WOWOWドラマ『フェンス』あらすじ&ネタバレ感想!沖縄を舞台にした野木亜紀子作品
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野木亜紀子が脚本を手がけ、2023年にWOWOW「連続ドラマW」枠で放送された『フェンス』。この記事では、そんな本作の全話あらすじをネタバレありで解説します。 ※本記事にはストーリーのネタバレが含まれるため、未視聴の人は注意してください。
【ネタバレなし】ドラマ『フェンス』あらすじ
作品概要
タイトル | 『フェンス』 |
---|---|
放送年 | 2023年 |
監督 | 松本佳奈 |
脚本 | 野木亜紀子 |
キャスト | 松岡茉優 , 宮本エリアナ |
主題歌 | Awich「TSUBASA feat. Yomi Jah」(UNIVERSAL J) |
「連続ドラマW フェンス」は、『アンナチュラル』(2018年)や『MIU404』(2020年)などで知られる野木亜紀子オリジナル脚本のクライムサスペンスです。 野木が本作で選んだテーマは、沖縄県の米軍基地問題と性暴力問題。40日に渡って100人以上に取材し、総勢50人超の沖縄出身キャストを起用しています。制作陣にも沖縄と縁のある面々が揃い、リアリティのあるドラマとして話題になりました。
あらすじ
2022年に本土復帰50周年を迎えた沖縄県。雑誌ライターのキーこと小松綺絵は、米兵による性的暴行の被害者であり、ブラックミックスの大嶺桜を取材することに。桜の供述には不審な点があるため、まずは観光客を装って彼女に接近しようとします。 事件の背景を探っていくうちに、沖縄戦体験者でもある桜の祖母・大嶺ヨシは平和運動に参加しており、さらに父親が米軍人だと分かりました。 一方で、月刊誌で記事を書く以前は都内のキャバクラで働いていたキー。当時の客だった沖縄県警の警察官・伊佐兼史と再会し、協力して性的暴行事件の犯人を追います。しかし、日本とアメリカの間で結ばれた日米地位協定が捜査に大きな影響を及ぼして……。
ドラマ『フェンス』相関図
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第1話「ユクサー」あらすじ・ネタバレ
月刊誌『BOWOW』編集長・東(光石研)の指示で、沖縄県へ飛んだライターのキー(松岡茉優)。米兵に襲われたと訴える、ブラックミックスの女性・桜(宮本エリアナ)に会うためでした。東は基地反対派の“でっちあげ”を疑い、キーに桜の取材を依頼したようです。 キーは桜が経営するカフェバー「MOAI」を訪れ、彼女の祖母・ヨシ(吉田妙子)が沖縄戦体験者で、辺野古の基地建設に反対していることなどを聞きます。 前職時代の客だった警察官・伊佐(青木崇高)と再会し、事件当日の桜を捉えた防犯カメラ映像を確認するものの、性的暴行の証拠は何も見つかりません。彼女の証言を頼りに北谷ヘ向かい、蛇の絵がプリントされた黒いTシャツの男を探そうとすると、誰もが口を閉ざしてしまいます。 実は桜は女子高生の仲本琉那(比嘉奈菜子)をかばっており、心配する彼女に「琉那を襲った犯人を捕まえるためなら、私はユクサー(嘘つき)になる」と伝えました。
第2話「アメジョ」あらすじ・ネタバレ
桜の供述に不審な点が多い理由が判明し、改めて取材を進めていくキー。一方の桜は、在日米海軍犯罪捜査局(NCIS)の聞き取り捜査に協力しますが、詳細には答えられませんでした。 キーは琉那のツテを頼り、先輩のアメジョ(米兵と性的関係を持つ女性)を紹介してもらいました。 米兵のジェイ(ド・ランクザン望)が容疑者として浮上し、車の修理工場で彼を待ち伏せします。しかし、キーの姿を見たジェイはタクシーで逃走。キーもバイクで追跡しますが、基地内に逃げ込まれてしまい、「MOAI」へと戻ってきました。 キーは10歳まで沖縄で暮らしたことや、米軍基地のアジア系アメリカ人だった父親とは幼い頃から疎遠で、名前も知らないことを桜に打ち明けます。当時、母が町内会長にレイプされる現場を目撃しており、沖縄は彼女にとってのタブーでした。 ジェイを傷害罪で起訴しようとした矢先、キーの記事が東によって「基地反対派の虚偽証言」を暴く内容に書き換えられ、琉那の兄・颯太(與那城奨)が読んでしまいます。
第3話「ヒヌカン」あらすじ・ネタバレ
