『十角館の殺人』最終回までネタバレ解説!緑の小瓶の意味や千織の死因は?
2024年3月22日からHuluにて独占配信がスタートしたドラマ『十角館の殺人』。原作は綾辻行人のデビュー作として名高い、1987年発表の同名傑作ミステリー小説です。 この記事では、『十角館の殺人』のあらすじ・ネタバレや伏線などについて紹介します。 ※本記事にはストーリーのネタバレが含まれるため、未視聴の人は注意してください。
【ネタバレなし】ドラマ『十角館の殺人』の作品概要・あらすじ
原作 | 綾辻行人『十角館の殺人』(講談社文庫) |
---|---|
配信日 | 2024年3月22日 |
監督 | 内片輝 |
主題歌 | ずっと真夜中でいいのに。「低血ボルト」 |
キャスト | 奥智哉 , 青木崇高 他 |
『十角館の殺人』は綾辻行人のデビュー作でありながら、日本ミステリの傑作として高く評価されている作品です。きちんとこれまでの日本ミステリの流れを踏襲しつつも、綾辻行人独自の世界観がありミステリーファンを虜にしました。 『十角館の殺人』を始めとする「館」シリーズでは、素人探偵の島田潔が建築家の中村青司が建てた奇妙な建物での殺人事件を解決していきます。「館」シリーズの評価はどれも高く、始まりとなる『十角館の殺人』は必見の作品です。 十角館の殺人の最大の見どころと言えるのが、ある一行によってこれまでのことが覆される大どんでん返しが待っているという点です。この衝撃の一行があるために、十角館の殺人の実写化は不可能だと言われてきました。 そんな難題に挑んだのが、「相棒」シリーズなどで知られる内片輝監督。綾辻が原作を手がけた、ドラマ「安楽椅子探偵」シリーズの監督も務めました。 脚本は、八津弘幸。八津は2023年に社会現象を巻き起こしたドラマ『VIVANT』のほか、『下町ロケット』(2015年)や『半沢直樹』(2013年)なども担当しています。
ドラマ『十角館の殺人』あらすじ
物語の舞台は1986年、十角形の奇妙な外観をした十角館がある孤島・角島です。十角館を建てた天才建築家の中村青司は、半年前に焼け落ちた本館の青屋敷で謎の死を遂げています。 炎上事件があって以降、無人島と化していた角島に大学ミステリ研の男女7人が合宿で訪れました。同じ頃、本土ではかつてミステリ研に所属していた江南孝明のところに、死んでいるはずの中村青司から1通の手紙が届きます。 江南は不可思議な件についての調査を進めるうちに島田潔と出会い、行動を共にするようになりました。 一方、海を挟んだ角島の十角館ではミステリ研の1人が何者かの手によって殺害される事件が起きます。ミステリ研のメンバー以外には誰もいないはずの島で起きた殺人事件。メンバーは次第にお互いのことを疑うようになり、疑心暗鬼に陥ってしまうのでした。 孤島・角島から出られるのは1週間後。角島と本土の物語は衝撃の結末を迎えますーー。
ドラマ『十角館の殺人』のキャスト
江南孝明(かわなみたかあき)役/奥智哉
主人公・江南孝明はK大学工学部に在籍する大学3回生で、ミステリ研究会の元メンバー。故人であるはずの中村青司から手紙が届き、真相を突き止めようとします。 「コナン」こと江南を演じるのは、2020年にデビューした新人俳優・奥智哉。ドラマ「ラストマン」(2023年)などの話題作に出演し、本作でドラマ初主演を飾りました。
島田潔(しまだきよし)役/青木崇高
島田潔は中村紅次郎の大学時代の後輩であり、ミステリー好きな寺の息子。紅次郎の実兄・青司からの手紙に興味を持ち、偶然出会った江南に協力してくれます。 そんな島田を演じるのは、「るろうに剣心」シリーズなどで有名な演技派俳優・青木崇高です。2024年には「犯罪都市3」で初の韓国映画に出演し、精力的に活動しています。
実現不可と言われた作品はどのように映像化されたのか【ドラマ】
『十角館の殺人』は文章の誘導で読者に先入観を植え付け、事実を誤認させる「叙述トリック」が軸になっており、視覚情報が入った途端に破綻します。 原作者の綾辻行人は、「(内片監督なら)このトリックを映像にするビジョンがあるのだろう」と、何度も断ってきた自著の実写化を受け入れたそうです。 本作はチームライティングで脚本を仕上げることでスケジュールに余裕を持たせ、小道具・大道具の選定や映像演出、キャスティング発表の方法まで細かい部分に注力。原作の魅力を最大限に再現するため各部署が一丸となり、“原作ファンに刺さるもの”を目指して制作が進められました。
