2020年4月19日更新

おすすめアメリカ映画20選 ハリウッド黄金期から新作まで名作だけを厳選【映画史解説も】

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バック・トゥ・ザ・フューチャー
©T.C.D / VISUAL Press Agency

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アメリカ製作のおすすめ映画! ハズレなしの名作だけをピックアップ

アメリカ映画といえばハリウッド映画ですが、アメリカにはインディペンデント系の小規模な映画製作会社も多く存在します。また、動画配信サービスが映画界にも影響を及ぼし始めて以来、メジャーと呼ばれる大会社が業界を支配する構図にも少しずつ変化が訪れてきました。 今回はアメリカ映画の歴史を振り返りつつその特徴に触れながら、ciatr編集部厳選のおすすめのアメリカ映画を紹介していきます。アメリカ映画界にも多様性の波が大きく押し寄せている今、これまでどんなアメリカ映画が製作されてきたのか、不朽の名作とともに振り返っていきましょう。

アメリカ映画の歴史と特徴を解説

アメリカ映画の基礎を築いたのはハリウッド

ハリウッド 洋画 フリー画像

1893年にアメリカの発明家エジソンが映写機「キネトスコープ」を、その2年後にフランスのリュミエール兄弟が「シネマトグラフ」を発明して、20世紀に入って瞬く間に世界中に広がっていった映画文化。アメリカで初めて商業映画が製作されたのは、1903年の『大列車強盗』でした。 アメリカの商業映画が本格的に大量に製作され始めたのは、ロサンゼルス・ハリウッドに多く映画人たちが集まってきた1910年代から。それから20年代にかけてメジャー・スタジオが次々に設立され、50年代まで続く「スタジオ・システム」と呼ばれるメジャーが製作・配給・興行を占める体制が築かれました。

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ハリウッド黄金期とアメリカン・ニューシネマの台頭

イージー・ライダー
© Sony Pictures Entertainment (Japan) inc.

1927年には初のトーキー映画『ジャズ・シンガー』が製作され、その2年後には第1回アカデミー賞が開催。30年代から40年代はハリウッド黄金期と呼ばれ、数々の古典的名作を生み出しています。50年代はテレビ普及の影響はまだなく、娯楽大作が全盛期を迎えていましたが、後半は冷戦下の赤狩りため多くの映画人たちがハリウッドを追われました。 60年代に入るとベトナム戦争が暗い影を落とし、これまでの娯楽大作よりリアルな現実に向き合う作品が求められるように。そこに登場したのが「アメリカン・ニューシネマ」と呼ばれる反体制の若者を描いた作品群です。この頃から、ハリウッド資本での他国との合作映画が増えていきます。

新しい世代の監督たちとアメリカン・ドリーム

スティーブン・スピルバーグ
Brian To/WENN.com

70年代にはスティーブン・スピルバーグやジョージ・ルーカス、マーティン・スコセッシやフランシス・フォード・コッポラなど新しい世代の監督たちが登場。『ジョーズ』などのパニック映画や『ロッキー』などアメリカン・ドリームを描くサクセスストーリーが大ヒットを記録するようになります。 ビデオセルという画期的なビジネスが映画界に浸透し始めた80年代には、ブロックバスターと呼ばれる大ヒット作が連発。ソフト化権利を奪い合う大手スタジオの買収も相次ぎました。

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CG技術の発展と求められる多様性

ホアキン・フェニックス『ジョーカー』
©️Supplied by LMK/zetaimage

2000年代になると、CG技術の向上から映像化が難しかったSFやファンタジー大作などが次々製作され、映画界に技術革命が起こります。しかし高騰を続ける出演料や製作費の問題や、ヒット作の続編や他国のリメイク作など安直な製作状況も指摘される点。AmazonやNetflixなど配信サービスの映画界参入による業界再編にも注目が集まっています。 近年特に注視されているのが、業界のホワイトウォッシングの反発から発したキャスト・スタッフの多様性を求める声。『ジョーカー』などアメコミ映画の芸術性が評価されたり、非英語圏の作品『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー賞作品賞を受賞するといった成果にも結実し始めています。

『フォードvsフェラーリ』(2020年)

