2022年10月26日更新

漫画『ダーウィン事変』あらすじから最新巻のネタバレまで!ヒューマンジーだからこその言葉に重みがグッとくる

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『ダーウィン事変』は人間とチンパンジーの間に生まれたヒューマンジーを通して今の社会を描き出すうめざわしゅんの作品。マンガ大賞2022の大賞を受賞した本作のあらすじや見どころをネタバレありで紹介します。

うめざわしゅん『ダーウィン事変』のあらすじ【祝!マンガ大賞2022受賞】

人間とチンパンジーのハーフ「ヒューマンジー」がテロ組織と戦う

主人公のチャーリーは人間とチンパンジーの間に生まれた地球上で唯一の「ヒューマンジー」の個体です。人間でもチンパンジーでもない、同時に人間でもありチンパンジーでもある。そんな特異性を持つ彼は平穏なスクールライフを送ろうとしますが、世界がそれを許しません。 巷では過激派の動物保護団体「動物解放同盟(ALA)」が次々とテロ行為を起こしています。ALAはヒューマンジーであるチャーリーをテロ活動のリーダーに引っ張り出そうと行動を開始。 チャーリーはヒューマンジーであるがゆえに、テロを発端とした一連の騒動の渦中の存在に。チャーリーを中心に、混沌とした社会の中で多様な価値観が描かれていく社会派ヒューマンジードラマです。

過激派の動物愛護団体やヴィーガンなど設定が今どき

社会派と紹介したように、本作では過激派の動物愛護団体やヴィーガン、アニマルライツ(動物の権利)について掘り下げられています。人間とその他の動物との間の線引はどこにあるのか、両者の違いをどう捉えるべきか。 ヴィーガン専門店が増えるなど世界的にも広がっているヴィーガニズムを、漫画でここまで扱っている作品は他にそうありません。そういった思想を“良い悪い”といった単純な視点で描いているわけではなく、両者の主張を織り交ぜながら、読者が考える余地を残しているのも本作の特徴です。 言葉だけ知っているけど深くは知らない人も少し興味があるという人も、すでに実践している人にとっても、今の時代だからこそ考えたいテーマが本作には詰まっています。

「人間(ヒューマン)なのってどんな感じ?」考えさせられる台詞の数々

基本的に人間は人間の尺度でものを考えます。そこに一石を投じるのが、世界で唯一の個体であるチャーリーの言葉です。 彼は「ヒューマンジーなのってどんな感じ?」と聞かれ、「人間(ヒューマン)なのってどんな感じ?」と聞き返します。こう問われ、ハッとする人も多いでしょう。 またチャーリーはヴィーガンの家庭で育ちました。反ヴィーガンの生徒に、動物の種を差別しないというなら、致死の病原菌を持つネズミが襲ってきたらどうするのかと問われます。 チャーリーは自分が死んでしまうからネズミを殺すと回答。加えてその病原菌を持つのが人間でも撃ち殺すと言います。 ヒューマンジーの立場から発せられる言葉は重く深く、読者を思考の海に誘うでしょう。

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表紙を見て「なに!?」って思ったけど、なるほど。これはガチですごい系の漫画。シリアスだけど押し付けがましくない。たまにはちゃんと権利とか価値観について考えてみようかなって思わされた。

漫画『ダーウィン事変』のあらすじをネタバレ

1巻

ヒューマンジーの穏やかでないハイスクールライフの幕開け

15年前、「動物解放同盟(ALA)」が襲撃した研究所にいたメスチンパンジーは、人間とのハーフの「ヒューマンジー」を産みます。チャーリーと名付けられた彼は15年後、高校へ編入。 育ての母は“普通の高校生活”を送るよう念を押しますが、良くも悪くも目立ってしまうチャーリー。そんな中、女子生徒ルーシーと知り合います。話す内にチャーリーを“1人のチャーリー”として興味を持ってくれるルーシーを、彼は気にいるのでした。 NYではALAがテロを起こし、ヴィーガンへの風当たりは強くなる一方。15年前ALAがチャーリーを助けたこと、チャーリー自身もヴィーガンであることから、周囲はチャーリーがALAに関与していると疑いの目を向け始めるのでした。

テロ組織ALAとチャーリーがついに直接対決

ALAは秘密裏にチャーリーをリーダーに据えようと動き始め、その魔の手はチャーリーの育ての親やルーシーへと向けられます。手練な戦闘員の襲撃も、超人的な身体能力でチャーリーが一掃しますが、ルーシーは不安を消せません。 そこでチャーリーは彼女の不安を拭うため、単身ALAのアジトに乗り込みます。そこでALAのリーダーで裏で糸を引いているマックスと対峙したチャーリー。切れ者で裏を感じさせるマックスは、チャーリーを必要以上に特別視しており、あらゆる手を使って彼を手中に収めようとしている様子です。 マックスはチャーリーの説得に応じ自首する振りをして逃亡。逃亡時に仲間を刺したマックスは、その罪をチャーリーに被せ姿をくらまします。

