【ネタバレ】映画『かがみの孤城』あらすじを徹底解説・考察!オオカミ様と子どもたちの正体・時系列は?
映画『かがみの孤城』あらすじ
学校に居場所がなく部屋に閉じこもっていたこころ。ある日部屋の鏡が光り出し、そのなかには6人の子どもたちと「オオカミさま」と名乗る少女のいる不思議な城がありました。 オオカミさまは1年以内に城に隠された鍵を見つけることができれば、どんな願いも叶えてやるとこころたちに告げます。 不思議に思いながらも鍵を探しながら過ごす子どもたち。果たしてこの城はなんなのか。彼らはなぜ選ばれたのか。そしてオオカミさまは誰なのか。沢山の謎を抱きながら、物語は感動のラストへと動き出します。
【ネタバレ】『かがみの孤城』結末までのあらすじ
①学校に行けないこころ
引っ込み思案で大人しい性格のこころは、中学校へ行くことができなくなっていました。ある日、同じような境遇の子どもたちが通うフリースクール「心の教室」へ行き、喜多嶋先生という優しいカウンセラーと出会います。 翌日からこころはフリースクールへ行くつもりでしたが、お腹が痛くなり行けなくなってしまいます。部屋で1人で過ごしていると突然、部屋にあった大きな鏡が輝きだしました。吸い込まれるように手を伸ばすこころ。気づくと彼女は自分の部屋ではなく、大きな城がある見知らぬ場所にいました。
②オオカミさまと7人の子どもたち
こころは城の入り口で狼のマスクを被った女の子に声をかけられます。オオカミさまと名乗るその少女に無理やり引っ張られ城に入ると、そこには自分を含め7人の少年少女が集められていました。メンバーは中3のアキとスバル、中2のマサムネとフウカ、中1のリオン、ウレシノ、そしてこころです。 みんなが戸惑うなかオオカミさまが語りだします。来年の3月30日までにこの城に隠された鍵を見つけ出せば、どんな願いも叶えてやる、と。しかし1つルールがあり、城には日本時間の朝9時から夕方5時までしかいられない、とのこと。ルールを破れば本人とその場にいた者は、連帯責任で狼に食べられてしまうと言うのです。 訝しむ7人でしたが、その日から自分の部屋と城を行き来する奇妙な生活がはじまりました。7人はお城で時間をともにするうち、友情を育んでいきます。
③こころが学校にいけなくなった理由
そんなあるとき、ウレシノの指摘で、城の仲間たちはそれぞれ学校に行けていないことを告白します。リオンだけはハワイに住んでおり、学校にも行っていることが判明します。 みんなが似たような状況だと知り、城の友人たちに心をひらいたこころは、ある日自分の悩みを彼女たちに打ち明けました。 こころが学校にいけなくなった理由はクラスメイトによるいじめ。しかもいじめの原因は一方的な嫉妬でした。クラスの中心である美織は彼氏が昔こころを好きだったと知り、彼女をいじめるようになったのです。 こころと仲が良かったはずの萌もよそよそしい態度を取るようになり、味方がいなくなったこころは学校に行けなくなってしまいました。美織のいじめは学校にとどまらず、ある日こころの家にまで大人数で押しかけてきます。こころは恐怖にふるえていました。 城の友人に打ち明けたあと、こころは親にもこの出来事を全て打ち明けることができます。こころのお母さんは泣きながら、こころの味方になってくれました。
④もう1つのルールと7人の共通点
アキとリオンの提案で、こころたちは本格的に鍵を探すことになります。しかし城という居場所を失いたくない彼らは、「鍵を見つけても3月末まで使わない」と約束しました。 そんな彼らの前にオオカミさまが現れ、1つ言い忘れていいたことがあると言ってきます。それは「鍵を見つけて願いを叶えると、みんなここでの記憶を一切失くしてしまう」というもの。逆に誰も願いを叶えなければ、記憶は残るといいます。 あるときアキ以外の6人が城に集まっていると、広間の鏡からアキが飛び出してきます。彼女はひどく怯えた様子でしたが、6人はアキが着ている制服を見て驚きます。それは雪科第五中のもので、リオン以外の全員が同じ学校に通っているのでした。 するとマサムネが三学期のはじめに学校に行こうと思う、と言い出します。そしてみんな同じ学校なら、学校で会いたいと提案。こころは約束通り三学期のはじめに学校に行きますが、だれも来ていませんでした。それどころか、保健の先生に城の仲間たちと同じ名前の生徒はいない、と言われてしまいます。
