映画『ボーンズ・アンド・オール』結末までのネタバレあらすじと感想考察!切なくも美しい愛を描いたカニバリズムホラー
『君の名前で僕を呼んで』(2017年)のルカ・グァダニーノ監督とティモシー・シャラメが再びタッグを組んだ純愛ホラー『ボーンズ・アンド・オール』。 生まれながらに人を食べる衝動を抑えられない若者たちの、切ない愛の物語が展開されます。 この記事では、『ボーンズ・アンド・オール』の結末までのネタバレあらすじから解説や考察を紹介します。
映画『ボーンズ・アンド・オール』のあらすじ
生まれつき人を食べる衝動を持つ18歳のマレン(テイラー・ラッセル)。惨劇を引き起こしてしまった彼女は家にいられなくなり、1人あてどない旅に出ます。その途中、同じ衝動を持つリー(ティモシー・シャラメ)と出会い、2人はともに旅をつづけることに。 次第に惹かれ合う2人でしたが、同族は食べないという謎の男サリー(マーク・ライランス)が現れたのをきっかけに、危険な逃避行に身を投じていきます。
映画『ボーンズ・アンド・オール』の結末までのネタバレあらすじ
【起】食人の衝動を抑えられないマレン
1988年、バージニア州。18歳のマレンは友達の家に外泊するために、こっそり家を抜け出しました。女の子4人で楽しいひとときを過ごしますが、マレンは友人の1人の指を噛み砕いてしまいます。 騒ぎに紛れて血まみれで帰宅した娘の姿を見た父フランク(アンドレ・ホランド)は、すべてを理解し、その夜のうちにマレンを連れてメリーランドに引っ越します。しかしその直後、フランクは姿を消してしまいました。 マレンに残されていたのは、わずかな現金と出生証明書、そしてカセットテープでした。テープを聞いてみると、マレンがこうした事件を起こしたのは今回が初めてではないことがわかります。彼女は3歳のときにベビーシッターを噛み殺しており、その後も似たような事件を起こしていたのです。 娘を救う手立てはないと感じたフランクは、彼女がいつか衝動を克服することを願って立ち去ったのでした。
【承】“同族”との出会い
マレンは出生証明書を頼りに、幼い頃にいなくなってしまった母ジャネル(クロエ・セヴィニー)の故郷、ミネソタ州に向かうことにします。 その道中、彼女は奇妙な男に出会います。サリーと名乗るその男は、匂いでマレンが人喰いであることがわかると言い、自分も同族だと告白。「同族は決して食べない」という信念を持つ彼は、ある家で息絶えた老女の遺体を、マレンと一緒にむさぼり食います。しかしマレンは、食事が済むとすぐに逃げ出しました。 インディアナ州にたどり着いたマレンは、万引きをするために店に入ります。そこで彼女は酔った男に絡まれている女性客を助けるため、店員が割って入るのを見かけます。しかし男に因縁をつけられた店員は店の外に逃げ出し、男も店員を追っていきました。 店を出たマレンは、先ほどの店員が男を食っているのを目にします。その店員リーも、彼女と同じ人喰いだったのです。彼は被害者の車を盗み、マレンを誘って被害者の家で一夜を過ごします。リーはマレンの母親探しを手伝うと約束し、旅の道中、2人は自然と惹かれ合うようになります。 ケンタッキー州のリーの故郷に立ち寄ることになった2人は、リーの妹ケイラ(アンナ・コブ)に会います。彼女は兄が人喰いであることは知らず、ただ無責任な行動に腹を立てていました。
【転】母の秘密
旅の途中、マレンとリーはジェイク(マイケル・スタールバーグ)とブラッド(デヴィッド・ゴードン・グリーン)という人喰い2人組と出会いました。ジェイクは肉だけでなく骨まですべて食べてしまうことで、新たな感覚に目覚めると語ります。居心地の悪さを感じたマレンとリーは、2人が眠っている間にその場を離れました。 その後2人はカーニバルに立ち寄りますが、マレンは空腹を我慢できなくなっていました。リーはナンパするふりをして1人の男を人気のない場所に誘い出し、殺して2人で死体を食します。しかしその後、殺した男に妻と子どもがいることが発覚し、マレンは自分の行動を激しく悔やむのでした。 その後2人は、母方の祖母バーバラ(ジェシカ・ハーパー)のもとを訪れます。そこで母ジャネルは数年前に自ら精神病院に入院したことを知らされます。病院でマレンはついに母と再会しますが、彼女もまた人喰いだったことがわかります。ジャネルは愛する家族を傷つけないために自らの手を食し、入院したのでした。 母と同じ道をたどることを恐れたマレンは、リーが眠っている間に出ていってしまいます。そんな彼女の前に、サリーが現れました。彼はずっと彼女を追っていたのです。彼はマレンの仲間になると申し出ますが、彼女はそれを拒否しました。 一方、マレンがいなくなったことに気づいたリーは大きなショックを受け、ケンタッキーの家に帰ることにします。
