2021年2月2日更新

SF映画『オブリビオン』衝撃の結末をネタバレ考察!テットの目的は一体何だった?

このページにはプロモーションが含まれています

AD

SF映画『オブリビオン』を解説!地球に残った男が知る驚愕の事実とは

2013年公開の映画『オブリビオン』は、トム・クルーズ主演のSF超大作。映画『トロン:レガシー』(2010年)で監督デビューを果たしたジョセフ・コシンスキーが監督を手掛けました。 中盤からの「どんでん返し」が見どころで、衝撃的なラストには賛否も巻き起こった本作。SF的な映像美も魅力のひとつです。今見ても古臭さは一切なく、SF映画好きにはたまらない作品に仕上げられています! この記事では、映画『オブリビオン』の結末までの詳しいあらすじをはじめ、テットの目的や結末の考察まで解説しています。ネタバレを含む内容となっているので、未鑑賞の方はご注意ください。

映画『オブリビオン』結末までのあらすじ【ネタバレ注意】

時は2077年、エイリアン「スカヴ」の攻撃を受けた人類は核兵器を使って応戦。なんとか勝利を収めたものの、地球は放射能に汚染され廃墟と化していました。人類は宇宙センター「テット」に移動しており、そこから土星タイタンへ移住する計画です。 元海兵隊司令官でコードネーム「49号」のジャックは、相棒で司令役のヴィクトリア(ヴィカ)とたった2人で地球に残っていました。超高層タワーで過ごしながら、海水を核エネルギーにする採水プラントの警備・整備の任務に当たる日々。 2人は5年前に強制的に記憶を消されてしまいましたが、ジャックは時々、愛する女性と地球で過ごす夢を見るのでした。また、2週間後に迫る任務完了を待ちわびるヴィカとは違い、故郷である地球を名残惜しく感じるジャック。森の中には、任務の途中に寄る隠れ家も作っていました。

AD

睡眠カプセルには夢で見た女性の姿が……

ある日、ジャックはパトロールの途中で墜落した宇宙船を発見。睡眠カプセルに入った生存者を数名確認しますが、制御不能になったドローンが敵と見なして攻撃してしまい、1人の女性・ジュリアしか守れませんでした。 ジュリアは、ジャックが何度も夢で見た女性でした。彼女は睡眠カプセルでおよそ60年もの間眠っていたようです。彼女の希望で宇宙船が墜落した場所へ戻ると、ジャックはスカヴに襲われてしまいました。 目を覚ましたジャックは、大勢の人間の姿を目にします。スカヴはエイリアンではなく、人間だというのです。彼らのリーダー・マルコムは「汚染地区に行けば真実がわかる」と告げました。

隠された「真実」へと近づき始める

ジュリアが自分の妻であるという記憶を取り戻し、全てを疑い始めるジャック。スカヴが人間ということは、すなわち、睡眠カプセルに入った人間をドローンが殺害したのがエラーではないということだからです。 タワーに戻るも、ヴィカは2人を警戒し本部に報告してしまいます。その直後、タワーに格納されていたドローンがヴィカを殺害。ジャックはその場所から逃げ、汚染地区に入り込んでしまいました。 そこで目に飛び込んできたのは、なんと自分自身の姿でした。もう1人のジャックのコードネームは「52号」で、そのエリアのタワーにはヴィカの姿もあります。マルコムたちのアジトに戻ったジャックは、そこで彼らから全ての真実を聞きました。

テットには人間はおらず、テットがジャックとヴィカを捕らえてクローンを作り、地球を攻撃したと言うのです。しかし、ジャックが本を読んだりジュリアを助けたりする姿を見て、「本当のジャックがまだいる」と確信したのだと言います。 ジャックはテットを破壊するため、ドローンのひとつをプログラミングしなおしました。しかし、そこへ3機のドローンが襲撃を仕掛け、計画は台無しに。そこでジャックは、テットが彼にジュリアとともに新しい任務につくよう指示していたのを思い出し、2人でテット内部に入り破壊する計画を思いつきます。 森の小屋で目を覚ましたジュリアは、話が違うと驚きます。実は、ジャックはマルコムと共にテットに潜入していました。上空のテットが爆破し、ジャックが犠牲になったことを知るジュリア。 3年後、ジュリアには娘が生まれていました。森の小屋で過ごす2人の元へ、かつてジャックと戦った「52号」のジャックが現れます。そして、彼らは微笑み合うのでした。

AD

怒涛の展開に翻弄される!どんでん返しの真実をわかりやすく解説

非常に複雑な話のため、文字を読んでも「結局どうなの?」と、イマイチよくわからなかったという人も多いはず。そこでここからは、頭を整理できるように時系列でわかりやすく説明していきます。

ジャックが信じこんでいた偽の経緯

約60年前にエイリアン「スカヴ」が地球戦略を開始しました。月が破壊されたことで、地球では地震や津波が発生。やがて侵略してきたスカヴに対し、人類は核兵器を使って戦い、勝利を収めます。 しかし地球は放射能に汚染されてしまいました。人類は地球を諦めて既にテットへ移住しており、土星タイタンへ移住計画を進めています。 ジャックは、人類の存続がかかった重要な任務である、海水を核エネルギーにする採水プラントの警備を行っています。5年前に記憶を消されたのは、敵に記憶を奪われて人間の弱点を知られる可能性があるためであると説明を受けていました。

