2021年2月19日更新

「オタク」が主人公の映画6選!“異質”から“共感”へ 時代とともに変化するオタク像【2000年代〜2020年代】

『あの頃。』
© 2020 『あの頃。』製作委員会

松坂桃李がハロオタに扮する映画『あの頃。』が、2021年2月19日に公開!今回ciatr[シアター]では、オタクが主人公の映画を時代ごとにまとめました。そこから見えてきたのは、時とともに変化する“オタク像”のあり方でした。

ドルオタ、アニオタなど「オタク」が主人公の映画から、社会の変化を考察!【『あの頃。』で松坂桃李がハロオタに】

『あの頃。』
© 2020 『あの頃。』製作委員会

松坂桃李が「ハロー!プロジェクト」、通称「ハロプロ」アイドルのオタク(=ハロオタ)を演じることで話題の映画『あの頃。』が、2021年2月19日に公開されます。 原作は、バント「神聖かまってちゃん」の元マネージャーにして、ベーシスト、漫画家でもある劔樹人(つるぎ みきと)の自伝的コミックエッセイ。監督は今泉力哉が務め、どん底の日々を送る主人公がアイドル活動にハマり、仲間たちと青春を謳歌する姿を描きます。 ciatr[シアター]では、本作の公開を記念して、オタクが主人公の映画を年代ごとに取り上げ、オタクの描かれ方の変遷をたどりました。近年、サブカルチャーから表舞台に引き上げられたオタクたちは、どのような存在として認識されてきたのでしょうか?

2000年代のオタク映画:ちょっと“異質”な男たちのイメージ

アキバ系オタク青年が2ちゃんねるで恋を実らせる『電車男』(2005年)

人付き合いは苦手だけれど、好きなものには一直線な愛すべき「オタク」。そんな主人公を山田孝之が熱演し、彼らの存在を世に知らしめました。 山田が演じたのは、システムエンジニアのオタク青年“電車男”。彼女いない暦22年の彼は、電車で助けた女性・エルメスとの恋に悩み、ネット掲示板に助けを求めます。現実世界では交わることのない、様々な職業の同志に励まされ、エルメスとの距離を縮めていくのでした。 原作は、2ちゃん(2ch)こと「2ちゃんねる」で恋愛相談した人の実話をもとにした、中野独人の同名小説で、インターネット草創期の空気を味わえます。当時ネット掲示板にかじりついていた世代は、特に刺さる映画ではないでしょうか。

ドルオタの集いからサスペンスに『キサラギ』(2007年)

古沢良太によるオリジナル脚本を、佐藤祐市監督が映画化した『キサラギ』(2007年)。 B級アイドル・如月ミキの追悼イベントをきっかけに、匿名のファンサイトを通じて、5人の男がとあるペントハウスに集いました。彼らはアイドルを愛するオタク(=ドルオタ)で、今は亡き“推し”の良さを語り合います。そうするうちに如月ミキの死に他殺の線が浮上し、それぞれが推理を繰り広げ始めるのでした。 そんな異色サスペンスとしての面白さはもちろん、小栗旬、小出恵介や香川照之ら豪華キャストが展開する“オタクの会話劇”にも注目です。5人のノリがドルオタそのもので、同志なら親近感を抱くこと間違いなし!そういう意味では、『あの頃。』と近い雰囲気かもしれません。

2010年代のオタク映画:オタクイメージが多様化 “腐女子”にもスポット

クラゲをこよなく愛するオタクアパートの住人『海月姫』(2014年)

東村アキコの人気漫画を、のん(当時:能年玲奈)の主演で映画化したラブコメディ。菅田将暉演じる美しき女装男子や、作中に登場するオタクネタが話題になりました。 本作の舞台は、男子禁制で入居者全員が腐女子という異色のアパート。そこで暮らす主人公・倉下月海は、クラゲを何より愛する「クラゲオタク」の女子です。彼女と女装男子の不思議な友情、そしてアパートの住人「尼〜ず」たちとの友情が描かれました。 1つ屋根の下に住むのは、三国志オタクに鉄道マニア、枯れ専(中年男性を好む趣向)、ドールマニアなどなど、従来のイメージを覆す多種多様なオタクたち!「オタク」という言葉自体、2次元やアイドルなどに傾倒する人以外に、「ひとつのジャンルにハマる人」を意味するようになってきました。 オタクの描かれ方も、2000年代のオタク映画に見られる“ちょっと変わった奥手な若い男性”というイメージから、腐女子をはじめとする多様なオタクイメージへと変化を遂げていきます。

地下アイドルに沼る中年ドルオタ『墜ちる』(2016年)

