2020年6月10日更新

Black Lives Matter 映画6作品から学ぶ黒人差別の歴史や構造【日本からできることはある?】

『フルートベール駅で』
©︎ THE WEINSTEIN COMPANY/zetaimage

2020年5月25日、アメリカで無抵抗の黒人男性が白人警官によって殺害される事件が発生。そして6月現在、人種差別に抗議する声は、世界中に広がっています。今回はアメリカに根強く残る黒人差別の問題を、歴史や背景を含めて、改めて考えるための映画を紹介しましょう。

目次

Black Lives Matter アメリカの根深い黒人差別を映画で学ぶ

2020年5月25日、米ミネソタ州ミネアポリス郊外で、丸腰の黒人男性ジョージ・フロイドが警察官に拘束され窒息死するという事件が発生。偽札の使用容疑で手錠をかけられた彼は、「呼吸ができない」「助けてくれ」と懇願したにもかかわらず、白人警官によって8分46秒間にわたって膝で首を地面に押さえつけられ、死亡しました。 この事件は全米で大きな波紋を呼び、大規模な抗議活動に発展。「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」を呼びかける声は、いまや全世界に広がっています。 6月10日現在、事件に関わった4人の警察官は解雇され、第2級殺人(計画性のない殺人)で訴追されることに。また、ミネアポリス市警察の解体や、米民主党による警察改正法案の提出なども発表されています。 なかなか理解しづらい複雑な背景があるアメリカの人種差別。今回は、目を逸らしてはいけないこの問題を知るための解説と、その手がかりになる映画作品を紹介しましょう。

アメリカの社会構造的な人種差別とは?

アメリカ合衆国は、イギリスの植民地時代を経て18世紀後半に独立・建国されました。植民地時代から、アメリカではアフリカ大陸から連れ去ってきた黒人を労働力として奴隷化しており、その解放を目指し南北戦争が勃発したことは、多くの人が知っているのではないでしょうか。 南北戦争は、奴隷解放を目指す北軍が勝利。1863年のリンカーン大統領による奴隷解放宣言、1865年のアメリカ合衆国憲法修正第13条制定を経て、晴れて黒人奴隷たちは自由の身となりました。 しかし、21世紀になった現在でも、アメリカにおける黒人差別は根強く残っています。その原因として挙げられるのが「社会構造的差別」の存在。アメリカは、いまだに法的にも政治的にも、黒人に不利な構造になっているのです。 ここでは、社会構造的差別を理解するのにおすすめの作品を紹介しましょう。

『13th -憲法修正第13条-』(2016年)

社会構造的差別とは?奴隷制度廃止の条文に組み込まれた抜け穴

13th -憲法修正第13条-

1865年、アメリカ合衆国憲法修正第13条が制定され、奴隷制度は廃止・禁止となりました。しかし、「自発的でない隷属は存在してはならない」という文言にはつづきがあります。「ただし、犯罪者であって関連する者が認めた場合の罰とするときを除く」。 つまり、犯罪者には刑罰として奴隷のような扱いを受けさせても違法ではないということです。 本作では、1915年に公開された映画『國民の創生』の影響や、政策として打ち立てられた「ドラッグとの戦い」とそこで制定された法律、そして刑務所の民営化による大量投獄時代への流れを解説。それらが、アメリカの黒人社会の崩壊と構造的差別の形成にどのような役割を果たしたかを紐解いていきます。 2020年6月10日現在、本作はYouTubeで無料配信されていますので、ぜひ観てみてください。

人種差別を加速させる白人至上主義の存在

アメリカの人種差別を語るうえで欠かせない問題に、「白人至上主義」という思想があります。これは「すべての人種のなかで、白人がもっとも優れている」という考え。こうした思想はときとして、有色人種の排斥、異人種間の結婚への反対、さらにはリンチ・殺人など、許しがたい行動にもつながっています。 アメリカの白人至上主義団体としては、クー・クラックス・クラン(KKK)が有名ですが、同団体は2つの世界大戦や、60年代のFBIによる大量逮捕を経て弱体化。しかし2020年現在でも、小規模な白人至上主義団体は多く存在し、KKKの思想はネオナチやオルト・ライトと呼ばれる新たな勢力に受け継がれています。 KKKについて描かれた映画として、2018年公開の『ブラック・クランズマン』を紹介しましょう。

『ブラック・クランズマン』(2018年)

黒人捜査官が白人至上主義団体KKKに潜入捜査!?

