【原作ネタバレ】映画『俺ではない炎上』結末までのあらすじ解説!意味不明な犯人の動機を考察

現代の「炎上事件」を題材にした、サスペンス・ミステリー小説『俺ではない炎上』が映画化!2025年9月26日に公開予定です。 この記事では『俺ではない炎上』の原作をネタバレありであらすじ紹介!犯人の動機や小説に隠されたトリックも解説します。
映画『俺ではない炎上』あらすじ【ネタバレなし】
「伏線の狙撃手」の異名を持つミステリ作家・浅倉秋成の小説『俺ではない炎上』がついに映画化。 「ある日突然、自分の顔が身に覚えのない事件の犯人としてネット上で拡散されたら…」という、現代のSNS社会で誰もが考えたことがある「炎上」を題材にした作品です。 SNSという匿名の刃がもたらす狂気と、人間の脆さを描き出す、息もつかせぬノンストップエンターテイメント。逃げ続けた先に待ち受ける、衝撃の真実とは――。
【原作ネタバレ】『俺ではない炎上』伏線だらけの結末までを解説
第1の語り手 | 住吉初羽馬(すみよししょうま)/演:藤原大祐 大学生インフルエンサー |
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第2の語り手 | 山縣泰介(やまがたたいすけ)/演:阿部寛 大帝ハウス大善支社営業部長 |
第3の語り手 | 山縣夏美(やまがたなつみ)/演:芦田愛菜 泰介の娘、大学生 |
第4の語り手 | 堀健比古(ほりたけひこ) 大善署刑事課の刑事 |
原作小説には4人の語り手が登場し、それぞれの視点で物語を語っていることを念頭に置いておきましょう。 ※本作の肝である「叙述トリック」については後に解説するため、ここでは原作の時系列そのままの順序であらすじを紹介していきます。
【起】なんで俺が炎上?連続殺人って何なんだ?
大学生の住吉初羽馬が目にした1件のツイート。それはまるで本物の殺人現場のような凄惨な写真がアップされたものでした。本当の殺人事件があったことを、犯人自身がほのめかしている?と直感した住吉は、その投稿をリツイートします。 フォロワー数の多い住吉のリツイートは瞬く間に拡散。その日のうちにSNS上で犯人探しが始まります。そうして特定班が突き止めた人物は、大手ハウスメーカーの営業部長・山縣泰介でした。 身に覚えのない「殺人犯」というレッテルを貼られ、職場から追いやられ、家に帰ることもできなくなった泰介。しかも近所の公園から女性の死体が発見され、ホテルに避難していた泰介が家に戻ると自宅からも別の女性の死体が!驚いた泰介は慌てて逃げ出します。
【承】住吉を巻き込んで泰介を追う謎の女子大生サクラ
事実無根であることを証明する術もなく、警察に追われるまま逃亡犯となってしまった泰介。その間に、サクラと名乗る女子大生から住吉のもとに1通のDMが届きます。サクラは泰介を一緒に探してほしいと頼んできたのです。 殺された女性2人とも、あくどい援助交際をしていた女子大生でしたが、サクラはそのうちの1人が自分の親友だったため泰介を捕まえたいと主張。しかし実は例のツイートが投稿されたアカウントはサクラが10年前に作ったもので、誰かに乗っ取られたこと、そして自分も泰介も殺人犯ではないことを住吉に告げます。 一方の泰介は元部下に助けを求めたところ、自分が嫌われていることを知ってしまい愕然とします。そんな中、泰介が苦手に思っていた取引先の社員・青江が意外にも彼を助け、青江の車を借りて「ここへ行けば事件の謎が解ける」と示されたメモを頼りにその場所へ向かいます。
【転】10年前に起きた出来事が事件の発端
被害者女性たちがマッチングアプリを使った悪質な援助交際を行っていたということから、泰介は10年前に娘の夏美に起きたある出来事を思い出します。小学5年生だった夏美がパソコンを覚え、SNSで知り合った男性とこっそり会う約束をしていたのです。 結局その男性は現れませんでしたが、実は連続幼女暴行犯だったと判明。泰介は激怒して夏美を一晩倉庫に閉じ込め、学校にまで抗議に乗り込んだのでした。祖母の家に一時預けられた夏美のもとに、クラスメイトの「えばたん」が訪ねてきて、夏美が受けた折檻に同情を示します。 この時、夏美は父親のためにゴルフ仲間を作ろうと、ウォークマンを使って泰介の名前でTwitterアカウントを作成。このアカウントが乗っ取られ、泰介を殺人犯に仕立て上げる道具に使われたのです。
【結】真犯人の正体と目的が表す現代の闇とは?
泰介はメモに書かれた「からにえなくさ」が示す場所である牧場跡地に辿り着きますが、そこには3人目の女子大生の死体が。追い詰められた泰介はその場で自殺を図ろうとしますが、夏美が助けに駆け付けました。住吉と一緒に泰介を追っていた「サクラ」とは、娘の夏美だったのです。 その場で取り押さえられた真犯人は、「えばたん」こと江波戸琢哉でした。えばたんは10年前に幼女暴行犯探しにも協力していましたが、その強すぎる正義感から今や悪質な援助交際をする女子大生3人を殺害。夏美が作った泰介名義のアカウントを乗っ取り、泰介にその罪を着せようとしたのです。 楽をして生きようとする女子大生たちを蔑み、大手ハウスメーカーの営業部長として順風満帆な泰介に嫉妬を覚え、一連の犯行に及んだえばたん。実はこの犯行が実現できたのは、夏美が10年前に彼に重要な個人情報を教えてしまっていたことも原因でした。
【原作解説①】『俺ではない炎上』の犯人の行動が意味不明?動機は何?