『ダーウィン事変』1巻を

2巻

ヒューマンジーの権利は存在しない

無実の罪で勾留されたチャーリー。彼はヒューマンジーであるため人権が認められず、権利上は物の扱いなのです。保護されるべき人権を持たないため、面会すらもできません。 加えて彼は10年前、同級生とのトラブルで自己防衛反応が働き、超人的な力で複数の保安官たちを1人で倒した過去がありました。当時現場に居合わせたフィルを筆頭に、警察は彼を危険視しているのです。 動物全体の権利について法整備を進めたい下院議員リナレスの働きかけのおかげで、10年前の一件は表沙汰にならず、代わりにチャーリーは10年間敷地内から出ることが許されませんでした。 今回もリナレスのおかげで釈放されましたが、チャーリーの権利獲得への道が遠いことを両親は実感します。

学校でテロが発生!そのときチャーリーは?

チャーリーの権利獲得のためルーシーは学校での友達作りを提案。そんな折、ALA支持派の生徒ゲイルがマックスに目をつけられます。ゲイルはマックスに誘導されて学校で銃乱射事件を起こしました。 チャーリーは淡々と助かる可能性の高い個体を回収して警察に引き渡しますが、ルーシーの身を案じゲイルと対峙する彼女の元に駆けつけます。テロの様子は動画サイトで配信されており、警官に包囲されたゲイルは「ALAはチャーリーを待っている」と言い残して自害しようとしました。 その瞬間、ルーシーに言われて大人しくしていたチャーリーは、本能的にゲイルを蹴り飛ばし死ぬのを阻止。その様子を映像で見ながら、マックスは「これでいい」と笑うのでした。

『ダーウィン事変』2巻を

3巻

ルーシーに伸びるALAの魔の手

銃乱射事件の余波は各地で拡大。近隣住民は一家に出ていくよう迫り、FBIもその動きを利用してチャーリーを消そうとします。 八方塞がりの中、ルーシーからメッセージを受け取ったチャーリー。そこには「名誉人間」の文字があり、送り主が彼女ではなくマックスだと確信した彼は家を飛び出します。 マックスは先のテロで、チャーリーにとってルーシーが単なる1個体ではないことを確信したため、必ず彼が助けにくると踏んでいました。目覚めたルーシーは、マックスに本当の目的を問います。 マックスの目的は人間をもっと早く先に進めること。彼いわくヒューマンジーはダーウィンが論じたパラダイムシフトを加速させる存在で、先に進むために動物の解放をしようとしていたのです。

大事なホームを失ったチャーリーは……

一方でチャーリーは次々と戦闘員を倒しアジトへ向かいます。その道中、ALAへ勧誘された彼は「ボクはこの世界に対して全然なんの責任も感じない。だって勝手に放り込まれただけだから」と言い切るのでした。 マックスは15年前、チャーリーの生物学上の父・グロスマン博士が母体救出を依頼してきたことを明かします。そこにルーシーの機転で拉致に気づいたフィルが到着。一件落着したかに思えましたが、ルーシーはマックスの本当の狙いがチャーリーにとっての「巣」である両親だと気づきます。 燃え盛る家からチャーリーは燃える前に殺された両親の遺体を回収。自己防衛モードとなったチャーリーは現場から逃走し、アジトでは確保されたはずのマックスが警官を倒して姿を消しました。

『ダーウィン事変』3巻を

漫画『ダーウィン事変』の評価・感想

総合評価
4.5

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20代女性

「人間なのってどんな感じ?」っていうチャーリーのセリフが頭の中をぐるぐる。人間だから人間以外の視点を持っていないのは当たり前なんだけど、ヒューマンジーであるチャーリーの言葉でドキッとさせられることが多い。1巻はチャーリーがマーベルもののヒーローっぽさもあり軽快。テロや事件が身の回りで起こり始める2巻からは社会派な作風が濃くなって、3巻のラストの展開でまたエンタメものとして面白さが加速。バランス感覚もさすがで続きが楽しみ!

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ライターS

見て見ぬふりをしてきた部分、考えることすらしようとしなかった部分に、強制的に目を向けさせられる強烈な作品。扱っているテーマは重いが、チャーリーが良くも悪くも淡々としているので読みやすい。逆にそれが怖くもあるけど…。3巻でマックスの目的が明らかになるが、いまいち理解できていない。そこがもう少し噛み砕けるともっと楽しめる予感!理解の追いつかない脳みそが悲しい…!

今考えたいテーマが詰まった意欲作『ダーウィン事変』は読まなきゃ損!

各方面で話題の『ダーウィン事変』を紹介しました。正解のない価値観を、人間とチンパンジーのハイブリッドであるヒューマンジーの存在とともに掘り下げていく本作は、持続可能な社会が叫ばれる今の時代に考えるべきテーマが多数内包されています。 この難しいテーマに対して、チャーリーはどんな結論を導きだすのか。動き始めたばかりの『ダーウィン事変』の今後に注目です!