【結末】衝撃のラストが描く究極の愛
行くあてもなくケンタッキーに戻ってきたマレンは、ケイラと偶然再会。そこで彼女から、彼らの父親のことを聞かされます。アルコール依存症で兄妹を虐待していた父親は、ある夜、ケイラが警察を呼ぶために外に出ている間に忽然と姿を消してしまったというのです。 リーと再会したマレンは、一緒に西部に向かって旅立つことにしました。リーは父親が消えた夜の話をします。父に襲われ噛みつかれた彼は、そのとき父が人喰いであることに気づきました。そこで父親を殺して死体を隠し、後に死肉を食したこと、そして自分はそれを楽しんだと涙ながらに告白します。 しばらくして、2人はミシガン州に落ち着きます。平穏な暮らしを送っていたある日、家に帰ったマレンは、サリーが彼らのアパートに侵入したことに気がつきます。サリーは彼女にナイフを突き立てますが、そこにリーが帰宅。乱闘の末になんとかサリーを殺すことができましたが、リーも致命傷を負ってしまいました。 サリーの鞄の中を確認したマレンは、ケイラが犠牲になったことに気づきリーを抱きしめます。リーはマレンに、彼が死んだ後その体を「骨まで食べてほしい」と伝えます。最初は拒否していたマレンでしたが、リーが助からないことを悟り、彼の願いを叶えるのでした。
映画『ボーンズ・アンド・オール』の感想・評価
2人の愛の形が美してくて儚くて綺麗でとても切なかった。2人の出逢い方がだいすき。ルカ・グァダニーノとティモシー・シャラメの相性が素晴らしすぎる。定期的にタッグを組んで欲しい。
期待を裏切らなかった。始まり方や物語の展開、ラスト、キャスト全てにおいて最高。色んなジャンルが混ざってて面白い。皆それぞれ孤独で切ないけどそこから愛で支え合うマレンとリーは最高だった。孤独というのをこの映画で凄い実感した。人を喰べてしまうシーンは意外とリアルでビビった。
【解説】なぜマレンはリーを食べたのか?
死にゆくリーは、自分の体を骨まで食べてほしいとマレンに伝えました。マレンは最初は拒否していましたが、最終的には彼の願いを叶えるため、リーを食べます。 旅の途中で彼らが出会ったジェイクは、「骨まで食べると新たな感覚を得られる」と語っていました。これは単なる食事としてではなく、相手のすべてを自分の中に取り込むことで、相手と1つになるという感覚を言っているのかもしれません。 もともとカニバリズムには、相手に対する愛や敬意から、その体を自分の中に取り込むという儀式的な側面がある場合もあります。 リーを骨まで食べたことによって、マレンは彼と1つになりました。また、マレンに自分のすべてを捧げることは、リーの彼女に対する究極の愛を表現していたのではないでしょうか。
【考察】「人喰い(イーター)」はマイノリティのメタファー?
主人公のマレンやリーなど、本作には「人喰い(イーター)」のキャラクターが複数登場しますが、これはマイノリティ、特にセクシュアルマイノリティのメタファーと思われます。 映画序盤、マレンはその本性が顔を出すと友達の輪の中にはいられず、親にも捨てられてしまいました。物語の舞台が1980年代ということを考えると、セクシュアルマイノリティにとってこういったケースは少なくなかったと思われます。 また彼女は旅の途中でサリーと出会ます。それまで自分が人と違うことで孤独を感じていた彼女ですが、彼の存在によって、初めて自分と同じような人々が存在することを知りました。これも、多くのセクシュアルマイノリティが経験することではないでしょうか。 一方マレンの母ジャネルは、彼らが「モンスター」とされ、世間から隠されてきた負の歴史を体現するキャラクターと考えられます。 ルカ・グァダニーノ監督は『君の名前で僕を呼んで』はもちろん、テレビシリーズ『僕らのままで/WE ARE WHO WE ARE』(2020年)でもセクシュアルマイノリティを描いており、本作でもその要素を盛り込んでいるのではないしょうか。
映画『ボーンズ・アンド・オール』をネタバレ解説・考察でおさらい
カニバリズムにロードムービーと恋愛映画の要素をプラスし、切なくも美しい若者の愛を描いた『ボーンズ・アンド・オール』。主演を務めたテイラー・ラッセルやティモシー・シャラメ、そしてマーク・ライランスの演技も高い評価を受けています。 ネタバレ解説・考察で本作をおさらいしましょう!