2023年5月2日更新

実写映画『ママレード・ボーイ』はなぜ原作ファン・鑑賞者の心を掴めなかったのか?【感想・評価】

このページにはプロモーションが含まれています
『ママレード・ボーイ』 桜井日奈子 , 吉沢亮

吉住渉による同名コミックスが原作で、1992年から1995年まで「りぼん」で連載され、同時にアニメ化もされたトレンディドラマの金字塔『ママレード・ボーイ』。2001年には台湾で実写映画化されるなど、日本の代表的な胸キュン作品として知られています。 2018年、ついに日本で実写映画化されるというニュースが発表された際には、原作ファンに大きな衝撃が走ったことでしょう。 実写映画化に原作ファンの意見はつきもの。映画化をきっかけに、これまで作品を知らなかった人が作品に触れられるという作品側のメリットはありつつも、自分の中で消化しきっていたはずの作品が実写映画というフォーマットを使って再解釈され、それが思い出の作品の印象を左右してしまうというリスクも伴います。 さて、30代から40代の女性を中心に支持されていた『ママレード・ボーイ』ですが、2018年に公開された映画には厳しい声が多く上がっているようです。原作では多くの女性を虜にできたにも関わらず、なぜ映画は不発となってしまったのでしょうか? 映画のあらすじ、キャストを振り返りながら、映画がいまひとつとなってしまった理由に迫ります。

『ママレード・ボーイ』の原作を

AD

映画版のあらすじ

高校生の小石川光希(こいしかわ・みき/桜井日奈子)は、ある時突然両親から離婚を告げられます。しかもハワイ旅行で出会い意気投合した松浦夫婦と、パートナーを交換して再婚し、みんなで一緒に住むと言うのです。 その後、松浦夫妻の息子である遊(ゆう/吉沢亮)も含めて6人での生活が始まります。光希と遊は、徐々にお互いのことを意識するように。 しかしそんな遊には、秘密がありました。それは「自分が父親・要士(ようじ/谷原章介)の子供ではないかもしれない」ということ。この事実が、遊が他人に心を開けない原因の1つとなっていたのです。惹かれあう光希と遊は、無事に付き合うことができるのでしょうか?

映画版のキャスト一覧

小石川光希 (桜井日奈子) 元気で明るく、少し子供っぽい性格の高校3年生。 中学時代は銀太に恋心を抱いていましたが、振られています。 遊と一緒に住むようになってから、彼に惹かれていきます。
松浦遊 (吉沢亮) イケメンで成績優秀、スポーツ万能な高校3年生。 一見気さくに見えますが、自分の父親に関する事実を知ってからは、人を信じることができなくなってしまいました。
仁 (筒井道隆) 光希の父親で留美と結婚していましたが、パートナーを入れ替え千弥子と再婚することになります。
留美 (檀れい) 光希の母親で仁と結婚していましたが、要士と再婚しています。料理が苦手で、娘の光希にも遺伝しているようです。
要士 (谷原章介) 遊の父親で千弥子と結婚していましたが、留美と再婚しています。 要士の母が要士に宛てた「前の恋人との赤ちゃんがお腹にいる女性と結婚して本当にうまくやっていけるのか」という内容の手紙を見たことで、遊は要士が自分の父親ではないのではと考えるようになります。
千弥子 (中山美穂) 遊の母親で要士と結婚していましたが、仁と再婚しています。
須王銀太 (佐藤大樹) 光希のクラスメイトで、中学時代光希から好意を寄せられていましたが、行き違いから彼女を振ってしまう形に。 しかしその後、長い間光希のことを想い続けます。 テニス部に所属しており、遊の恋敵的存在です。
秋月茗子 (優希美青) 光希のクラスメイトで親友。豪邸に住むお嬢様ですが、両親は仮面夫婦という複雑な家庭環境です。 クラスの担任である名村慎一(竹財輝之助)と付き合っています。

原作ファン、原作未読鑑賞者それぞれが感じた不満とは?

原作ファンは、もちろん、漫画を読んだあのときの気持ちをもう一度思い出してトキメキたい!という気持ちで映画を観に行ったはず。原作を読んだことがない人も、胸キュンを求めて映画館に足を運んだのではないでしょうか。 しかし映画を観てみると、キュンとできるシーンは少なかったような......。原作では光希と遊が初めて会ったときから、光希は遊に「かっこいい」とときめきつつ、真意の読めない彼の行動に「変な奴」と思い、好きか好きじゃないかの狭間で揺れる瞬間がいくつもありました。 映画では、こういった登場人物の心理描写が少なかったためか、少女漫画特有の胸キュンを期待して映画を鑑賞した人からは「物足りなかった」「残念」「原作の魅力が伝わってない」などの声が多く上がってしまったのかもしれません。 ではなぜ、ここまでマイナスな意見が目立ってしまったのでしょう?

