2024年12月4日更新

【ネタバレ】『正体』の結末・真犯人は?映画・ドラマ・原作の違いをあらすじから考察

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正体 映画

染井為人による小説『正体』を原作とした映画『正体』が、横浜流星主演で2024年11月29日より劇場公開されています。2022年にWOWOW「連続ドラマW」で、KAT-TUNの亀梨和也主演でドラマ化された話題作です! この記事では、原作小説・ドラマ版・映画版の『正体』の違いを考察し、各キャストを一覧で紹介。映画版とドラマ版のあらすじをネタバレありで解説しています。 ※本記事には小説『正体』、『連続ドラマW 正体』、映画『正体』のネタバレが含まれているため、未読・未視聴の方はご注意ください。 ※ciatr以外の外部サイトでこの記事を開くと、画像や表などが表示されないことがあります。

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映画『正体』のあらすじ・作品概要

タイトル 『正体』
公開日 2024年11月29日
上映時間 120分
原作 染井為人『正体』
監督 藤井道人
キャスト 横浜流星 , 吉岡里帆 , 山田杏奈 , 森本慎太郎 , 山田孝之
主題歌 ヨルシカ「太陽」

ある凶悪な殺人事件の容疑者として逮捕された鏑木慶一(横浜流星)。死刑判決を受けた鏑木は護送中に脱走し、日本各地を潜伏しながら逃走を続けていました。 逃走先で様々な顔を使い分け、別人のように振舞っていた鏑木。建設現場では日雇い労働者として野々村和也(森本慎太郎)と出会います。またある時はWEBメディアのライターとして編集者の安藤沙耶香(吉岡里帆)と知り合い、介護施設では職員の酒井舞(山田杏奈)と親しくなります。 その間も、鏑木の行方を追い続ける刑事・又貫征吾(山田孝之)。しかし顔と場所を変えて逃走を続ける鏑木には、ある目的がありました。

【ネタバレ】映画『正体』の真犯人は?結末を解説

【真犯人】鏑木事件の本当の真相

鏑木の目的とは、事件の目撃者であり証言者だった遺族の井尾由子に接触すること。事件直後ショックを受けて混乱し、真犯人と鏑木を混同していた由子の証言によって鏑木の有罪が確定したのです。 事件が起こった当時、鏑木は高校生。通りがかりの民家から悲鳴が聞こえたため家に入ったところ、血まみれの男が出て行くのを目撃します。部屋の中も血まみれで、倒れた女性と男児、そして背中に鎌が刺さった男性が「鎌を抜いてほしい」という身振りをしていました。 鎌を抜いた瞬間、廊下に隠れていた由子が悲鳴を上げ、駆け付けた警察官が「僕じゃない」と叫ぶ鏑木を取り押さえました。事情聴取する又貫にも「僕はやっていない」と繰り返しましたが、警察は早々に事件を片付けるため適性な捜査を行わず、18歳だった鏑木の厳罰を「少年犯罪の抑止」に利用しようともしていました。 別の一家惨殺事件で逮捕された足利清人が鏑木事件の模倣犯とされましたが、足利は「模倣犯ではない」と又貫に呟きます。鏑木の冤罪の可能性を考え始めた又貫は鏑木の足取りを追い、由子が居るケアホームアオバへ辿りつきました。

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【ラスト】衝撃のライブ配信の結末

アオバでは鏑木が酒井にSNSでライブ配信を頼み、由子に事件当日のことをよく思い出してほしいと懇願する様子を映し出していました。実は由子も鏑木も、真犯人の顔を見ていたのです。それは、足利清人でした。 ようやく鏑木のことを思い出し、「あなた、私のせいで……」とつぶやいた由子でしたが、その場で彼が無罪であるというはっきりした証言はできず。その直後に警察が突入し、鏑木は肩を撃ち抜かれてしまいます。撃ったのは、前回鏑木を撃てずに取り逃がした又貫ではなく、部下の井澄でした。

吹き出し アイコン

又貫は鏑木が冤罪であることを薄々知りながらも追う義務があった……その複雑な感情がどうしても彼を撃つことができない行動に表れていたのかも。

【その後】再び捕まった鏑木に希望の光が

その後、鏑木と出会った和也、沙耶香、舞が中心になり、再審請求のための署名活動を開始。又貫が自分の過ちに気付き、記者会見で誤認逮捕の可能性を示し、再捜査することで再審への道が開かれました。街頭で署名活動を行っていた3人もその会見を見て、互いに喜び合います。 3人は各々、収監されている鏑木に面会に行き、それぞれの想いを告白。和也は鏑木と出会ったことで前向きになり、資格の勉強を始めたことを伝えます。舞は彼と出会ったおかげで逃げないで自分と向き合う気持ちが生まれたことを語り、沙耶香は「終わったら全部聞くから」と温かい言葉をかけました。 ついに再審判決の日、これまで彼が出会ってきた人々が見守る中、鏑木に無罪の判決が。彼らは心から安堵して涙する鏑木とともに喜びを分かち合いました。

