【ネタバレ】『チ。地球の運動について』最終回まであらすじ解説!どこまで実話なのかを考察
『チ。地球の運動について』の作品概要・あらすじ
作者 | 魚豊(うおと) |
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巻数 | 8巻(完結済) |
『チ。地球の運動について』は、2020年から『ビッグコミックスピリッツ』で連載されていた青年漫画です。15世紀のヨーロッパを舞台に、知的探究心とロマンに駆られた人間の人生を描いています。2022年に完結し、アニメ化も発表されました。 「マンガ大賞」や「このマンガがすごい!2022」など数々の賞にノミネートした人気作で、「手塚治虫文化賞」ではマンガ大賞を受賞しました。シリーズ累計発行部数は250万部を超えています。
漫画『チ。地球の運動について』のあらすじ
本作の舞台となるのは、15世紀前半のP王国。ここには神を強く信仰するC教という宗教が根付いており、その理念に反する者を尋問する「異端審問官」たちが存在していました。 この作品に描かれるのは、彼らに弾圧される「異端者」となりながらも、地動説を信じ続けた人々の物語。話が進むごとに主人公が変わっていく、地動説を軸とした歴史群像劇になっています。
- C教が公認する「天動説」を否定するため
- 「神が地球を宇宙の中心にした」という教えに反するため
- C教への反抗は「神に背く」ことを意味し、天国への道が閉ざされるため
『チ。地球の運動について』登場人物紹介
地動説
フベルト(第1章) | 異端思想の研究により捕まっていた人物で、「地動説の資料」を残した張本人。初見のラファウを怯えさせるほど体が大きく、異形な容姿をしている。 |
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ラファウ(第1,3章) | 本作品の主人公の1人。12歳で大学に進学するほどの神童で、常に合理的に生き合理的なモノに美しさを感じている。フベルトから「地動説の資料」を託され、数奇な運命に巻き込まれてしまう。 |
オクジー(第2章) | 超ネガティブ思考の代闘士。優れた視力を持つが早く天国に行きたいと思っている。長髪を後ろでまとめた髪型が特徴。異端者の輸送警備中、紆余曲折あり「地動説の資料」を預かることになる。 |
バデーニ(第2章) | 卓越した頭脳を持つ修道士。教会の規律に従わなかったため、眼を焼かれ田舎に左遷された。作中ではオクジーと出会い「地動説の資料」を引き継ぐも、教会にその在り処を告白してしまう。 |
ヨレンタ(第2,3章) | 天文研究助手。女性だからという理由で研究させてもらえずに絶望している。能力の高さは施設有数。 |
ドゥラカ(第3章) | 幼少期に両親を亡くした少女。黒髪のポニーテールが特徴的。オクジーが記した「地動説に関する手記」を偶然にも発見し、そこから地動説と深く関わることになる。 |
アルベルト(第3章) | パン屋で働く青年。天体観測が好きで頭脳も優秀だが、知的探究心を悪とし大学進学も断っている。のちにドゥラカが残した本「地球の運動について」の題名を聞き、地動説に興味を持つ。 |
天動説
ノヴァク(第1〜3章) | 元傭兵の異端審問官。仕事と割り切り異端者に拷問や処刑をおこなう。常に気怠げで眠そうな所作が特徴的。 |
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ピャスト伯(第2章) | 宇宙論の大家。親族から除け者にされている貴族で、「天動説」の証明に人生を捧げている。 |
【1~7巻】「チ。」最終回までのネタバレあらすじ
【1巻】ラファウの物語
地球が宇宙の中心であり、地球を中心に星が動いていると信じる15世紀のP王国。この国では天動説を公認するC教という宗教が繁栄しており、その考えに背く者は異端者として罰せられてしまいます。 神童としてスマートに生きてきたラファウは、異端者として捕まっていたフベルトから、教えにも常識にも背く「地動説」の美しさを説かれました。最初は理論的に否定していた彼ですが、徐々に信憑性の高さと美しさに惹かれ異端思想に傾き始めてしまいます。 そんな中、2度目の逮捕で死刑となったフベルトから、ラファウは研究材料の焼却を頼まれることに。彼は言われた通り焼却を開始しますが、次の瞬間には火を消し目の前の資料を守っていました。 彼はこれまで規範としてきた「理屈」よりも、自身の中にある地動説を信じたいと思う「直感」に身をゆだねることを選択。そして進むべき神学の道を捨て、ラファウは異端思想を持ちながら天文の道へと進んでいくのでした。 しかし、フベルトの研究を引き継いだラファウは、脅された義父に密告され異端審問官のノヴァクに捕まってしまいます。裁判で地動説を信じるとハッキリ宣言した彼は、拷問を受ける前に毒を飲み自殺する道を選びました。 彼は「地動説の資料」の場所を明かさず守り切るため、そして自身の中にある「地動説への感動」を守るため死を選択したのです。隠し持った薬を飲み込んだのち、彼の体は火あぶりにされてしまいます。その詳細な描写はなされず、ラファウの物語はあっさりとその幕を閉じてしまうのでした。
