2026年6月3日更新

『国宝』寺島しのぶが幸子を演じた特別な意味とは?“芸か血か”音羽屋の家系をもとに徹底考察

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『国宝』 渡辺謙 寺島しのぶ
©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

2025年に公開され、邦画実写映画歴代興行収入1位を記録した『国宝』。本作で主人公の1人である俊介の母・幸子を演じている寺島しのぶは、自身も人間国宝の父を持つ、歌舞伎界に関わりの深い人物です。 この記事では、幸子のプロフィールとともに、寺島しのぶが同役を演じた意味について解説していきます。

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『国宝』寺島しのぶ演じる大垣幸子のプロフィール

大垣幸子は二代目花井半二郎の後妻で、俊介の実の母です。上方歌舞伎の名門を支える女房である彼女は、当初は喜久雄を引き取ることに反対しますが、彼の役者としての才能に気づき、育てていきます。 幸子は喜久雄の才能は認めつつも、半二郎の名跡を継ぐのは息子の俊介だと信じていました。しかし俊介が失踪してしまい、その願いは叶わなくなってしまいます。

『国宝』寺島しのぶの出演に込められた特別な意味とは

寺島しのぶの父は七代目尾上菊五郎!息子も歌舞伎役者に

寺島しのぶ

寺島しのぶの父は、歌舞伎役者で人間国宝の七代目尾上菊五郎です。映像作品でも活躍する弟は、2025年に八代目菊五郎を襲名しました。 寺島にはフランス人の夫との間に息子・眞秀(まほろ)がおり、彼もまた歌舞伎役者です。2017年に本名の寺嶋眞秀で初お目見得した後、2023年に初代尾上眞秀の名で正式にデビューしました。

自身は歌舞伎役者になれないという呪縛

歌舞伎の世界で育った寺島しのぶは、自身も歌舞伎役者になりたいと夢見ていたといいます。しかし歌舞伎は女人禁制の世界。彼女は「歌舞伎役者になれる弟を、昔は羨ましいと思っていた」と複雑な心境を明かしています。 それでも“役者”という生業に惹かれつづけた寺島は、現代劇の俳優になりました。しかし歌舞伎への思いは尽きず、2017年に市川海老蔵(現・市川團十郎)が主演を務める『六本木歌舞伎 座頭市』に出演。2023年には『文七元結(ぶんしちもっとい)』で、女性として初めて歌舞伎座の舞台に立ちました。

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「芸か血か」寺島しのぶに受け継がれる“芸”の系譜

寺島しのぶの祖父である七代目尾上梅幸は、養子でありながら人間国宝にまで上り詰めた人物です。音羽屋の名跡「尾上菊五郎」を襲名することはありませんでしたが、息子(寺島の父)は「菊五郎」を襲名しており、その実力と人気の高さがうかがえます。 七代目尾上梅幸は養子ということで、『国宝』の喜久雄と同じ“芸”の人であり、その孫である寺島も“芸”の系譜にあるといえます。そういった背景もありながら、“血”の系譜を守ろうとする幸子を演じました。 一方で、梅幸は六代目菊五郎の隠し子だったという説もあり、真実は明かされていないため寺島自身も“血”の系譜にある可能性もあります。

寺島しのぶのコメントに矛盾?その真意とは

寺島しのぶは『国宝』完成報告会の際、幸子役について「この役は、あまりリアルに考えても成り立たない」とし、「夢のある物語だなと思いました」と発言しています。 これは、前述のとおり自身が“芸”の系譜であり、“芸”で身を立てた寺島が言うのは矛盾しているように感じられます。 しかしこれを“梨園の妻”の視点から見ると違ってきます。「自分の息子に名跡を継がせたい」と跡目争いが起きることもある現実と比べると、幸子が喜久雄の才能を認めるというのは“夢のある物語”なのではないでしょうか。

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『国宝』原作小説における幸子はどんな人物?

国宝

映画の幸子が終始、喜久雄に対して冷たい態度であるのとは対照的に、原作の幸子は葛藤もありながら、喜久雄を花井家の人間として手厚くサポートしています。喜久雄の舞台出演のたびに贔屓筋の挨拶回りをしたり、藤駒の出産を手伝ったりと、映画とはかなり印象が違います。 また原作には夫の死後、新興宗教に傾倒するなど幸子の波乱万丈な人生も描かれています。

『国宝』寺島しのぶが俊介の母・幸子を演じた大きな意味

実際の歌舞伎の世界を知る寺島しのぶは、細かい演出についても自身の経験を活かしてアドバイスをしたといいます。 “芸”の系譜を持ち、歌舞伎役者の夢に敗れながら、自身も“芸”で身を立てた寺島しのぶ。そんな彼女が“血”の継承を守ろうとする幸子を演じたことで、『国宝』にリアリティを与えているでしょう。