吹き出し アイコン

判決が下る時、裁判長の「無罪」という声が無音になっていた演出が印象的でした!周りの人々の拍手、歓声が徐々に聞こえてきて、感情が高ぶっていく感じが伝わります。

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【違い】映画・ドラマ・原作で異なる結末

【違い①】ラストの鏑木の生死

小説 鏑木は警察の突入時、撃たれて死亡 警察は誤認逮捕を認めず、鏑木死亡のまま再審で無罪確定
ドラマ 鏑木は又貫に足を撃たれ、窓から転落するも生存 警察は誤認逮捕を認めないまま、鏑木出廷の再審で無罪確定
映画 鏑木は井澄に肩を撃たれるも、生存して再逮捕 警察は誤認逮捕の可能性を認め、鏑木出廷の再審で無罪確定

真犯人が足利清人であることは、小説・ドラマ版・映画版ともに同じです。また鏑木が生存して再審を受け、無罪を勝ち取るのはドラマ版・映画版ともに同じ結末になりました。 小説は鏑木にとっては一番過酷な結末を迎えており、原作者の染井為人もあとがきで「残酷な死を与えて本当にすまなかった」と書き残しています。小説は鏑木の残酷な死によって、より冤罪というものへの関心を深く刻む意図があったようです。 ドラマでは原作を踏襲しつつも生存して喜びを嚙みしめるシーンを演出したことで、鏑木の人生が本当の意味で救われたように感じます。 そして映画がドラマ版の結末にならいつつ、警察が誤認逮捕の可能性を示す場面を追加したことは、又貫に象徴される警察組織の最後の良心を“信じたい”という切実な想いが表されているようでした。

【違い②】潜伏先が5つから3つがメインに

小説 ①牛久保土木(工事現場の作業員・遠藤/ベンゾー) ②メディアトレンダーズ(WEBライター・那須) ③山喜荘(スキー場の旅館従業員・袴田) ④ミノリ製菓(パン工場アルバイト・久間)/救心会(新興宗教団体信者) ⑤グループホーム「アオバ」(ケアワーカー・桜井)
ドラマ ①牛久保土木(工事現場の作業員・遠藤/ベンゾー) ②メディアトレンダーズ(WEBライター・那須) ③ミノリ製菓(パン工場アルバイト・久間)/救心会(新興宗教団体信者) ④グループホーム「アオバ」(ケアワーカー・桜井)
映画 ①浮島土木(工事現場の作業員・ベンゾー) ②メディアトレンダーズ(WEBライター・那須) (③水産加工工場(アルバイト・久間)) ④グループホーム「アオバ」(ケアワーカー・桜井)

映画では潜伏先のパン工場が水産加工工場になっており、宗教団体が絡んでくる展開もありませんが、そこで由子の妹と接触して由子の居場所がアオバであることを知る経緯は同じでした。 原作では5つの逃亡先で潜伏しますが、ドラマでは旅館が割愛され、そこで登場する渡辺弁護士がライター・那須の時に出会うよう構成されています。これはおそらくドラマが全4話であり、各話で1か所ずつ潜伏先を描いているため。 映画はさらに2時間とドラマより短いため、5つの潜伏先の中でも建設現場・WEBメディア・介護施設の3つをメインにしています。メインキャストも和也・沙耶香・舞の3人がフィーチャーされていました。

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【違い③】安藤沙耶香と淳二の関係

小説 安藤沙耶香と弁護士・渡辺淳二は他人で関係性は無し
ドラマ 安藤沙耶香と弁護士・渡辺淳二は他人 渡辺の痴漢冤罪事件について記事にすることで協力
映画 安藤沙耶香と弁護士・安藤淳二は親子 鏑木の冤罪を信じ、ともに再審請求に協力

ドラマでは痴漢の冤罪事件に悩み自殺しようとしていた弁護士・渡辺淳二を鏑木が助けますが、映画では沙耶香の父親が痴漢冤罪で敗訴する弁護士・安藤淳二として登場。自身の経験もあり、鏑木の再審請求に尽力することになります。 この変更によって、映画では沙耶香が鏑木を信じる動機が強められ、より理解しやすくなりました。実はこれは、沙耶香を演じる吉岡里帆からの提案で脚本が改稿され、「父親の冤罪証明をしていく」設定が追加されたとか。彼女が強い信念を持つ人物であることが描かれ、鏑木を信じる/信じたい理由も納得感が増しています。

