2020年4月12日更新

天才を描いたおすすめ映画11選 ギフテッドたちの人生を垣間見る

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「ギフテッド」とは?天才たちを描いたおすすめの映画を紹介!

生まれながら天賦の才能を持っている人を「ギフテッド」と呼びます。天から与えられた「資質」を持つ人やその能力を指す言葉で、欧米には先天的に高度な知的能力を持っている子どもにギフテッド教育を受けさせる社会的基盤があります。 クリス・エバンス主演の映画『gifted/ギフテッド』は、まさにそのギフテッドの子どもを描いた作品。しかし天才といわれる人々は特別な存在として特異な目で見られることも多く、時には変人扱いもされてきました。 ここでは、そんなギフテッドや天才たちが主人公のおすすめ映画をピックアップ。実在の人物を描いた伝記や架空の天才を題材としたドラマなど、様々な角度からギフテッドの人生に触れてみましょう。最後に、よく映画に登場する著名な天才たちのプロフィールも詳しく紹介しています。

『gifted/ギフテッド』(2017年)

アメリカのギフテッド教育と問題点を描いた家族ドラマ

『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ監督による家族ドラマ。「アベンジャーズ」シリーズのキャプテン・アメリカで有名なクリス・エバンスがギフテッドの姪メアリーを育てる主人公フランクを演じ、メアリー役のマッケナ・グレイスは天才子役と評されました。 姉の娘で7歳になるメアリーとフロリダに暮らすフランク。小学校に入ったメアリーは授業で天才的な数学能力を発揮し、担任からギフテッド教育を受けるよう勧められます。しかしフランクはやはり天才だった姉を自殺で亡くした経験から、メアリーを普通の女の子として育てる決意をしていました。 この作品では、メアリーにギフテッド教育を受けさせようとするフランクの母イブリンと法廷で争うまでに発展しますが、特別扱いを苦にするケースも多いようです。ギフテッド教育の意義と問題点双方を考えさせられます。

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『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2018年)

カンニングをビジネスにした天才たちの実話を映画化

中国で起こったカンニング事件をモチーフにしたタイ製作のクライム・スリラー。カンニングをビジネスにした天才少女リンを、本作がデビュー作となるチュティモン・ジョンジャルーンスックジンが演じました。 小中学校と成績優秀だったリンは、奨学金を受けて特待生として進学校へ転入。友人のグレースにテスト中カンニングさせたことから、グレースの金持ちの彼氏パットからカンニング・ビジネスを持ちかけられます。 リンが考案したピアノを弾く手の動きで答えを教える「ハンドシグナル」という方法は、カンニングに使われるのでなければ画期的に思えます。ビジネスが成功し、国際的な大学入試「STIC」でのカンニングという大計画に乗ってしまったリン。天賦の才能を犯罪に使う者もいるということは、残念ながら世の常なのでしょうか。

『天才スピヴェット』(2014年)

『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネ監督作!天才少年スピヴェットの冒険

『アメリ』で著名なジャン=ピエール・ジュネ監督による初の3Dアドベンチャー映画。ラルフ・ラーセンの冒険小説「T・S・スピヴェット君 傑作集」を原作としています。 モンタナに住む10歳の天才少年スピヴェットは、ある日スミソニアン学術協会から最も優れた発明に贈られるベアード賞を受賞したことを知らされます。彼の才能を理解しない家族には内緒で、ワシントンDCの授賞式に一人で行くことを決めたスピヴェットはアメリカ大陸横断の旅に出ます。 本作が映画デビュー作ながら、天才少年の孤独と葛藤、そして成長を見事に表現したカイル・キャトレットは、実は6カ国語が話せるという本物の天才少年!ヘレナ・ボナム=カーターもスピヴェットの母で昆虫博士のクレアを個性的に演じています。

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『ビューティフル・マインド』(2002年)