アメリカの車社会を形成したフォードがル・マンでフェラーリに挑戦

フォード・モーターといえば、いち早く大衆車T型フォードを大量生産してアメリカ車社会の形成に一役買った自動車メーカー。『フォードVSフェラーリ』はフォード創業者の孫ヘンリー・フォード二世が、買収を拒絶したフェラーリを打ち負かすため、ル・マン24時間耐久レースに参戦する物語です。 その無理難題を振られたのが、マット・デイモン演じるカーデザイナーのキャロル・シェルビー。クリスチャン・ベール演じるテストドライバーのケン・マイルズとの友情を主軸にしたカーレース映画となっています。ル・マンで勝ち抜いたフォード・GT40をはじめ、往年のレースカーが繰り広げるレースシーンが見どころです。

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『シェイプ・オブ・ウォーター』(2018年)

ギレルモ・デル・トロ監督がアカデミー賞を受賞したファンタジック・ラブストーリー

シェイプ・オブ・ウォーター
©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

ギレルモ・デル・トロが監督・脚本・製作を手がけ、ベネチア国際映画祭で金獅子賞、アカデミー賞で監督・作品賞など4部門を制した異種間ラブストーリー。メキシコ出身の監督が2013年から三年連続でアカデミー賞監督賞を受賞する中、さらなる追い風になったともいえる作品です。 冷戦下のアメリカを舞台に、政府の極秘研究所に囚われた半魚人と声を失った女性イライザとの恋を描いています。未知の生物が米ソの宇宙開発競争や生体実験に使われるという展開は、冷戦という異常な時代を映していて絶妙な設定です。イライザを演じたサリー・ホーキンスの演技も高く評価され、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。

『ジョーカー』(2019年)

アメコミ映画の歴史を変えた「バットマン」の悪役ジョーカー誕生譚

ホアキン・フェニックス『ジョーカー』
©️Supplied by LMK/zetaimage

DCコミックスのヒーロー「バットマン」の宿敵ジョーカーの誕生譚を、映画オリジナルのシナリオで描いた作品。近年の傾向として悪役を主人公にしたヴィラン映画が盛んに製作される中、ベネチア国際映画祭やアカデミー賞などショーレースで大きな成果を出し、ついにアメコミ映画の歴史を変えたといっていいでしょう。 コメディアンを目指す貧しい青年アーサーがいかに踏みにじられ、どのように狂気に目覚めて悪の化身ジョーカーとなったのかを描いています。アーサー/ジョーカーを演じたホアキン・フェニックスの鬼気迫る演技とトラウマになりそうな笑顔が、彼にアカデミー賞主演男優賞をもたらしました。

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『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)

移民のアイデンティティを持つラミ・マレックがフレディ・マーキュリーを熱演

ボヘミアンラプソディ
© 2018 Twentieth Century Fox

イギリスのロックバンド「クイーン」のフロントマンとして世界を魅了したフレディ・マーキュリーの半生を描いた伝記音楽映画。イギリスとアメリカで国は違えど、同じく移民の子というアイデンティティに悩んだ経験のあるラミ・マレックがフレディを演じ、その熱演でアカデミー賞主演男優賞を受賞しました。 フレディだけでなく、クイーンのメンバーたちの外見や仕草があまりにもそっくりなことに感嘆しきりの本作。ギターのブライアン・メイとドラムのロジャー・テイラーが音楽総指揮を手がけ、劇中の楽曲はフレディの歌声をメインに使用したことも成功の要因でした。

『ワンダー 君は太陽』(2018年)

太陽のように周りを照らす少年オギーと家族の物語

ワンダー 君は太陽
©︎Lionsgate/Photofest/zetaimage

アメリカの作家R・J・パラシオのベストセラー小説「ワンダー」の映画化で、トリーチャーコリンズ症候群と呼ばれる先天性の遺伝子疾患で顔の形が変形して生まれたオギーを主人公にした家族ドラマ。オギーを演じたのは『ルーム』で注目されたジェイコブ・トレンブレイです。 27回もの手術を受け、容態が安定してきたオギーは学校に通い始めますが、人とは違う外見を持つことが差別やいじめを生みます。それでもオギーの持ち前のユーモアや勇気ある行動が、少しずつ周りの人にも変化をもたらしていきます。オギーだけでなく、途中バトンのように姉ヴィアや友人ジャックの視点に立ち代わっていく多角的な構成も秀逸です。

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『グリーンブック』(2019年)