【違い④】SNSが事件解決の鍵に

映画ならではの展開として、アオバで鏑木が直接由子に証言を懇願し、舞にSNSでのライブ配信を願い出る部分が脚色されていました。鏑木がアオバに居ることが発覚したのも、小説とドラマでは四方田が警察に通報しますが、映画では舞がSNSに彼が写る動画を投稿したことがきっかけとなっています。 同時に多くの人が目にするライブ配信で鏑木は自分の無実を証明しようと試みますが、警察の突入によって果たせずに終わります。SNSが、鏑木にとってネガティブ(居所を知られる)とポジティブ(ライブ配信)な要素として両極の使われ方をしているのも、その特性=諸刃の剣であることの示唆のよう。 また、テレビではずっと鏑木事件を一面的にとらえて報道しているのみで、舞を含め人々がそれを鵜呑みにして信じている様子も。SNSが事件解決の鍵となっている点を考えると、テレビとの対照的な描き方に現代メディアの現実が投影されているようにも感じます。

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【違い⑤】養護施設園長・野口の登場

映画では養護施設園長の野口が登場し、鏑木の過去を知る人物として描かれています。面倒見の良い、優しい人柄を良く知る彼女だけは鏑木の無実を信じていました。 野々村も鏑木と同じく施設出身で、背中に同じような火傷の痕があり、その過去が偲ばれます。そんな野々村が鏑木と出会ったことで、人生を見つめ直していく様子も描かれていました。

【実話?】『正体』と現実の冤罪事件

小説名 『正体』
作者 染井為人
初版発行日 2020年1月30日

映画『正体』の原作は、 2017年に『悪い夏』で第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞し、作家デビューを飾った染井為人の同名小説です。 平成最後の少年死刑囚の脱獄と逃亡が描かれており、作品のテーマは「冤罪」。原作者の染井は、鏑木慶一や一家惨殺事件の具体的なモデルに関して言及していません。 物語の着想を得たきっかけは、警察署から逃走して自転車で日本一周を目指した容疑者だそう。あくまで推測ですが、2018年に大阪府警富田林署から脱獄した樋田淳也(当時30歳)でしょう。さらに、未成年でも死刑になることや冤罪事件は珍しいものではないと知って、世の中の「そのような理不尽さを小説で訴えたかった」と語っています。

袴田巌さんの58年越しの無罪について考える

鏑木事件の直接のモデルではないものの、世紀の冤罪事件として注目を集めた「袴田事件」のことは誰もが知っているのではないでしょうか。 1966年6月30日、静岡県清水市で一家四人が惨殺され家屋が全焼する事件が発生。この事件で逮捕され、死刑判決を受けたのが袴田巌であり、58年間も無罪を主張し続け、ようやく2024年9月26日に再審無罪判決を勝ち取りました。 ずさんな初動捜査、証拠の捏造、自白の強要など、もし自分事であったらと考えると背筋も凍るような体験。しかも人生の半分以上を奪われ、自由の身になった時はすでに年老いている……想像しただけでも恐ろしい事件です。 袴田事件によって冤罪による死刑執行が現実に起こり得るということを知り、死刑制度の是非を問う声も。さらに鏑木事件では18歳の少年でも死刑判決があり得るという現実を突きつけられ、もし自分の家族が冤罪事件に巻き込まれたらと考えさせられます。

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【解説】鏑木はなぜ逃げた?「好きな人」とは誰なのか

鏑木が逃げた理由

誤認逮捕の隠蔽、改正少年法の賛否、冤罪事件の発生など、いざ自分の身に起こった時どうするかを考えさせられるテーマを持つ本作。鏑木が脱走した理由があまりにも純粋で切実で、その言葉が強く心に響きます。 記者会見前に鏑木に面会に行き、脱走した理由を聞いた又貫。そこで鏑木は「信じたかった、この世界を。正しいことを正しいと主張すれば信じてくれる人がいることを」と答えました。 実際、又貫はこの答えを聞いて、記者会見で警察の誤認逮捕の可能性を示し、再捜査するに至ったのではないでしょうか。又貫もまた葛藤としがらみを乗り越え、自分の良心を信じてみることにしたのかもしれません。

鏑木の「好きな人」は誰?

