2025年4月9日更新

【ネタバレ解説】映画『片思い世界』3人の秘密やラジオの声の正体とは?タイトルに隠された意味の考察も

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片思い世界
(C)2025『片思い世界』製作委員会

坂元裕二脚本に、広瀬すず・杉咲花・清原果耶の豪華すぎるトリプル主演で話題の映画『片思い世界』が2025年4月4日に公開されます。 豪華なキャストやスタッフで話題の本作。この記事では劇中の謎やタイトルの意味について解説していきます!

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【ネタバレなし】映画『片思い世界』の作品概要・あらすじ!原作はある?

『片思い世界』
(C)2025『片思い世界』製作委員会
タイトル 『片思い世界』
公開日 2025年4月4日
上映時間 126分
監督 土井裕泰
キャスト 広瀬すず , 杉咲花 , 清原果耶

映画『片思い世界』のあらすじ

現代の東京の片隅。古い一軒家で一緒に暮らす美咲(広瀬すず)・優花(杉咲花)・さくら(清原果耶)家族や同級生ではないけれど、他愛のない会話をして楽しく気ままな日々を送っています。 12年間も固い絆で結ばれているそんな彼女たちの、誰にも言えない「片思い」とは?

映画『片思い世界』結末までのネタバレあらすじ

【起】美咲・優花・さくらの暮らし

『片思い世界』
(C)2025『片思い世界』製作委員会

美咲(広瀬すず)、優花(杉咲花)、さくら(清原果耶)の3人は、12年前から東京の1軒家で一緒に暮らしています。彼女たちはそれぞれに仕事に行ったり、大学に通ったりして、普通の生活を送っていました。 そんなあるとき、さくらは美咲が同じバスに乗り合わせた男性(横浜流星)を気にしているのに気がつきます。告白すれば、と美咲を囃し立てる優花とさくらでしたが、美咲には彼に思いを告白できない事情がありました。 一方、大学で物理学の授業に出ていた優花は、「観測できない素粒子」に興味を持ちます。

【承】3人の秘密

『片思い世界』
(C)2025『片思い世界』製作委員会

実は3人は、小学校に刃物を持った男が侵入し、児童たちを殺害した事件の被害者でした。それ以来、彼女たちは自分たち以外の人には姿が見えず、声も聞こえず、存在しないような状態になっていたのです。しかし“死んだ”はずの彼女たちは、その後も成長し、大人になりました。 3人はいつも津永悠木という人物のラジオを聞いていましたが、その放送の天気予報はいつもでたらめで、彼がなにかを発信しようとしているのでは、と考えます。するとあるとき、津永はラジオで「これを聞いている人は、死んでいますよね?」と言います。

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【転】元の世界に戻ろうと奔走する3人

『片思い世界』
(C)2025『片思い世界』製作委員会

津永は自分も1度死んだことがあり、生きている妻と思いを通じ合わせたことで生き返ったというのです。そして「あなたの大事な人に会いに行ってください」と呼びかけます。 優花はこの世界の仕組みについて、「観測できない素粒子」の観点から説明します。彼女たちは“死んだ”ことで、生きている人たちには観測できないレイヤーに移動したというのです。別々のレイヤーが同時に存在しているなら、津永の言う通り元の世界に戻れるかもしれません。 美咲はバスで出会った男性は、合唱コンクールでピアノを弾く予定だった高杉典真だと知っていました。一方、優花は母・彩芽(西田尚美)を見つけますが、再婚し子どももいる母は自分を忘れてしまったのだと落ち込みます。 そんななか、さくらは自分たちを殺した犯人・増崎(伊島空)が出所したと知り、なぜ自分たちを殺したのか知りたいと彼を探し出します。

【結末】3人の片思いの行方は……?

『片思い世界』
(C)2025『片思い世界』製作委員会

3人が増崎のもとへ行くと、そこには彩芽の姿が。彼女は増崎に娘を殺された怒りをぶつけ、車の中でもみ合いになってしまいます。3人はなんとか車から出た彩芽と一緒に走って逃げますが、増崎は刃物を持って追いかけてきました。 転んでしまった彩芽のカバンから、優花が生前好きだった三日月型のクッキーが出てきます。母は自分を忘れていなかったと涙を流す優花。彩芽に追いつきそうになった増崎は、車に轢かれてしまいます。 3人は津永の言ったとおり夜明けに灯台に向かいましたが、元の世界に戻ることはできませんでした。 一方、合唱コンクールの伴奏を辞退しようとしていた典真は、事件があったリハーサル室に足を踏み入れます。そこでかつて美咲が書いた音楽劇の脚本を見つけ、涙を流しながら読む典真。ラストシーンの王妃と想い人が抱き合うシーンで、美咲は彼を抱きしめました。 そして合唱コンクールの日、伴奏をする典真と、子どもたちと一緒にステージに立った3人。彼女たちの歌声は伸びやかに響きます。 その後、住んでいた一軒家はリフォームされることに。3人は今度はどこに行こうかと、楽しげに話しながら家を後にするのでした。