2016年に「第6回きりゅう映画祭」で初公開された、中村まこと主演の短編映画『墜ちる』。群馬県・桐生市を舞台に、無口な中年の織物職人・耕平がドルオタ化する様を描きます。 ファンとの距離が近いだけに、沼ると恐ろしいのが「地下アイドル」という存在です。娘ほどの年の差がある「めめたん」に恋した中年男性の末路を映画のなかで目撃し、世のドルオタは震かんしました。散りばめられた“あるある”や、めめたんを現役アイドルの錦織めぐみが演じたことも相まって、耕平の墜ちっぷりが何とも生々しい! “推しは生きがい”をそのまま表現したようなストーリーで、めめたんに墜ちる耕平を不幸と思うか、幸せと思うかは観る人次第でしょう。この頃は、キャラクターやアイドル、声優などに本気で恋をするオタクを指して、「ガチ恋勢」という言葉が使われ始めました。

2020年代のオタク映画:オタクたちの“共感”がヒットのカギに

隠れ腐女子×重度のゲーオタ『ヲタクに恋は難しい』(2020年)

『ヲタクに恋は難しい』山﨑賢人 高畑充希
©2020映画「ヲタクに恋は難しい」製作委員会 ©ふじた/一迅社

投稿サイト「pixiv」で人気を獲得し、のちに書籍化・アニメ化もされたふじたの同名漫画を、高畑充希と山崎賢人の共演で映画化。 「ヲタ恋」の通称で親しまれる本作は、同人誌を制作する隠れ腐女子・桃瀬成海と、重度のゲームオタク・二藤宏嵩の恋愛模様を描いた作品です。「行こうか、戦さ場へ」とコミックマーケットに向かう成海の姿に、首が取れるほど頷いてしまうでしょう。そう、コミケは戦場なのです。 成海が腐女子であることを理由に彼氏に振られ、職場で「ステルスオタク」を演じているという設定は、似たような経験のあるオタクたちから共感を呼びました。その一方で、福田雄一監督による内輪的なノリやミュージカル調にしたことは賛否を呼び、原作の方が良いという声も。 また共感とは違い、「こんな趣味もテンポもあう、しかも見た目も結構いいオタクカップルとかずるい」という、リアルオタクの本音も聞こえてきました。 2020年代のオタク映画では、オタクが単に「描かれる者」ではなく、実際に作品を観る「観客」であることが想定されはじめ、従来よりも“共感”がヒットの鍵となってきたようです。

オタク女子が推しの死のショックで美少女化?!『私がモテてどうすんだ』(2020年)

累計発行部数300万部を突破し、アニメ化もされた人気漫画が原作の「わたモテ」(2020年)。自分の恋よりも、イケメン同士のカップリングに萌える腐女子がヒロインです。 日々BL妄想を楽しむ芹沼花依は、アニメの推しが死んだショックで体重が激減した結果、美少女に大変身してしまいました。主演の北野北斗、神尾楓珠や伊藤あさひ、奥野荘らが演じるスーパーイケメン4人から突然モテまくり、リアル乙女ゲーム的な展開に! 山口乃々華(減量後)、富田望生(減量前)演じる花依が、萌えのあまり「ありがとうございます!!ありがとうございます!!」と床を転がる姿は、オタクたちには共感しかありません。「ヲタ恋」でも取り入れられた、ニコニコ動画風のコメントが流れる演出も好評。 2000年代後半ごろからYouTubeやニコ動、SNSなどのサービスが広く普及してきたことで、オタク文化のメインストリーム化に拍車をかけました。こうして後の作品には、これらのネット文化にちなんだネタが登場し始めたようです。

「オタク」はサブカルチャーからメインストリームへ “彼ら”から“われわれ”へ

『あの頃。』
© 2020 『あの頃。』製作委員会

2000年代の映画で描かれた「オタク」は、内輪で盛り上がるちょっと異質な(主に男の)人たちというイメージでした。しかしオタクの交流の場が、アングラ的な掲示板やファンサイトから、より開けたSNSや動画投稿サイトに移るにつれ、「オタク」という言葉の意味も広がりました。 オタクが多様化し、2010年代のオタク映画では、腐女子をはじめとする様々なジャンルの女性オタク、そして中年のドルオタも登場。性別や年齢に関係なく、好きなものに没頭するオタクたちが描かれるようになります。 そして2020年代からは、“共感度重視”のオタク映画が公開され、次々と話題になっています。サブカルチャーからメインストリームへ。2021年のオタク映画『あの頃。』は、どんなオタク像を見せてくれるのでしょうか?