2026年6月30日更新

【今泉監督に聞く】『クロエマ』制作秘話―『冬のなんかさ、春のなんかね』との意外な繋がりとは?

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ドラマ『クロエマ』作品概要・あらすじ

タイトル『クロエマ』
配信2026年6月12日(金)よりPrime Videoで世界独占配信(全5話)。6月12日から3週にわたり、毎週金曜日に2話・2話・1話ずつ配信
原作海野つなみ『クロエマ』(講談社「Kiss」連載)
監督今泉力哉
脚本今泉かおり
音楽池永正二
主題歌LAUSBUB『sign』
出演杉咲花 , 多部未華子 , 岩瀬洋志 , 井之脇海 , 河井青葉 , 野添義弘 , 諏訪太朗 , 光石研
チーフプロデューサー大瀧亮
プロデューサー鳴海波奈子 , 鈴木徳至
企画小原亜弓
制作プロダクションWOWOW・コギトワークス

恋も仕事も家も一度に失った 30 歳の女性・エマが、謎めいた資産家の女性・クロエの屋敷に辿り着く。ふたりは、ひょんなことから同居生活を始め、占いの店を開くことに。店を訪れるのは様々な悩みを抱えた人々だが、語られる相談の裏には、別の事情や本当の問題が隠れているようで、エマとクロエは占いを手がかりに、その正体を探り当てていく。 すべてが明快に解決するわけではない中で、対照的なふたりの関係もまた、少しずつかたちを変えていく。解けたり解けなかったりする謎の数々とふたりの関係を描く、甘くてちょっとダークな占いミステリー。家族でもない、友達でもない、それでも一緒にいてなぜだか心地がいい。ちょっぴり変なふたりがたどり着く物語の結末とは……。

今泉力哉監督プロフィール

今泉力哉監督 クロエマ
©海野つなみ/講談社 ©2026 WOWOW

1981年生まれ、福島県郡山市出身。日常の会話や沈黙に宿る感情を丁寧にすくい取り、恋愛の不確かさや、人と人との微妙な距離を繊細に描いてきた映画監督。 2019年の『愛がなんだ』で広く注目を集め、2021年公開の『街の上で』では、変わりゆく下北沢を舞台に、古着屋で働く青年と周囲の人々の出会いを描きました。街角の古着屋や古本屋、自主映画の現場、飲み屋で交わされる何気ない会話を物語に溶け込ませ、何者でもない時間の豊かさを映し出した群像劇として支持を集めています。 近年も『窓辺にて』『ちひろさん』『アンダーカレント』などで創作を重ね、2026年には日本テレビ系ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』で主演・杉咲花と組み、監督・脚本を担当。考えすぎてしまう人のためのラブストーリーとして、今泉作品らしい揺れる感情の機微をテレビドラマにも広げています。

【原作を読んだ印象】“シスターフッド”にもはまらない、ふたりの絶妙な距離感

Q. 海野つなみさんの原作漫画『クロエマ』を読まれた感想をお聞かせください 今泉監督 女性ふたりの物語というと“シスターフッド”という言葉がありますが、この作品はその言葉にも少しはまらないというか。ふたりで共闘して何かに向かうわけではなく、仲がいいのか悪いのかわからない距離なんですよね。その距離感も含めて、すごく面白いと思いました。 登場人物がみんな魅力的で、それぞれにちゃんと欠陥がある。そこに惹かれたのは大きかったかもしれません。構造としては探偵ものに近いと感じていて、迷える人がやってきて、それを解決するかどうかの話があり、最後にパフェがある。探偵ものでいうところの相談者の立ち位置が、占ってほしい人、という形に変わっているんだなと、脚本をつくっていくときに改めて思いました。