実際の経緯

60年前の2018年、ジャック、ジュリア、ヴィクトリアたち宇宙飛行士は、NASAによって探知された謎の物体の調査に派遣されました。それがテットだったのです。 宇宙船の中で睡眠カプセルから先に目覚めたジャックとヴィクトリアは、テット付近で操縦不能になりました。ジャックは睡眠カプセルで眠るジュリア達を守るために操縦席以外を切り離します。 2人はテットの中に吸い込まれてしまいました。そうしてテットに捕われ、クローンを作られたのでしょう。 その後、テットから地球に宇宙船が送られてきて、何千ものジャックが地球を攻撃。実際には、地震や津波は起こりましたが、核汚染はされていません。「汚染区域」はそれぞれが別のクローンに鉢合わせないための嘘だったと考えられます。

AD

映画『オブリビオン』を紐解く重要な存在!テットの正体と目的に迫る

テットの正体について、映画内でははっきりとは描かれていません。 しかし、テットの内部は無人であったこと、マルコムがテットを「エネルギーのために次々と惑星を食い物にするマシーン」と言ったことから、惑星からエネルギーを奪い戦略するための人工知能である可能性が高いと思われます。 スカブというエイリアンはそもそも存在せず、テットそのものが地球を侵略する存在だったのです。またマルコムが言うには、ジャックが行っていたのは海水を核エネルギーにする採水プラントの警備ではなく、テットが地球の海水という資源を奪うのを守るという任務でした。 うまくジャックを騙していたテットですが、最後は機械ならではのミスでジャックの侵入を許してしまいます。 声が嘘をついていると解析されたジャックは「ジュリアを死なせず、人類を存続させたい」とありのままの真実を告げます。内容ではなく「真実かどうか」を解析したテットは、立ち入りを許可してしまうのです。

ジャックの隠れ家に飾られた絵画には意味があった!

物語終盤で何度か映し出される、ジャックの隠れ家に飾られた絵画。これは画家アンドリュー・ワイエスが1948年に描いた『クリスティーナの世界』という作品で、20世紀中期の最も有名なアメリカの絵画の1つです。 描かれているのは、病気を患い下半身が麻痺した女性アンナ・クリスティーナ・オルソン。彼女が近くにある家族の墓地の帰り、地を這って丘の上の家を目指す姿です。 この絵画を登場させた理由について、ジョセフ・コシンスキー監督は「劇中でジャックとジュリアは“もっとシンプルな世界に戻りたい”と願い、この絵画がそれを象徴している」とインタビューで語っています。 病弱のため限られたエリアでしか暮らすことができなかったワイエスは、足が不自由ながらも自分の足で生きるクリスティーナの姿に心を打たれたと言います。 記憶を消され存在を押しつぶされそうになっても、自分の意志で生きようというジャックの決意。不自由な世界でもやりたい事をして幸せに生きて欲しいという、ジャックがジュリアに遺した思い……。本作に込められたメッセージが感じ取れる絵画ですね。

AD

衝撃のエンディングが奥深い……観客の評価はいかに

この作品のエンディングは、物語の主人公であるジャック(49号)がテットもろとも死亡した数年後、ジャック(52号)が現れて終わるというもの。モノローグ風のナレーションでは「僕は彼だ」という52号の声が流れます。 このご都合主義的なエンディングは賛否が分かれているところで、確かに一見すると「そんなうまい話があるか!」と言わせるような展開です。 しかし、このエンディングが本当にハッピーエンドなのか考察しがいがあるという意味で、奥深い作品だとも言えるでしょう。 そもそも、ジャックのクローンが作られてから60年という月日が経っているのに、49号が本物である可能性はどれほど考えられるのでしょうか?49号というクローンの中にジャックの人格が見つかった場合、52号にも人格が芽生える確率はないのでしょうか? そう考えるだけでも、色々な可能性が見えてきます。

結末を理解するカギは「クローンの人格問題」にあり!

本作のエンディングについて考える上で、どうしても引っかかるのがクローンと人格の問題です。 そもそも、クローンとオリジナルの人格が一致することはあるのか?大量生産されたクローンに、それぞれ違う人格が備わることはあるのか……?映画『オブリビオン』の衝撃の結末は、哲学的な問いに繋がるテーマを含んでいるのです。 人格を持ったクローンの切ない運命を描く映画は、これまでにもいくつか存在します。カズオ・イシグロの小説を原作とした映画『わたしを離さないで』(2011年)では、臓器提供のために造られた人格を持つクローン人間が描かれました。 しかし本作に登場するクローンの場合、各クローンがどれほど人格を持っているのかなどをあまり詳細に描いていないのがポイントです。“よくわからない”からこそ考えさせられる効果的な演出なのではないでしょうか?

AD

映画『オブリビオン』は緻密に作り込まれたSF大作だった

本作のタイトル『オブリビオン』の意味は「忘却」。記憶のない主人公が、微かに残る記憶と人の言葉から真実へと行き着くストーリーです。 疑いもしなかった日常が全て嘘だったことに気づき、忘れていた記憶を取り戻した主人公ですが、その上自分自身も偽物であると知ります。果たして本作は、ハッピーエンドなのでしょうか?ぜひもう一度映画を観直して、じっくりと考えてみるのも良いかもしれません。