2025年2月14日更新

【ネタバレ】映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』の不穏なラストを考察&解説!原作の短編も紹介

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『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(2025年)

「呪怨」シリーズの清水崇監督が総合プロデュースを手がけたJホラー映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』。この記事では、本作のあらすじやキャスト・スタッフなど基本情報を紹介し、感想・評価をまとめました。

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映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』の作品概要・あらすじを紹介!原作はある?

タイトル 『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』
公開日 2025年1月24日
上映時間 104分
監督・原案 近藤亮太
総合プロデュース 清水崇
キャスト 杉田雷麟 , 平井亜門 , 森田想

『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』は2022年に第2回日本ホラー映画大賞で大賞を受賞した作品。短編だった映画を近藤亮太監督自ら長編映画化し、「呪怨」シリーズで知られるJホラー界の重鎮・清水崇が総合プロデュースを務めました。近藤亮太監督は本作が長編映画デビューとなります。 本作は近藤亮太監督によるオリジナル原案で、長編にする際には再度撮影をし直して制作されました。失踪した弟にまつわる1本のビデオテープを巡り、失踪の真相をその家族と新聞記者が追うサスペンス・ホラーです。映画『プロミスト・ランド』(2024年)の杉田雷麟が主人公の兒玉敬太役を務めました。

映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』のあらすじ

幼い頃、一緒にかくれんぼをして遊んでいた弟・日向がそのまま失踪するという、辛い過去を持つ兒玉敬太(杉田雷麟)。その後も弟は見つからず、成長した敬太は行方不明者を捜すボランティア活動に身を捧げていました。 ある時、母親から1本の古いビデオテープが送られてきますが、そこに映っていたのは日向がいなくなるその瞬間でした。敬太の同居人・天野司(平井亜門)は霊感があり、そのビデオテープに何か禍々しさを感じます。 司はこの件に深入りしないように忠告しますが、敬太は失踪の真相を暴くために行動を起こします。敬太を取材していた新聞記者の久住美琴(森田想)も帯同。3人は日向が失踪した山に向かいますが……。

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映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』のネタバレあらすじを解説

【起】母親から送られてきたVHS

過去に弟の日向と山にある廃墟で遊んでいたとき、日向が行方不明になる事件を経験した兒玉敬太(杉田雷麟)。大人になった彼は、行方不明の子どもを探すボランティアに参加しています。 行方不明の子どもを発見し家に帰ると、母から荷物が届いていました。中身はいつもどおり離婚した父の遺品。しかしそのなかに1本のVHSが入っていました。同居人で霊感のある司(平井亜門)は、それを見てなんとも言えない顔をします。 ビデオデッキを手に入れた敬太は、早速VHSを再生します。そこに写っていたのは、子どものころに父のビデオカメラを借りて敬太自身が撮影した映像でした。そしてそのなかには、日向が行方不明になる瞬間も映し出されていました。

【承】女性記者に取り憑く何か

一方、行方不明の子どもを発見し、そのまま姿を消したボランティアの男性を探していた記者の久住美琴(森田想)は、それが敬太であることを突き止め、家に訪ねてきます。しかし敬太には会えず、すれ違った司に経緯を説明することに。 司は敬太のことは協力できないが、「久住にが悩まされているのはストーカーではない。自分は昔から“そういうの”が見えるので、なにか相談があれば」と名刺を渡します。 母になぜVHSを送ってきたのか理由を聞くため、敬太は実家に行くことに。司も付き添いますが、母は留守で、なんの収穫もありませんでした。しかしその後、日向が失踪した山に入った2人は、大量の骨壺が不法投棄されているのを発見します。 そのころ久住は日向が失踪したという山について調べていました。その山では、昔から神隠しや集団自殺、一家心中などの不可解な事件がいくつも発生していたのです。

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【転】山に関する噂

その夜、山の近くの民宿に泊まることにした敬太と司。司のもとに久住から電話が入り、数々の不可解な事件のことを知らされます。不審に思った司は敬太の実家へ行き、彼の母が自殺しているのを発見しました。 一方、敬太は民宿の息子から山に関する噂を聞きます。あの山には昔から近隣の人が「“神様”を捨てている」と言うのです。 司は久住に電話をし、敬太はすでに山に取り憑かれているため、彼を山に連れて行ってはいけないと言いますが、なぜか久住の電話には、「今すぐ敬太を山へ連れて行け」と聞こえます。 敬太とともに山にやって来た久住でしたが、山へ入っていく敬太を見送り、司を待ちます。その後、到着した司と久住は一緒に山に入り、誰もたどり着くことができなかった廃墟を発見しました。

【結末】廃墟へ向かう敬太や司を待ち受ける運命とは?