【2~5巻】バデーニの物語
ラファウが火にかけられてから10年後、偶然にも「地動説の資料」を預かることになった青年オクジー。彼は異端の修道士バデーニと天文の研究に打ち込む少女ヨレンタと協力し地動説の研究を進めていきます。 バデーニを中心に研究へ取り組んでいき、彼らはついに地動説を完成させました。しかし、ここで衝撃の事実が発覚します。なんとヨレンタの父は、ラファウの捕縛にも関わっていたノヴァクだったのです。 通報を受けた彼はバデーニたちを調査し、自身の娘に近寄った不届きものとして厳しい尋問を開始します。バデーニはそこで「資料は燃やした」と証言しますが、目の前で拷問されるオクジーの姿を見かねて隠し場所を告白してしまいました。 結局資料は教会側に見つかり、バデーニたちは絞首刑に。ここで地動説の物語に終わりが来たか……と思われましたが、バデーニは協力者を募り、オクジーが記した「地動説に関する手記」を復元できるよう手配していました。 また、異端疑惑をかけられたヨレンタも何とか逃亡することに成功。ただ、表向きは処刑扱いとなったため、ノヴァクは娘が死んだと思い込み悲しみに暮れるのでした。
【6~8巻】ドゥラカの物語
金稼ぎにのめり込む少女ドゥラカは、偶然にもオクジーが記した「地動説に関する手記」を手に入れました。しかし、この本はC教と対立する組織「異端解放戦線」の所有物で、メンバーたちに本を渡すよう詰め寄られてしまいます。 ここでドゥラカは、本を燃やすというとんでもない行動を選択。彼女は地動説で一儲けするために「書かれた内容を覚えている」とアピールし、異端解放戦線の本拠地まで同行することに成功しました。 そこで戦線のボスと出会うのですが、その正体が異端疑惑から逃げ延びたヨレンタだと判明します。彼女はドゥラカから手記の内容を聞き取り、それを印刷するための型を制作しました。 そんな中、ノヴァク率いる異端審問官たちが戦線の本拠地へ襲来します。ヨレンタは自らの命と引き換えに「手記の型」を守り、印刷された本の運命はドゥラカへ託されることに。彼女はノヴァクの攻撃により負傷するも、死の間際に手記に関するメッセージを預けた伝書鳩を放ちました。 その一方で、ノヴァク自身も致命傷を受け、燃え盛る教会に閉じ込められてしまいます。彼はそこで「地動説が異端思想ではない」という衝撃の事実に辿り着き、自身のおこないを悔やみながら「娘が天国へ行けるように」と最後の祈りを捧げるのでした。
【8巻】「チ。」最終回のネタバレあらすじ
1470年のポーランド王国に、アルベルトと名乗る少年がいました。彼は聡明で天文が好きですが、知的好奇心を悪としています。理由は幼い頃に家庭教師として世話になったラファウと、自分の父が知的好奇心を理由に争うのを見ていたからです。 結局ラファウは父を殺してしまいました。なんと第8巻では、第1章の主人公であるラファウが青年となり再登場する驚きの展開が描かれているのです。 それを告解室で懺悔したアルベルトは、司祭から優しく助言を貰い大学への進学を決意します。「アルベルト・ブルゼフスキ」の名で登録した彼が空を見上げていると、耳に『地球の運動について』という本の名前が入ります。 その後アルベルトは大学の教員として、20年以上も教え続ける活躍を果たします。そんな彼の生徒には、「コペルニクス」の名前もあるのでした。
【考察①】ラファウは死亡していなかった?少年と青年は同一人物?
少し難解な部分もあり、読者の中でも賛否が分かれた最終回。読者が何よりも驚いたのは、1巻で死亡したはずのラファウの再登場でしょう。 普通であればラファウは生きていたと考えますが、自殺した彼にノヴァクが火をつける描写もあるのでそれはまずありえません。また7巻までの舞台は、常にP王国です。しかし8巻ではポーランド王国と明記されており、舞台も現実世界に移っています。 以上の要素から、7巻までの世界と最終回の世界は別世界、いわゆるパラレルワールドであると考えるのが妥当でしょう。最終回で名前が登場しているコペルニクスや、最後のメインキャラであるアルベルトは、実際に存在した人物です。そのため最終回の世界がというより、7巻までの世界が現実のパラレルワールドなのでしょう。 7巻までは神を信仰している人間が、真理を追い求めている人間を次々と殺しています。一方の8巻では、真理を追求するラファウが知的好奇心から人を殺めていました。作者は最終回でこの対比を見せ、人間の本質は簡単な善悪で片付けられないと示したかったのではないでしょうか。
【考察②】アルベルトとは何者?実在したのか?
