2026年7月22日更新

『国宝』歌舞伎の演目一覧・あらすじ解説!どこで見れるのかも初心者向けに徹底解説

このページにはプロモーションが含まれています
『国宝』
©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

邦画の興行収入ランキングを塗り替える大ヒットを記録した『国宝』。この記事では、本作の劇中で演じられている歌舞伎の演目を紹介し、あらすじ・見どころなど解説していきます。

AD

『国宝』に登場した歌舞伎の演目は6種類!あらすじを解説

『国宝』 吉沢亮
©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

映画『国宝』は、吉田修一の同名小説を原作とした歌舞伎役者の半生を描く「芸道映画」。のちに「国宝」となる主人公の歌舞伎役者・喜久雄を吉沢亮、そのライバル・俊介を横浜流星が演じました。 3時間と長丁場である本作では、物語の展開に符合した内容の歌舞伎演目が要所要所で演じられます。 ここからは劇中に登場した歌舞伎の演目を一覧で紹介。あらすじや見どころとともに、物語とどのように符合し、どんな意味を持っているのかを解説していきます。

①関の扉(せきのと)

あらすじ

樹齢300年を超える桜の木「小町桜」がある逢坂山で暮らす、政変に巻き込まれた亡き帝の忠臣・宗貞。ともに関を守る関兵衛は実は天下を狙う大悪人・大伴黒主であり、大願成就するという吉相が出た占いによって小町桜を切り倒そうとします。 いざ桜を切り倒そうとすると、墨染と名乗る遊女が現れ、関兵衛を誘惑します。実は墨染は小町桜の精でした。彼女は宗貞の弟・安貞と恋仲でしたが、安貞が黒主に関兵衛に殺された恨みを晴らすために現れたのです。

劇中での登場シーン

劇中で演じられたのは、小町桜の精である遊女・墨染と関兵衛が出会う場面。本作の冒頭、ヤクザの新年会の余興として登場し、喜久雄が墨染を幼いながらも妖艶に演じていました。見どころである早着替えもこなし、宴席を盛り上げます。 この出来事で喜久雄は上方の歌舞伎役者・花井半二郎に女形の才能を見出され、のちに芸養子として引き取られることになる重要な場面です。

AD

②二人藤娘(ふじむすめ)

あらすじ

近江・大津にある松の大木に絡みついている藤の花に現れた2人の娘。藤の花の精である娘たちは、浮気性な男心と切ない女心を語り合いつつ、近江八景の歌に合わせて踊り出します。満開の藤の花の下で踊り、度々変わる衣装も華やかな舞踊作品です。 明確なストーリーはなく、優美な踊りと華やかな衣装を楽しむ演目です。

劇中での登場シーン

良きライバルとして切磋琢磨してきた喜久雄と俊介が初めて舞台で共演する演目として選ばれていますが、若い2人の才能を見せるには初々しく明るい最適な演目。 『藤娘』は基本的には1人で演じますが、女形の大きな見せどころとなる演目で、将来を期待される2人の力量を見せつけます。 この初舞台の成功によって2人は有力な興行主の目に留まり、京都南座の大舞台に上がる機会へ繋がっていきます。

③連獅子(れんじし)

あらすじ

狂言師の右近と左近が文殊菩薩が住むといわれる清涼山で、獅子の親子が険しい山を登る様子を表現します。親獅子は子獅子を千尋の谷に突き落とし、這い上がってくるたびに何度も蹴り落とす厳しい試練を与えます。そして子獅子が試練を乗り越えると、親子は一緒になって喜びの舞を踊りはじめます。 すると2人に獅子の精が乗り移り、本当の獅子のようになって狂ったように蝶を追いかけるのでした。 「獅子の子落とし」の伝説をもとにした舞踊作品。親子の獅子の精が霊山・清涼山の石橋で牡丹の花と戯れて踊る様を通して、親子の情愛と継承を表現しています。 豪快に長い毛を振り回す「毛振り」や、親子獅子の息の合った演技が見どころです。

AD

劇中での登場シーン

実際の親子で演じることも多い演目であり、劇中でも半二郎が俊介と演じていました。喜久雄が半二郎に引き取られて初めて見る歌舞伎演目として、かなり重要な意味を持っています。ここで、名門一家の跡取りである俊介と、芸養子として後ろ盾も血筋もない喜久雄との決定的な立ち位置の違いを見せつけているのです。 必ずしも親子で演じなければならない演目ではありませんが、喜久雄にはともに演じる相手がいない、その孤独感も醸し出します。

④二人道成寺(どうじょうじ)

