『あの花が咲く丘で君とまた出会えたら』原作結末までのネタバレあらすじと感想!泣けるタイムスリップ戦争小説
福原遥と水上恒司のW主演で実写映画化される『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』。原作はTikTokで話題となった汐見夏衛による同名小説で、10代を中心に人気を博したシリーズ累計発行部数50万部のベストセラーです。 この記事では、『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の原作小説のあらすじをネタバレありで詳しく紹介し、本作のテーマを解説・考察します。
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映画『あの花が咲く丘で君とまた出会えたら』のあらすじ
親には不満ばかりで、家や学校でいつもイライラしている思春期の女子高生・百合(福原遥)。ある日、母親とケンカして家出してしまった百合でしたが、目が覚めるとそこは1945年の戦時中の日本でした。 右も左もわからない中、偶然通りかかった彰(水上恒司)に助けられます。彰の誠実さや優しさに惹かれていく百合でしたが、実は彰は特攻隊員で、ほどなくして零戦の特攻作戦で戦地に飛ぶ運命にあったのでした。
原作『あの花が咲く丘で君とまた出会えたら』の結末までのネタバレあらすじ
【起】タイムスリップした場所は、1945年の日本
中学2年生の加納百合は、学校でも家でも何かにいつもイライラしていました。百合は物心ついた時から母親と2人暮らしで、父親の顔も知りません。 母親との口ゲンカから思わず家を飛び出してしまった百合は行く当てもなく、たどり着いた防空壕のようなトンネルの中で一晩を過ごします。翌朝起きると、そこには今まであった街がなく、山から下りても見知った場所ではなくなっていました。 呆然と道端でうずくまっているところを、佐久間彰と名乗る男性が助けてくれ、鶴屋という食堂に案内してくれました。 鶴屋はツルという女性が1人で切り盛りしている食堂で、百合はそこで今いる場所が1945年の戦時中の日本であること、そして彰は特攻隊の隊員であることを知ります。百合は一晩のうちにタイムスリップしていたのです。
【承】そこにある「戦争」を目の当たりに
ツルに空襲で家族も家も失った戦災孤児と思われた百合は、そのまま鶴屋に住み込みで働かせてもらえることに。彰は鶴屋の常連で、百合に気分転換をさせようと、百合が一面に咲く丘に連れて行ってくれました。 彰には百合と同じ年ごろの妹がいて、田舎から東京の大学に出てきたことを語り始めます。大学在学中に召集令状が来て、飛行訓練を受けてからこの地へ配属されたのでした。特攻隊のことを授業で習ったばかりだった百合は、彰が“死にに行く”ことに納得いかず、思わず彼の決断に反対してしまいます。 この時代に来て3週間が経ち、こちらの生活にも慣れ、千代という同年代の友だちもできた百合ですが、あれ以来彰とは話せずにいました。鶴屋に来た特攻隊員たちに想いをぶつけますが、隊員の固い決意を知り、自分の無力さを思い知ります。 さらにツルと空襲のあった隣町に行った際、焼かれて何もなくなった町を見て「戦争」というものを目の当たりにし、何もわかっていなかったと感じました。
【転】百合の花が咲く丘での告白
初めての給料で彰に何か買おうと町に出た百合は、憲兵にからまれているところを彰に助けられます。助けられてばかりなのに「俺の方が百合に勇気をもらっている」と言われ、本気で彰を好きになってしまった百合。 しかし戦況が悪化する中、ついに百合が住む町にも空襲が。巻き込まれた百合は身動きが取れない中、またも彰に助けられます。ツルは無事でしたが、千代は瀕死の状態にありました。 特攻隊員たちが見舞う前に、息を引き取った千代。そこでさらに、隊員から3日後に出撃命令が出たことを知らされます。秘かな決意を胸に、百合は「あの百合の花の丘で会える?」と彰を誘いました。 満天の星の下、百合は彰に好きだと告白し、今から一緒に逃げてほしいと告げます。「逃げることはできない」と言う彰を説得しようと、自分が未来から来たことも告白。しかし彰の決意が揺らぐことはありませんでした。 彰は「君がいた未来を変えてしまいたくない」と語り、2人はそこで口づけを交わしました。