⑤ルールを破ったアキちゃん
学校に行ったときに美織からの手紙を見つけ、萌とすれ違ったこころは、パニックになり倒れるように保健室のベッドで眠っていました。目が覚めると喜多嶋先生がおり、優しく励ましてくれます。その後、ショッピングモールで母と3人で話し合っていたとき、萌が転校することを知ります。 3月30日が近づき、こころは城のみんなとのお別れパーティーの準備をしていました。すると窓の外に萌がいるのを見つけ、彼女の家で話をします。こころが学校に来なくなってから、美織は萌をいじめの標的にしていたのです。萌はそのことを「バカみたい」と気にしていませんでした。こころは萌の家で見つけたある絵に鍵を探すヒントを見つけ、その絵を借りていきます。 しかしそのとき、部屋の鏡が割れ、城と繋がります。鏡のなかから、リオンがアキがルールを破って5時を過ぎても城に残ったことから、彼女と一緒にいたほかの5人も狼に食べられてしまうと言いました。 その日ただ1人城にいなかったこころは、鍵を見つけて皆を救おうと走り出します。6人それぞれが抱える傷を知りながら、こころはついに鍵を見つけ出し「アキのルール違反をなかったことにしてほしい」と言って、みんなを助けることに成功します。
⑥お城の秘密
7人はおたがいに違う時代の同じ町に住んでいたと知ります。最後の日、お互いの関係性を知ってより仲を深める7人。しかし願いが叶い城を離れるとき、彼らが持つ城での記憶は失われてしまうのです。 せめてもの思い出にと、城の壁にフルネームを刻む7人。長久昴、井上晶子、水守理音、長谷川風歌、安西こころ、嬉野遥、政宗青澄。 別れを惜しみながらみんなが自分のいた世界へ戻っていくなか、リオンはオオカミさまの正体は、自分の亡くなった姉だろうと言いました。そして彼女にこの城での記憶を残してほしいと頼みます。するとオオカミさまは「善処する」と言って仮面を外し、静かにほほ笑みました。 7人は城で過ごした記憶を心の底に収めながら、それぞれの道を歩み始めます。
エピローグ
フリースクールの井上先生は、結婚して姓が変わったため、「きたじま」と名札を作り直していました。その後、こころと面会を行います。 4月の新学期、こころは元気な足取りで学校に向かいます。通学路には日に焼けた男の子が。彼は「久しぶり」とこころに声をかけ、2人は一緒に学校へと歩き出しました。
『かがみの孤城』はその後どうなった?時系列を考察
物語終盤、7人の子どもは『7匹の子やぎ』になぞらえて集められていたことが発覚します。さらに彼らは全員、7年間隔で別の時間軸からやってきた人物でした。 しかし1ヶ所だけ例外があり、こころとリオンだけは同じ年からやってきています。またこころたちとアキの間は14年あいていました。 中間の「1999年」からやってきていたのはオオカミ様、つまりリオンのお姉ちゃんだったのです。
時系列と学校に行けない理由
1985年 | スバル 家族仲が悪くあらゆることに投げやりになってしまった |
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1992年 | アキ 部活動で周囲に厳しく接してしまいいつの間にか孤立。学校へ行きづらくなってしまった |
(1999年) | オオカミ様 リオンの姉のミオ。病気でずっと入院していたため学校に行けなかった |
2006年 | こころ クラスメイトの嫉妬によるいじめで学校に行けなくなってしまった リオン 病気にかかった姉のミオと雪科第五中に行きたいと願うも叶わず。ミオの死後、両親によって留学させられてしまった |
2013年 | マサムネ 嘘つきで周りから「ホラマサ」といじめられ仲間外れになってしまった |
2020年 | フウカ ピアニストを目指す。母からの過剰な期待に押しつぶされ心が壊れてしまった |
2027年 | ウレシノ 友達にご飯をよく奢っていたが、断った途端仲間外れにされてしまった |
7人の子供たちのその後を考察