ゲーム理論でノーベル賞を受賞した天才数学者ジョン・ナッシュの半生

ロン・ハワード監督が天才数学者ジョン・ナッシュの伝記小説を映画化した作品。ゲーム理論の基礎を築き、ノーベル経済学賞を受賞したジョン・ナッシュをラッセル・クロウが演じました。 プリンストン大学院数学科に入学したジョン・ナッシュは、世界を支配する理論を見つけ出そうと研究に没頭します。やがて画期的な「ゲーム理論」を発見したジョンはその才能を認められ、マサチューセッツ工科大学(MIT)の「ウィーラー研究所」で働くことに。しかし時代は冷戦下、そこでソ連の暗号解読という極秘任務を強要させられます。 ジョン・ナッシュは実際にMIT職員でしたが、実はウィーラー研究所は架空のもので、暗号解読のエピソードはフィクションです。しかしこの頃から統合失調症を患い始め、長い闘病生活を送ったことは事実。天才ゆえの苦悩を描いた作品として評価され、アカデミー賞では監督・作品・脚色賞など4冠を獲得しています。

『博士と彼女のセオリー』(2015年)

「車椅子の物理学者」スティーブン・ホーキングと妻ジェーンの物語

難病を抱えながら車椅子で研究を続けた理論物理学者スティーブン・ホーキングの半生を妻ジェーンの視点で描いた伝記映画。原作はジェーン・ホーキングによる自伝で、ホーキング博士をエディ・レッドメイン、ジェーンをフェリシティ・ジョーンズが演じました。 ケンブリッジ大学で物理学を学んでいたスティーブン・ホーキングは、そこで文学を学ぶジェーン・ワイルドと恋に落ちます。しかしその直後、スティーブンはALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症。余命2年の宣告を受けますが、それでもジェーンは彼とともに生きる決意をします。 ALSという難病を発症し、次第に体が動かなくなっていくホーキング博士をエディ・レッドメインが熱演し、アカデミー賞で主演男優賞を受賞しました。ジェーンとは生涯添い遂げることはなかったとはいえ、彼女との固い絆が博士の研究を支えていたことは間違いないでしょう。

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『ソーシャル・ネットワーク』(2011年)

Facebook創設者マーク・ザッカーバーグの半生をデビッド・フィンチャー監督が映画化

デビッド・フィンチャー監督が、世界最大のSNSサイト「Facebook」創設者マーク・ザッカーバーグの半生に迫った作品。彼がいかにしてFacebookを創り、億万長者となったのかを描き、ザッカーバーグを演じたジェシー・アイゼンバーグの演技は絶賛されました。 ハーバード大学の2年生だったマークは、恋人のエリカにフラれた腹いせに女子学生の顔の格付けサイトを立ち上げ、サーバーをダウンさせる騒動を起こします。彼に目を付けたウィンクルヴォス兄弟から、学生専用サイト「ハーバード・コネクション」の制作を依頼されますが……。 Facebookが女子学生の格付けサイトから始まり、アイデアの盗用で基礎を固め、共同創設者だった親友サベリンを裏切る形で事業を拡大していたとは!ウィンクルヴォス兄弟とサベリン両者に訴訟を起こされたザッカーバーグは示談で決着を付けます。さすが億万長者、これも天才のなせる技?

『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1998年)

天才的な頭脳を持つ不良青年と傷心の心理学者との心の交流

ガス・ヴァン・サント監督によるヒューマンドラマで、マット・デイモンが天才的な数学能力を持つ不良青年ウィル・ハンティング、ロビン・ウィリアムズが彼を更生する心理学者ショーン・マグワイアを演じました。 マサチューセッツ工科大学で清掃員アルバイトをしていた青年ウィルは、数学科教授ランボーに天才的な数学能力を見出されます。しかし彼は鑑別所常連の不良青年でした。心理学者のマグワイアに更生を依頼しますが、彼自身が妻を亡くしたことで孤独に苛まれていました。 当時まだ無名だったマット・デイモンとベン・アフレックがアカデミー脚本賞を受賞したことが大きな話題となった本作。ギフテッドに対して芸術的能力が高い人を「タレンテッド」といいますが、彼らはまさにタレンテッドな俳優ですね。

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『レインマン』(1989年)

