『NEW GROUP』下津優太監督生涯ベスト映画&ベスト映画監督―強く影響を受けた3名の監督とは?
映画『NEW GROUP』が2026年6月12日(金)より全国公開。本作の公開を記念し、監督・下津優太さんに"映画"をテーマにインタビュー。映画の原体験や監督を志したきっかけ、生涯ベストに挙げる1本、そして自身の映画づくりのバイブルとなっている3人の映画監督について、じっくりと語っていただきました。 ※インタビュー取材の模様を撮影した動画コンテンツをYouTubeのciatr/1Screenチャンネルで公開中!
映画『NEW GROUP』作品概要
| 公開 | 2026年6月12日(金) |
|---|---|
| 監督 | 下津優太 |
| 出演 | 山田杏奈 , 青木柚 , ピエール瀧 ほか |
| 公式サイト | 公式サイトはこちら |
組体操という集団行動を題材に、人間心理の根底をコミカルかつシリアスに炙り出すSFサイコエンタテインメント『NEW GROUP』。商業映画監督デビュー作『みなに幸あれ』で国内外の観客に衝撃を与えた下津優太監督の劇場公開2作目です。
家庭に問題を抱え、自分の意見をうまく言えない内気な高校生・アイ(山田杏奈)と、海外からの転校生・ユウ(青木柚)。協調性を重んじる日本の学校になじめない2人は、やがて"組体操"をめぐる集団の奇妙な現象に巻き込まれていきます。 多様性が叫ばれる時代に、集団に埋没する幸せとは何かを問う、SFサイコエンタテインメントです。共演にはピエール瀧が集団を率いる校長役で参加しています。
映画『NEW GROUP』作品インタビューはこちら
下津優太監督が選ぶ生涯ベスト映画と映画づくりの原点

ここからは、下津監督が"映画"そのものについて語ったインタビューをお届けします。生涯ベストに挙げる1本、そして自身の作風のバイブルとなっている3人の映画監督とその代表作について、たっぷりと語っていただきました。
生涯ベスト映画『インターステラー』(2014)

ベタで恐縮なんですが、『インターステラー』です。娘と父親の話がテーマの中心になっていて、途中、アン・ハサウェイ演じる人物の「愛は時間や空間を超える」というセリフがあるんですけど、まさにそれを体現しているような映画ですね。 すごく理系な映画だと思いつつも、同時にとてもエモーショナルで、感動させられる作品になっているなと思いました。実は自分の父も7、8年前に亡くなってしまったんですけど、あの映画を観てから、目に見えないようなものを信じてみたり、自分が感じるものを信じてみようと思えるようになった。 そういうきっかけをくれた作品でもありますね。
『インターステラー』作品概要
クリストファー・ノーランが監督を務めた2014年公開のSF大作。主演はマシュー・マコノヒー、共演にアン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン、マイケル・ケインらが名を連ねます。 環境の悪化によって人類の存続が危ぶまれるなか、元宇宙飛行士のクーパーが、新たに移住可能な惑星を探すため宇宙へと旅立ちます。理論物理学に基づいた壮大な宇宙描写と、時空を超えて描かれる父と娘の絆が高く評価され、第87回アカデミー賞では視覚効果賞を受賞しました。
下津優太監督のバイブル 敬愛する映画監督3選
好きな映画監督①『デヴィッド・フィンチャー』

デヴィッド・フィンチャー監督は、気持ちがよいくらいの映像美と、映像のつなぎ方ですね。やっぱり、その"映像マジック"というものに、僕はすごく魅了されたなと思います。 テーマというよりは、撮影の仕方だったり、トーンだったり、編集のやり方だったり、音楽の付け方だったり。あのあたりを、フィンチャーが感覚的にかなりいいなと思うものがあって、すごく参考にさせてもらっています。 よく聞くのは、基本50テイクくらい撮るとか、引きのフィックスの画にもスタビライザーをかけるとか、ちょっと常人では考えられないような映像へのトライの仕方をされていて。すごくストイックなんですよね。本当に言語化しづらいんですけれど、"フィンチャーマジック"というか、そこがすごく魅力だと思います。
好きなデヴィッド・フィンチャー作品:『セブン』『ドラゴン・タトゥーの女』
デヴィッド・フィンチャーはアメリカ出身の映画監督。緻密に計算された映像設計と重厚なトーンで知られ、『ファイト・クラブ』『ゾディアック』『ソーシャル・ネットワーク』『ゴーン・ガール』など数々の話題作を手がけてきました。 下津監督が名前を挙げた『セブン』(1995)は、七つの大罪になぞらえた連続殺人事件を追う刑事たちを描くサイコスリラー。『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)は、スティーグ・ラーソンの世界的ベストセラー小説を映画化したミステリーで、いずれもフィンチャーの緊張感あふれる映像世界が堪能できる作品です。
好きな映画監督②『ジョーダン・ピール』