廃墟のなかで敬太を探す司と久住。しかし久住は何者かに手首を捕まれ、動けなくなってしまいます。 司はイヤな予感を覚えながら、2階へと足を運びます。するとそこで敬太を発見。日向を見つけたという敬太でしたが、司は敬太と出会った日から彼のそばに日向の霊が見えていたと告白します。だから今、敬太が見ているのは日向ではない……。 すると突然、司の眼の前には日向が行方不明になった日の光景が広がります。日向の後を追った彼は、日向が階段の下で血を流して倒れているのを見つけます。一方、現実世界の敬太も、階段下に日向が着ていたレインコートを見つけ、泣き崩れるのでした。 それ以来、司は行方不明になってしまいました。久住はいつ記事になるのかもわからないまま、あの山についての調査をつづけます。

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【考察1】ラストで何が起こった?観客に委ねられた空白

ラストでは司が日向が行方不明になった日に入り込んでしまい、そのまま現実世界に戻れなくなりました。いったいなにが起こったのでしょうか。 摩白山の廃墟に入った者は、ことごとく行方不明になっていました。しかし終盤では敬太、司、久住の3人が廃墟に入り、司以外の2人は生還しています。 民宿の息子は、摩白山は「“神様”を捨てる場所」だと語っていました。このことから、司は“捨てられた”のかもしれません。日向はすでに死んでいると、敬太がもっとも認めたくなかった事実を告白した司は、敬太に“捨てられた”のではないでしょうか。 これは1つの解釈で、劇中でははっきりしたことはなにも描かれていません。摩白山が実際にはどんな場所なのか、何をどうすると人が消えたり、不可解な現象が起きたりするのか、すべては観客の解釈に委ねられています。

【考察2】VHSテープが作り出す恐怖

観客のなかには、VHSそのものにあまり親しみがない世代も多いのではないでしょうか。しかしJホラーの名作『リング』(1998年)に代表されるように、VHSという記録媒体は、その現役当時からホラーの演出として、大きな役割を果たしてきました。 VHSが登場する以前は、個人が映像を記録することは難しかったのです。一方で個人が手軽に映像を記録できるようになったとは言っても、VHSの映像は今のデジタルデータのように簡単に編集できるものではありませんでした。そのため、実際に眼の前で起きたことをそのまま記録する現実味が、恐怖を演出します。 また、画質の粗さも恐怖を演出するポイントになっています。映像が不鮮明であることで、写っているものが得体の知れないものなのでは、という恐怖を掻き立てるのです。

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【考察3】敬太はなぜ母の死に気づかなかった?

実家に立ち寄ったとき、母から返答がないため2階を確認した敬太は「留守だ」と言いました。しかしその後、司が敬太の実家の2階に行くと、数日前に自殺したらしい敬太の母を発見します。敬太はなぜ母の死に“気づかなかった”のでしょうか。 敬太は自分の心を守るために、母の死を「知らないフリ」をしたのではないでしょうか。もともと失踪した弟を今でも探している敬太は、これ以上傷つくことを防ぐため母の死を認められなかったのかもしれません。 また敬太にとって、母親は最後に残されたただ1人の家族でした。彼女の死によって敬太を現実世界に留める血の繋がりはなくなってしまったのです。彼女の霊が登場したあたりから、物語は超自然的な恐怖を強めていきます。 敬太の母親はなぜ今になって息子にVHSを送り、自ら命を絶ったのか、その点も不明ですが、これは敬太にとってあまりに突然の悲劇で、受け入れられなかったのではないでしょうか。

【解説】山の廃墟には何が潜んでいるの?

劇中では、山の廃墟になにが潜んでいるかは描かれていません。民宿の息子は、あの山が「“神様”を捨てる場所」だと言いましたが、廃墟についてはなにも言っていませんでした。彼は廃墟については知らなかったのかもしれません。 山の廃墟には、捨てられた“神様”が潜んでいたのではないでしょうか。入場者特典として配布されたホラー作家・背筋による短編『未必の故意』とパンフレットに収録されている『捨ててもいい場所』は、映画本編のスピンオフ的な作品で、その理解と恐怖をより深いものにしてくれます。

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映画と原作短編『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』の違いはある?