鏑木は先述の又貫との場面で「人を好きになった」と語っていましたが、舞と湖に行った時には「好きな人は?」と聞かれても答えませんでした。小説とドラマでは、舞から「もし告白してたらどう答えたか」と聞かれ、「ぼくには好きな人がいるんです」と返しています。 思い出されるのは、鏑木が沙耶香の家でお酒を飲んだ後、酔って彼女の肩にもたれかかって寝ているシーン。逃亡中の彼が沙耶香を心から信頼している様子が描かれており、沙耶香もその信頼を裏切りたくない様子を見せていました。

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【考察】タイトル『正体』に込められた意味

鏑木の本当の『正体』に触れるという意味

作品のタイトル『正体』とは、鏑木の「正体」に気付いた後、本当の彼を知っていくというのが真の意味。最初の鏑木は「凶悪な殺人事件を起こした少年死刑囚で逃亡犯」ですが、3つの潜伏先を通して徐々に彼の人となりを知ることになります。 冒頭の和也・沙耶香・舞の事情聴取のシーンと、ラストの面会シーンでは彼らが語る鏑木の印象がまったく違っています。この2つのシーンのギャップが、鏑木の正体が反転する効果を生んでいるのです。 最初の事情聴取では、沙耶香は「私は那須さんのことは何も知りません。名前も経歴も嘘だったんですから」、和也は「ベンゾーさんのことを、誰もよく知らない」、舞は「憧れの先輩だった」と語り、又貫に「気付かなかったんですか?奴の正体を」と返されています。 しかし再逮捕された後の面会では3人とも鏑木に寄り添った言葉をかけ、心から彼を信頼しているようでした。彼らにとって鏑木はもはや知らない凶悪犯ではなく、大切な友人となっていることがよくわかります。

『正体』を感情で決めつける危うさ

この物語には2つの冤罪事件が描かれています。それは鏑木事件と弁護士・安藤淳二の痴漢冤罪事件。この2件が同時に描かれ、鏑木と安藤が深く関わり合っていくことで冤罪の恐ろしさが強調される仕組みになっています。 鏑木も安藤も、世間的なイメージは「脱走した死刑囚」と「卑劣な痴漢犯罪者」というもの。しかしその正体はまったく違う、むしろ真逆のものでした。そのイメージはもちろん、報道やSNSなどのニュースやネットの書き込みといったマスメディアが生み出すものです。 自分も含め一般大衆が思い込みや感情でメディアに振り回され、冤罪であるにも関わらず犯人と決めつけ、批判したり誹謗中傷したり。承認欲求にかられて、あるいは正義感に酔って誤った情報をむやみに拡散したり。 本当の「正体」を知りもせず、知ろうともせずにその人の正体を感情だけで決めつける危うさを、誰もがはらんでいることも、この作品から読み取ることができるでしょう。

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映画『正体』主要キャスト一覧

鏑木慶一(かぶらぎけいいち)役/横浜流星

ある一家殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けた死刑囚・鏑木慶一(かぶらぎけいいち)。脱走して日本各地を逃走し、潜伏先で5つの顔を使い分ける指名手配犯です。 演じるのは、2025年のNHK大河ドラマ「べらぼう」で主演を務める横浜流星。藤井道人監督の映画出演作は『青の帰り道』(2018年)や『ヴィレッジ』(2023年)があります。

安藤沙耶香役/吉岡里帆

フリーライターとして働く鏑木を助けるWEBメディアの社員安藤沙耶香(あんどうさやか)。一緒に暮らすことになり、指名手配犯と気付きますが、鏑木の無実を信じて逃がします。 演じるのは、『ハケンアニメ!』(2022年)で日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞した吉岡里帆。2025年の出演作に、『ファーストキス 1ST KISS』と『九龍ジェネリックロマンス』があります。

野々村和也役/森本慎太郎

建設現場に潜伏して働く鏑木と出会う日雇い労働者野々村和也(ののむらかずや)。逃亡中の鏑木が初めて親しくなる人物ですが、鏑木を指名手配犯ではないかと疑います。 演じるのは、SixTONESのメンバーで俳優としても活躍する森本慎太郎。2023年のドラマ『だが、情熱はある』で演じた山里亮太役が話題になり、2024年には『街並み照らすヤツら』でGP帯ドラマ単独初主演を務めました。

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酒井舞役/山田杏奈

鏑木の最後の潜伏先である介護施設のスタッフ酒井舞(さかいまい)。一緒に働くうちに彼の真面目さや誠実さに触れ、恋心を抱くようになります。 演じるのは、2018年に『ミスミソウ』で映画初主演を務めた山田杏奈。2024年は「ゴールデンカムイ」シリーズの映画・ドラマともにヒロインのアシリパ役を演じています。