城から戻った7人はその後、どうなったのでしょうか。 スバルは城でマサムネとゲームをし、その面白さを知ったことから、のちにゲーム開発者になります。クリエイターとしては、本名の「昴」の別名「ロクレンセイ(六連星)」にちなんで「ナガヒサロクレン」と名乗るようになりました。マサムネがハマっていたゲームを開発したのは、スバルだったのです。 アキはのちにこころたちを救うフリースクールの先生になりました。彼女の本名は「井上晶子」ですが、ラスト近くのシーンで、結婚して姓が変わったため「きたじま」と名札を作り直しています。 こころは新学期から学校に通いはじめます。登校途中でリオンと再会し、一緒に登校する2人。リオンはオオカミさまに「これからは嫌なものは嫌だとちゃんと言う」と約束した通り、家族と離れてハワイで暮らすのは嫌だと家族と話し合ったのでしょう。 また映画では描かれていませんが、マサムネは父の勧めで私立学校に転校したと思われます。ウレシノも劇中で話していたとおり、海外留学したのかもしれません。また、フウカは城でやっぱりピアノが好きだと思い直し、コンクールなどのプレッシャーがない程度にピアノをつづけたのではないでしょうか。 そしてオオカミさまは、リオンや学校に行けない子のために城を作ったのでした。
かがみの孤城が作られた理由
子どもたちが城を離れていくなか残されるオオカミさま。彼女にリオンが近づいていき意を決したように「姉ちゃん」と呼びます。実はオオカミさまは12歳で亡くなった、リオンの姉であるミオでした。 彼女はリオンの「地元の中学校に通って友達を作りたい」という願いを叶えるためにこの不思議な孤城を作り上げ、命日である3月30日まで病室から城へ通っていたのです。
アキ・リオンの記憶はその後どうなったのか考察
7人がそれぞれの世界へ帰ったあと。リオンはこころに声をかけます。城から出ると記憶がなくなるはずでしたが、オオカミ様に願い出た通り、リオンはこころを覚えているようでした。 そして大人になったアキも、どうやらこころを知っているようです。城にいた頃の記憶を失ったこころたちでしたが、その胸の奥には城の記憶が眠っていて、何かをきっかけに思い出せる日が来るのかもしれません。 この3人以外のメンバーは、城での記憶は残っていないものの、「想い」は残っているのではないでしょうか。ウレシノとフウカは現実の世界で再会したら付き合おうと約束していましたし、スバルがゲーム開発者になったことで、マサムネの「有名なゲーム開発者と知り合い」という嘘は本当になったのです。
こころとリオンの関係はその後進展した?
映画『かがみの孤城』の公開時、入場特典として原作のその後が描かれたポストカード数種類が配られました。そのなかには、こころとリオンのその後が描かれたものもあります。 こころはリオンを喜多嶋先生に紹介したり、彼の家に遊びに行ってリオンの姉ミオが大切にしていたドールハウスを見たりしています。ちなみにこのドールハウスは、城のモデルになったもの。 同じ学校に通うこころとリオンは、親しくしているようです。
ラストにつながる伏線まとめ
- 喜多嶋先生の自己紹介結婚指輪が描かれており、既婚者(姓が変わった可能性あり)とわかる
- ストロベリーティー城でアキが振る舞ったストロベリーティーを、喜多嶋先生がこころにあげている
- 7人の服装の時代感それぞれの服装のテイストに違いがある(制服時のアキのルーズソックスなど)
- “コンピューター”ゲームスバルが「”コンピューター”ゲーム」と言うのに時代が感じられる
『かがみの孤城』はミステリーの名手である辻村深月の書いた小説です。本作は感動的なストーリーだけでなく、様々な伏線を美しく回収するミステリーの醍醐味も味わえる作品でした。 特に最初に出てきたフリースクールの喜多嶋先生の自己紹介が、物語の最後にも再度登場する展開は感動的でした。
- 期限が3月30日までオオカミさまの正体であるリオンの姉ミオの命日。ミオはこの日までしか城に来られない
- 7つの×印『7匹の子ヤギ』で子ヤギたちが隠れていた場所。7つ目の「柱時計のなか」に鍵がある
- リオンだけ留学生リオンが通いたがっていた雪科第五中学の友達を作れるようにオオカミさま(ミオ)が呼び寄せた
- アンティークオルゴールミオの病室にあったオルゴールと同じ「トロイメライ」
またそちらに気をとられて、オオカミ様の正体が発覚したとき不意に涙が止まらなくなった人も多いのではないでしょうか。 そのほかにも7つの×印やリオンの存在など様々な伏線が張り巡らされた本作。2回目に鑑賞する際は伏線を探しながら、作品を楽しむのも良いかもしれません!