実話をもとに60年代の黒人差別の実態と人種を超えた友情を描いたヒューマンドラマ

グリーンブック
© 2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

実在の黒人ピアニストであるドン・シャーリーと、彼の南部へのコンサートツアーに同行したイタリア系白人の運転手トニー・ヴァレロンガとの実話をもとに製作されたロードムービー。ドンをマハーシャラ・アリ、トニーをヴィゴ・モーテンセンが演じ、アカデミー賞では作品・脚本・助演男優賞の3冠に輝きました。 1960年代、黒人差別が色濃いアメリカ南部へ向かった二人は、様々な場面で差別的待遇を受けます。彼らが旅の頼りにしたのが、黒人が利用できる施設が記載された黒人用旅行ガイド「グリーンブック」。当時有色人種は多くの場所で隔離政策が行われており、信じがたい実態が描かれています。

『ラ・ラ・ランド』(2017年)

LAを舞台に女優とジャズピアニストの恋を描く大ヒットミュージカル映画

ラ・ラ・ランド
© Summit Entertainment"

『セッション』で注目を浴びたデイミアン・チャゼル監督によるミュージカル映画で、LAを舞台に女優志望のミアとジャズピアニスト・セブの恋を描いた大ヒット作。ミアを演じたエマ・ストーンとセブを演じたライアン・ゴズリングが歌とダンスに挑戦し、エマ・ストーンはアカデミー賞主演女優賞を獲得しました。 名作ミュージカル映画にオマージュを捧げたミュージカル・シーンや、舞台となったLAの名所など、ストーリー以外のディティールも見どころ満載。何より楽曲の素晴らしさは特筆すべき点で、サウンドトラックも世界的に大ヒットしています。

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『ゴーン・ガール』(2014年)

幸せな結婚生活と理想の夫婦の幻を見る衝撃のサイコスリラー

ゴーン・ガール
©Twentieth Century Fox Film Corporation/Photofest/zetaimage

デヴィッド・フィンチャー監督が、ギリアン・フリンのミステリー小説を映画化したサイコスリラー。結婚5周年の日に妻エイミーが突然失踪し、夫ニックに妻殺害の容疑がかかる事件が、途中からエイミーの視点に180度転換して衝撃の事実が明らかになっていきます。 人気児童文学のモデルで著名なエイミーとライターのニックは、周囲から見れば幸せな家庭を築いた理想の夫婦。しかし実は二人は離婚寸前だったこと、ニックがエイミーに踊らされていることなどがわかってくると、エイミーの恐ろしさに身震いが。エイミーを怪演したのはロザムンド・パイク、翻弄されるニックを演じたのはベン・アフレックです。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)

1985年から1955年へタイムスリップ!名車デロリアンも懐かしいSFアドベンチャー

バック・トゥ・ザ・フューチャー
©T.C.D / VISUAL Press Agency

スティーブン・スピルバーグ製作総指揮、ロバート・ゼメキス監督による大ヒットSFアドベンチャーのシリーズ1作目。高校生のマーティが1985年から1955年にタイムスリップし、若き両親の恋路を成就させようと奮闘するコメディで、マーティを演じたマイケル・J・フォックスが大ブレイクしました。 本作に登場するタイムマシンは名車デロリアン・DMC-12をベースにしています。マーティの近所に住む科学者ドクが愛車デロリアンを改造した車型タイムマシンで、かつてはUSJのアトラクションでもお馴染みの車でした。50年代とのジェネレーションギャップが笑いを生んだブロックバスター映画です。

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『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(1964年)

スタンリー・キューブリック監督によるシニカルな冷戦ブラックコメディ

スタンリー・キューブリック監督がハリウッドから去り、イギリスに活動の場を移した後に製作したブラックコメディ。1962年に起きたキューバ危機を背景に、極限状態に至った核戦争の行き着く様をシニカルに描いたキューブリック監督の代表作です。 「映画はフィクションであり、現実には起こりえない」とのアメリカ空軍による注釈が入る冒頭からしてアイロニカル。アメリカ空軍によるソ連への核攻撃によって、ソ連が隠し持つ地球破壊兵器の存在が明らかになります。ピーター・セラーズが元ナチス・ドイツの科学者ストレンジラヴ博士と、英空軍大佐と米大統領の3役を演じ分けています。

『ゴッドファーザー』(1972年)

ニューヨークのイタリア系マフィアの抗争を描いたマフィア映画の金字塔

ゴッドファーザー
©︎PARAMOUNT PICTURES

マリオ・プーゾの同名小説をフランシス・フォード・コッポラが映画化したマフィア映画。イタリア系マフィア「コルレオーネ・ファミリー」の抗争の内幕とファミリーの絆を描いた叙事詩的シリーズの1作目です。一家を統べるドン・コルレオーネをマーロン・ブランド、その三男で跡目を継ぐマイケルをアル・パチーノが演じました。 アメリカは20世紀初頭にヨーロッパから大量の移民を受け入れた「移民の国」。ドンと呼ばれることになるヴィトー・コルレオーネもシシリー島から移住してきた移民の一人でした。ニューヨークではヴィトーのような移民たちが立身出世で勢力を固め、それぞれのファミリーを作り上げたのです。

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『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1995年)

俊足と清い心を持つ男フォレスト・ガンプとアメリカの現代史を早巡り!