又貫征吾役/山田孝之

鏑木を追い続けている警視庁捜査一課の刑事又貫征吾(またぬきせいご)。日本各地に潜伏しながら逃走を続ける鏑木を追い詰めていきます。 演じるのは、俳優のほか監督やプロデューサーとしても活動する山田孝之。2024年は11月公開の映画『十一人の賊軍』で仲野太賀とW主演、Netflixドラマ『地面師たち』ではナレーションを務めています。

映画『正体』3つの潜伏先での動きをネタバレ

ベンゾーと和也

最初の潜伏地は大阪。とある万博会場の建設現場で働いていた鏑木は、野々村和也と出会います。「ベンゾー」というあだ名を付けられた鏑木は、ぼさぼさの長い髪の毛にヘルメットか帽子をかぶり、ビン底メガネをかけて変装していました。 警戒して誰とも話さずにいましたが、ケガをした上に現場責任者の金子に暴行を受けた和也を見て、思わず助け舟を出していまいます。金子に労働基準法違反であることを訴え、見舞金2万円を出させることに成功しました。 和也はお礼にベンゾーに1万円を返し、一緒に酒を飲んで親交を深めようとします。しかしベンゾーが懸賞金300万の脱走死刑囚・鏑木に似ていることに気付き、ホクロの位置を確認し、トイレに行く振りをして警察に電話。その様子を見て「電話にでないのですか?」と尋ねた鏑木は、気付くといなくなっていました。

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那須と沙耶香

2つ目の潜伏地は東京。WEBメディア会社「メディアトレンダーズ」でフリーライター・那須として仕事をしていました。そこで文才を発揮し、編集者の安藤沙耶香に見込まれていた那須は、髪を明るい茶色に染めて帽子をかぶり、いつもマスクをして変装しています。 ある日の晩、沙耶香にネットカフェで寝泊まりしていることを知られ、居酒屋で御馳走になります。焼き鳥を初めて食べて感動する鏑木。その後気分が悪くなり、沙耶香の家で介抱されたのをきっかけに、そのまま彼女の家に滞在することに。 しばらく沙耶香と平穏な時間を過ごしますが、沙耶香の父親の痴漢事件を執拗に追う雑誌記者に、鏑木を匿っていることを知られて通報されてしまいます。

桜井と舞

3つ目の潜伏地は長野県。ケアホーム「アオバ」でケアワーカー・桜井として働き、鏑木事件の被害者遺族の井尾由子との接触を図っていました。それは最終目的であり、彼女から自分の無罪証言を録るため。 その前に、水産加工工場で働く由子の妹から由子の居場所を聞き出すため、アルバイトとして潜入していました。その際は工場用の作業服で帽子とマスクを付けており、久間という偽名を使っています。 アオバでは短い黒髪をセンター分けにし、メガネをかけるだけでマスクや帽子などの変装はしていません。東京で美容専門学校に通っていた酒井舞は地元に戻ってアオバに就職し、ここで桜井を名乗る鏑木と出会います。 桜井に好意を抱いていた舞は湖への観光に誘い、そこで彼の動画をこっそり撮ってSNSにアップしますが、それが彼の居所を世間に知らしめることに。ついに警察がアオバに急行し、鏑木が由子から証言を録る間もなく、突入されて再逮捕されてしまうのでした。

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『正体』原作の結末ネタバレ

介護士の桜井翔司と偽って、介護施設「アオバ」へ潜入した鏑木。深夜になると由子を訪ね、事件のことを思い出すよう彼女に話しかけていました。桜井に想いを寄せる酒井舞はその様子を目撃し、彼が「鏑木慶一」ではないかと疑い始めます。 そんな中、スタッフの通報で警察が駆けつけ、鏑木は舞を人質に取って立てこもりました。 事件の日、鏑木は偶然現場に居合わせた善良な高校生でしかありませんでした。由子が証言した犯人の特徴と状況証拠から、犯人と断定されてしまったのです。 真犯人の正体は、鏑木慶一の模倣犯として逮捕された男・足利清人。検察は誤認逮捕による起訴を隠蔽すべく、由子を唆して証言を捏造させたのでした。 警察がアオバに強行突入し、488日に及んだ鏑木慶一の逃亡劇は終了。鏑木は口封じで銃殺され、由子の証言を録音したボイスレコーダーも闇に葬られます。渡辺弁護士らの尽力で被告人なしの裁判が行われ、鏑木の無罪判決を聞いた舞は「この声が、きみに届いているだろうか?」と語りかけました。