原作『十角館の殺人』の展開をネタバレ
『十角館の殺人』では物語が「殺人事件の舞台となる角島」と「本土」という2つの場面で時系列に沿って進行していくのが特徴的です。この記事でも原作に沿って、角島と本土の2つの視点からネタバレ解説していきます。 物語はこれから殺人をしようとする犯人の独白からスタート。犯人は復讐のために複数人の殺人を計画し、その計画の全貌を書いた紙をガラス瓶に入れ海に放ちます。自分の行いが正しいのかどうかを、母なる海に審判してもらおうとしているのでしたーー。
【角島】推理小説研究会の7人のメンバーは角島の十角館を訪れる
大分県にある大学の推理小説研究会のメンバー7人は、角島にある十角館を合宿で訪れます。十角館は外観、家具から食器まですべてが十角形をしている奇妙な館です。 かつて角島にあった青屋敷では建築家の中村青司が不審な死を遂げています。炎上した青屋敷からは中村青司、妻、使用人夫婦の死体が見つかり大量の睡眠薬が検出されました。行方不明となった庭師が犯人なのではと思われますが真実は謎のままです。 ミステリ好きの合宿先としてはうってつけの角島。推理小説研究会のメンバーはミステリ作家の名前を受け継ぐ習わしがあり、ヴァン、エラリィ、カー、ポウ、ルルウと呼ばれる男性、そしてアガサ、オルツィと呼ばれる女性で構成されています。 十角館では名札を作り入口に貼って誰の部屋かわかるようにしました。一同は未解決事件を解決しようと島を探索しますが、これといった成果は得られません。一方、オルツィだけは誰かを追悼するために島を訪れているようです。 昼食時、ルルウは島にいる間にミステリを1つ書き上げるようにメンバーに頼みます。その後、各自自由に過ごし、夕食を終えるとヴァンは体調不良を理由にいち早く部屋へ戻り鍵をかけるのでした。
【本土】推理小説研究会に奇妙な手紙が届く
元推理小説研究会の江南孝明=通称ドイルのもとに「お前たちが殺した千織は、私の娘だった」という手紙が届きます。手紙の差出人は中村青司となっていますが、江南は誰のことがわかりません。 中村千織は江南の1つ下で昨年の1月に亡くなっていました。推理小説研究会の新年会の三次会で急性アルコール中毒となり、心臓発作を誘発され亡くなったとされる千織。 青司が角島で亡くなった人物だと思い出した江南は、三次会に居合わせたメンバーたちが角島に向かったことを知り、ただの偶然にしてはできすぎていると調査を開始しました。 すると、青司の弟・紅次郎にも青司から手紙が来ていたことがわかります。しかし、紅次郎は悪戯だと一蹴し関わりたくないと言いました。 江南はその場にいた紅次郎の友人・島田潔とともに事件について語ります。警察の見解はやはり庭師の吉川が犯人というものでしたが、不審な点がいくつもありました。暇な島田は江南の調査に参加することに。 一方、江南と同じく三次会を途中退席していた守須のところにも、同じ手紙が届いていたことがわかります。守須は紅次郎が怪しいと言いますが、島田と一緒にいたというアリバイがありました。 江南と島田は三次会参加メンバーの家を確認し、吉川の妻を訪ねることにします。
【角島】テーブルに置かれた奇妙なプレート
1日目が終わり、朝になるとホールにあるテーブルに奇妙なプレートが置かれています。 プレートは7つあり、それぞれ「第一の被害者」「第二の被害者」「第三の被害者」「第四の被害者」「最後の被害者」「探偵」「殺人犯人」と書かれていました。 何かのゲームかと思うメンバーですが、誰もプレートを置いていないと言います。プレートには何者かの悪意を感じますが、とりあえず食器棚の引き出しに入れておくことにしました。 その後、普通に過ごすうちにプレートのことは気にならなくなるメンバーですが、オルツィだけはプレートのことが強く気になっています。 また風邪気味だったヴァンの体調はよくならず、熱もあり本格的に風邪を引いたようでした。夜になると前の日と同様にヴァンは早めに部屋に戻り鍵をかけます。 カーはそれを見てヴァンがプレートを置いた犯人なのではないかと疑いますが、他のメンバーはヴァンを庇い大事にはなりませんでした。
【本土】島田の推理、生き残ったのは青司?
