『るろうに剣心 最終章 The Beginning』あらすじネタバレと感想 「ひどい」理由や原作との違いも解説
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』あらすじ
あらすじ
幕末。緋村抜刀斎は最強の人斬りとして人々に恐れられていました。ある夜、ある女性(雪代巴)に殺しの現場を見られた彼は、口封じのために側に置きます。
やがて尊攘派は危機に陥り、桂小五郎の命で緋村も農村に身を隠すことに。そこで緋村は、束の間の穏やかな日々を過ごし、巴と関係を深めていくのでした。
縁(えにし)との因縁の戦いが描かれた前作「The Final」で、剣心には過去に妻がいたこと、そして彼女を自らの手で殺めたことがわかりました。そんな彼が“不殺(ころさず)の誓い”をたてるに至った過去と、頬にある十字傷の秘密が明らかになります。
結末までのネタバレ
【起】血も涙も無い“人斬り抜刀斎”
長州藩維新志士である桂小五郎の命によって暗躍する緋村剣心(通称“人斬り抜刀斎”)は、その日も幕府側の役人を暗殺する業務に当たっていました。いつもならすぐに終わる任務のはずが、1人の護衛役が「大切な人がいるから死ねない」と、生きることに執念深く何度も立ち上がって来ます。 男と剣心の実力差は歴然でしたが、決死の抵抗が剣心の頬に一筋の刀傷をつけました。剣心は入念に男にトドメを刺します。 以降剣心は人斬り業に葛藤を抱えるように。「その先に人々が平和に暮らせる新時代があるなら」となお人を殺め続ける剣心でしたが、そんなとき酒処で1人の女性と出会うのでした。
【承】出会いを経て変わっていく剣心
出会った女性・雪代巴に殺しの現場を見られた剣心は、やむなく彼女を宿場に連れて帰ります。翌朝から巴は宿場で働き始めました。 「面倒の元だから立ち去れ」と言い放つ剣心でしたが巴は「帰る場所もないから」と留まり、暗殺稼業を咎めたり剣心の身を案じたりする日々が続きます。 剣心は「時代を先に進めるためには、誰かが太刀を振らねばならない」と自分の仕事を正当化するも、心には巴の言葉が引っかかっていました。 その後謀反を嗅ぎつけた新撰組に急襲をかけられ、剣心は沖田総司らと交戦します。しかし維新志士はことごとく破れ、長州藩の維新志士は壊滅状態に陥ってしまいました。 劣勢を受けて桂小五郎は一時雲隠れし、剣心と巴は田舎で隠居生活を送ることに。しかしそこでの慎ましくも人間らしい暮らしは、剣心にほんの少しずつ笑顔をもたらしていきました。 「初めて幸せとは何かを知った」と語る剣心に、巴は攘夷運動の動乱の中で愛する人を失った過去を明かします。その夜2人は関係を深め、剣心は巴を必ず守ると誓いました。
【転】巴の正体とは?仇を愛してしまった悲劇
しかし一晩明けると、家に巴の姿がありません。仲間の報告や巴の日記から、“婚約者の仇を討つため剣心に近付いた”という事実に混乱する剣心。 一方巴は剣心を討つため結託していた闇乃武のリーダー・辰巳のもとに向かっていました。しかし今では剣心を愛してしまった巴は、彼を助けようとしていました。 そんな悲しい愛も辰巳にとっては計算のうち。精神が不安定になった剣心に総攻撃を仕掛け、確実にダメージを負わせていきます。 そして遂に始まった辰巳と剣心の一騎討ち。剣心はすでに満身創痍で視界もぼやけていましたが、最後の力を振り絞り強烈な一太刀を浴びせようと動きます。しかしそのとき辰巳を殺そうとした巴が割って入り、剣心の一太刀を受けてしまうのでした。
【結】巴を胸に刀を置く剣心
剣心を守ろうと間に入り、剣心の刀で辰巳と共に斬り伏せられてしまった巴。彼女は最後剣心の顔に短刀をのばし、夫が付けた傷と交わるように刀を当てて、「ごめんなさい、あなた」と呟きこの世を去ります。 時は経ち、新撰組との最後の対決「鳥羽伏見の戦い」。敵を次々と斬る剣心に遂に勝利の報せが舞い込みました。「これで終わりだと思うなよ」と剣心に咆える斎藤一。しかし剣心は新しい時代の到来を察し、地面に剣を突き刺して去っていったのでした。
【感想・評価】賛否はわかれる?