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【解説】タイトル『片思い世界』の意味

『片思い世界』
(C)2025『片思い世界』製作委員会

美咲たちの姿は、生きている人には見えません。彼女たちはどんなに“普通の”生活を送っていても自分たち以外とはコミュニケーションを取ることはできず、影響を与えることもできません。 そんななか、美咲はかつて合唱団でピアノを弾いていた高杉典真を見つけましたが、当然彼とコミュニケーションを取ることはできません。また優花は母・彩芽を見つけ、さくらは自分たちを殺した増崎を見つけますが、同じく彼らに影響を与えることはできませんでした。 彼女たちはそれぞれに相手と思いが通じ合えばと願いますが、それは叶わないことでした。この死者から生者に対しての一方通行の思いが、「片思い」というタイトルになっているのです。

【考察】ラジオの声の正体やレイヤーの意味とは

ラジオの声の正体は?

3人が聞いていたラジオを放送していた津永悠木という男性は、1度死に、ある方法で生き返ることができたといいます。 津永は美咲たちのような死者に生き返る可能性を提示することで、自分の人生と向き合ってもらうためにラジオ放送をしていたのかもしれません。自分が生まれた意味とはなんだったのか、死んでしまったらなにもなくなるのか、元の世界に戻ろうと奔走した3人は、必然的にそういった問いに向き合うことになりました。 生き返ることに失敗した美咲たちは、2度と彼のラジオを聞くことはありませんでした。これは、彼女たちが自分の死と向き合い、それを受け入れたから聞こえなくなったとも考えられるのではないでしょうか。 津永悠木の声は、松田龍平が演じています。

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美咲・優花・さくらは幽霊なの?

『片思い世界』
(C)2025『片思い世界』製作委員会

美咲、優花、さくらの3人は、幼少期にある事件によって命を落としました。しかし彼女たちは死んでからも成長し、大人になります。“普通の”人たちと変わらない暮らしをし、学校や仕事にも行く彼女たち。 優花の仮説によれば、彼女たちは生きていたころとは別のレイヤーに移動したようです。“生きている”人の世界では観測できない素粒子があり、3人はその観測できない素粒子のレイヤーで暮らしているのです。こういったレイヤーで暮らす存在を「幽霊」と呼ぶのかもしれません。 ただし彼女たちは誰にも見えず、物を動かしたり、音を立てたりすることもできないため、俗に言ういわゆる「幽霊」とは少しイメージが違うようにも思われます。

ファンタジーの中に描かれた坂元裕二の死生観

『片思い世界』
(C)2025『片思い世界』製作委員会

近年、坂元裕二脚本の映画は、2021年の『花束みたいな恋をした』、2023年の『怪物』、2025年2月公開の『ファーストキス 1ST KISS』と、次々に公開されてきました。『片思い世界』はもともと2024年に公開される予定でしたが、撮影中の事故により、2025年4月に公開となった事情があります。つまり、本来は「ファーストキス」より先に『片思い世界』が公開される予定だったのです。 『ファーストキス 1ST KISS』では、夫の死を避けようとタイムトラベルをくり返す妻の姿が描かれましたが、『片思い世界』では死者から見た死を描いています。そんな本作の主人公である3人の女性は、死んだあとも楽しく”生きて”います。どちらも「死」は必ずしも悪いものではなく、避けられないものだからこそ、より良く生きるための希望を描いた作品なのではないでしょうか。 『花束みたいな恋をした』では男女の別れを、『怪物』では生まれ変わりを、『ファーストキス 1ST KISS』では死の不可逆性と運命の可逆性を、そして今作『片思い世界』では死者や残された人々の思いにフォーカスされ、「死」を意識した脚本の中に、坂元裕二の死生観を現れていると言えるでしょう。