サヴァン症候群の兄と旅して知った兄弟の固い絆

アカデミー賞で作品・監督・脚本賞など主要4部門を受賞した、バリー・レビンソン監督によるヒューマンドラマ。サヴァン症候群の青年レイモンドを演じたダスティン・ホフマンが同主演男優賞を獲得しました。 高級車ディーラーのチャーリーは絶縁していた父が亡くなったと聞き、遺産目当てに帰郷します。ところが遺産は全て兄レイモンドが相続することになっていました。チャーリーはサヴァン症候群のため施設に入所しているレイモンドを無理やり連れ出し、ロサンゼルスへ向かいます。 ロサンゼルスへの旅の中で、チャーリーはレイモンドの驚くべき記憶力や特殊能力を目の当たりにし、サヴァン症候群と兄への理解を深めていきます。この作品でサヴァン症候群を知った人も多いはず。しかしギフテッドとは違い、自閉症を伴うため社会的にその能力を認められない場合もあるようです。

『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』(2015年)

ドイツ軍の暗号エニグマを解読した天才数学者アラン・チューリングの数奇な運命

ベネディクト・カンバーバッチが天才数学者アラン・チューリングを演じ、アカデミー賞で主演男優賞にノミネートされた歴史ドラマ。アンドリュー・ホッジスによる伝記「エニグマ アラン・チューリング伝」を原作としています。 第二次世界大戦下のイギリス。ケンブリッジ大学で特別研究員を務めるアラン・チューリングは政府による秘密作戦で、解読不可能といわれるドイツ軍の暗号「エニグマ」解読チームに参加します。しかし協調性を欠くチューリングとメンバーとの間では溝が深まっていきます。 チューリングはエニグマを解読し、連合国軍に勝機をもたらした立役者だったにも関わらず、戦後に同性愛行為で罪に問われ、不遇の晩年を送りました。本作は現代コンピュータ科学の父ともいわれるチューリングの功績が、広く一般的に知られる機会になったでしょう。

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『アルキメデスの大戦』(2019年)

菅田将暉が天才数学者を好演!数学で戦争を止めようとした男

三田紀房による同名漫画を原作とした実写映画で、主人公の天才数学者・櫂直を菅田将暉が演じました。『永遠の0』の山崎貴監督が戦艦大和をCGで描き、冒頭の迫力あるシーンが話題を呼んだ作品です。 日本が欧米との対立を深めていた昭和8年、日本海軍は巨大戦艦「大和」の建造計画を進めていました。海軍の山本五十六少将はもはや巨大戦艦の時代ではないとこの計画を阻止すべく、東大を放校になった数学の天才・櫂直に大和建造計画の不正を暴くよう依頼します。 菅田将暉演じる櫂直の天才ぶりは、海軍将校たちを前に板上にその不正を示す数式を流れるように書いていく姿から一目瞭然。試算のため戦艦に乗ってすぐ、艦上のすべてを測ろうとする変人ぶりも彼の個性を表しています。しかし実は櫂は漫画オリジナルの創造上の人物!それでも本当にこんな天才がいたらと思うほど魅力的です。

『博士の愛した数式』(2006年)

80分しか記憶がもたない数学博士が愛した美しき数式

『雨あがる』の小泉堯史監督が、小川洋子の同名小説を映画化。主人公の数学博士を寺尾聡、彼の家政婦・杏子を深津絵里が演じました。杏子とその息子「ルート」と博士、3人の交流を描いたヒューマンドラマです。 シングルマザーの杏子は家政婦としてある数学博士の世話をすることに。彼はケンブリッジ大学で数学を学んだ天才でしたが、交通事故の後遺症で80分しか記憶が維持できなくなっていました。杏子とルートは彼の人柄に触れるうち、数学の楽しさを知り、博士に敬愛の情を抱くようになります。 杏子と博士の不思議な縁を示す「友愛数」、博士の好きな江夏投手の背番号で「完全数」の28など、本作にはこの世界にあふれる美しい数字が登場します。数学なんて難解と思っている人にこそぜひ、博士が愛した美しい数式と人生哲学に触れみてほしいものです。