【原作者・海野つなみさんの印象】サインを交換し合った、穏やかな時間

Q. 原作者の海野さんとは、ドラマ化にあたってどのようなすり合わせをされましたか 今泉監督 脚本かプロットがある程度できてから、脚本を担当した妻も交えて講談社で一度お会いしてお話ししました。ただ、そのときも「このシーンが」という細かい話よりは、作品のキャラクターのこと以外にも、お笑いの話など、作品と関係ない話もして。とても気さくな方で、いろいろ話してくださるんです。 海野さんが自分のことを知ってくださっていて、自分も知っていたので、その関係のなかで穏やかな会になりました。撮影後の打ち上げでもよくしていただいて。原作者の方から逆に「サインをください」と言われたことは初めてで、台本にサインをして、「では逆にいただいていいですか」と自分もサインをいただいたり。本当に穏やかな時間でしたね。

【脚本づくり】原作の要素を生かしながら、時間を巧みに織り込む

Q. 脚本を担当された今泉かおりさんとは、どのように脚本を練り上げていったのでしょうか 今泉監督 一度すべて妻にお任せして。冒頭などは、原作通りにやると公園のシーンで時間が長くなったりするので、公園やハローワークに通っている現在の時間と、家にいる時間を混ぜたりと、その辺りは妻が工夫して色々相談を受けつつ書いてくれました。 あとは原作に忠実に流れを置いていきました。漫画や小説が原作の場合は、どこを省略するかが肝になってきます。そのなかでも、なるべく原作の要素を生かしていこうとしていました。

【エマ役・杉咲花】作品を“閉じさせない”絶妙なさじ加減

ドラマ「クロエマ」 杉咲花
©海野つなみ/講談社 ©2026 WOWOW

Q. 杉咲花さんのキャスティング背景と、エマのキャラクター造形でこだわった点をお聞かせください 今泉監督 エマって誰が演じられるのだろう、とずっと思っていました。『冬のなんかさ、春のなんかね』という作品から2作連続で杉咲さん主演という形になったのですが、オファーしたらやっていただけることになって。撮影は『クロエマ』の方が先ですけど、一緒にやることが決まっていたのは『冬のなんかさ〜』の方が先でした。 杉咲さんは、エマというキャラクターを僕が想像していたよりも少しだけフィクショナルに、テンションを高めにしたり、声のトーンも作ったりしてくれました。自分の好みでやるとリアリティベースになって、冒頭のシーンなんかももっと疲れている人にしてしまいがちなのですが、そのバランスを杉咲さんが自ら取ってくださっていました。

『ちひろさん』
©2023 Asmik Ace, Inc. ©安田弘之(秋田書店)2014

漫画原作をやるときは、自分の好みに全部寄せたほうがいいのか、毎回迷うんですよ。『ちひろさん』のときの有村架純さんもそうでしたが、少しだけキャラクターっぽくしてくれることで、作品が閉じない。見ていても重苦しくならず、見やすくなる。そういうことは意識しながら、演出しています。

【『冬のなんかさ』との関係】ご一緒した時間がプラスに働いた

ドラマ、冬のなんかさ、春のなんかね 杉咲花
©日テレ

Q. 『クロエマ』の撮影が『冬のなんかさ、春のなんかね』に影響したことはありましたか 今泉監督 一度がっつりご一緒できたことで、相手を知れたり、関係性や現場の空気も知れたことは大きかったと思います。また、『冬のなんかさ〜』はオリジナル脚本なので、もっと等身大というか、作り込まないキャラクターでやってもらって。どちらが良い悪いではないのですが、ご一緒した時間があったことはすごくプラスに働いたと思います。

【喫茶店「イスニキャク」】惹かれた言葉が、別作品にもつながる

Q. カフェの名前「イスニキャク」は、『冬のなんかさ〜』に登場する店と同じなのでしょうか 今泉監督 同じお店ではないですが、「イスニキャク」という言葉に自分が惹かれていた時期があって。まず、『クロエマ』に登場する喫茶店の名前として使いました。そのあとで『冬のなんかさ〜』に出てくる喫茶店に同じく「イスニャク」という名前をつけました。実は『クロエマ』が先なんです。