今回の映画とその原作なった短編では、いくつかの変更点があります。小さなものだと登場人物の名前から、大きなものでは物語や演出に大きく関わるものまで変更された部分があります。 まず大きな変更点の1つは、日向の失踪した場所が短編ではトンネルだったのが、長編では廃墟になったこと。廃墟に変更されたことで、弟を探し回る敬太の恐怖がより明確に描かれています。また、終盤の3人で廃墟に行くシーンでも、三者三様の恐怖に出くわすことになりました。 また、山のいわくについても長編になって追加された要素です。こちらは作品の重要な部分なので、長編化で追加されたというのは少し意外ですね。

映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』のラストの評価は?

変に血が流れず、CGも使っていないリアルかつアナログさを感じる正統派のJホラー映画。VHSのビデオテープが話の発端となっており、その絶妙な古さが未知の恐怖へと誘います。とは言え、古典の継承だけではなく、現代ホラーの流行であるモキュメンタリーやホラー系YouTubeチャンネルなどの新しい要素も取り入れたホラー好きもうならせる作品になっている部分がポイントです。 短編を長編にしたためか、中盤に少々間延びしていたところもあるものの、最初から最後まで一貫した「嫌な怖さ」が持続していたという感想が多い本作。物語の軸にリアルとフェイクを見分けることの難しさという主題もあり、情報過多な時代に生きる私たちへの警告のようでもあります。 意外に失踪に関するラストがあっさりしていた点が気になるところですが、明かされない謎など余白も楽しめる作品です。

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映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』のキャストを紹介

兒玉敬太役/杉田雷麟

『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(2025年)

主人公の兒玉敬太は、弟の失踪という忌まわしくも悲しい過去を持つ青年。その無念さからか、現在は行方不明者捜索のボランティア活動に携わっています。送られてきたビデオテープを頼りに、弟が失踪した真相を暴こうとします。 演じる杉田雷麟は、2002年生まれ、栃木県出身の俳優。主な出演作に映画『半世界』(2019年)や『罪の声』(2020年)、ドラマ『ガンニバル』(2022年)などがあります。

天野司役/平井亜門

敬太の同居人・天野司は、強い霊感を持つ青年。ビデオテープに禍々しさを感じ、敬太に関わらないように忠告しました。敬太を心配し、日向が失踪した山へ同行します。 演じる平井亜門は、1995年生まれ、三重県出身の俳優。2020年には城定秀夫監督の映画『アルプススタンドのはしの方』に出演し、注目を集めました。2024年はドラマ「初恋不倫」にメインキャストで出演しています。

久住美琴役/森田想

森田想

敬太を取材対象として追っている新聞記者・*久住美琴失踪の真相を暴こうとしている敬太に同行し、日向が失踪した山へ一緒に向かいます。 演じる森田想は、2000年生まれ、東京都出身の俳優。2024年には『朽ちないサクラ』や『サユリ』など3本の映画に出演し、ヒロインを演じた『辰巳』では第16回TAMA映画賞で最優秀新進女優賞を受賞しています。

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塚本哲也役/藤井隆

藤井隆

久住美琴の上司・塚本哲也を演じるのは、芸人・俳優・歌手として多方面で活躍する藤井隆です。 吉本新喜劇で活躍した後、2000年には「ナンダカンダ」で歌手デビューも飾り、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(2016年)やNHK連続テレビ小説『わろてんか』(2017年)など俳優活動も続けています。2023年は『だが、情熱はある』、2024年は『西園寺さんは家事をしない』とドラマ2本に出演しました。

映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』の監督・スタッフを紹介

監督・近藤亮太

北海道出身の近藤亮太監督は、2021年に『その音がきこえたら』で日本ホラー映画大賞「MOVIE WALKER PRESS賞」を受賞。2022年に『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』が第2回日本ホラー映画大賞で大賞を受賞し、本作で長編映画デビューを飾りました。 2024年のドラマ『イシナガキクエを探しています』の演出を手がけJホラー界の新星で、“本当に怖い”Jホラーの正統派後継者と評価されています。

総合プロデューサー・清水崇

清水崇

『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』の総合プロデュースを手がけたのは、Jホラー界を代表する監督の1人である清水崇。原案・脚本・監督を務めた「呪怨」シリーズや、『犬鳴村』『樹海村』『牛首村』と続く心霊スポット×都市伝説の「恐怖の村」シリーズなどでよく知られています。

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映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』のネタバレ解説をしました!

第2回日本ホラー映画大賞で大賞を受賞した新感覚Jホラー『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』は、2025年1月24日から全国公開。そのジワジワと襲ってくる恐怖を、ぜひ劇場で体験してみてください!