全体的に暗くて悲しかったけど、剣心の過去がすべて明らかになって、これまでのシリーズに一気に深みが感じられるようになった。ひょうひょうとしている剣心がこんなに重い過去を背負っていたなんて……。白い雪と赤い血のコントラストが美しく残酷で、あの光景が心に焼き付いて離れない。1作目を改めて見返して、剣心に幸せになってほしいと、心の奥底から願った。
しっとりと静かで、悲しくも美しいラブストーリー。もはや幕末を舞台とした本格時代劇で、「実写化アクション」という枠を超えたと思います。過去作の目玉だったアクションシーンは少ないものの、ドラマとしてのクオリティが高く、脚本が素晴らしい!前作「The Final」の謎が明らかになる展開などもあり、見応えがありました。
るろ剣原作ファンだけど本作の部分は原作では描かれてなかったので、どんな内容なのかすごく楽しみにしてた。感動的な良い話ではあったけど、あまりにも暗すぎて、正直期待してたのとは違った、、剣心ではなく抜刀斎の話だと理解した上で見た方が良さそう。自分にはちょっと大人向けすぎたかも。でも有村架純の演技と醸し出す雰囲気はとてもよかった!!
【評価】「ひどい」と言われる理由は?
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』は「シリーズ最高傑作!」との声も多い一方、「ひどい出来の駄作だ」との声もありました。賛否が分かれた理由は2つ考えられます。
①エンタメ性の低いダークな展開
過去の映画「るろうに剣心」シリーズは、派手なアクションシーンや個性豊かなキャラクターたちが登場する、エンタメ性の高い作品として人気を獲得してきました。 しかし「最終章 The Beginning」は、アクションは少なめで色彩も控えめ。ストーリーもシリアスで、心理描写を「沈黙」で表現した渋めの世界観でした。 そのため「過去作を吹き飛ばすほどの最高傑作」という声もあった一方で、邦画屈指とも言われるアクションや漫画原作作品ならではのエンタメ性を期待した人にとっては拍子抜けだった模様。賛否が分かれる結果となったのです。
②原作がないオリジナルストーリー
「ひどい」と言われたもうひとつの理由として、原作コミックスに原作のないストーリーだったから、ということが考えられます。OVA作品の「追憶編」がベースになってはいるものの、映画オリジナル設定で肉付けされていたのです。 映画を見て、オリジナル設定に拒絶反応を起こした原作ファンがいてもおかしくはありません。 また「追憶編」は原作ファンの間でも人気の高いエピソードであり、映画第1作『るろうに剣心』(2012年)の製作が決定した時から実写化が期待されていただけに、ファンの期待値が高かったことも一因でしょう。
原作との違いは?映画オリジナルに込められた思い
「追憶編」をベースにしつつ、基本的にオリジナルストーリーだった映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』。そのオリジナル展開には、巴の葛藤がより強く伝わるよう工夫されていると感じられる点がありました。 ここからは、そんな原作との違いとそこに込められた思いについて解説・考察していきます。
原作とは違う十字傷の秘密
原作では巴を切った際に、折れた刀が飛んできて頬をかすめることでできる十字傷。しかしOVAである「追憶編」と今回の実写版では、十字傷は巴の小刀で故意に付けられる描写に変更されていました。 原作では巴の想いを映し出すように、折れた刀が偶然当たって十字傷が出来ます。巴の意思が込められているという意味では原作と同じですが、暗に描写していたものを直接的な描写に変更することで、より強い想いが感じられるシーンになっていました。
巴の最後のひとこと「ごめんなさい、あなた」の意味
剣心の頬に傷を付け「ごめんなさい、あなた」と呟いて最期を迎えた巴。この言葉には2つの意味があると考察できます。 剣心と共に過ごす中で、巴は彼を愛してしまいました。しかし巴は婚約者であった清里明良のことを忘れたわけではありません。おそらく最後に付けた傷は、彼女が愛してしまった剣心にできる精一杯の仇討ちだったのでしょう。 そのためこの言葉には、日記で巴が“2人目のあなた”と語ったように2つの意味が込められているのではないでしょうか。1つ目は剣心に向けた「ずっと裏切っていてごめんなさい」という意味、そして2つ目は明良に向けた「剣心を愛してしまいごめんなさい」という意味です。