【クロエ役・多部未華子】そこにいるだけで安心する“異様な落ち着き”

ドラマ 「クロエマ」
©海野つなみ/講談社 C2026 WOWOW

Q. 多部未華子さんのキャスティング背景と、クロエのキャラクター造形でこだわった点をお聞かせください 今泉監督 多部さんとは『アイネクライネナハトムジーク』(2019年公開、2018年撮影)以来でした。そのときも異様な落ち着きがあって、すごく信頼できる方なんです。受ける芝居が本当にいいんですよね。

アイネクライネナハトムジーク
(C)2019「アイネクライネナハトムジーク」製作委員会

今回は結構コミカルな芝居も多くて。火事になっているのに着替えることのほうが大事、みたいな場面のお芝居って、実はめちゃくちゃ難しいんですよ。面白くしようとして、やりすぎちゃう人も多かったり。 それを多部さんはやりすぎず、堂々と演じてくださる。『アイネクライネ〜』の頃から覚えているのですが、多部さんがそこにいるとそのシーンが安定する。いるだけで安心する。今回もまさに、それがありましたね。

【占いシーンの撮影秘話】「オー・モン・デュー!」もカードも、多部さんの手から

クロエマ 多部未華子
©海野つなみ/講談社 ©2026 WOWOW

Q. 占いシーンでこだわったポイントや、カードを撒くシーンの撮影秘話をお聞かせください 今泉監督 普段の自分の作品は日常の会話劇が中心でして。恥ずかしながら、映像や画での表現があまり得意じゃないんです。だから漫画原作にある「オー・モン・デュー!」と言ってカードをばら撒くシーンを、どう撮るかは事前にいろいろ話しました。カメラを寄せていくトラックアップなど、いろんなカットを撮らせてもらって。 「オー・モン・デュー!」の発音の仕方も漫画に音はないので、本読みのときに「一回、多部さんのオーモンデュー、どんな感じですか?」と、まず多部さんのものを見せてもらったりして。丸投げですよね。で、「あっ、多部さんの『オー・モン・デュー!』はそれですか」みたいな、よくわからないやりとりをしながら作っていきました(笑)。

ドラマ クロエマ
Ⓒ海野つなみ/講談社

カードはうまく散らばらなければCGにする案も話していましたが、何回かやったら、目をつぶって投げた多部さんのカードがそのまま美しく散らばって。カメラの近くで助監督が補助的に数枚撒くことはあっても、基本的には多部さんが投げたものをそのまま採用しています。CGは一切使ってないですね。 カードごとに決められたの内容の説明台詞って、ほぼ暗記じゃないですか。相手とのお芝居とかでもないですし。多部さんは、学生のときの勉強ぶりにこんなに暗記した、みたいなこともおっしゃられていました(笑)。 確かにめちゃくちゃ大変ですよね。それで、後半の占いのシーンを撮影する前日とかに、「さすがに手元が写らないときは(カンペ的にカードに占いの内容を)書きましょうか?」と提案したのですが、「大丈夫です」と全部覚えてやってくださっていました。

【パフェ作りの舞台裏】彫刻のように立体的な“キーアイテム”

ドラマ「クロエマ」
©海野つなみ/講談社 ©2026 WOWOW

Q. パフェの作り込みなど、フード描写でこだわったポイントをお聞かせください 今泉監督 パフェはまさにキーアイテムで、毎回出てきますし、原作でもすごくこだわって描かれていたので、それを忠実に再現しようとしました。いつもお世話になっているフードコーディネーターの飯島奈美さんに加えて、パフェに関してはより専門的なパティシエの馬場麻衣子さんにも入っていただいて。