フォレスト・ガンプ
©︎Paramount Pictures/Photofest/zetaimage

ロバート・ゼメキス監督、トム・ハンクス主演のヒューマンドラマ。50年代から80年代のアメリカの現代史を背景に、人より知能指数は低くとも持ち前の純真さと俊足で激動の時代を走り抜けた男ガンプの数奇な人生を描いています。 ベトナム戦争やウォーターゲート事件などアメリカ現代史を代表するような出来事が次々登場し、ケネディをはじめ歴代大統領やジョン・レノンなど実在の有名人たちとガンプとの共演をインダストリアル・ライト&マジック(ILM)社によるVFXで可能に。また、時代背景に合わせた当時のヒット曲の起用も印象的です。

『アメリカン・グラフィティ』(1974年)

古き良き50年代とベトナム戦争に突入する60年代の間のモラトリアム期間を描いた青春映画

アメリカン・グラフィティ
©️MCA/Universal Pictures/Photofest/zetaimage

フランシス・フォード・コッポラ製作、ジョージ・ルーカス監督による青春映画。1962年のカリフォルニアの地方都市モデストを舞台に、高校を卒業した若者たちがそれぞれの旅立ちを控えた前夜を描いています。 全編に流れるオールディーズとロックンロール、改造アメ車あふれるモデストの町並みなど、60年代初期の平和な地方都市の様子がノスタルジックに映し出されました。地元に就職したり、東部の大学やベトナム戦争に行ったりと登場人物のその後もラストに挿入され、これがモラトリアム期間だったことをサラリと語っています。

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『ロッキー』(1977年)

シルヴェスター・スタローンをスターに押し上げたアメリカン・ドリーム体現映画

『ロッキー』
© UNITED ARTISTS/zetaimage

無名の俳優だったシルヴェスター・スタローンを一気にスターに押し上げた大ヒット作。自ら書いた脚本を自分を主演にすることを条件にして、現実でも見事アメリカン・ドリームを体現したボクシング映画です。 主人公のロッキー・バルボアはその日暮らしの三流ボクサーでしたが、愛するエイドリアンのため、そして自分のプライドのため、自らを鼓舞して世界チャンピオンに挑みます。倒れても立ち上がる、そんな不屈の魂に魅了された人も多いはず。ロッキーの名はサクセスストーリーの代名詞となりました。

『タクシードライバー』(1976年)

ベトナム帰還兵のタクシードライバーの孤独を癒す社会浄化行動

タクシードライバー
©︎Columbia Pictures/Photofest/zetaimage

ニューヨークで夜間のタクシードライバーとして勤めるベトナム帰還兵トラヴィスが、孤独感と隔世感から自分の存在を知らしめるため社会浄化を試みる物語。監督はマーティン・スコセッシ、主人公トラヴィスをロバート・デ・ニーロが演じ、圧倒的な存在感を見せつけた名作です。 12歳半の娼婦アイリス役で出演したジョディ・フォスターも話題になりましたが、なんといっても印象に残るのはトラヴィスのモヒカン姿。麻薬や売春があふれる汚れた社会を「浄化」すべく銃を取った半分狂気のトラヴィスに、『ジョーカー』のアーサーの姿が重なります。

『パルプ・フィクション』(1994年)

チープな犯罪小説「パルプマガジン」的な3つの物語が交錯するタランティーノ本領発揮の傑作

パルプフィクション
©︎Miramax/Photofest/zetaimage

『レザボア・ドックス』で鮮烈な監督デビューを飾ったクエンティン・タランティーノ監督が、自らの趣味と技術を惜しみなく詰め込んだクライム・ドラマ。時間軸が交錯する3つの物語を、殺し屋ヴィンセントとジュールスのたわいもない会話でつないだオムニバス形式の構成が特徴です。 ヴィンセントを演じたジョン・トラボルタが再び注目を集めたほか、ギャングのボスの女ミアを演じたユマ・サーマンもブレイクしました。カンヌ国際映画祭ではパルム・ドール、アカデミー賞でも7部門にノミネートされて脚本賞を獲得し、タランティーノ作品が国際的に評価されるきっかけとなりました。

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『イージー・ライダー』(1970年)

時代の流れを変えたアメリカン・ニューシネマを代表するロードムービー

イージー・ライダー
© Sony Pictures Entertainment (Japan) inc.