「るろうに剣心 最終章」2作合わせて観る魅力
【見どころ①】「The Final」の剣心と「The Beginning」の冷酷な“抜刀斎”
これまでの4作や「The Final」では不殺を心情とする心優しい「緋村剣心」を描いていました。しかし「The Beginning」では剣心ではなく「人斬り抜刀斎」としての彼を中心に描いています。 そのため剣心の飄々とした穏やかな様子は一切無く、序盤から暗くて張り詰めた雰囲気と、血も涙もない抜刀斎の殺人アクションが展開されました。 特に剣心の戦闘中に血しぶきが飛び散る演出は、逆刃刀を使っていたこれまでの作品ではありえなかったものです。しかし本作では暗くて彩度の低い映像によって血の赤が強調され、より抜刀斎のおぞましさが引き立っていました。
【見どころ②】密偵との切なすぎるラブストーリー
志々雄真実一派との船での合戦を描いた「京都大火編」など、華やかなアクション映画としての側面が大きかった過去4作。しかし本作は激動の時代が招いた、剣心と巴の悲劇のラブストーリーが中心です。 作中では剣心が巴の前でなら眠れるようになったり、巴に「一緒に暮らそう」と頼んだりと、距離が近くなっていく2人の姿が丁寧に描写されました。 しかしすでに「The Final」にて2人の結末は知らされているのです。それゆえ2人の姿が幸せそうであればあるほど、切なさが心に重くのしかかってくる構造になっていました。
【見どころ③】最終章2作で全然違う!演出のこだわり
カメラワークの違い
臨場感あふれるアクションシーンが多かった「The Final」と比べ、心情や世の情勢を丁寧に描いている本作は、背景も際立つ引きのカメラワークが目立ちました。 またこれまでの「るろうに剣心」シリーズは彩度をなるべく落とさない華やかな時代劇となっていましたが、今作では彩度を下げる手法が解禁されたそう。深い闇を落としながら悩む剣心や、剣心と巴とのシリアスな恋愛模様を表現するため、全体的に落ち着いた色味になっています。 作品全体のカメラワークや色味を見ても、「The Final」とのコントラストを楽しめる仕上がりになっていました。
舞台美術の違い
前作の「The Final」は明治の新時代が部隊。国際色の強い縁が敵だったこともあり、戦闘シーンにまで華やかな舞台が作り込まれていました。 打って変わって暗澹たる幕末の時代を描いた異色の本作。殺伐とした時代の雰囲気や登場人物たちの切ない感情を表現するため、舞台美術の細部にまで多くの工夫が施されていました。 剣心が冒頭で暗殺に出向く立派な対馬藩邸には、腐敗した権力を象徴するようにカビが生えています。また巴が亡くなるシーンで切なさを表現するために、日本全国から雪を集めて本格的な雪景色のセットが作られたのだとか。 こういった画面の細かい部分までこだわり抜いた舞台演出が、幕末の世の暗い雰囲気をエモーショナルに描写していました。
正義とは何だったのか?シリーズ全体につながる答え
抜刀斎、長州藩の正義
天皇を中心に日本が一丸となり得体の知れない外国を排除する、それが尊王攘夷志士の正義です。 鎖国中にも関わらずペリー来航により開国を余儀なくされた日本。その中で抜刀斎や長州藩をはじめとする維新志士たちは、頼りない幕府に頼らず日本を守るため、自ら敵を排除すべく尊王攘夷運動を進めたのでした。 ちなみに原作では、剣心が奇兵隊に参加しようとするまでの過程も描かれていました。剣心はもともと師匠・比古清十郎のもとで飛天御剣流を学んでいましたが、非常事態にも山に籠ったままの師に反発心を感じて家出し、自分の剣術を世の平和のために使いたいと志したのです。
新撰組、闇乃武の正義
新撰組や闇乃武も、天皇を敬っている尊王思考であることには変わりありません。しかし彼らは「日本の繁栄は天皇から命を受けた幕府が政治を執り行ってこそ」と幕府の存在を重要視した尊王佐幕派でした。 よって同じように日本の平和な未来を望んだ若者たちにも関わらず、尊王攘夷から尊王倒幕派に変わっていく志士達と幕府側の新撰組や隠密部隊は対立してしまったのです。
どちらが正しかったのか?正義とは何か
同じく未来の日本の平和を願って、対立した両者。抜刀斎が先の時代の平和を願って人を斬り続けたことを正義と感じるかは人によって異なるでしょう。正義とは立場によって変化するもので、何が正しかったのかは一概には決められません。 剣心達が心と身体を犠牲にして、勝ち取った新時代は正しかったのか。その答えは本作の続きとなっている、これまでの「るろうに剣心」シリーズの中に描かれています。 多くの人が幸せになった明治の世ですが、矛盾や理不尽を解消し切れていないところも。その成り行きを見守りながら剣心は新しいやり方で、自分なりの正義(=明治の世)を守ろうと戦い続けていたんですね。
