映画『市子』結末までネタバレ考察!北くんの死やエンドロールまで紹介

杉咲花が1人の女性の壮絶な人生を演じたヒューマン・ミステリー『市子』。この記事では、映画『市子』のあらすじをネタバレありで詳しく紹介し、ラストシーンとエンドロールの謎について考察していきます。
【ネタバレなし】映画『市子』作品概要
公開年 | 2023年12月8日 |
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メインキャスト | 杉咲花, 若葉竜也, 森永悠希, 倉悠貴, 渡辺大知, 宇野祥平, 中村ゆり |
監督 | 戸田彬弘 |
上映時間 | 125分 |
原作 | 戯曲『川辺市子のために』(戸田彬弘) |
杉咲花主演、若葉竜也共演で舞台『川辺市子のために』を映画化した『市子』。サンモールスタジオ選定賞2015で最優秀脚本賞を受賞し、戸田彬弘監督が主宰する「劇団チーズtheater」の旗揚げ公演で披露された人気の舞台が原作です。 主人公・市子の壮絶な半生を、杉咲花が圧巻の演技で表現。ドラマ「アンメット」でも共演した若葉竜也は市子の恋人・長谷川を演じました。 3年間一緒に暮らしてきた恋人・長谷川義則にプロポーズされ、その翌日に失踪した川辺市子。訳が分からず途方に暮れていた長谷川のもとに、市子を探しているという刑事・後藤が訪れます。長谷川はそこから市子の行方を追い、彼女と関りのある人々からの証言でその壮絶な人生を知ることに……。
【ネタバレ】『市子』のあらすじを紹介!
長谷川にプロポーズをされた翌日、失踪する市子
「川辺市子」と名乗る女性と同棲して3年になる長谷川義則は、原付バイクで家路を急いでいました。その頃、自分のカバンに荷物を詰め込んでいた市子は、テレビで「東大阪市生駒山の山中で白骨化した遺体が発見された」というニュースを見て手を止めます。 長谷川のバイクの音を聞いた市子は慌てて窓から家を飛び出しました。ベランダに残された市子のカバンを見て呆然とする長谷川。というのもこの前日、長谷川は市子にプロポーズし、それを受けて市子は「嬉しい」と涙を流して喜んでいたからです。
白骨遺体の身元が判明し、市子を探す長谷川
市子が突然失踪し、途方に暮れていた長谷川のもとに、後藤という刑事が訪ねて来ます。後藤は市子の写真を見せ「この女性、誰なんでしょう?」と逆に質問し、「川辺市子」という人間は“存在しない”と呟きました。 長谷川は個人的に動き出し、市子が住んでいた新聞配達の寮へ。そこで市子が仲良くしていた吉田キキという女性に会いますが、市子が「うち人殺してしもた」と告白していたことを聞きます。 情報交換しようと後藤と連絡を取った長谷川。白骨遺体は筋ジストロフィー患者「川辺月子」の可能性が高く、月子の姉である市子は無戸籍で、小学生から高校生まで月子になりすましていたのでした。
長谷川が北に会いに行く
後藤と長谷川は戸籍取得のために市子が訪れた支援団体で、市子の高校の同級生と名乗る「北秀和」の存在を知ります。2人は北を訪ねますが、後藤は川辺家が東大阪から姿を消した際に自殺として片づけられた「小泉雅雄」について、事情を知っていると思われる北を問い詰めました。 一方、北が市子を匿っていると考えた長谷川は、再び北の家を訪ね、「あなたと一緒で、僕も市子の味方です」と説得して真実を聞き出します。北は口論の末に市子が小泉を殺してしまう現場を目撃し、2人で小泉の遺体を線路に置いて自殺に見せかけたのです。しかしその途中で、市子は北の前から姿を消していました。
市子の母に会いに行く
北と別れた後、長谷川は市子のカバンに隠してあった1枚の写真を頼りに、市子の母・なつみがいると思われる徳島県へ向かっていました。「山浦美智子」と名乗っているなつみを探し出した長谷川は、警察かと疑うなつみを写真を見せて説得。発見された白骨遺体が月子のものと断定されたことを伝え、「市子を助けたい」と切実に訴えました。 なつみは長谷川に、2008年の夏、市子が月子の人工呼吸器を切って“殺害した”ことを告白。当時、なつみは夜の仕事に出かけ、市子はまだ月子として高校生活を送っていましたが、家では月子の介護を独りで行っていました。「もう限界だったんよ……いろんなことが。幸せな時期もあったんやで」と語るなつみの言葉に、長谷川は泣き崩れるのでした。
北のもとへ冬子がやってくる
長谷川に告白した後、北の家に「北見冬子」と名乗る自殺志願者の女性が訪ねて来ました。彼女はネット掲示板で市子と連絡を取り、身分証と交換に自殺を手伝う約束をしていたのです。2人は市子に言われるまま、指定された場所へ車で向かいます。 そこは海近くの防波堤で、市子は独りロケット花火を打ち上げていました。お互いに頭を下げ、挨拶を交わす冬子と市子。その翌日、テレビで「和歌山県西黒郡の海岸から1台の乗用車が発見された」というニュースが流れ、20代とみられる男女の遺体が発見されたことがわかります。 徳島からフェリーで離れる長谷川に後藤から連絡が入りますが、長谷川は電話を取りませんでした。埠頭には頭を下げるなつみの姿がありました。
『市子』あらすじを時系列でおさらい!
1999年7月 | 山本さつきが月子(市子)とケンカをして、力負けする |
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2000年9月 | 幸田梢と月子(市子)が仲良くなり、お互いの家を訪ねる 梢が月子の家で介護用のおまるを見つける |
2008年7月 | 田中宗介と付き合っている月子(市子) 北秀和と夏休みにアイスを食べる |
2008年8月 | 市子が月子を殺害 小泉が月子の遺体を生駒山の山中へ遺棄 |
2008年9月 | 市子が小泉を殺害する現場を、北が目撃 小泉の遺体を線路に放置して自殺に見せかける |
2009年5月 | ホームレスのような市子を、吉田キキが新聞配達の寮に誘う キキと一緒にケーキ屋をする夢を持つ |
2010年夏 | 支援団体に戸籍取得の相談に行く市子 北がそれを追って支援団体を訪ねる |
2010年12月 | ケーキ屋で働く市子を北が探し当てる 北の助けを拒絶する |
2013年夏 | 夏祭りで市子と長谷川が出会い、同棲を始める 石川県にいたなつみが居場所を徳島県に移す |
2015年8月 | 長谷川が市子にプロポーズする 失踪した市子が北のもとへ行く 月子の白骨遺体が発見される 後藤刑事が長谷川のもとを訪ね、長谷川が市子を探し始める |
2015年9月~ | 後藤と長谷川が北を訪ね、北が長谷川に真実を告白 北見冬子が北を訪ね、市子と合流 和歌山県の海岸から男女2人が乗る車が発見される |
北くんはなぜ死んだのか?