【結末】涙のラスト!現代に遺された彰の手紙
ついに出撃の日、百合やツルたちが見守る中、彰たち特攻隊員たちは基地から飛び立っていきました。泣きながら彰が乗る零戦を追いかける百合。どうしても納得できない百合は、そのままあの防空壕へ走っていました。 次の朝、目を覚ますと見慣れた現代の街並みが。百合は現代に戻ってきていたのです。現実に引き戻された百合は、母親が心配して探し回っていたこと、そして現代ではたった一晩の出来事だったことを知ります。 社会科見学で特攻資料館を訪れた百合は、特攻隊員たちの遺書が展示されている資料室で、タイムスリップして出会った隊員たちが実在したことを知り、涙を流しました。 そしてそこで、彰が書いた百合宛の遺書を見つけます。遺書の最後には「心から君を愛している」と、彰の本心が綴られていました。 当たり前の日常が戻った中で、百合は学校の前でどこか彰に面影が似ている少年に出会うのでした。
原作『あの花が咲く丘で君とまた出会えたら』の感想・評価
初恋の人が「特攻隊員」だったというタイムスリップものの恋愛小説ですが、戦争をテーマにしていて大切な人が戦争で命をなくすという悲哀をひしひしと感じるものでした。時代は関係なく、命の尊さを改めて考えさせられます。
今現在、大切な人と一緒にいる時間がどれほど尊いものか、改めて実感しました。この物語はフィクションとはいえ、特攻隊は実際にあった話。当時の彼らのような人々の命の上に、今の日本があることを忘れてはならないと思う。
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【解説】「特攻隊」とは一体何だったのか
この作品に登場する「特攻隊」とは、太平洋戦争末期に日本軍が編成した「特別攻撃隊」のこと。作中にも言及されていましたが、片道の燃料と爆弾を機体に積んで敵艦に体当たり攻撃する決死の作戦でした。 現代に戻った百合が社会科見学で訪れた特攻隊の資料館は、鹿児島県にある知覧特攻平和会館をモデルにしていると考えられます。知覧特攻平和会館には実際に特攻隊員の遺書が展示されており、彰のような若者たちの最後の言葉を知ることができます。 特攻隊をテーマにした映画といえば、2013年の『永遠の0』や2005年の『男たちの大和/YAMATO』が良く知られています。また、宮崎駿監督の『風立ちぬ』(2013年)は航空特攻に使われた零戦の開発者・堀越二郎の半生がモデルであり、突撃した零戦の残骸を描写することで特攻作戦の意味を今に伝えています。
【考察】「あの花が咲く丘で」の続編の主人公は?
『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』には、『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』という続編小説があります。「あの花」のラストで百合が出会った彰を彷彿とさせる少年は涼といい、「あの星」の主人公となっています。 「あの花」が百合の視点で綴られた物語なら、「あの星」は涼の視点で語られる物語。実は涼は、百合が恋した彰の生まれ変わりなのです。著者の汐見夏衛も、この続編で「やっと百合と彰の物語が完結した」と語っていました。 さらに「あの星」には旧版バージョンの『あの夏の光の中で、君と出会えたから。』もあり、結末が異なっています。百合と彰、そして百合と涼の物語を通して体感するなら、ぜひ「あの花」と「あの星」、そして「あの夏」の3作に触れてみてはいかがでしょうか?
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『あの花が咲く丘で君とまた出会えたら』を原作ネタバレあらすじをチェック
福原遥×水上恒司主演の映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』は、2023年12月8日に全国公開されます。劇場で観る前に、ぜひ原作小説やコミカライズ版もチェックしてみてはいかがでしょうか?