2025年2月18日更新

【ネタバレ感想】北野武新作「ブロークンレイジ」は意味がわからない?異色のあらすじの意味・キャストを解説

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映画「ブロークンレイジ」あらすじ・作品概要

タイトル 『ブロークンレイジ』
公開日 2025年2月14日
上映時間 60分
監督 北野武
キャスト 北野武 , 浅野忠信 , 大森南朋 , 中村獅童

欲望渦巻く裏社会で、並外れた能力を武器に殺し屋として暗躍する男・ねずみ(北野武)。しかし彼はある時、殺人容疑で警察に捕まってしまいます。 刑事の井上(浅野忠信)と福田(大森南朋)は、罪を見逃す代わりに、ねずみに覆面捜査官として麻薬組織への潜入捜査を強要。ねずみは警察とヤクザの間で板挟みになりながら、生き残りをかけて奮闘します。 危険な捜査に挑む警察、麻薬売買を取り仕切るヤクザ、そして潜入捜査をつづけるねずみのスリリングな攻防戦に注目! 前半のシリアスな物語から一転、後半は同じストーリーをコメディとして描き直す「スピンオフ」パートがスタート。セルフパロディ満載の芸人「ビートたけし」色が強いパートとなっています。

タイトル「ブロークンレイジ」の意味

『ブロークンレイジ』というタイトルは、北野武監督・主演作「アウトレイジ」シリーズのセルフパロディと考えられます。監督デビュー作『その男、凶暴につき』(1989年)などヤクザと警察の暴力を描いた映画を多く制作してきましたが、自らのキャリア自体を“壊す”という意図があるようです。 またこれまでは一切、自身の作品を動画配信サービスに提供してこなかった北野武監督がAmazonプライム・ビデオ配信で制作したということは、自らのルールを“破る”という意味も込められているのかも。

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【前半ネタバレ】映画「ブロークンレイジ」のあらすじ

謎の人物「M」から殺しの指令を受ける暗殺屋「ねずみ」

いつも喫茶店でマスターから、謎の人物「M」からの茶封筒を受け取る男・ねずみ(北野武)。彼はその封筒からある男の情報が書かれた紙を出して、顔を確認します。その男をスナックで唐突に射殺したねずみは、裏通りに用意していた宅配便の格好に着替えて逃走しました。 ねずみは「M」から殺しを請け負う暗殺屋だったのです。また別の日、喫茶店でマスターから大金が入った茶封筒を受け取ったねずみは、茂木組の親分・茂木やすお(錦鯉・長谷川雅紀)の暗殺指示を実行。しかしその後日、喫茶店で張っていた刑事・井上(浅野忠信)と福田(大森南朋)に殺人容疑で連行されてしまいます。 スナックのホステス(アジアン・馬場園梓)に面通しされ、取調べを受けるねずみ。井上と福田の厳しい取調べの中、麻薬組織への潜入捜査に協力すれば自由の身にすると取引を持ちかけられます。

麻薬捜査のため暴力団に潜入するねずみ

麻薬組織のボス・金城(中村獅童)と若頭・富田(白竜)との接触を図り、腕っぷしを買われて組織潜入に成功したねずみでしたが、なかなか麻薬の取引現場を抑えることができず。井上と福田から、混ぜ物した麻薬を囮にして尻尾をつかむよう言われます。 麻薬をパッケージにしてさばいている田村(宇野祥平)にかさ増し疑惑を押し付け、ボス自ら取引の場に出向かせることに成功。いよいよ取引の当日、待機していた井上と福田が取引現場に突入し、その場でねずみは逃げて射殺されるという一芝居を打ちます。 取引していた全員が連行された後、死を偽装したねずみは悠々と再登場。井上と福田に「これで俺は自由だろ?」と確かめ、ここで前半のシリアスパートは終了します。

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【後半ネタバレ】スピンオフのあらすじ・ギャグを解説

あまりにもドジな暗殺屋ねずみの間抜けな日常

後半のスピンオフパートでは前半のスマートな暗殺屋が、あちこちに身体をぶつけながら歩くようなドジなおじさんに反転。最初の暗殺も同じ展開ながら、用意していた逃走用の自転車もなくなっていて、服を脱いで走って逃げる始末。暗殺指示の紙も燃やしただけで火事になってしまいます。 喫茶店では椅子が壊れてたり、倒れてきた棚に押しつぶされたり。次の指示を受け取ると、なぜか指令を読み上げる謎人物(ビコーン!・前田志良)がバカでかいカバンに入っていたり。銭湯で殺すはずの茂木も、スキンヘッドの違う人物を浴槽に沈めてしまいました。 逮捕シーンは前田志良が警察官の姿で再登場し、大勢の警官たちが山になってねずみを取り押さえる場面に。面通しも明らかに全然違う人物ばかり呼ばれていて、その後急に暗転して「時間ちょうせい」画面が!SNSのコメント欄みたいな辛辣なコメント羅列が流れてきます。

ドジっ子ねずみのバカおかしな潜入捜査

井上と福田がようやく登場し、バカおかしなマジックを披露する取り調べを開始。なんとか潜入捜査の話になり、金城と富田に接触しようとしますが、これも結局上手くいかず。 寝る場所もないと言って富田に同情され、組織にやっと潜入できたねずみ。しかも組員たちにも無視されて、十八番ギャグ「コマネチ」をやっても誰も彼もノールック。潜入を監視している井上と福田もなぜか眼科医(空気階段・鈴木もぐら)の視力検査を見ています。 田村の件は途中までの展開は同じですが、唐突に司会者(劇団ひとり)が出て来て謎に椅子取りゲームが始まります。ねずみが優勝し、そのトロフィーを壊した田村をひたすら北野映画定番のセリフ「この馬鹿野郎」で責め立てていました。 麻薬取引の場面では金城と富田だけ連行されず、ねずみの偽装死がバレてしまいます。最後に井上と福田がねずみを使って「M」を捜索していたと判明し、Mが富田だと無理くりこじつけて終わりました。

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【感想】映画としては意味がわからない?

