2025年1月23日更新

『チ。ー地球の運動についてー』ノヴァクは死亡した?それとも生きてる?異端審問官の最後について解説

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『チ。』 表紙
©魚豊/小学館

『チ。ー地球の運動についてー』は、「地動説」をめぐる人々のドラマを描く壮大な物語です。自分の信じるもののため突き進む者たちの姿に胸がアツくなります。 本記事ではそんな本作の重要キャラのうちのひとり・ノヴァクについて紹介。おもに彼が最後どうなったかを解説しているので、気になる人はぜひチェックしてみてください。 ※この記事は『チ。ー地球の運動についてー』の重大なネタバレを含みます。

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『チ。ー地球の運動についてー』ノヴァクのプロフィール

立場 異端審問官
初登場 1巻1話
モデル アドルフ・アイヒマン

ノヴァクは異端者を拷問したり処刑したりする「異端審問官」で、立ち位置としては地動説を追求する人々の敵になります。元傭兵という経歴の持ち主であり、頭が切れるうえに残忍さも持ち合わせており、非常に厄介な存在です。 彼は地動説を根絶やしにすることが自身の使命だと信じており、そのためなら手段は選びません。そんな彼ですが、私生活では一人娘のヨレンタのことをとても可愛がっていて、彼女には自身の仕事のことを隠しています。

【最後】ノヴァクは炎に包まれて死亡

ノヴァクは第3部にて、アントニ司教から「地動説が異端だという根拠など存在しない」という衝撃的な事実を告げられます。実は地動説の迫害はアントニ司教の父親が私怨を理由におこなっていたもので、ノヴァクはそのために良いように利用されていただけだったのです。 絶望したノヴァクは司教を殺害し、次いで第3部の主人公であるドゥラクも手にかけようとしますが、逆に刺されてしまいます。 その後、自分が単なる「悪役」に過ぎない存在だったと思い知らされたノヴァクは、教会にみずから火を放ち、燃えさかる炎の中で死亡するのでした。最期を迎える前、自身が処刑した第1部の主人公・ラファウの幻と会話する場面では、思わず胸が締め付けられます。

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【実態】ノヴァクの行動は娘のためだけではない?

作中で、「我が子への愛が私の生きる理由です」「あの子にはつらい思いをしてほしくない」と語るノヴァク。異端審問官として働く彼の行動は、一見すべて愛する娘であるヨレンタのためのように見えますが、どうやら実際はそれだけではないようです。 ここでは、彼がどのような理由で異端審問官として残虐な行動を繰り返しているのかについて、ノヴァクの性格や娘との関係性などを考慮しながら徹底的に考察していきます。

間違いを肯定できなかったノヴァク

ノヴァクは娘であるヨレンタを心の底から愛しており、彼女には辛い目にあって欲しくないという思いから、「この世の平穏を乱すような研究を見過ごせない」と口にしています。しかし実際は娘のためだけではなく、自分自身の「不安」を解消するための行動でもありました。 そもそも、本作の主人公たちには「自分が間違っている可能性」を肯定する姿勢があります。実際に、2章ではオグジーがバデーニに対し、「自らが間違っている可能性を肯定する姿勢」が学問において大切であり、それこそが希望であるという話をしていましたね。 一方で、ノヴァクは、そもそも天動説を疑うことや教会側が間違っている可能性を考えることはせず、主人公たちとは対照的に描かれています。 その結果、ノヴァクは自身が悪役であることを最後まで認めることができずに死んでいきました。

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ノヴァクに見る「悪の凡庸さ」

「悪の凡庸さ」とは、ナチスの戦争犯罪について研究していたハンナ・アーレントの言葉です。彼女は、世界最大の悪は根源的なものではなく、思考や判断を停止し、ただ盲目的に規範に従う人々によっておこなわれた陳腐なものであることをそのような言葉で表現しました。 ノヴァクの1番の残忍さは「知ろうとしない」結果であり、自ら考えることをしないまま手を下していくさまは、「悪の凡庸さ」を彷彿とさせます。このように、ノヴァクの無思考や無関心な姿勢は、本作の主題である「知性」や「好奇心」と相対しており、ノヴァクが本作の「敵」である理由はここにあると考えられます。 その一方で、拷問という手段を躊躇なく選び取れるのは、盲目さだけではなくノヴァク自身にも要因があるといえるでしょう。

【ヨレンタ】ノヴァクの娘への想いが泣ける……

ノヴァクの娘であるヨレンタは「地動説」を支持しています。つまり父娘は敵対する立場にあったわけですが、ヨレンタはノヴァクの仕事についてずっと知らないままで、ノヴァクもその事実を知るのは最後の最後でした。 最終的にヨレンタは仲間のために「自爆」という手段を選び、その生涯を終えます。爆発の瞬間にノヴァクは一瞬何かを目撃し、その後爆発によって吹き飛んできた片腕を拾い上げることで、組織のトップが命を落としたことを知るのでした。 彼はここで初めて、自身が対立していた異端解放戦線のトップがかつて死んだはずの娘・ヨレンタであったことに気が付きます。ノヴァクが炎に包まれながら最期に祈ったことは、亡き娘が天国に行けますようにという父親としての願いでした。 父と娘はお互いをとても大切にしていた一方で、本当の意味で理解し合うことは最後までできなかったのです。

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【生きてる?】ノヴァクの死亡は間違いなし

ノヴァクは「チ。」における重要キャラであり、登場する期間が最も長いキャラクターでもあります。読者からの人気も高いので、その死亡にショックを受けた人も多いことでしょう。 すでに紹介してきた通り、ノヴァクは刃物で刺されたうえみずからが放った炎に包まれゆくという壮絶な最期を遂げています。その死は残念ながら確定しており、“実は生きていた”なんて展開もありえません。 主人公サイドの敵キャラとはいえ、長い間活躍しキャラも非常に立っている人物だっただけに、最後に絶望を味わい報われないまま死亡してしまったのは、なんだか悲しいですね。

『チ。ー地球の運動についてー』ノヴァクは壮絶な最期を遂げた…

自分なりの正義を追いかけ続けていたのに、最後は自身が「悪役」だと思い知らされたうえで死んでいったノヴァク。その壮絶な死には、悪役といえど思わず同情してしまいます。ぜひ本編も読んで、彼の生きざまを見届けてみてくださいね。