BlacKkKlansman
©︎Focus Features/Photofest/zetaimage

1970年代、アメリカ・コロラド州のコロラド・スプリングスで初の黒人警官となったロン・ストールワース。警察署内にも人種差別が色濃く残るなか情報部に配属された彼は、白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)の新聞広告を見て、潜入捜査を決意します。 電話で言葉巧みに白人の人種差別主義者を装ったロンは、KKK幹部と面会の約束を取り付けることに成功。実際に潜入する役はユダヤ系の同僚警官フィリップ・ジマーマンに頼み、「二人一役」を演じてKKKの活動内容や、極秘計画を暴く任務に乗り出すのでした。 驚きの実話をもとにした本作は、キャリアを通じて黒人差別への反対を訴えてきたスパイク・リー監督作品。「電話でも黒人特有の話し方はごまかせないのでは?」などのステレオタイプや誤解を、真っ向から否定する描写も印象的です。

警官による黒人への暴力を描く 実話をもとにした映画

警官による黒人への暴力、さらに無抵抗な黒人が命を落とした事件は今回が初めてではありません。これまでにも数多くの罪なき人が命を奪われ、そのたびに多くの人が抗議の声を挙げてきました。 ここでは、実際の事件をもとにした作品を2つ紹介します。

『フルートベール駅で』(2013年)

ある日突然命を奪われた黒人青年の実話

FruitvaleStation
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2009年1月1日午前2時。オスカー・グラント三世とその友人たちは、フルートベール駅で警官に取り押さえられました。 映画では、その前日から事件に至るまでの彼のなにげない1日が描かれます。過去には過ちも犯したオスカーでしたが、娘のため、家族のために更生を決意した矢先に突然命を奪われてしまったのです。 映画冒頭には、事件当時現場に居合わせた人物によって撮影された実際の映像が使われ、ショッキングな幕開けで観客を引きつける本作。主演はマイケル・B・ジョーダン、監督はライアン・クーグラーで、この2人は後に「クリード」シリーズや『ブラックパンサー』など、多くの作品でコンビを組んでいます。

『デトロイト』(2017年)

アメリカ史上最大級の暴動のさなかに起きた新たな惨劇とは

Detroit デトロイト
©︎Annapurnia Pictures/Photofest/zetaimage

1967年、違法酒場の摘発に端を発し、アメリカ史上最大級の暴動となった「12番街暴動」。次第に拡大する暴動はデトロイト市当局と市警察の手には負えなくなり、ミシガン州知事は州兵の現地派遣を決断します。 暴動発生から2日目の夜、州兵集結地の付近にあるアルジェ・モーテルから銃声が。そこにスナイパーがいると睨んだデトロイト警察、ミシガン州警察、ミシガン陸軍州兵、地元警備隊はモーテルへ捜査に向かうことにします。しかしそこで数人の警官が捜査手順を無視し、モーテルの部屋を襲撃。宿泊客を相手に、自白を強要する暴力的な尋問を始めます。 「スター・ウォーズ」シリーズで知られるジョン・ボイエガが、事件の一部始終を目撃した実在の警備員メルヴィン・ディスミュークスを演じた本作。エンディングで明かされる登場人物たちのその後、特に警官たちの処遇について、考えさせられるでしょう。

黒人社会の困窮・問題を描いた映画

社会構造的な差別が原因で、黒人は白人よりも高い水準の教育を受ける機会が乏しかったり、就職がうまくいかなかったりすることも少なくありません。その結果多くの黒人が貧困に陥り、低賃金の仕事や犯罪で生計を立てるしかない場合もあるのです。 ここでは、生活の困窮からくる問題を描いた作品や、他人種との共存が微妙なバランスの上に成り立っていることを考えさせられる作品を紹介しましょう。