デニス・ホッパーが監督、ピーター・フォンダが製作で、二人が組んで脚本と主演を務めたアメリカン・ニューシネマを代表するロードムービー。60年代に自由と平和を求め、アメリカ縦断の旅に出た青年二人が、閉鎖的な南部で差別と偏見を目の当たりにする様子を描いています。 ヒッピー・ムーブメント全盛期の時代背景や、ドラッグでトリップする姿やヒッピーのコミューンなど、60年代アメリカの雰囲気をそのまま封じ込めた、まさに時代を象徴する作品。ハリウッドのメジャー・スタジオ製作ではなく、低予算のインディペンデント映画が世界的ヒットを生んだことで、アメリカ映画界に革命を起こしました。

『許されざる者』(1993年)

西部劇で名を馳せたクリント・イーストウッド監督“最後の”異色西部劇

『ローハイド』や『荒野の用心棒』など50年〜60年代の西部劇で名を馳せたクリント・イーストウッドが、「最後の西部劇」として監督・主演を務め作品。彼ならではの西部劇への愛着と批判精神で「西部劇の解体」が描かれ、旧来の男権的な西部劇の決まり事や価値観をことごとく否定した作風が異色です。 1870年代のワイオミングを舞台に、かつてはアウトローとして名を馳せたガンマンのウィリアム・マニーが、子どもに金を残すため賞金稼ぎとして再び銃を取る姿を描いています。アカデミー賞では作品・監督賞など4部門で受賞を果たしました。

『スタンド・バイ・ミー』(1987年)

少年時代のノスタルジーが蘇る不朽の青春ドラマ

スタンド・バイ・ミー
© Columbia Pictures

スティーブン・キングによる短編小説「死体」を原作に、ロブ・ライナー監督がフレッシュな青春映画に仕上げた80年代アメリカ映画の名作。田舎町キャッスルロックに住む中学に上がる前の4人の少年たちが、列車に轢かれた少年の死体を探しに行くひと夏の冒険譚です。 兄を事故で亡くし、両親に顧みられない主人公ゴーディの揺れる心を、ウィル・ウィートンが繊細に演じています。そんなゴーディの気持ちを汲む親友クリスを演じたのは、今は亡きリバー・フェニックス。幼さを残しつつも凛々しい表情を見せた、彼の貴重な少年時代の輝きを封じ込めた一作としても必見の作品です。

『市民ケーン』(1966年)

実在の新聞王ハーストをモデルに巨万の富を築いた男の孤独を描いた問題作

市民ケーン
©︎RKO Radio Pictures Inc./Photofest/Zeta Image

オーソン・ウェルズの初監督作で、製作・脚本・主演も務めた1941年製作の作品。「バラのつぼみ」という謎の言葉を残して死んだ新聞王ケーンは、いかにして巨万の富を築き、波乱の人生を送ったのか。彼を知る人物たちの証言によって振り返っていく構成は、後の映画人に多大な影響を与えました。 斬新な構成のほかにも、パン・フォーカスや長回し、ローアングルの多用など、革新的な映像表現を創り上げたことが高い評価を受けています。実在の新聞王ハーストをモデルにしたことで上映妨害を受けて興行には失敗し、アカデミー賞でも9部門にノミネートされながら脚本賞のみの受賞でしたが、後世に残る作品となりました。

時代に沿って新しい波を作り出すアメリカ映画の魅力

アメリカ映画界がハリウッドを拠点に成長を始めた1910年代から、21世紀に入り2020年を迎えた現代まで、アメリカ映画は常に世界の映画界にも影響を与え続けてきました。 ハリウッドのスタジオ・システムやアメリカン・ニューシネマの台頭など、時代によって多様な価値観に翻弄されてきたアメリカ映画ですが、その中で自ら切磋琢磨して新しい波を作り出しています。 近年の配信サービス参入による業界再編も気になるところですが、アメコミ映画の新しい可能性や多様性の確立など、まだまだアメリカ映画には伸びしろと課題があります。これからもその行方を見守っていきたいと思います。