江南は三次会に参加したメンバー全員に自分と同じ手紙が届いていることを確認しました。そして、島田とともに吉川の妻・政子を訪ねます。 政子は吉川が犯人ではないと考えており、財産のなかった青司を吉川が殺すなんてありえないと言いました。さらに、千織が小さい頃に角島に住んでおり、あまり青司にかわいがられていなかったこともわかります。 島田も吉川が犯人ではないと感じ、青司の妻・和枝の不義の相手は紅次郎ではないかと推測。守須に報告しにいくと守須は、青司が生きている可能性について語ります。 吉川と青司は同い年でA型の中肉中背。燃えてしまえば見分けはつかないでしょう。吉川が消えたことになっていますが、実は消えたのは青司で青司が真犯人だったのではないでしょうか。 島田はこの意見に同調し、動機は千織が青司の娘ではなかった可能性を話します。千織は本当は紅次郎と和枝の間にできた子なのではないでしょうか。そうすれば、手紙の件も納得できます。 しかし、ここまで話すと守須の態度は急変。あまり詮索しない方がいいと言い、自分は調査から降りると言うのでした。江南は守須の態度を不思議に思いつつも、島田とともに捜査を続けることにします。
【角島】第一の被害者、左手首のないオルツィ
朝になり目を覚ましたアガサは、オルツィの部屋のプレートが「第一の被害者」となっていることに気づき悲鳴を上げます。 悲鳴で起きてきたメンバーとともにオルツィの部屋に入ると、絞殺されたオルツィの死体がベッドにあり左手首がありませんでした。かつて青屋敷で殺害された和枝の殺人に見立てているようです。 医学部のポウによるとオルツィは死後4〜5時間が経過。全員寝ていてアリバイはありません。動機があるのはオルツィにフラれたカーくらいですが、カーは犯行を否定。 迎えの船が来るまで島からは出られないという状況の中、メンバーは疑心暗鬼になりますがエラリィは外部犯の可能性を示唆します。生きている青司が島内に隠れているとエラリィは考えていました。 夜になり落ち着いて今後のことを話すため人数分のコーヒーを入れます。しかし、コーヒーを飲んだカーが苦しみだしカーは亡くなってしまいました。 コーヒーを入れたアガサにしか犯行は無理だと思われますが、カップはすべて同じ形、カップを取った順番のこともあり、アガサがどうやって毒を避けたのか説明がつきません。 疑われたアガサは神経が参ってしまい先に部屋に戻ります。他のメンバーも部屋に戻り、この日は終わりを迎えるのでした。
【本土】本土と島の行き来は可能
事件についての調査を続ける江南は島田と一緒に、角島に近いS町を訪れていました。付近の住人や漁師から話を聞きますが、なかなか有力な証言は得られませんでした。 S町への来訪は無駄足に終わるのかと思われたとき、帰ろうとする2人の前に1人の若者が現れ声をかけてきます。 その若者は父親と一緒に推理小説研究会のメンバーを角島に送った本人でした。彼は今度の火曜日に角島まで推理小説研究会のメンバーたちを迎えに行くことになっていると言います。 また彼の話によると今の季節であれば、モーターボートで本土と島を行き来することは可能であるとのこと。角島は誰も入り込めない孤島というわけではなさそうです。
【角島】精神的に追い詰められていくアガサ