『プレシャス』(2009年)

男性よりもさらに苦境に陥りやすい黒人女性の過酷な人生

プレシャス
©︎Lionsgate/Photofest/zetaimage

ニューヨーク、ハーレムに住む16歳のプレシャスは、生活保護を受けて暮らしていました。母メアリーは彼女だけを働かせるうえに、精神的・肉体的な虐待をつづけています。さらにプレシャスは2人目の子供を妊娠中。その父親は彼女の義理の父で、性的虐待の結果できた赤ん坊でした。 そんなつらい境遇のなか、プレシャスはフリースクールの教師や同級生、親身になってくれるソーシャルワーカーと出会い、少しずつ変わっていきます。 貧困や性的虐待から教育の機会を奪われ、男性よりも過酷な境遇に陥りやすい黒人女性。その1人であるプレシャスを主人公とした本作は、恵まれた環境で育った人々には理解しがたいほどにショッキングなものです。 しかし、このような状況もありえることが、黒人差別の根深さ・深刻さを感じさせます。

『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989年)

潜在的な差別意識とそれに対する反発

『ドゥ・ザ・ライト・シング』
©︎ MCA/UNIVERSAL/zetaimage

ニューヨーク、ブルックリン。誰もが猛暑にいらだっていたある日、黒人が多く住む地域のピザ店で、ちょっとしたもめごとが起こります。黒人自覚提唱者のバギン・アウトは、店主サルが壁に飾っている有名人の写真に黒人が1人もいないことに激怒。一方、巨大なラジカセで音楽をかけていたラジオ・ラヒームは入店拒否されてしまいました。 2人はサルの店をボイコットすることにしますが、賛同者はなかなか集まりません。しかしそれをきっかけに、その地区に住む黒人、イタリア系白人、アジア人など、さまざまな人種間の対立が浮き彫りになっていきます。 パブリック・エネミーの曲に乗せて、軽快なテンポで進んでいく本作。些細なケンカだったはずが、黒人たちだけが過剰な暴力を受けて弾圧され、暴動のような過激な抗議活動を展開せざるをえなくなります。ストレスフルな状況下での蓄積された怒りの爆発や、力に訴えなければ耳を傾けてもらえないほどの弾圧。まるでコロナ禍の今回の事件を予言したかのような内容です。

人種差別は他人事ではない 日本からできることは?

アメリカの人種差別はなかなか実感することが難しく、つい他人事のように考えてしまいがちです。しかし、映画はもちろん音楽やファッション、そのほかさまざまな分野で、黒人文化の恩恵を受けていることを忘れてはいけません。私たちにとっても大切なカルチャーを作っている彼らを、サポートするべきではないでしょうか。 今回の事件を発端に、世界中で人種差別についての関心が高まるなか、一人ひとりが日本からできることには、なにがあるでしょう。 まずは、この記事でも紹介したように差別の実態や背景・構造を知り、正しく学ぶことが大切です。そして学んだこと、考えたことをSNSで発信してみてはいかがでしょうか。 この問題は、まだ日本では正しい認識が広がっていないといえます。少しでも関心のある人は、そのことを表明してみるのもいいでしょう。今回の抗議活動のスローガンの1つには、「Silence is Violence(沈黙は暴力と同じ)」というものもあります。また、抗議団体への寄付も大きなサポートになります。余裕のある人は検討してみてもいいかもしれません。 人種が違っても互いに尊重しあい、だれもが安心して暮らせる世界を目指して、私たちにもできることはあるのです。

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非営利団体Black Lives Matterでは、オンラインで寄付を受け付けています。 トップページ右上の「DONATE」という青いボタンから寄付ページへ移動し、金額・支払い方法等を入力して、寄付することができます。

そのほか支援を受け付けている団体まとめ

こちらのぺージではミネソタ州を中心に、そのほか黒人差別に対する抗議活動や、マイノリティの地位向上を目指す団体など、支援を受け付けている団体が紹介されています。 自分が賛同できる団体を選んで支援するのもいいですね。