ドラマ『正体』結末までのネタバレあらすじ

タイトル 『正体』
放送日 2022年3月12日~4月2日
話数 4話(各話60分)
原作 染井為人『正体』
監督 中田秀夫 , 谷口正晃
キャスト 亀梨和也 , 黒木瞳 , 市原隼人 , 貫地谷しほり , 堀田真由

埼玉県でとある夫婦が殺害される事件が発生。井尾洋輔とその妻・千草が被害に遭い、唯一生き残ったのが同居していた洋輔の母・由子(黒木瞳)でした。 夫婦を惨殺した殺人鬼の名は鏑木慶一(亀梨和也)。凶器には彼の指紋が付着しており、目撃者である由子が「鏑木慶一が犯人で間違いない」と証言したことから、裁判で死刑が言い渡されました。鏑木は移送中に刑務官の隙をついて脱獄し、名を変え、身分を偽りながら逃亡を続けます。 警察が全力で行方を追い、メディアも大きく取り上げましたが、なかなか足取りが掴みきれません。 痴漢の冤罪被害に遭った弁護士・渡辺淳二(上川隆也)をはじめ、行く先々で窮地に陥った人を救う鏑木。彼の正体に気付いた者たちは、「本当にあの殺人犯なのか?」と誰もが首を傾げます。 脱獄してから1年半後、鏑木は若年性アルツハイマーを患う由子が療養生活を送る介護施設「アオバ」に姿を現し、アルバイトとして働き始めるのですが……。

ドラマ第1話のあらすじ・ネタバレ

時は2015年。とある夫婦が殺害される事態が発生しました。現場そばにいた鏑木慶一には、凶器の包丁と指紋が一致したことや遺された夫の母親の証言により、死刑が言い渡されます。しかし移送中、鏑木は刑務官の隙を突き逃亡したのでした。 脱獄から33日。慶一は「遠藤雄一」と名乗り土木作業員として働き始めました。ある日、仕事仲間の平田が仕事中に怪我をしますが、会社からの手当はありません。状況を見かねた職場仲間の野々村和也(市原隼人)は、慶一に「平さんの生活費を貸してほしい」と相談するのでした。 相談を受けた慶一は知識をもとに会社に平田の見舞金を出させることに成功。慶一は窮地を救ったことで、この出来事から野々村と親交を深めるのでした。 しかしそんな時間も長くは続かず、ある日野々村は慶一が指名手配犯なのではないかと疑い始めます。懸賞金に目がくらんだ野々村はついに110番通報してしまうことに。葛藤しながらも電話を掛けたものの、結局「なんでもありません」と切ってしまうのでした。 慶一はそんな野々村の姿を見ており、悲しそうな表情を浮かべ、すぐに姿をくらませたのでした。

ドラマ第2話のあらすじ・ネタバレ

脱獄から117日。慶一は髪を金色に染めカラーコンタクトを付け、ライターの「那須」と名乗り新たに逃亡生活を始めていました。そこで雑誌の編集者・安藤沙耶香(貫地谷しほり)と出会います。沙耶香と意気投合した慶一は沙耶香の両親が遺した実家に居候することに。 そんな中、慶一は自殺をしようとしている弁護士の渡辺(上川隆也)に遭遇します。自殺を止め話を聞くと、彼は痴漢の疑いをかけられ、冤罪であったものの、現場の動画が拡散されて収集がつかなくなってしまったよう。 慶一は沙耶香に渡辺のインタビュー内容を記事にすることを提案。公開された記事は大きな反響を受け、渡辺は疑いを晴らすことができました。 数日後、沙耶香の元交際相手が沙耶香宅を訪れ彼女に襲い掛かります。元交際相手を止めた慶一ですが、そこで元交際相手に「脱獄犯の鏑木ではないか?」と睨まれることに。 その後通報を受けたという刑事がやってきます。沙耶香は慶一の「僕はやっていない」という言葉を信じ、窓から逃走させるのでした。

ドラマ第3話のあらすじ・ネタバレ

脱獄から1年。慶一は今度は顔を変え、「久間」と名乗っていました。宗教団体・救心会に所属している信代(藤吉久美子)に接触した慶一は、紹介でパン工場に勤めることに。そこには井尾由子の妹・浩子(若村麻由美)も勤務しており、彼女も救心会に入会することとなったのでした。 救心会に入会する際には個人情報を書いた申込書が必要になります。そこで慶一は救心会に潜り込み申込書を盗み見て、由子の情報を得ることに成功するのでした。 同じ頃、鏑木の事件を模倣した足利という男が、ある夫婦を殺害し逮捕されたことが話題になっていました。 ある日、浩子と共に救心会に入会した節枝(高畑淳子)が詐欺被害に遭ってしまいます。そこで慶一は、救心会が会員の個人情報を裏ルートに売り儲けていることを突き詰め、証拠がまとめられた書類と、第2話で助けた弁護士・渡辺の名刺を節枝に渡すのでした。慶一はその後再び姿をくらませます。