颯太は琉那の前で桜を嘘つきだと責め立て、本当の被害者である妹の心を傷付けます。 伊佐からの情報提供により、事件の数時間後にジェイがひき逃げ事故を起こしたと判明。その後、彼を含む米兵3人が琉那に声をかけていたと特定されます。ジェイは当日夜に複数の女性をナンパしたと認めますが、レイプ被害への関与は否定しました。 キーと桜はジェイの婚約者・実結(松田るか)と会い、彼女が妊娠していることを知るのでした。 PTSDの症状に悩まされ、性被害ホットラインに電話をした琉那。精神科医の城間薫(新垣結衣)に対し、過去に祖父から性的虐待を受けたと告白します。 ジェイはレイプ犯ではなかったものの、日本の反社会的勢力に大麻を届ける「運び屋」でした。NCISは捜査を打ち切り、実結との婚姻届も却下された後、彼は本国へと送還されました。東が書き換えた記事の影響で「MOAI」はネットで炎上し、琉那は行方不明になってしまい……。
第4話「マブイ」あらすじ・ネタバレ
警察に被害を訴え出た女性が現れ、米兵による連続性的暴行事件の可能性が浮上します。キーは被害女性が利用していたマッチングアプリに登録し、犯人を誘い出そうと考えました。 「MOAI」を訪れた黒人女性ホリー(Reina)から、自らの父・ウィルの過去を聞く桜。彼女が生まれる前、湾岸戦争の帰還兵だったウィルはPTSDを患っていました。桜の母と別れたのは自分の暴力から守るためであり、桜の現状を心配しているようでした。 キーは沖縄に対する言動を桜に叱責され、「沖縄への復讐を私にしないで」と言われます。 琉那の取材で出会った城間に対し、母・博美(中村優子)との過去を告白。母親が受けた被害を自分のものとして受け止め、心に傷を負っていたことを自覚しました。キーは疎遠になっていた博美に電話をかけ、「お母さんは悪くない」と伝えるのでした。 桜もブラックミックスとしての生まれを受け入れ、髪にストレートアイロンをあてるのをやめました。
第5話(最終回)「ヌチ」あらすじ・ネタバレ
キーはアプリで連絡してきたCOLINを捕まえるため、自ら囮になろうと動き出しました。 一方、桜は辺野古の埋め立て工事に詳しい、日林建設の社員・沢田和行(板橋駿谷)と話をします。そんな中、外国人住宅街で新たな性暴力事件が発生。伊佐は沖縄を経由中の米兵に目をつけ、上官を説得して容疑者のアレックスを署に連行しました。 桜のもとへ琉那から電話があり、彼女を襲ったのもCOLINの正体も沢田だと分かります。 沢田は大麻を焚いた部屋で桜をレイプしようとしますが、間一髪でキーが駆けつけました。伊佐の予想では、沢田は2件の性被害に大麻使用の罪を加えて刑期6~7年。アレックスは外国人住宅街での犯行は認めたものの、余罪を否定しているようです。 琉那はPTSDの治療を受けながらびんがた工房に就職し、颯太も妹のために実家を出ました。 キーは完成した原稿を別の出版社に持ち込むことに決め、父に会いにアメリカへ発つ行く桜に「『フェンス』というタイトルで本を出したい」と伝えるのでした。
ドラマ『フェンス』感想
沖縄県・普天間出身の高江洲義貴と、同県で報道記者をしていた北野拓もプロデューサーとして参加しており、問題提起への真摯な姿勢が伺えました。 全5話にしては多くの題材に手を出しすぎた感も否めませんが、作品の核はキーの「沖縄だけじゃない、日本の問題」という台詞に集約されています。たとえばオスプレイ墜落のニュースが流れた時にも、「大変だなぁ。うちの県は基地がなくてよかった」などと、まるで他人事だった自分の醜悪さを自覚した時の気まずさといったら……。 本土復帰50周年の沖縄を描く時にあえて性被害を主軸にしたのも印象的で、単なるフェミニズム以上の意味があるように感じました。 戦争の体験者は少なくなる一方で、性の尊厳はより身近な問題として捉えやすいでしょう。 セカンドレイプという言葉がありますが、性被害者に対する周囲の決めつけも、基地問題で「沖縄の努力が足りない」と言う本土の人間も無責任なのは同じです。国家の問題を個人レベルに落とし込み、自分事として捉え、本質を見る大切さを訴えたドラマだと思いました。
ドラマ『フェンス』は社会派ドラマの真骨頂!あなたはどう思う?
ジェンダーや人種といった壁をどう超えていくか、視聴者に問う社会派ドラマ『フェンス』。相互理解を深めることで、フェンスそのものも低くできるかもしれません。現代の日本を取り巻く様々な問題について、ぜひその目で確かめてみてください。