前半と後半で同じ設定と展開を用意し、シリアスをコメディに反転させてブラックな笑いを生み出そうとしたかなり実験的な作品。謎の指令と殺し屋、警察とヤクザ、麻薬組織と潜入捜査といった北野武監督お得意のノワールな素材を使って、セルフパロディとして描き直した試みは面白いと思いました。 しかしそれがうまくかみ合っていたかといえば、かなり微妙なところ。古参の北野映画ファンとしてセルフパロディや十八番のギャグには沸く部分もありますが、前半のシリアスパートがもう少しソリッドでカッコ良ければ、後半にもギャップが活きてきたような気もします。 キャストが豪華であること、人気芸人が出演していることも見どころではありますが、活かしきれているのかどうか。逆にそのナンセンスな笑いが狙いだとしたら成功しているのかもしれません。

【考察】二面性に潜んだ痛烈な批判

前半パートは監督・北野武として、後半パートは芸人・ビートたけしとしてのキャリアを反映させている本作。これまでのそれぞれのキャリアを考えると、確かにまったく真逆のものであり、その二面性は十分に表現されていたのではないでしょうか。 また、昨今のエンタメメディアでの傾向として動画配信の定着と消費スピードの速さがあり、それに対するシニカルな批判とも受け取れる面もあります。映画としては60分という短さ、シリアスパートすらやや軽いテイストであることを考えると、軽く消費されることを前提として作られているかのよう。 さらに映画やドラマなど考察して深読みする傾向も著しくなっているため、意味を重視しすぎる視聴者へ向けて、どれだけナンセンスなことを挑戦的に投げかけられるかの実験なような気もします。これも多分深読みなのかもしれませんが。 最後の最後に「スピンオフ&オフ」がおまけで付いていて、ねずみが喫茶店に入る前にコケて終わるというのも、物語が始まりすらしない点でシュール&ナンセンス!

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映画「ブロークンレイジ」キャスト・登場人物解説

ねずみ役/北野武

男たちの欲望渦巻く裏社会で、その卓越したスキルで暗躍してきた殺し屋のねずみ。しかし殺人容疑で警察に捕まってしまい、麻薬密売組織への潜入捜査を余儀なくされます。 ねずみを演じるのは、前作『首』(2023年)につづき、自ら主演を務める監督の北野武。本作は日本の配信作品として初めてヴェネツィア国際映画祭に正式出品され、高い評価を受けました。

井上刑事役/浅野忠信

ねずみに麻薬組織への潜入捜査を強要する刑事の1人である井上。 井上を演じるのは、『SHOGUN 将軍』で第82回ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞した浅野忠信です。北野作品では、『座頭市』(2003年)や『首』などに出演しています。

福田刑事役/大森南朋

井上とともに、ねずみに潜入捜査を強要する刑事の福田。 福田を演じるのは、ドラマ『私の家政夫ナギサさん』(2020年)などで知られる大森南朋。これまでの北野作品では『アウトレイジ 最終章』(2017年)、『首』に出演しています。

金城役/中村獅童

金城は、麻薬売買を取り仕切るヤクザの親分です。 金城を演じるのは、歌舞伎役者の中村獅童。映画『ピンポン』(2002年)や大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年)などへの出演で知られており、北野映画には、本作で初出演を果たします。

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北野組常連のほかキャスト陣

本作には北野組常連俳優も多数出演しています。 金城の取り仕切るヤクザの若頭・富田を演じるのは、『その男、凶暴につき』(1989年)や『アウトレイジ 最終章』にも出演している白竜。クスリの売人役を演じるのは、『座頭市』、『監督・ばんざい!』(2007年)、『龍三と七人の子分たち』(2015年)などにも出演している國本鍾建。 またこのほかに、ねずみが出入りするカフェの店長役を仁科貴が演じています。

初出演の人気芸人たち

『ブロークンレイジ』には、人気芸人たちが北野映画に初出演することでも注目を集めています。 謎の司会者役に劇団ひとり、ヤクザの親分役に「錦鯉」の長谷川雅紀、ホステス役に馬場園梓、眼科医役に「空気階段」の鈴木もぐら、そして警察官役を「ビコーン!」の前田志良が演じています。 彼ら人気芸人たちは、後半のコメディパートで活躍してくれるのではないでしょうか。

映画「ブロークンレイジ」の監督・脚本は北野武

北野武、ビートたけし

『ブロークンレイジ』では、北野武が監督・脚本を務めています。 本作では、「暴力映画における笑い」をテーマに掲げ、そのバランスに苦労したとか。また本作が配信作品であることについて、「劇場向けではなく、テレビ画面で観る配信コンテンツとして新たにやってみたかったことをテストでやってみた」とし、「今まで作った映画の“間”じゃなくて、インターネットに慣れている現代風の“間”を探ることが自分にとって冒険になった」と語っています。 ヴェネツィア国際映画祭の記者会見では、あまりに実験的な試みに「失敗だったかな、と思っている」とも語り、笑いを誘いました。

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映画「ブロークンレイジ」をネタバレ解説で深堀り

北野武最新監督作『ブロークンレイジ』。前半と後半とで同じ物語を違ったタッチで描く実験作は、ヴェネツィア国際映画祭で高い評価を受けました。 『ブロークンレイジ』は、2025年2月14日から、Amazonプライムビデオで配信開始です。