ドラマ第4話のあらすじ・ネタバレ

脱獄から526日。慶一は眼帯を付け、「桜井」と名乗り老人ホームで働いていました。そこには由子も所属していましたが、認知症の由子は慶一の正体に気が付きません。 慶一は眼帯を取り「あの夜のことを思い出してください」と由子に話しかけます。由子はパニックを起こすのみで、何かを口に出すことはありませんでした。 その様子を見ていた同僚の酒井舞(堀田真由)は不審に思い、上司の四方田(濱田崇裕)に由子の過去を尋ねます。そこから脱獄犯・鏑木慶一の情報に気づいた彼女は、桜井が慶一だと確信するのでした。そして通報するか思い悩んでいるところで、すでに所長が通報してしまいまいました。 通報を受けた警察は老人ホームに突撃。慶一は舞を人質に立てこもり、事件の夜のことを話し始めるのでした。 あの夜、バイト終わりに悲鳴を聞いた慶一は、被害者宅に入り被害者を介抱していたのでした。包丁についた指紋も介抱していた際に持ってしまったといいます。そして由子は検察から認知症であることを理由に脅され、ついには慶一が犯人だと証言してしまったのです。 しかしそこへ警察が突入。慶一は足を撃たれてしまい、逮捕されてしまうのでした。 ――それから、逃亡中の慶一に救われた人々が「鏑木慶一さんを救う会」を結成。警察がさまざまな証拠をもみ消し無罪がなかなか立証されない中、別の殺害事件で死刑となっていた足利が、慶一の事件について話し始めました。 そして再び慶一の裁判が行われます。鏑木慶一に下された判決は「無罪」。慶一は泣きながら傍聴席に向かって一礼したのでした。

『正体』ドラマ最終回での犯人は?

ドラマ最終回と原作の最も異なる点は、鏑木が生存している上で冤罪が証明されることです。 ドラマでは桜井の正体に気付いた舞が四方田に伝え、彼の報告を聞いた佐竹所長が通報。アオバにやって来た警察の前で、鏑木は由子に真実を証言させようとします。 しかし、又貫刑事に撃たれて昏睡状態に陥り、意識を取り戻した鏑木はすべてを諦めてしまいました。 彼の無罪を信じる人々が動き出し、沙耶香と渡辺弁護士は真犯人と思われる足利清人に接触。足利は群馬県で新婚夫婦を殺害した鏑木の模倣犯で、余罪をほのめかしていたのです。舞は由子に会いに行き、検察の指示で嘘の証言をしたことなどを聞き出しました。 迎えた再審公判の日。足利が伊尾夫妻の殺害を認め、見事無罪判決を勝ち取った鏑木の目から涙が溢れるのでした。

ドラマ『正体』の相関図

『正体』相関図

鏑木慶一役/亀梨和也

亀梨和也

本作の主人公である死刑囚・鏑木慶一。夫婦殺害事件の犯人として起訴されて死刑判決を受けますが、移送中に脱走し、名前と姿を変えながら逃亡生活を送っていました。逃亡先で出会った人々を助け、それが後に彼を助けることになります。 演じるのは、俳優としても活躍するKAT-TUNの亀梨和也。2024年は1月期『大奥』と4月期『Destiny』でドラマに連続で出演しており、6月には主演作のWOWOWドラマ『ゲームの名は誘拐』も放送されます。

安藤沙耶香役/貫地谷しほり

貫地谷しほり

WEB編集プロダクション「メディアトレンダーズ」に勤める編集者の安藤沙耶香。ライター・那須隆士と名乗って逃亡中の鏑木に出会いました。身寄りのない鏑木を心配して、家に居候させることになります。 演じるのは、2007年に連続テレビ小説『ちりとてちん』でヒロインを務めた貫地谷しほりです。2023年には、NHKドラマシリーズ『大奥』の「8代・徳川吉宗×水野祐之進編」で加納久通役を演じました。