「The Beginning」追加キャスト
雪代巴役/有村架純
雪代縁の姉・巴(ともえ)を演じるのは、有村架純。連続テレビ小説『ひよっこ』で穏やかながらも力強いヒロインを演じたように、有村の演技は静かながらも意志の強さを感じさせます。 儚げな美しさを持ちながらその内に強い思いを秘めた巴。静かながら内側に秘めた意志を感じさせる有村の演技は巴そのものでした。
桂小五郎役/高橋一生
のちに木戸孝允として明治新政府を牽引する存在になる桂小五郎を演じるのは、高橋一生です。 高橋一生は子役時代から活躍を続ける、日本を代表する実力派俳優。2021年1月から放送していたドラマ『天国と地獄』では、高クオリティな入れ替わりの演技が話題になりました。 桂小五郎を演じるにあたって、「桂を演じるうえで、剣心の心の動きを観察するよう心がけていましたが、佐藤さんは、常に“剣心”としてそこにいらっしゃるので、安心してお芝居ができました」と語っています。
沖田総司役/村上虹郎
新撰組の沖田総司を演じるのは村上虹郎です。村上虹郎は2021年、本作含め4本の映画公開が決まっている、人気急上昇の若手俳優。 本作に対して、「沖田総司という人物を演じられることは、この上なく幸せだなと思います。(中略)今回の「剣心」は今までと違って「人斬り抜刀斎」なので、剣心としてまとう空気や、健くんが目の中に宿して見つめるものが違い、印象的でした」とコメントを寄せています。
高杉晋作役/安藤政信
尊王攘夷運動を先頭に立って率いた高杉晋作を演じるのは安藤政信です。安藤はドラマ『あなたの番です』(2019年)や『テセウスの船』(2020年)、大河ドラマ『麒麟がくる』(2020年)など、話題作にコンスタントに出演を続ける名バイプレイヤー。 今回の起用に際して「大友監督には、個性的で勢いのあるエネルギッシュなイメージを持っていました。そんな方と一度sessionしてみたかったので、オファーがきて素直に嬉しかったです」と語っています。
監督は大友啓史!過去シリーズスタッフが再集結
最終章のメガホンを取るのは、過去シリーズと同じく大友啓史監督。監督だけでなく、過去シリーズを手がけたスタッフが多数再集結しているとのこと。 大友監督は、原作にある物語の核はそのままに、アクションエンターテインメントとしてこのシリーズを仕上げてきました。原作エピソードからの取捨選択がうまく、原作ファンに愛される内容にまとめてきたという印象です。 それに加え、原作を知らない観客も置いていかない内容だったことも、大ヒットの一因なのでしょう。文字通り「るろ剣」のクライマックスとなる最後の2作品。常に前作を越え続けてきた本シリーズは、日本映画史に残る最高傑作で幕を閉じました。
「るろ剣」はワンオクなしには語れない!佐藤健とTakaの絆
本作の主題歌「Broken Heart of Gold」を歌っているONE OK ROCK。そんなワンオクのボーカルを務めるTakaと、本作の主演である佐藤健にはただならぬ絆があります。 10代の頃から面識があるという2人は、Takaは佐藤健を唯一無二の存在、そして佐藤健は好物にTakaの手料理を挙げるほどの親友なのです。 また今作の主題歌「Broken Heart of Gold」を、Takaは「剣心の人間性にフォーカスしながら、ONE OK ROCK自身にもリンクさせた曲」だと語っています。そのため作品の内容とも相まって、格別に響く仕上がりとなっていました。
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』はシリーズ集大成!最後まで見逃すな
日本だけでなく世界でも高い評価を受け、漫画原作の実写映画として見事な成功例となった「るろうに剣心」シリーズ。その完結編『るろうに剣心 最終章 The beginning』は、誰もが気になる剣心の過去や十字傷の謎をエモーショナルに描き、有終の美を飾りました。 賛否が分かれているからといって見ないのは勿体無いかもしれません。ぜひ『るろうに剣心 最終章 The beginning』でシリーズのラストであり始まりの物語を見届けてください!