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【感想・評価】月のクッキーや、合唱シーンで涙腺崩壊

『片思い世界』
(C)2025『片思い世界』製作委員会

死者から生者への「片思い」が描かれる本作。しかしいくつかのシーンでは、確かに彼らの思いが通じあっているようで、涙を誘います。 優花は自分の死後、母・彩芽が自分のことは忘れてしまったのだと寂しく感じます。しかし出所した増崎に会いに来た彩芽は、優花の好きだった三日月型のクッキーをハンカチに包んで大事に持ち歩いていました。母は自分のことを忘れていなかったと知った優花は、どれほどうれしかったことでしょう。 また美咲たちは、事件のせいで出られなかった合唱コンクールに出ることにします。それぞれに制服っぽい衣装を作り、子どもたちと一緒に舞台に立つ3人。3人だけの合唱はとても美しく、そこにたどり着くまでの彼女たちの道のりと心情を思うと、自然と涙が流れてしまいます。

ロケ車が事故・映画の公開が延期に

事故に遭ったのは地方ロケを終えた帰路でのこと。都内に向かっていた監督・プロデューサーらを乗せた車が、対向車線を走行していたトラックにロケ車両右側を追突され、土井裕泰監督・運転をしていたプロデューサー・カメラマンの計3人が重症を負いました。 3人には骨折・臓器の損傷などが見られ、一時は命の危険もあったよう。事故後、監督らは骨折による影響で会話もままならなかったため、筆談で無事を報告しました。広瀬すずをはじめとする出演キャストはその報告に一安心。その後、撮影の大幅延期が正式に決定しました。 しかし、成長途中の子役たちは撮影を先延ばしにすることも難しく、監督不在の中、子役の登場シーンのみ完成させたようです。

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映画『片思い世界』のキャスト一覧

『片思い世界』
(C)2024『片思い世界』製作委員会
相楽美咲役 広瀬すず
片石優花役 杉咲花
阿澄さくら役 清原果耶
高杉典真役 横浜流星
桜田奈那子役 小野花梨
増崎要平役 伊島空
ストリートミュージシャン役 moonriders
加山次郎役 田口トモロヲ
木幡彩芽役 西田尚美
津永悠木(ラジオの声) 松田龍平

相楽美咲役/広瀬すず

『片思い世界』
(C)2025『片思い世界』製作委員会

相楽美咲は3人の中でも1番のしっかりもので、お姉さん的存在。そんな彼女にも秘密があり……。 相楽美咲を演じるのは広瀬すず(ひろせすず)。杉咲花・清原果耶と豪華トリプル主演を務めます。近年は、映画『ゆきてかへらぬ』(2025)やドラマ『クジャクのダンス誰が見た?』(2025)などに出演していました。 共演する2人に対し「尊敬しているお2人に頑張ってついていきたい」と語っており、また本作への意気込みでは「皆様と作っていく世界で一生懸命役として生きる」とコメントし、作品にかける熱い思いを伝えています。

片石優花役/杉咲花

『片思い世界』
(C)2025『片思い世界』製作委員会

片石優花は優しい性格で、3人の中では次女ポジション。そんな彼女にも秘密があり……。 片石優花を演じるのは杉咲花(すぎさきはな)。トリプル主演の一人を務めます。近年は、ドラマ『アンメット』(2024)やドラマ『海に眠るダイヤモンド』(2024)などに出演していました。 土井裕泰や坂本裕二の手掛けた作品が昔から好きだったと語っており、「夢のような座組に参加させていただけること、光栄に思います」と、本作への出演を大いに喜ぶコメントを発表しています。

阿澄さくら役/清原果耶

『片思い世界』
(C)2025『片思い世界』製作委員会

阿澄さくらは3人の中でも一番年下で、はっきりした性格の持ち主。そんな彼女にも秘密があり……。 阿澄さくらを演じるのは清原果耶(きよはらかや)。トリプル主演の一人を務めます。『花束みたいな恋をした』にも出演しており、本作出演の喜びはひとしおのよう。「すずちゃんや花ちゃんと3人で現場に立てる日が来るなんて夢にも思わなかった」というコメントからは、トリプル主演のひとりに選ばれたことを喜ぶ様子が伝わってきます。

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高杉典真役/横浜流星

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高杉典真は昔、美咲・優花・さくらの3人と同じ合唱団に所属し、ピアノを担当していました。成長した典真はどこか寂しそうな顔をしていて……。 そんな高杉典真を演じるのは横浜流星です。横浜流星は『流浪の月』(2022)で第46回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞し、その後『正体』(2024)では第48回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。2025年公開の李相日監督の『国宝』の出演も決定しています。

