目」ってなに?
Twitterの#(ハッシュタグ)とは、ツイートの内容をキーワードやトピックでジャンル分けすることができる便利な機能。この#を利用して、「#半分青い反省会」や「#半分白目」という投稿が多くの一般視聴者からツイートされました。 この「#半分青い反省会」と「#半分白目」とは、単語から連想できる通り、『半分、青い。』アンチファンによる投稿です。作品の中で描かれた失言や、不快感を抱いたシーンについて言及されており、放送期間中は毎朝のように反省会が開かれていました。 また、投稿している視聴者の多くが、以前からの朝ドラファンであったことも特徴的です。 では、朝ドラファンを怒らせた理由とは一体なんだったのでしょうか。
NHKでは考えられない偏見と暴言の数々
「28歳はおばさん」「32歳は高齢出産」「東大は学力的に無理だから、京大を受験する」「映画仕事やめてカタギの仕事をする」など、偏見の強いセリフが多かった『半分、青い。』。 本作では、NHKの朝ドラとは思えない極端な発言が数々登場し、これらに傷ついた視聴者は少なくありません。 そして、本作がヒリヒリするのは、これらの発言が妙にリアルなところ。私たちの世界でもいまだに一部で残っている偏見を、朝の楽しいドラマを鑑賞中に突きつけられることに、視聴者はショックを隠せない様子でした。 実際に、ドラマ放送後はこれらの発言を巡りTwitterは大炎上。 一方で、鈴愛が生活する時代は女性が若いうちに結婚することや出産することが当たり前とされていた時代でもあり、こういった発言に対して「時代だから仕方がない」と擁護する声も見られました。
ヒロインの難がありすぎる性格と言動。「結局何がしたかったの……?」
ドラマ冒頭では、漫画家を目指して一生懸命活動する鈴愛ですが、中盤ではそれに挫折。その後の彼女は、発言や仕事をコロコロと変え、結果として何が「本当にやりたかったのか」がわかりません。 また、仕事だけでなく恋愛面でも理解し難い言動が見られ、幼馴染・律の初めての彼女に対して「律を返せ!律は私のものだ!」と泣きながら訴えたり、数年間連絡を取っていなかった律から結婚式の招待状が届くと、律と婚約者が住む家に突撃したり……。 批判の一方で、鈴愛の突拍子もない言動は次にどのような展開を呼ぶのか予想がつかず、それがつい見続けてしまう理由の一つでもありました。
脚本家・北川悦吏子がTwitterでネタバレ
タグ荒れ!!
— 北川悦吏子 (@halu1224) August 8, 2018
初めて知る言葉。ごめんなさい。さっそく、タグ荒れ。アンチの方は、参加しないでください!!ダメです。なんの知恵もない策。#そ https://t.co/4XZisBIMmN
ドラマと同じくらい注目を集めていたのは、脚本家・北川悦吏子のTwitter。 Twitterでは、アンチに対して挑発とも聞こえる発言をしたり、今後の展開をネタバレしてしまうツイートを投稿してしまうなど、ファンとしても悲しい行動が見られました。 NHKが発行している「月刊みなさまの声 2018年9月号」で発表された『半分、青い。』の視聴者の声コーナーでは、 「脚本家が今後の展開がわかるような発言をしていた。視聴者の楽しみを奪うようなツイートは不必要だと思う」 という意見が168件も寄せられ、炎上はTwitterのみならずNHKにまで声が届いていたこともわかります。
物議を醸した「東日本大震災」の描き方。『あまちゃん』と比較の声も
そして『半分、青い。』の中で最も物議を醸したシーンといえば、「東日本大震災」を扱ったシーン。「月刊みなさまの声 2018年9月号」では、この震災の描き方に関する厳しい意見が289件も寄せられました。 震災のシーンで亡くなった鈴愛の親友・裕子についても、「看護師として働いている自分が、ベッドの上で逃げることのできない患者のことを置いて、自分だけ逃げられない」と死を決意したことや、阪神・淡路大震災はスルーしたにも関わらず、東日本大震災を扱う必要があったのかなどの疑問の声が上がり、Twitterは炎上。 中でも、震災シーンの描き方に賞賛の声が上がった『あまちゃん』との比較の声が多く見られました。
朝ドラ『半分、青い。』で脚本家が本当に描きたかったこととは?
NHKに対しての脚本に関する好評意見が271件、厳しい意見が1731件も寄せられるなど、賛否両論となった『半分、青い。』。北川悦吏子はインタビューにて「炎上は覚悟の上」と答えています。 では、彼女は炎上を覚悟の上で、どんなことを描きたかったのでしょうか。 ドラマの中で、鈴愛や彼女を取り巻く人々は、恋愛や当たり障りのない会話、オチに繋がらないちょっとした出来事を経験します。 最後のオチにつながるような大きな出来事は伏線が回収されてスッキリした気持ちで見ることができますが、「結局何がしたかったのかわからなかった小さな出来事」は、視聴者からすると話が散らかったように感じてしまい、あまり良い印象を抱くことはできません。 しかし、私たちの生活は、そんな小さな出来事の数々から構成されているはずです。 「現実はドラマのように全てが結果に繋がるわけではないし、そんな小さな出来事からちょっとでも大きな出来事が生まれればよい。」 半生をかけて大恋愛を描いてきた北川悦吏子だからこそ、「ドラマティックではない人生をも肯定し、その人生を歩む人の背中をそっと押してあげる」––そんな繊細な表現を本作を通して描きだすことができたのではないでしょうか。 批判も多かった『半分、青い。』ですが、ここには確かに、優しく力強いメッセージが込められているのです。