ジョーダン・ピールに関しては、逆に映像美というよりも、内容だったり、お話の構造というものにすごく惹かれています。やはり社会問題と、今まで観たことのないようなものを、映像で組み合わせている作風が多いので。 まさに僕も、まだ2作品しか撮っていないですけど、テーマだったり展開の仕方の面でやらせてもらっています。感覚的には、ジョーダン・ピールのような内容を、フィンチャーのような映像のトーンで撮る。そういうものを心がけてやっていますね。
好きなジョーダン・ピール作品:『ゲットアウト』

ジョーダン・ピールはアメリカ出身の映画監督。俳優・コメディアンとしても活動し、社会問題をホラーやスリラーの語り口で描く作風で世界的な注目を集めています。 下津監督が挙げた監督デビュー作『ゲットアウト』(2017)は、黒人青年が白人の恋人の実家を訪れたことから巻き起こる恐怖を、人種差別というテーマとともに描いた作品。比較的低予算ながらそれを感じさせない完成度とエンターテインメント性が高く評価され、第90回アカデミー賞では脚本賞を受賞しました。以降も『US/アス』『NOPE/ノープ』を発表しています。
好きな映画監督③『ヨルゴス・ランティモス』
ヨルゴス・ランティモスでいうと、少しアート性だったり、気味の悪さだったり、もうちょっと理解不能な内容を参考にさせてもらっていますね。 『ロブスター』のあたりから観始めて、最近は『ロブスター』や『聖なる鹿殺し』あたりからすごく観ているんですけど、本当に唯一無二な監督で。僕もかなり参考にさせてもらっています。
好きなヨルゴス・ランティモス作品:『ロブスター』『聖なる鹿殺し』
ヨルゴス・ランティモスはギリシャ出身の映画監督。独特の不条理な設定と、どこか居心地の悪さを漂わせる映像世界で、唯一無二の評価を確立しています。 下津監督が挙げた『ロブスター』(2015)は、独り身の人間が一定期間内に伴侶を見つけられないと動物に変えられてしまうという、奇妙な社会を描いた寓話。『聖なる鹿殺し』(2017)は、一人の少年の来訪をきっかけに、ある外科医の家族が不可解な運命へ飲み込まれていくサイコスリラーです。近年は『女王陛下のお気に入り』『哀れなるものたち』でも高い評価を得ています。
【映画『NEW GROUP』が3監督から受けた影響】

Q. 3名の監督の作品から、映画『NEW GROUP』が影響を受けたところはありますか? 下津監督 本当に、その3監督から少しずつ抽出して描いているというのが、正直なところですね。ジョーダン・ピールの物語の展開だったり、テーマ性の入れ方、エンタメへの落とし込み方を参考にしつつ、映像の撮り方や編集の仕方はフィンチャーを参考にして。 たまに、ヨルゴス・ランティモスのちょっとした気持ち悪さや、少しアーティなところを参考にしつつ。まさに、その3監督がバイブル的な感じです。

1作目の『みなに幸あれ』では、かなり『聖なる鹿殺し』をオマージュさせていただいたんですけど、2作目の『NEW GROUP』に関しては、ジョーダン・ピールの『US/アス』や『NOPE/ノープ』が少し入っているような気もしますね。 あと、クライマックスで山田杏奈さんが青木柚さんにある行為をするんですけど、それも少しヨルゴス・ランティモスの奇妙な感じを参考にしているかもしれません。
【映画の原体験】VHSで観たジャッキー・チェン

Q. 下津監督の映画の原体験についてお聞かせください。 下津監督 僕の覚えている限りの映画は、正直、映画館にはあまり観に行っていなかったんですけど、レンタルビデオ屋さんでジャッキー・チェンの作品を、当時はVHSだったと思うんですけど、借りてきて母親と一緒に観ていた記憶が、最初のスタートですかね。 映画は、人並みに観ているくらいの感じのスタートでした。
【映画にのめり込んだきっかけ】
Q. 映画にのめり込んだきっかけと時期をお聞かせください。 下津監督 そこから大学に行きまして、大学の選べる授業のなかに、映画の作り方のような授業があったんですね。それを取ってみて、面白いなと思って。 ちょうどその頃から、一眼レフを使って映像制作ができるようになったという時代の流れもあったので、自分でカメラを買って、友達と撮り始めたのが、一番のスタートですかね。
【鑑賞する作品の傾向】
Q. 鑑賞する作品の傾向をお聞かせください。 下津監督 基本は洋画がメインですね。A24やブラムハウスなど、自分の作風と近いようなところの洋画を観ることが多いです。
【監督として幸せを感じるとき】観客に作品が届いた瞬間

Q. 映画監督として一番幸せを感じる瞬間をお聞かせください。 下津監督 やはり、映画を観ていただいて、良いリアクションをいただいた時かなと思います。日本での公開はまだなので、これまでは海外の映画祭をいろいろ回らせていただいて。そのなかで、目をキラキラ輝かせながら「良かったよ」と言っていただいた時が、一番報われる瞬間かなと思います。 なので、日本でも多くの方に届くことを願っています。
▼取材・文:増田慎吾