『かがみの孤城』が伝えたかったメッセージとは?
『かがみの孤城』が伝えたかったのは、いじめなどで学校に居場所がなくなってしまっても、ほかに居場所を見つけることはできるということです。 こころたちは様々な理由から、学校に居場所がなくなってしまいました。しかし城に集まり、同年代の仲間たちと過ごすうち、そこが大切な居場所になっていきます。 またどんな困難にぶち当たっても、ひとりで悩む必要はなく、周囲に助けてくれる人は必ずいるというメッセージも込められています。映画終盤でアキを助けるために6人が力を合わせたように、お互いに助け合えるのです。
原作小説『かがみの孤城』との違いは?
原作小説『かがみの孤城』は550ページを超える大作です。5巻にわたっての漫画化もされています。 この長編作品を2時間にまとめるため、映画では主人公以外のキャラクターのストーリーはかなり削ぎ落とされていました。ウレシノはもっと強烈さのあるキャラクターですし、原作では城にも電気が通っており、マサムネがゲームを持ち込んだりしています。 映画オリジナル要素もあり、原作ではアンティークオルゴールは登場しません。また映画では柱時計は手の届かない場所にあり、こころは光の階段に導かれて鍵を手に入れますが、原作では普通に手の届く場所に柱時計が置かれています。 映画を見てから小説や漫画を読むと、各キャラクターのストーリーが広がってより深く物語を楽しめるかもしれません。
映画『かがみの孤城』感想・評価
さすが原恵一監督!あの名作「オトナ帝国」や『聲の形』に見た感触がちょっと似ています。世界観はファンタジックだけど、いじめの描写なんかはなかなか抉ってくるので見る人によっては辛いかも。でも自分はそれがとても好みでした。号泣!
物語に隠された伏線や謎の部分は、ミステリーに多く触れてきたひとなら早めに気付くかもしれません。しかし心に傷を持つ子どもたちの描写は非常に繊細で、見ていて涙してしまう場面が沢山ありました。幻想的な世界の中に描かれた切実なヒューマンドラマに心が洗われます。
薄々オチがわかっていても、ラストの怒涛の伏線回収は見事!ストーリーの流れも良く、原作未読でも楽しめるので、特に小中学生に観てほしい。
キャラクターそれぞれに学校に行けなくなった事情があり、同じような子どもたちに寄り添うことができる、優しい作品だと思います。
映画『かがみの孤城』の声優キャスト一覧
映画『かがみの孤城』の原作者・スタッフは?
監督 | 原恵一 『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001年) 『河童のクゥと夏休み』(2007年) |
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制作 | A-1 Pictures 『心が叫びたがってるんだ。』(2015年) 『リコリス・リコイル』(2022年) |
原作者 | 辻村深月 『冷たい校舎の時は止まる』(2004年) 『ハケンアニメ!』(2014年) |
『かがみの孤城』最後のメッセージの意味は?
『かがみの孤城』のエンドロールのあとには、次のようなメッセージが映されます。 「中村隆さん あなたの人柄、あなたの描く背景美術が大好きでした。たくさんのすてきなシーンをありがとうございました。 原恵一」 これは、本作の美術監督を務めた中村隆に宛てたものです。彼は映画公開前の2021年6月に亡くなっており、「クレヨンしんちゃん」シリーズなどで長年仕事をともにしてきた原恵一から献辞が掲げられました。
映画『かがみの孤城』の謎をネタバレ解説・考察しました
累計100万部を突破する名作小説を映像化した映画『かがみの孤城』。 学校に居場所のない子どもたちが、不思議な城に居場所を見つけ、友情を育んでいく本作。そのなかで成長していく彼らを描くやさしい物語ながら、ミステリーとしても見応えがあります。 伏線を確認しつつ、何度も観るのもいいかもしれませんね!