AD

2時間では収まらない!詰め込みすぎで魅力が半減?

映画のあらすじを見てわかるように、原作漫画8巻のうちに描かれた大きな出来事は概ね詰め込まれています。原作と全く同じではないものの、銀太が光希に告白するシーンや、遊の元カノ・亜梨実の存在、茗子と名村先生の関係など、サブキャラクターもしっかり登場。 光希と遊の恋愛の他に、両親同士の恋愛、親友・茗子と名村先生との恋愛、銀太の片思い、亜梨実の片思いと5組の恋模様を描いています。 しかし、これらの恋愛模様を全て描いてしまったことが、映画のクオリティを下げた1つの要因となってしまっているように感じます。 お馴染みのキャラクターが登場するは良いものの、映画では彼らの出来事ばかりにフォーカスしてしまいがちでした。各キャラクターのバックグラウンドの説明が省略されているため、なぜその行動に至ったのか、登場人物たちが何を考えているのかという、物語を理解する上で無視できない部分が抜けてしまっているのです。 またそれを補うかのように説明的なセリフが増えてしまい、スクリーンの前でどこか客観的に映像を眺めてしまった人も多いのではないでしょうか?

『ママレード・ボーイ』の原作を

実写キャストに賛否両論!

映画初主演の桜井日奈子&顔面フル活用の吉沢亮

主人公の光希を演じたのは、本作が初主演となった桜井日奈子。岡山の奇跡と言われ、数多くのCMに出演し知名度を上げてきました。そんな桜井が少女漫画原作のヒロインに初挑戦。 原作漫画の光希は、天真爛漫で少し天然な女の子。桜井自身が持っている天真爛漫でアイドル的なイメージと、どこか重なるところもある気がします。 しかし、原作では「うちの両親は変な人だから」と共同生活を受け入れたりと天然な要素が強い光希に対して、映画では両親の破天荒な行動を頑なに反対するなど、少し現実的な少女として描かれていたように感じます。 作品にリアリティを持たせることに一役買った反面、原作ファンからはイメージと違うという声が上がる結果となってしまいました。 一方、遊を演じた吉沢亮は、“ママレード・ボーイ”である遊を再現できていたように思います。吉沢本人もキャスティングされた際、「自分の顔面をフル活用する時がきた」と、ビジュアルに関しては自信満々だった様子。 一見優しく気さくに見えますが、どこか陰のある遊を、自身の持つイメージとうまく掛け合わせて再現していました。

AD

両親ズのキャスティングは正解だったのか?

主人公2人を取り巻く実写キャストにも注目が集まった本作。 光希の親友でお嬢様の茗子には、『あまちゃん』で知られる優希美青が抜擢されました。「原作に忠実に」となると、可愛い系よりもきれい系の女優にウェーブヘアで挑戦してほしかった……!という原作ファンは多かったのではないでしょうか? 光希のクラスメイトで幼馴染の銀太を演じたのは、EXILE、FANTASTICSで活躍する佐藤大樹。「HiGH&LOW」シリーズではシーズン1のキーマンとして、転校生のチハルを演じました。 ラブコメ作品は本作が初挑戦でしたが、光希のことを振ってしまった過去を後悔し、その後一途に光希のことを想い続ける銀太を見事好演。ビジュアルも、原作の銀太を思い出させる完成度でした。 更に本作では、映画公開前から“トレンディ”を意識した「両親ズ」のキャスティングも話題に。1990年代後半から2000年代に放送されたドラマで活躍していた、谷原章介、筒井道隆、檀れい、中山美穂の豪華トレンディ俳優が配役されました。 4人とも原作通り上品な雰囲気がありつつ、お父さんはかっこよくお母さんは若くて綺麗という面はぴったりでした。 ただ、カップルを交換して再婚するという、とんでも設定を実行する勢いには欠けていたような気もします。沢村一樹や広末涼子らが演じていたら、もう少し違う印象に仕上がっていたのかも……?

AD

原作『ママレードボーイ』を読むことで本当の魅力に気づける!

原作では多くの女性を虜にしたにもかかわらず、実写映画でその魅力を存分に発揮することができなかった本作。 映画から『ママレード・ボーイ』に足を踏み入れた人も、ぜひこの機会に1度原作漫画を読んでみてはいかがでしょうか?そこには当時の少女たちにトキメキを与えたように、今でも変わらず“胸キュン”が待っているはずです!

『ママレード・ボーイ』の原作を