桜田奈那子役/小野花梨

『片思い世界』
(C)2025『片思い世界』製作委員会

典真とクラシック音楽を聞いていた女性、桜田奈那子。 桜田奈那子を演じるのは小野花梨です。『プリテンダーズ』(2021)で長編映画初主演を務め、『ハケンアニメ!』(2022)や『ミッシング』(2024)など、多くの作品に出演しています。また、テレビドラマ初主演となった『初恋、ざらり』(2022)は第50回放送文化基金賞ドラマ部門で優秀賞を受賞しました。

増崎要平役/伊島空

『片思い世界』
(C)2025『片思い世界』製作委員会

増崎要平を演じるのは伊島空。 『菊とギロチン』(2018)でデビューを果たし、近年は『ラーゲリより愛を込めて』(2022)や『カラオケ行こ!』(2024)、『ナミビアの砂漠』(2024)などの話題作に続けて出演しています。

ストリートミュージシャン役/moonriders

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ストリートミュージシャンを演じるのはmoonriders。 デビューから50周年のキャリアを持つ5人組ロックバンドです。1986年に活動休止を発表したが、5年後の1991年にはアルバム「最後の晩餐」にて活動を再開しました。現在でもメンバーそれぞれが多岐に渡って活動しています。また、メンバーの鈴木慶一は、映画『ファーストキス 1ST KISS』に出演しており、坂元裕二脚本への出演は2度目となりました。

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加山次郎役/田口トモロヲ

『片思い世界』
(C)2025『片思い世界』製作委員会

加山次郎を演じるのは田口トモロヲ。 俳優活動のほか、音楽活動や映画監督としても活躍しています。幅広い作品に出演し、名バイプレイヤーとしても有名です。近年は『ミッドナイトスワン』(2020)や『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画をつくったら~』(2021)、『嗤う蟲』(2025)などに出演しています。

木幡彩芽役/西田尚美

『片思い世界』
(C)2025『片思い世界』製作委員会

木幡彩芽を演じるのは西田尚美。 『ひみつの花園』(1997)で初主演を経験したのち、多くの作品で活躍する女優に。近年は『ヴィレッジ』(2023)や『傲慢と善良』(2024)、『正体』(2024)に出演しています。

津永悠木(ラジオの声)役/松田龍平

松田龍平

謎の男・津永悠木(ラジオの声)を演じたのは松田龍平でした! 坂元裕二脚本の作品の常連で、ドラマ『カルテット』やドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』に出演しており、今回で3度目の出演となりました。

坂元裕二(脚本)×土井裕泰(監督)の最強タッグ再び

脚本:坂元裕二

本作の脚本はこれまで『東京ラブストーリー』(1991年)や『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021年)など、長きに亘り名作を世に送り出してきた坂元裕二です。 『花束みたいな恋をした』のチームで挑む本作に「もうこれ以上のものは作れないと思いましたが、同じチームと再びはじめるからにはあれ以上を作るしかありません」とコメントし、前作以上のクオリティを突き詰めることをアピールしました。

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監督:土井裕泰

本作でメガホンをとるのは『麒麟の翼 劇場版・新参者』(2012)などの監督を務めた土井裕泰です。 脚本の坂元裕二に加え時代を先導する3人の女優がそろえられたことを「奇跡」と発言。また本作のタイトルについて「ストレートでシンプルなタイトルこそが、もしかしたら最大のミステリーなのかもしれません」とコメントし、作品内容が単純なラブストーリーではないことを示唆しています。

映画『片思い世界』の主題歌は「声は風」

映画『片思い世界』の劇中歌がカササギ合唱クラブが歌う「声は風」に決定しました。 本楽曲は脚本を担当した坂元裕二が「明井千暁」名義で作詞を手掛けたオリジナル合唱曲となっており、登場人物それぞれの思いを届けるような、温かく、優しい歌詞が印象的です。 また、劇中では横浜流星演じる高杉典真がピアノで「声は風」の伴奏を弾き、多くの人に感動を与えるシーンとなりました。

映画『片思い世界』は2025年4月4日公開!

片思い世界
(C)2025『片思い世界』製作委員会

死者の視点から生きることを見つめる『片思い世界』。主人公3人それぞれの「片思い」に、心が揺り動かされます。 あまりにも豪華なキャストとスタッフで話題の『片思い世界』は、2025年4月4日公開です。