翌朝、カーの部屋には「第二の被害者」のプレートが貼られています。引き出しのプレートは減っておらず、犯人はプレートをもう1組持っているであろうことがわかりました。 浴室からは血のついた手首が見つかりますが、オルツィのものではなくカーのものです。カーの手首まで切り取る理由がわからず困惑するメンバーたち。 昼食後、5人は青屋敷の焼け跡に向かい、地下室へと向かう階段を発見します。入口の足元にはテグスが張られており、エラリィはつまづいて地下に落ちてしまったものの無事でした。 地下室を調べたところ中には何もありませんでしたが、床は掃いてありキレイな状態で誰かがいたであろうことが推測できます。 5人は屋敷に戻りますが、アガサはますます精神的に追い詰められてしまっていました。ポウはアガサに睡眠薬を飲むことを勧めますが、アガサはそれを拒否します。 しかし、ポウは自分が先に睡眠薬を飲むことでアガサを安心させ、睡眠薬を口にして部屋へと戻っていきました。残された4人は事件の推理を続けますが、いくら考えても犯人はわかりません。その夜、必要な人は睡眠薬をもらいそれぞれの部屋で休むことにしました。
【本土】青屋敷炎上の真実が判明
紅次郎に会いに行った島田と江南。島田は単刀直入に千織が紅次郎の娘ではないかと聞きますが、紅次郎は否定します。 しかし、島田は引き下がらず青屋敷が燃える前日に、酔いつぶれて「和枝、許してくれ」と繰り返していたのを聞いていたことを伝えました。 すると紅次郎の顔色は変わり、島田の言い分を認めます。和枝と紅次郎の関係に気づき嫉妬した青司は、和枝の左手首を切り取り紅次郎に送付。青屋敷が燃える前日に手首を受け取っていた紅次郎でしたが、スキャンダルを恐れ通報できず酒に逃げたのでした。 江南は守須に青屋敷炎上が青司の無理心中であったことを説明します。紅次郎は1度だけ和枝と関係し、和枝は千織を身ごもりました。2人の関係を疑っていた青司ですが、生まれた娘を自分の子と信じることで和枝との関係を保っていたのです。 ですが、千織が亡くなったことで青司はついに和枝を殺害。電話をかけた紅次郎は自分も一緒に死ぬという青司の言葉を聞いていたため、青司が生き延びている説については否定するのでした。 青屋敷炎上の件についてはハッキリしましたが、まだ手紙と吉川の行方については謎が残っています。江南たちは推理小説研究会のメンバーが戻ってきたら話を聞くことにし、探偵の真似事はもうやめることにしました。
【角島】被害者続出、残されたのは2人
目を覚ましたヴァンは洗面所のドアが不自然に開いていることに気がつきます。中にはアガサの死体があり、死因は青酸による毒殺でした。 起きてこないルルウを起こしに行くと、ルルウの部屋には「第三の被害者」のプレートが貼られています。アガサは四番目の被害者で、その前にルルウが被害者となっていたのです。 部屋にはルルウの姿はなく、青屋敷跡の方に撲殺され死後5〜6時間経過したルルウの死体がありました。残された3人は最初の殺人から状況を整理し、十角形のカップの中に1つだけ十一角形のカップがあることに気がつきます。 さらにルルウの死体付近に残されていた足跡から、犯人は外部の人間で船を使っていたことが推測されました。エラリィは青司が千織の父だと気づいており、動機もあることから犯人だと決めつけます。 そんな中、タバコを吸っていたポウが苦しみだし、そのまま亡くなってしまいました。ポウのタバコのストックには1本青酸が混じっており毒殺されてしまったのです。 残されたエラリィとヴァンの2人は十一番目の部屋を発見。地下の隠し部屋を発見しますが、強烈な悪臭が漂っており、中には白骨化した死体があるのでした。 そして、その夜十角館は燃え上がります。
【本土】十角館にいた全員死亡の報せ