ドラマ「クロエマ」 パフェ
©海野つなみ/講談社 ©2026 WOWOW

今作に出てくるパフェって、彫刻なのか建築なのかというくらい立体的なんです。それを何度も用意しなければいけない上に、アイスなんかは時間が経つと溶けてしまうこともある。そのあたりも馬場さんが、撮影用に溶けにくいものを用意してくださったりと、助監督とフードチームが一丸となって撮影を支えてくれました。 作品においても大切な要素ですし、美味しそうに撮れないといけない。でも、みんなの力でとてもうまくいった気がしています。

【第2話・四角関係】“当人より周りが心配する”距離感を描く

ドラマ「クロエマ」
©海野つなみ/講談社 ©2026 WOWOW

Q. 第2話の四角関係のエピソードは今泉監督らしさが色濃く出ていました。こだわった点をお聞かせください 今泉監督 原作を読んだときも、「あー、このシーンがあるから、自分に監督の依頼が来たのかな」と思ったりしました(笑)。わかりやすく、恋愛の複雑な揉め事の場面。 でもこの作品では、恋愛だけじゃない、いろんな人間関係が扱われています。エマとクロエの距離感もそうですが、その距離を当人たちよりも心配するシモンのような、周りの人との距離感もあって。現実でもあると思うんです。本人たちはそんなに喧嘩していないし、仲良くもないけれど一緒にいられるのに、周りからすると「大丈夫かな、あのふたり」と思ってしまうようなこと。 そういう気持ちの細かいところまで扱っている原作の魅力を、俳優・スタッフが繊細に表現してくれました。さまざまな問題が全部解決できるわけじゃないし、エマもクロエもだいぶ欠けた部分のある人たちで、でもそのふたりが物語の真ん中にいる。だれかをわかりやすい悪人にもしないし、まっすぐな善人にもしない。そこが愛おしい作品だと思います。ふたりが揉めたり、ドタバタしたりするシーンは、毎回好きでしたね。

【修羅場シーンの脚色】コミカルに振り切る、画面上の遊び

Q. 修羅場のシーンでは、原作にはないリアクションが魅力的でした 今泉監督 たしか脚本に「目玉をくるくるする」と書いてあって、俳優がその通りに演じてくれました。自分が書いたのか妻が書いたのか覚えていないのですが、多分、自分ですね、ああいうことを書くのは。 あまりにすごいことが起きているのを、ただ「あーあ」という顔で演じてもらうよりは、この作品の空気を含めて、もっとコミカルにやっていい気がして。相関図として4人の絵を画面に出すなど、画面上の遊びも第2話ではいろいろやっていました。

【現場で生まれたアイデア】見つけた“偶然”を本番に生かす

ドラマ「クロエマ」
©海野つなみ/講談社 ©2026 WOWOW

Q. 現場で生まれたアイデアや、キャストのアドリブが生きたシーンはありましたか 今泉監督 第1話で、エマが大量の荷物を持って階段を上がるとき、テストで杉咲さんが壁や調度品にぶつかりかけて。それがわざとなのか自然にそうなったのかわからないのですが、それを活かしたくて、「本番でも、ぶつかりそうになったり、少しぶつかったりして、気にしてください」と。 ゼロから作るというよりは、生まれたものを見つけて「本番でもやってください」と伝える、ということはよくありますね。 第3話で、ザ・マミィの林田さん演じるモーリーが子どもたちとサッカーをする場面は、林田さんが普段からサッカーをやっている方だったので自然といい空気になりました。

【美術・衣装】外観に合わせて窓を作り、モノトーンに彩りを足す

ドラマ 「クロエマ」
©海野つなみ/講談社 C2026 WOWOW

Q. ロケーションや美術、衣装でこだわった点をお聞かせください 今泉監督 この作品は、実際にすでに存在している場所を飾って撮ったロケセットと、この作品のために1から作ったセットが混ざっています。エマとクロエが過ごすメインの家と、純喫茶パリの室内はセットで組んでいるので、そこにマッチする外観を探したりと、そこはすごく丁寧に時間をかけました。 外観を先に決めて、そこに合わせてセットを立てることもあります。ふたりが住む家はまさにそうで、玄関の両サイドの部屋が出窓っぽくなっていたところに合わせて、室内も受付の部屋の窓を出窓風にしたりしています。原作にある「プロヴァンス風」や、家を建て直すときの話などの言葉をヒントにしながら、美術部と作っていきました。