市子がネット掲示板で連絡を取り合った北見冬子は、この世を去る覚悟をして北の家へやってきました。しかしこの時の北は、「これはあかんやろ」と最初は断ろうとしています。それでも市子が電話をしてきた後、冬子を連れて市子のところへ行き、おそらくその晩に車ごと海へ飛び込んだと思われます。 この時の様子は描かれていないため、北が市子のために自ら死を選んだのか、それとも市子が北を殺して心中に偽装したのか、どちらかはわかりません。しかしいずれにしても、北は高校生の時からずっと市子に執着し協力し続けており、小泉の自殺偽装にも手を貸していました。 市子のためなら死も厭わないほど心奪われている様にもみえるため、最終的に市子に説得されて自ら車に乗り込んだのかもしれません。
『市子』の最後は?ラストシーンを紹介

和歌山県の海岸に水没した車に乗っていた20代の男女はおそらく北と冬子であり、市子は冬子の戸籍を手に入れて生きていくことになるだろうと想像されます。ラストシーンは物語冒頭と同じく、黒いワンピース姿の市子が童謡「にじ」を鼻歌で歌っているシーンになっており、最初に見た時とはまったく違った印象を受けるでしょう。 最後に見た鼻歌を歌う市子の姿は、彼女がこれまで背負ってきた壮絶で過酷な人生を知ってからだと、見え方が一変してしまいます。さらに長谷川からのプロポーズの場面も最後にもう一度出てきますが、このシーンも最初の時とは受け取り方が変わり、市子の嬉し涙が単純なものではなく、物悲しいものにすら思えてきます。
市子の鼻歌「にじ」の意味を考察!
劇中で市子となつみが鼻歌で歌っていた歌は、ケロポンズによる童謡「にじ」。この歌は市子が冒頭とラストで歌っているほかにも、市子が月子を殺害した後になつみも歌っていました。 戸田彬弘監督によれば、この曲が発表された1990年には川辺家では市子が3歳になる頃で、その当時のなつみの心情として「この先、無戸籍の市子をどうしてあげたら良いのか」と思い悩んでいたとのこと。一方市子もそんな母親の想いをこの歌を通して感じ、自分が踏ん張って生きていかなければならない時に口ずさんでいたのではと語っています。 なつみが長谷川に「幸せな時期もあったんやで」と言っていた通り、市子が大切に持っていた写真には小泉も含め4人が本当の家族のように幸せそうに笑って写っていました。月子のベッドの天井には虹が描かれていたことも考えると、決して最初から辛い日々ではなかったと思います。
『市子』エンドロールを解説
そんな幸せだった時期の川辺家の様子がうかがい知れるのが、エンドロールに流れてくる会話です。小泉が市子に年齢を聞き、なつみは7歳と答えますが、市子は10歳と返します。なつみが「市子」と咎めるように言いますが、小泉は「ええやん。うちの中だけやねんから」と終始柔らかい物言い。 月子の笑い声も聞こえ、この会話がおそらく市子の大切な家族写真が撮られた日のものだと想像させます。ケーキを食べているようで、きっと市子の10歳の誕生日を祝う幸せな1日を切り取ったものだったに違いありません。そんな会話で締めくくるエンドロールに、胸が締め付けられるような気持ちになります。
映画『市子』は普通の幸せを望み続けた女性の物語
ただただ、普通の幸せを望み続けた女性・市子の物語。彼女の生き抜く覚悟とその壮絶な人生に何を感じたでしょうか?振り返って改めて鑑賞してみると、新しい発見や気付きもあるかもしれません。