守須が電話を受けると、その電話は十角館が燃えそこにいた全員が死んでしまったことを告げます。守須は江南にすぐに電話をかけ、状況を説明しました。 守須は青司が生きているのではと考えていましたが、島田は紅次郎を疑っています。紅次郎には動機があるし、手紙は青司が生きていると思わせるためのカモフラージュだとすれば合点がいくでしょう。 江南は紅次郎はずっと別府にいたと反論しますが、島田はモーターボートなら島と行き来できるとし、論文執筆のため居留守を使っていたという点も怪しいと考えます。 今回の捜査を担当しているのは島田の兄・修でした。島から戻ってきた修から話を聞いたところ、死体は一部を除いて焼かれる前に死んでおり、1体は焼死による自殺と見られています。 焼死体は松浦純也のもので、これがエラリィと呼ばれていた人物です。島田はここで初めて推理小説研究会のメンバーにニックネームがあったことを知ります。江南と守須のニックネームについても尋ねた島田。 江南は名前から予想される通り「ドイル」。島田は守須についても名前から「モーリス」ではないかと予測しますが、守須のニックネームはモーリスではありませんでした。 守須はここで衝撃の一言を放ちます。
【角島】事件が大々的に報じられ実名が明らかに
角島で起きた事件は新聞などで大々的に報じられ、紙面に実名が掲載され推理小説研究会のメンバーの実名が明らかになります。 ポウ=山崎喜史 カー=鈴木哲郎 エラリィ=松浦純也 アガサ=岩崎杳子 オルツィ=大野由美 ルルウ=東一 さらに十角館の地下室から見つかった白骨化した死体については、行方不明になっていた吉川のものである可能性が高まっていました。
【本土】警察による事情聴取と犯人の独白
警察は推理小説研究会のメンバーを集め事情を聞きました。その中には江南と守須の姿もあります。 守須は自分の叔父に頼んで角島に行けるように手配したことを話し、部屋数の関係で自分は行くのを辞退していたと言いました。 十角館に客室は7つありましたが、1室はとても使える状態ではなかったのです。修が事情聴取を続ける中、犯人による驚きの独白が始まっていきますーー。
原作『十角館の殺人』の結末!衝撃の一行とは?
『十角館の殺人』の犯人は守須です。 実は内緒で千織と付き合っていた守須。千織の命を奪った6人に復讐するため、今回の殺人を計画しました。 守須はメンバーには自分も同行しているように思わせ、島外の人からは自分以外の6人が島にいるように見せなくてはなりません。そこで青司の名前を使って手紙を出し、江南が自分のところを訪ねるように仕向けました。 手紙を投函しボートで先に上陸した守須。体調不良を理由に先に部屋に戻るフリをして自宅に戻り、江南の訪問を待ちました。江南と島田が読み通り自分を訪ねてきたので、仮眠をとって夜明け前には島に戻ります。 メンバーが起きてくる前にプレートをテーブルに置いたモリス。2日目の夜も本土に戻り江南と会いますが、わざと否定的な態度をとり、江南が連絡してこないようにして以降は島で過ごします。 オルツィの左手を切断したのは、彼女が守須が千織にプレゼントした指輪をしており守須と千織の関係に気づかれてしまう可能性があったためです。カーの手首を切断したのは、オルツィの切断のカモフラージュでした。 次々と殺人を実行し、最後に眠らせたエラリィに灯油をかけ火を点けた守須。 島田が守須のニックネームについて尋ね、「ヴァン・ダインです」という衝撃の一行でこれまでの展開がひっくり返されるのが見事でした。島にいるヴァンと本土の守須は別人だと思わされていた読者は度肝を抜かれる結末となりました。
ストーリーの中に犯人への伏線はあった?
