MeToo運動はなぜこれほど火がついたか?実在の事件を描くジャーナリズム映画4選
2017 年、ニューヨーク・タイムズ紙に衝撃のスクープが掲載されました。のちに「性犯罪告発運動」、#MeToo 運動を爆発させたハーヴェイ・ワインスタイン事件です。 「ロード・オブ・ザ・リング」『パルプ・フィクション』「グッド・ウィル・ハンティング」『英国王のスピーチ』ら数々の名作を手掛け、ハリウッドで「神」と呼ばれた映画プロデューサーの数十年に及ぶ性的暴行事件を告発したその記事は、翌年ジャーナリズムの権威であるピューリッツァー賞を受賞。 さらに映画業界や国を超えて世界中の性犯罪、セクシャル・ハラスメントの被害の声を促すことになったのです。 名もなき女性たちを懸命に取材した調査報道に基づき、社会を動かした勇気ある女性たちとジャーナリストの物語を描く『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』が2023年1月13日(金)から全国公開されます。 そんな本作と合わせて、調査報道に信念をかけ暴力にも権力にも負けずにペンの力で闘った実在の記者たちを描いた、珠玉のジャーナリズム映画をピックアップして紹介します。 「ウォーターゲート事件」「カトリック教会の性的虐待事件」「ペンタゴン・ペーパーズ」、いずれも世界を震撼させた大事件の真相を突き止めて世界を変えた、実在の事件を描いた映画です。
アメリカ史上最大の政治スキャンダル:『大統領の陰謀』(1976年)
現役の大統領を辞任に追い込みアメリカ史上最大の政治スキャンダルとなった「ウォーターゲート事件」。 発生当初、単なる侵入事件とみられていた本事件の真相を暴いたのはアメリカの新聞社ワシントン・ポストに所属する2人の記者による、権力に屈しない執念の調査報道でした。 この調査報道でピューリッツァー賞を受賞した2人の記者の取材活動を克明に綴った、ドキュメンタリータッチの珠玉の社会派サスペンスです。第49回アカデミー賞で8部門ノミネート、4部門を受賞。報道を基にした映画作品の金字塔となる1本です。
カトリック司祭による性的虐待事件:『スポットライト 世紀のスクープ』(2016年)
2002年1月、アメリカの地方紙 ボストン・グローブの一面に数十人もの神父による児童への性的虐待という、全米を震撼させる記事が掲載されました。 2003 年にピューリッツァー賞 公益報道部門で受賞したこの報道に基づき、アメリカの新聞社の調査報道班として最も⻑い歴史を持つ同紙「スポットライト」チームによる、ボストンとその周辺地域で蔓延していたカトリック司祭による性的虐待事件に関する報道の過程と顛末を描きます。 稀に見る激戦の年となった第88回アカデミー賞では6部門ノミネート、作品賞と脚本賞の2部門で見事受賞した他、数々の映画賞を受賞しました。
アメリカ国防総省の秘密:『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2018年)
ベトナム戦争最中の1971年。アメリカ国内で反戦の気運が高まる中、ベトナム戦争を分析・記録したアメリカ国防総省の最高機密文書=通称「ペンタゴン・ペーパーズ」の一部がニューヨーク・タイムズによってスクープされました。 ライバル紙ワシントン・ポストのアメリカ初の女性新聞発行人 キャサリン・グラハムらは残りの文書を入手し全貌を公表しようと奔走するが、政府からの妨害・圧力を目の当たりにし葛藤します。 報道の自由と信念をかけて戦ったジャーナリストたちの実話を映画化した社会派ドラマであり、スティーブン・スピルバーグの渾身作。 第90回アカデミー賞では作品賞と主演女優賞(メリル・ストリープ)にノミネートを果たしました。
MeToo運動を推進した「ワインスタイン事件」:『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(2023年)
2017年10月5日、ニューヨーク・タイムズの調査報道の記者ジョディ・カンターとミーガン・トゥーイーが報じた通称「ワインスタイン事件」。 過去30年間をさかのぼり、ワインスタインの現在や過去の従業員、映画関係者へのインタビューや、ワインスタインが経営し、ハリウッドで⻑年絶大な力をもっていたブランドのミラマックス社とワインスタイン・カンパニーの法的記録、Eメール、内部文書が事細かく記録されており、その調査報道は、非の打ち所がないものでした。 2 人の記者と編集部は絶大な権力をもつワインスタインとその周囲からの数々の妨害に屈せず、圧力すらもエネルギーに変え信念に従って調査を進めました。 その熱意と真摯な姿勢は夢を奪われ、キャリアを奪われながらも理不尽な秘密保持契約の為に、そして現在の生活を守る為に口を閉ざさざるを得なかったサバイバー(被害にあった女性)たちの心を動かし1人、また1人と立ち上がらせたのです。
主演は『プロミシング・ヤング・ウーマン』キャリー・マリガンとゾーイ・カザン
主演の2人の女性記者に扮するのは、アカデミー賞に2度ノミネートされたキャリー・マリガン(『プロミシング・ヤング・ウーマン』『17 歳の肖像』『華麗なるギャツビー』)とゾーイ・カザン(TV シリーズ『プロット・アゲンスト・アメリカ』『ビッグ・シックぼくたちの大いなる目ざめ』)。 アカデミー賞常連のプランBが製作し、アカデミー賞の前哨戦ゴールデン・グローブ賞の助演女優賞にキャリー・マリガンがノミネートされました。また、ピューリッツァー賞受賞の調査報道に基づくベストセラー原作の脚色でレベッカ・レンキェヴィチがサテライト賞、ブロードキャスト映画批評家協会賞ほか、全米各地の映画批評家協会賞の脚色賞に多数ノミネートされ注目を集めています。
調査報道の重要性を示す「SHE SAID」は2023年1月13日(金)より全国ロードショー
調査報道(自社で調べ、自社の責任でおこなう報道)がいかに重要かを示す証となる本作は、あくなき努力で真実を追い求めた記者や編集者の道のりを詳細に描き、告発された加害者によるさらなる危害を阻止するために名乗り出たサバイバーや目撃者の勇敢な姿にも光を当てます。 責任感と不屈の精神をもつ彼女たちは力を合わせ、世界規模の話し合いを巻き起こし、#MeToo 運動を推進し、ひいてはその男性がおこなった加害行為を可能にした業界体制自体をも見直すきっかけとなったのです。 『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』は2023年1月13日(金)より全国ロードショー!