- 強すぎる歪んだ正義感
- 泰介に対する嫉妬と怒り
- ネットリテラシーの低い大人への警告
のちに犯人となるえばたん少年は、漫画の主人公・セザキハルヤに憧れ、漫画に登場する「私は私の信念を貫く」という言葉通りに生きようとする少年でした。しかし夏美の事件で泰介に叱られ、えばたんは好意のあった女の子の前で涙します。 その後、えばたんは父の死去で建築士の夢を諦めることに。自分の人生への憤りが爆発した結果、楽をして生きているように見えた、パパ活女子を殺害の標的にしたのです。 泰介に罪を着せた理由は、子供時代の叱責を「悪」と捉え「悪を懲らしめる」という歪んだ正義感と、夏美のネットトラブルは泰介にも問題があったことへの警鐘だったのではないでしょうか。
【原作解説②】なぜ犯人は成りすましを?『俺ではない炎上』トリックを解く
- 泰介に一晩倉庫に閉じ込められたこと
- 泰介の名前でTwitterアカウントを作ったこと
- 家の鍵の場所と暗証番号
- 秘密基地の「からにえなくさ」のこと
話を聞いて共感してくれたえばたんに、泰介にまつわる個人情報を教えてしまっていた夏美。まず個人的な秘密の場所だった「からにえなくさ」のことを知っていたえばたんは、そこに残されていたウォークマンを使って泰介のTwitterアカウントにログインしました。 そこに自分が殺害した女子大生の写真を投稿し、泰介を炎上事件に引きずり込んだのです。夏美が10年前の事件で泰介にネットを禁止されたことに納得できず、SNSを使って友達を探すのは良いことだと証明しようとしたこと、泰介のゴルフ仲間を作ろうとして泰介に成り代わって投稿していたことを、えばたんは知っていました。 これらの情報も利用して、あたかもこのアカウントが泰介自身が投稿しているかのように見せかけることに成功したのです。どんな個人的情報が悪用されるかわからないネット社会で、些細な情報でも人生を左右するような冤罪を作り出せてしまうことを物語っています。
【原作解説③】『俺ではない炎上』の叙述トリックがすごい

本作は泰介、夏美、ツイートを拡散させた少年・住吉初羽馬、そして警察官・堀健比古の4人の視点で語られます。しかし、夏美パートのみ10年前の出来事を語っていたのです。10年後の夏美はアカウント名「サクラ」として登場し、終盤になってようやく「夏美=サクラ」だと分かります。 夏美パートで「殺害事件」について語っていると思われたセリフは、実は「泰介に閉じ込められた出来事」に置き換わっていたのです。そして夏美が犯人であると匂わせながら、辻褄が合わない点が見えてきて、えばたんにたどり着く見事な叙述トリックが展開されます。
映画『俺ではない炎上』キャスト・登場人物解説
山縣泰介役/阿部寛

「女子大生殺人事件」の犯人に仕立て上げられる主人公・山縣泰介役は、阿部寛が演じます。 モデルとしてデビュー後、不遇の時代を経てドラマ「TRICK」シリーズでブレイク。2025年は『ショウタイムセブン』、『キャンドルスティック』、そして本作と主演が続く、日本を代表する演技派俳優です。
夏実役/芦田愛菜

山縣泰介の娘で大学生の夏美。夏美はハンドルネーム「サクラ」を使って住吉にDMを送り、泰介を一緒に追いかけることになります。 夏美を演じたのは、天才子役として人気を博し、今も第一線で活躍する芦田愛菜。ドラマ『Mother』(2010年)や『マルモのおきて』(2011年)、映画『星の子』(2020年)や『メタモルフォーゼの縁側』(2022年)などの代表作があります。 2024年は映画『はたらく細胞』に出演し、2025年には11月公開の劇場アニメ『果てしなきスカーレット』で主人公スカーレットの声優を務めています。
映画『俺ではない炎上』監督・スタッフを解説
監督:山田篤宏
『俺ではない炎上』(2025)の監督は、山田篤宏です。第1回木下グループ新人監督賞を受賞し『AWAKE』(2020)にて商業映画監督デビュー。それまでは乃木坂46のMVや短編映画を手掛けてきました。
脚本:林民夫
脚本を担当したのは、林民夫です。TVアニメ「サザエさん」の脚本や特撮「超星艦隊セイザーX」のシリーズ構成などを歴任しました。実写映画では『永遠の0』(2015)で日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞しています。
映画『俺ではない炎上』の公開日は2025年9月26日!

映画『俺ではない炎上』は2025年9月26日公開です! 原作小説は時系列を騙す、叙述トリックが肝となる作品。どのように映像で表現するのか今から楽しみです。阿部寛演じる泰介の「手に汗握る逃亡劇」を劇場でチェックしましょう。