渡辺淳二役/上川隆也

上川隆也

痴漢の冤罪をかけられ、自殺しようとしていた弁護士渡辺淳二。鏑木に助けられ、彼の発案でインタビューを記事として発表し、冤罪を晴らそうと奮闘します。 演じるのは、ドラマ『大地の子』や「遺留捜査」シリーズの主演で知られる上川隆也。2024年は木村拓哉主演ドラマ『Believe-君にかける橋』に出演する他、今田美緒主演でリニューアルする2024年版『花咲舞が黙ってない』に花咲健役で再登板しています。

酒井舞役/堀田真由

堀田真由

鏑木が逃亡中に介護士・桜井幸司として勤める介護施設「アオバ」の職員・酒井舞。同僚として働いていましたが、不審な行動を目にして彼が逃亡犯の鏑木だと気付き、通報するか葛藤します。 演じるのは、2015年にWOWOW連続ドラマW『テミスの求刑』でデビューした堀田真由。2023年はドラマ『たとえあなたを忘れても』で主演を務め、2024年4月期ドラマ『アンチヒーロー』では紫ノ宮飛鳥役で出演しています。

四方田保役/濵田崇裕

介護施設「アオバ」の職員で、酒井舞の上司四方田保。鏑木の正体を怪しむ舞から相談を受け、鏑木が詰め寄っていた入所者の由子の過去を教えます。 演じるのは、新たにグループ名を「WEST.」と改名し、俳優業にも進出している濵田崇裕。2021年に『武士スタント逢坂くん!』でドラマ単独初主演を務めた他、2023年のドラマ『風間公親-教場0-』に刑事役で出演。2024年は1月期ドラマ『パティスリーMON』に出演しています。

又貫役/音尾琢真

鏑木の事件を捜査し、行方を追っている刑事・又貫征吾取り調べも担当しており、執念深く逃走先を追い続け、鏑木を追い詰めていきます。 演じるのは、TEAM NACSメンバーで俳優の音尾琢真です。WOWOW「連続ドラマW」作品に出演するのは本作が6本目で、2024年は1月期『ジャンヌの裁き』と4月期『ブルーモーメント』の連続でドラマ出演しています。

笹原浩子役/若村麻由美

若村麻由美

鏑木が久間道慧と名を変えてアルバイトするパン工場のパート従業員・笹原浩子。夫婦殺害事件の唯一の目撃者である井尾由子の妹で、探りを入れてくる鏑木を怪しんで警戒します。 演じるのは、1987年に連続テレビ小説『はっさい先生』のヒロイン役でデビューした若村麻由美。近年の出演作に、『初恋、ざらり』や『この素晴らしき世界』、『科捜研の女』season23のゲスト出演など(すべて2023年)があります。

近野節枝役/高畑淳子

笹原浩子のパート仲間で、オレオレ詐欺の被害に遭う主婦近野節枝。被害に遭って意気消沈しているところ、久間道慧として同じ職場でアルバイトしている鏑木が手を差し伸べます。 演じるのは、「劇団青年座」所属で舞台俳優としても知られる高畑淳子。ドラマ初主演を務めたのは2006年の『魂萌え!』で、2024年は4月期ドラマ『Destiny』に大畑節子役で出演しています。

野々村和也役/市原隼人

市原隼人

鏑木が遠藤雄一と名を変えて潜伏する「牛久保土木」の従業員・野々村和也。同僚となった鏑木と劣悪な労働環境を変えようと協力していくうち、友情が芽生えていきます。 演じるのは、「ROOKIES」シリーズの安仁屋恵壹役でブレイクした市原隼人。「正直不動産」シリーズの桐山役や「おいしい給食」シリーズの甘利田役でもよく知られており、2024年は『正直不動産2』に出演し、劇場版『おいしい給食』3作目が公開されます。

井尾由子役/黒木瞳

黒木瞳

夫婦殺害事件の被害者の母親である井尾由子事件の唯一の目撃者ですが、若年性認知症を患っている上に事件のトラウマを抱えているため、介護施設「アオバ」で療養中です。 演じるのは、宝塚歌劇団出身の俳優・黒木瞳。1985年に退団後、数々のドラマ・映画に出演してきました。近年の出演作に、連続ドラマW『落日』(2023年)や『JKと六法全書』(2024年)などがあります。

『正体』の犯人をネタバレ解説しました!

冤罪事件をテーマにした小説『正体』、それを原作としたドラマと映画の情報をお届けしました。ドラマは各配信サービスで配信中、映画は2024年11月29日から全国の劇場で公開中です! 原作者・染井為人によると、「ドラマは小説で使われなかったもう一つの結末に近い」とのこと。ドラマ版と映画版の違いにも注目し、それぞれどんな風に印象が変わるのか、ぜひその目で確かめてください!