あらすじ

平安時代の「安珍清姫伝説」をもとにした、女形舞踊劇の最高峰といわれる演目。 恋に破れた女が大蛇と化し、鐘に隠れた男を鐘ごと焼き尽くしたという伝説がある道成寺。焼け落ちた釣鐘が再鋳され、その供養が行われようとしていたとき、美しい白拍子が現れます。彼女のあまりの美しさに、僧侶たちは女人禁制の掟を破って、舞を舞うことを条件に彼女を招き入れました。 さまざまな舞を披露しながら、だんだん様子がおかしくなる女性。ついに激しい怨念をむき出しにして釣鐘に飛び込んだ彼女こそ、かつて恋人の僧侶に裏切られ、大蛇となって彼を焼き殺した清姫の怨霊だったのです。

AD

劇中での登場シーン

劇中ではこの演目が2回演じられており、1回目は京都南座でのメジャーデビュー公演、2回目は喜久雄の歌舞伎界復帰公演と、2人の成長と絆を感じさせる演出が際立っています。 南座公演は大成功を収め、喜久雄と俊介が次の歌舞伎界を担う若きスターコンビとして売り出されていきます。一方復帰公演では2人が「ただひたすらに共に夢を追いかけた」というキャッチコピーさながらに、辛酸を舐めた2人の成熟した姿を見せて対比していました。 女形の最高峰と認められた「立女形(たておやま)」が演じる特別な演目である「道成寺」。1回目は2人への期待の大きさが見て取れ、2回目は名実ともに「立女形」となった彼らの円熟味を感じさせます。

⑤曽根崎心中(そねざきしんじゅう)

あらすじ

江戸時代の浄瑠璃から歌舞伎となった男女の心中物語で、知名度の高い演目。 醤油屋の手代・徳兵衛とその恋人の遊女・お初。あるとき徳兵衛は、借金の返済に当てるはずの金を友人と思っていた九平次に騙し取られ、店をクビになってしまいます。もう死ぬしかない、と思い詰める徳兵衛にお初は心中を提案しました。 九平次の悪巧みが明らかになった時にはすでに、2人は心中しようと曾根崎へ向かっていました。

AD

劇中での登場シーン

劇中では最大の見どころである、お初が徳兵衛に死ぬ覚悟を問う場面と曾根崎へ向かう2人が登場。やはり2回演じられており、1回目は半二郎の代役に喜久雄が指名され俊介が姿を消した時、2回目は病に倒れた俊介の最後の公演として選ばれ喜久雄が徳兵衛を演じました。 俊介が最後の公演の演目に「曽根崎心中」を選んだのは、父の代役に指名されず、喜久雄に芸で負けたと感じた過去を乗り越えることができると思ったからではないでしょうか。 この2回の対比も素晴らしく、喜久雄のお初と俊介のお初両方を見せることで2人の因縁と執念を表現しています。さらに2人がともに芸道に命を捧げた様をこの演目で暗喩し、特に2回目はまさに2人で芸道に「心中」したかのような圧倒的迫力を持っていました。

⑥鷺娘(さぎむすめ)

あらすじ

人間の男に恋をした鷺の精が若い娘に姿を変えて、その恋心を表現する舞踊劇。娘は恋のよろこびや恥じらい、相手を想う切ない気持ちを次々と踊り分けていきます。 しかし恋は成就することなく、恋の執着心から地獄に落ちた娘は、再び鷺の精の姿に戻って罪の呵責に苦しみながら錯乱し、雪が降り積もる中で息絶えてしまいます。 初めは白無垢姿で登場し、最後は鷺の精の姿で美しくも哀しく儚い舞で魅了します。

AD

劇中での登場シーン

劇中では田中泯演じる万菊が踊る舞台を喜久雄が観劇する場面で登場。そして人間国宝となった後初めて喜久雄が踊った演目が「鷺娘」でした。“悪魔と取引して”までも芸道に執着した喜久雄が到達した点が、この演目だったのです。 2回演じられた「鷺娘」の意味も重要で、ここにも継承と血筋の因縁が表現されています。鷺娘は喜久雄にとって万菊から受け取った継承の証だったといえるでしょう。「鷺娘」で喜久雄を魅了し、歌舞伎にのめり込むきっかけとなった万菊もまた、芸道にすべてを捧げ、それ以外の人生を持たない人でした。

初心者必見!『国宝』の歌舞伎演目はどこで見れる?

歌舞伎を上演している劇場といえば、東京の歌舞伎座が有名です。歌舞伎座では、1年を通して月ごとに違った演目が上演されています。『曽根崎心中』などは人気演目なので、よくかかっています。 また新橋演舞場でも歌舞伎の興行がよく行われています。 関西では大阪の大阪松竹座、京都の南座などが有名。そのほかには福岡の博多座、愛媛県の内子座、秋田県の康楽館などがあります。

『国宝』で登場した歌舞伎演目を解説しました!

『国宝』 渡辺謙 寺島しのぶ
©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

映画『国宝』に登場した歌舞伎演目をおさらいしてから、再度鑑賞してみればきっとさらなる発見があるはず!演目と物語が絶妙に符合した演出も大きな見どころですので、ぜひまた劇場に足を運んでみてください。