映画『整形水』結末までのネタバレあらすじと感想考察!ルッキズムについて考える
韓国のオムニバス形式のウェブ漫画『奇々怪々』から、人気のエピソードを原作として制作された劇場版アニメ『整形水』。2020年に韓国で公開されて話題を呼び、2021年9月には日本でも公開されました。 この記事では、本作のあらすじをネタバレありで結末まで紹介。テーマであるルッキズムについても解説します。
映画『整形水』のあらすじ
幼い頃から外見にコンプレックスを抱いていたイェジ。人気タレントのミリのメイクを担当していますが、ミリからはいつも外見のことで理不尽に罵倒されていました。 ある時、イェジが代役で出演したテレビ番組で大量の食べ物を食べまくる様子がネット動画として拡散。容姿についての悪意ある書き込みを見て、ついに部屋に引きこもってしまいます。 そんな折、彼女の元に巷で噂になっている「整形水」が届きます。顔を浸せば思い通りの顔に変えられ、後遺症も副作用もないという奇跡の水。イェジは美しくなりたいという欲望に駆られて、整形水を使ってみるのですが……。
映画『整形水』の結末までのネタバレあらすじ
【起】外見がコンプレックスのイェジに届いた「整形水」
芸能事務所でメイク担当として働いているイェジは、昔から外見にコンプレックスを抱いています。幼い頃から習っていたバレエも、外見の壁を感じてやめていました。人気タレントのミリから「豚」と言われてひどい扱いを受けていましたが、新人俳優のジフンからは「目がとても綺麗だ」と言われ好感を抱きます。 ある時、代役でテレビ出演することになりますが、大量の食べ物を食べまくるイェジの姿がネットに動画で拡散。普段からストレス解消のために大食いをしていたイェジは、ネットの悪意ある書き込みには心底傷つき、それ以来部屋に引きこもってしまいました。 そんな彼女の元に、「整形水」という美容商品が届きます。突然来たメールをクリックしただけで届いた怪しい商品ですが、説明動画を見たイェジは衝撃を受け、恐る恐る使ってみることに。
【承】全身整形で美しく生まれ変わって芸能界入り
整形水に20分間顔を浸しただけで、別人のように美しくなったイェジ。しかし体は太ったままで、アンバランスな容姿になっています。整形水を送ってきた人物から連絡が来て家へ訪問しますが、その人物は説明動画の女性でした。 彼女はイェジに整形水の広告モデルになって、整形水を原価で買うように言います。自殺すると脅して両親に多額の金を要求し、全身整形を果たしました。 生まれ変わったイェジは、それ以降キム・ソレと名乗り、SNSにも次々と投稿。その美しさから「女神」と呼ばれ、何人もの男性に食事に誘われ、その都度男性たちを品定めするのでした。 務めていた事務所の室長から芸能界に勧誘され、タレントとして活動を始めます。さらに偶然、ジフンとも再会しますが、彼は彼女がイェジだとは気づきませんでした。
【転】整形水の悪夢!削げ落ちた肉と2回目の全身整形
長年のコンプレックスからか、“太る”ことを異常に気にするイェジはまた整形水を使います。整形水に浸かっていいのは20分まで。しかしうたた寝して時間をオーバーしてしまい、全身の肉が削げ落ちた恐ろしい姿になってしまいました。 両親が自分の肉を分け与えたことで、何とか人間の姿を維持したイェジですが、とても人前に出れる外見ではありません。全身整形をしてくれた女性の家に行き、もう一度整形してほしいと頼みますが、わずかな所持金では顔と手だけしか整形してくれませんでした。 切羽詰まったイェジは、女性ともみ合いになった挙句、彼女を殺してしまいます。そして女性を整形水に浸し、彼女の肉を自分のものにして再び美しい姿に戻ったのでした。
【結末】予想外のラスト!ジフンの驚くべき過去
ソレとして芸能界で活躍し、ジフンとも付き合い始めたイェジ。しかし、殺した女性や自分の皮膚が削げ落ちていく幻覚を見るようになってもいました。そんな中、ジフンからプロポーズを受け、家に招待されます。 彼の家には家族写真があり、2人の姉が写っていました。上の姉は美しく、下の姉は醜い容姿。ジフンがデザートを作っている間に部屋を見てまわっていたイェジは、大量の整形水のボトルと行方不明になっている女性たちの身分証を見つけてしまいます。 逃げ出そうとしたイェジは捕まって吊るされ、ジフンは自分が整形水によって「男」に生まれ変わった「下の姉」であることを告白。その体中に犠牲になった女性たちの口や目がうごめき、ミリは彼の太ももに目と鼻だけになって貼り付いていました。 ジフンは出会った時からイェジの美しい目を狙っており、ついにその目を彼の太ももに貼り付けたのでした。
映画『整形水』の感想・評価
先日整形したから、なんかイェジの気持ちがよくわかる。キレイになりたいと思ってもなかなか踏み込めないけど、人に悪口言われたら当てつけでやってやる!となる。過去の自分がつきまとい、もっともっとキレイに……という整形依存のあるあるがリアル。
3DCGアニメとは知らずに観てびっくり!現代でも無意識な外見差別は確かにあるし、それがいじめにつながることもある。イェジの容姿が変わったことで、周りの人々の反応も変化しているのもわかりやすく描き、差別の本質を示していた。
【解説】イェジとジフンは合わせ鏡のような存在
本作のどんでん返しは、整形水を使っていたのがイェジだけではなく、ジフンも使っていたというところ。しかも実は元々は女性で、男性に体も作り変えられるという点がかなり突飛な発想です。 ジフンはイェジと同じで、醜い容姿にコンプレックスを、美しくなることに執着を持っていました。その執着が整形水によって実現可能になり、飽くなき欲望は他人の美を奪って取り入れることで満たされていたのです。 イェジが他の女性の体を自分の肉として取り込んだように、ジフンも数々の女性の美しい体の一部を自分の体に取り込んで「美」を自分のものにしようとしていました。いわば2人は同類であり、合わせ鏡のようなキャラクターといえるでしょう。
【考察】美容大国・韓国で生まれたルッキズム批判のホラー映画
本作のテーマは「ルッキズム(lookism)」、つまり外見至上主義です。外見だけで人を判断することに対するアンチテーゼとして、ホラーの形で観る者を恐怖に陥れているとも思えます。 監督のチョ・ギョンフンも「外見至上主義に対する絶望と悲しみを表現しようと思いました」と語っており、外見への恐怖や他人の視線に対する恐怖をホラー映画として“ストレートに投げかけ”ているそうです。 特に外見だけ美しく“盛って”投稿する風潮や、悪意あるコメントを投稿した不特定多数の匿名者は傷を負わないシステムなど、現代のSNS社会への批判も込められています。また、整形が当たり前の韓国で本作が生まれた意義も深いように感じますね。 死を前にしてイェジが本当に大切なもの=どんな容姿でも受け入れ愛し続けてくれた両親を思い出したことだけが救いですが、それも気付くのが遅すぎたのが悲劇でした。
映画『整形水』をネタバレ解説・考察でおさらい
韓国発の整形サイコホラー・アニメ『整形水』は、容赦ない描写でルッキズムの本当の怖さを描き出した秀作!鑑賞後もじわじわとその恐ろしさが後味として残ります。ぜひこの記事で、内容のおさらいをしてテーマを味わってみてください。