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映画やドラマでよく描かれる天才たちを紹介

ここからは、ドラマや映画などの作品によく描かれる実在の天才たちの波乱多き人生を紹介。『博士と彼女のセオリー』のスティーブン・ホーキング博士、『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』のアラン・チューリングの2人に加え、天才チェスプレーヤーのボビー・フィッシャーも取り上げています。

スティーブン・ホーキング

エディ・レッドメインが『博士と彼女のセオリー』で熱演した「車椅子の物理学者」スティーブン・ホーキング。日本でもベストセラーとなった著書『ホーキング、宇宙を語る:ビッグバンからブラックホール』で有名ですね。 ケンブリッジ大学の大学院生時代に発症した難病ALSと闘いながら「ホーキング放射」と呼ばれる理論を発表し、量子宇宙論の分野で大きな功績を残しました。また、宇宙に関する多くの著書を記し、理論的宇宙論を平易な表現で一般に広く伝えています。 ALSで余命2年といわれたホーキング博士は、発症から50年以上にもわたって研究を続けました。声を失った後も、コンピュータプログラムによる合成音声を使って著作や講演など活発に行い、2018年に76歳で亡くなるまで生涯現役を貫き通したのです。

アラン・チューリング

『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』で登場した数学者アラン・チューリングを詳しく紹介しましょう。第二次世界大戦時のイギリスでドイツ軍の暗号エニグマを解読し、「チューリングマシン」を提唱して現代コンピュータの誕生に大きく寄与した研究者です。 その功績の大きさに反して、チューリングの晩年は不遇でした。エニグマ解読は戦後も国家機密であり、その業績を他言することは禁じられていました。さらに1952年には同性愛行為の罪に問われ、社会的地位を失います。入獄を避け、化学的去勢を選んだチューリングは、1954年に自宅で青酸中毒によって亡くなりました。 しかし死後何十年もかけて、チューリングの功績と名誉は回復されていきました。1966年からコンピュータ科学分野におけるノーベル賞ともいえる「チューリング賞」が創設され、2013年には女王の恩赦が発効。2021年から流通される新50ポンド紙幣に採用されることも決まっています。

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ボビー・フィッシャー

1972年にアメリカ人で初めてチェスの世界チャンピオンに輝き、天才チェスプレーヤーといわれたボビー・フィッシャー。映画ではトビー・マグワイアがフィッシャーを演じた『完全なるチェックメイト』(2015年)や、2011年に製作されたドキュメンタリー『ボビー・フィッシャー 世界と闘った男』でその姿を見ることができます。 『完全なるチェックメイト』は、1972年に行われた世界選手権でのロシア人チャンピオンのボリス・スパスキーとの対戦を描いています。冷戦下でのチェスの米ソ戦はまるで代理戦争のようで、スパスキーを破ったフィッシャーは「アメリカの英雄」と呼ばれました。 しかしその後、反米・反ユダヤ的発言で奇行が目立つようになり、1975年の防衛戦を放棄して王座を返上し、表舞台から姿を消しました。晩年は日本で暮らしていましたが、入国管理法違反のため成田空港で拘束された後、アイスランドへの出国が認められ、その地で2008年に64歳で亡くなっています。

映画を通じて理解されない天才の孤独を知る

2020年4月3日、京都大学の望月新一教授が数学界の超難問「ABC予想」を証明したというニュースが舞い込みました。論文が書かれたのは2012年、なんと精査するのに8年もかかったとか! 「早すぎる天才」という言葉もありますが、このニュースはまさにそれ。論文が難解すぎて理解するのに時間がかかったようです。天才の才能を周りが理解できず、変人扱いされたり差別されたりすることが多いことは、ここで紹介してきた作品からもうかがえます。 程度の差こそあれ、どの国でもいつの時代でも天才は普通とは違う異質な存在として特別視される運命にあるようです。紹介した作品に登場したような、天才の孤独を理解できる人間が少しでも周りにいることを願わずにはいられません。