衝撃の一行を読むまで、まったく真犯人に気がつかなかった人も多い『十角館の殺人』ですが、ストーリーの中に犯人への伏線はあったのでしょうか。 ヴァンと守須が同一人物だと気づくことができたとしたら、好みのタバコの銘柄が同じなことぐらいでしょう。ストーリーを読んでいるだけで、完全に守須がヴァンだと確定することは不可能です。 読者が犯人に気づけるとしたら、ヴァンとエラリィの2人が最後に生き残ったところではないでしょうか。この2人のうちどちらかが犯人であり、しかも犯人は島と本土を行き来していて、事件後も生き延びるつもりの人物です。 最後に十角館が炎上し、メンバーが全員死亡したとの報告があり初めて犯人に気がつくことが可能となります。合宿メンバーを乗せた漁師が存在を認識しておらず、1人で先に上陸していたヴァンが犯人だったのです。
小さな瓶に詰めた犯行計画
島田は犯人の正体には気づいていたものの、物的証拠を得られていませんでした。彼と海岸で対峙した守須はふと、砂浜に埋れた薄緑色の小瓶を発見します。 それは守須の「良心」であり、犯行前に計画のすべてを書いた紙を入れて夜の海へ流したもの。あらゆる生命の母なる海に、事に及ぶ前から最後の審判を託していたのです。つまり、もし小瓶が誰かの元にたどり着いたなら、悪として裁かれる覚悟を決めていました。 皮肉にも小瓶は自らの手に戻り、完全犯罪の遂行と罪悪感の間で揺れる守須。神の意思を悟った彼は、唯一トリックを見破った島田に証拠を委ねたのでした。
原作『十角館の殺人』の主な登場人物
推理小説研究会メンバー
ポウ | オルツィと幼馴染の医学部四回生 大柄で無口。顔の下半分は濃いヒゲに覆われている |
---|---|
カー | 中肉中背、猫背の法学部三回生 よく他のメンバーにかみついている |
エラリイ | マジックが得意な法学部三回生 色白で背が高く、会誌の現編集長と務めている |
ヴァン | 中背で痩せている理学部三回生 叔父のつてで角島での合宿を可能にした人物 |
アガサ | ソフトソバージュのロングヘアの薬学部三回生 ヒロイン的ポジションで面倒見が良い |
オルツィ | ポウと幼馴染の文学部二回生 引っ込み思案で小柄でショートヘア |
ルルウ | 後輩ポジションでこき使われる文学部二回生 童顔で小柄、会誌の次期編集長 |
青屋敷関係者
中村 青司 | 天才建築家で十角館の設計者 半年前の事件で焼死している |
---|---|
中村 和枝 | 青司の妻 半年前の事件で焼死している |
中村 千織 | 青司と和枝の娘 1年前に急死している |
北村 | 青屋敷で暮らしていた使用人夫婦 半年前の事件で焼死している |
吉川 誠一 | 青屋敷の庭師 半年前の事件以降、行方不明になっている |
本土にいるメンバー
島田 潔 | 中村紅次郎の友人 寺の三男で、兄の修は大分県警の警部をしている |
---|---|
江南 孝明 | 好奇心旺盛な推理小説研究会の元会員 研究会時代のニックネームはドイル |
守須 恭一 | 江南の友人で、推理小説研究会の元会員 1年前に千織が死んだ飲み会がきっかけで退会している |
中村 紅次郎 | 中村青司の3つ下の弟 高校の社会教師をしており、島田とは大学で知り合って以来懇意にしている |
吉川 政子 | 吉川誠一の妻 結婚前は青屋敷で働いていたが、現在は誠一の実家に住んでいる |
『十角館の殺人』原作とドラマの違いはある?
ドラマ『十角館の殺人』は、犯人によるモノローグと死者(中村青司)の手紙から「あの一行」のシーンまで、ほぼ原作通りにストーリーが展開します。 時代設定は綾辻の希望で1986年のままになっており、一部原作からそのまま引用された台詞も……。いたるところに原作へのリスペクトが感じられました。一方で、「角島」と「本土」パートの時系列や、キャラクター造形などには改変がみられます。 特に大きな違いとしては、江南を主人公に据えて島田とのバディものに仕上げたこと。ラストの海岸のシーンに江南がいるのは、原作にはないドラマ独自の演出です。
『十角館の殺人』のあらすじ・ネタバレを結末まで解説
約40年の時を経てついに実写化された、「館」シリーズの第1作目『十角館の殺人』。綾辻行人の名を世界に知らしめた名作ミステリは、どのように映像化されたのでしょうか?緻密に仕掛けられたトリックを、ぜひその目で確かめてみてくださいね!