7巻の表紙で描かれた人物。彼が7巻では登場しなかった事実に、読者は衝撃を覚えました。8巻でやっと初登場を果たした彼の名はアルベルト・ブルゼフスキで、作中最後のメインキャラクターです。 実はアルベルト・ブルゼフスキは、実在した人物でもあります。数学と天文学を主に教えていた大学教授で、後に地動説を立証するコペルニクスの師匠でした。 作中でのアルベルトは他のメインキャラのように、異端として拷問を受ける描写もありません。彼はラファウと関わりを持ち学びに疑問を持っていただけで、その後は史実通りの人生を送りました。アルベルトはラファウの変化から始まった『チ。地球の運動について』と、現実世界の架け橋になったのです。
なぜコペルニクスについて描かなかったのか
『チ。地球の運動について』はアルベルトの話で終了しており、地動説立証の立役者であるコペルニクスに関しては描かれませんでした。この終わり方から打ち切りだったのではと口にする読者もいます。 しかし魚豊は天動説から地動説に移行し知の感覚が変わる瞬間が面白く、漫画にしたいと思ったと語っています。つまり彼が漫画の主題にしたのはあくまで逆境の中にある移行期間であり、コペルニクスの登場前でストーリーは完結していたのでしょう。 そう考えるとたしかに表の立役者ではなく、影の立役者をパラレルワールドで描いたからこその熱さがありますね……!
【考察③】告解室にいた司祭の正体
アルベルトが告解室で懺悔した際、司祭が自分の過去を語る描写があります。彼は昔取り返しのつかないことをした友人の命を見捨てたとのこと。 5巻にて異端者であったオクジー、バデーニと仲良くしていたヨレンタが、捕まり拷問を受けさせられます。しかし正義感の強い新人異端審問官の1人が、彼女を逃がしました。結局その逃した異端審問官がヨレンタの代わりに処刑されてしまいます。司祭はこの異端審問官の同僚だったのでしょう。
「チ。」に込められた意味
「チ」には「知(知性)」「血(暴力)」「地(地動説)」の、3つの意味が込められています。魚豊は地動説を題材にすると決める前、知性と暴力をテーマにした漫画が描きたいと決めていました。「知と血」だと思っていた中で題材が「地動説」に決まり、これは「チ」しかないと思ったそうです。 また「。」も漫画のタイトルに付く文字としては、相当珍しいですよね。この句点には地球を表す「丸」と、「止まっていたモノが動き出す」という意味があります。
『チ。地球の運動について』は史実に基づいている?
『チ。地球の運動について』は史実に基づいた内容ではありません。 作中で登場している国は架空の王国ですし、登場人物もアルベルト以外は実在しない名前です。またコペルニクス登場以前の実際の世界では、作中のように地動説が迫害されていた歴史もないのです。 最終回にポーランド王国と国名を出しパラレルワールドだと印象付けているシーンからも、実際の歴史とは異なる物語なのがわかりますね。本作はあくまでフィクション作品として楽しみましょう!
『チ。地球の運動について』の最終回に対する感想
『チ。地球の運動について』の最終回は突如世界線が変わったため、混乱してしまった読者も多かった様子。多くの人を楽しませていただけに、評価が分かれるラストだったようです……!
最後の最後まで最高でした!史実とは違うパラレルワールドの物語だったけど、だからこそ熱いストーリーが生まれた。現実にも繋がる「地動説」がテーマなので、最終話でのリンクのさせ方は見事でした。
(30代男性)
誰もが知るコペルニクス以前の物語を創作で描いたからこその面白さだったと思います。コペルニクス登場の直前で完結したのは、良い終わり方だと思いました。もしかしたら本当に表に出ない影の天才たちがいたのかな……。
(20代男性)
ドゥラカとノヴァクの戦いまでは熱い気持ちでグワーっと読めた!でも最後に知らない人が出てきて、さらに1巻で死んだはずのラファウまで登場して大混乱。ラファウは生きてたの?ラファウが人を殺した?難解です……!
(20代女性)
『チ。地球の運動について』の最終回(8巻)は評価が分かれる内容だった
多くの読者を楽しませながら、8巻で堂々の完結を迎えた『チ。地球の運動について』。読めば感想を言いあいたくなる、知的好奇心をくすぐる傑作だったのは間違いないでしょう。 想いを繋ぐ彼らのストーリーは、どのようにアニメ化されるのか。物語をおさらいしながら、アニメの続報を待ちましょう!