ドラマ クロエマ
©海野つなみ/講談社 ©2026 WOWOW

衣装は、撮影に入るかなり前から「こういう衣装はどうですか?」とご提案してくださって。ふたりの服は原作のイメージからモノトーン寄りにしました。クロエの占いの服も黒が基調、エマも原作で目立たないようにという話があるので、白からグレー、黒がベースになります。 そのなかで素材やサイズなどでキャラクターを作り、周りの人物に色を入れていきました。ただ、衣装を決めていく終盤の話し合いのときに、クロエの衣装ももう少しカラフルに——最初は「派手すぎるからやめたい」と僕が思ってはずしていた服を、衣装さんの提案もあって復活させて使用したのですが、それでクロエの衣装に幅が出て、すごく良かったと思っています。

【今泉監督と占いの距離感】病んでいた時期に救われた“しいたけ占い”

しいたけ占い
Illustration tarout © 2022 Conde Nast Japan. All rights reserved.

Q. 今泉監督ご自身と占いの距離感についてお聞かせください 今泉監督 元々、占いには一切興味がなかったのですが、すこし前に「しいたけ占い」にハマっていた時期があって。基本、星座占いなので12分の1のはずなのに、自分にだけ語りかけてくれている気がして。 めちゃくちゃ当たってるんですよ!「ほかの水瓶座の人には当てはまっていないはず」「自分だけにハマっている」と思ったりして。ちょっと悩んでいた時期に、救われたりしていました。

【1話完結型の構成】 最後にパフェが出てきたら物語が終わる、フォーマットがある楽しさ

ドラマ「クロエマ」
©海野つなみ/講談社 ©2026 WOWOW

Q. 基本的に一話完結型の物語構成ですが、構成で意識されたことをお聞かせください 今泉監督 原作の漫画がまだ完結していないなかで始まっている部分も含めて、どこまで描くかをプロデューサーや脚本の妻とも話し合いました。 先ほども話した<探偵もの>のように、悩める人がやって来て、その悩みについてみんなで考えて、解決できたりできなかったりした後に、パフェを食べて終わる。ひとつの流れ、フォーマットがある。逆にそういうお約束がある作品をこれまであまり手がけて来なかったので、そこも楽しんでやっていました。 「最後にパフェが出てきたら終わるのね」という、水戸黄門の印籠のようなルーティンが物語にあるのは、すごく楽しかったです。

【作品に潜む不穏さ】“声”に惹き込まれる、謎めいた気配

ドラマ クロエマ
©海野つなみ/講談社 ©2026 WOWOW

Q. 絶妙な不穏さが作品のアクセントになっていた印象がありました。 今泉監督 第5話では田中奏大役で桐山漣さんに出ていただきました。桐山さんもそうですが、クロエとエマも含め、この作品は声がめちゃくちゃ大事な作品だと思っていて。占いの部屋なんて、ひたすらクロエ(多部さん)の声で話が進みますし。

ドラマ クロエマ
©海野つなみ/講談社 ©2026 WOWOW

第5話は、田中とクロエのふたりがずっと話しながら過ごす回です。その声にどこか惹き込まれる感じが必要で、桐山さんの声はとても良かった。

ドラマ クロエマ
©海野つなみ/講談社 ©2026 WOWOW

あの人物の不穏さや魅力がある一方で、おじいちゃんふたりの軽妙な時間も流れていて、いいバランスだったなあ、と。不穏さに関しては、第5話に限らず、寧山新月のパートなど、ずっと通底しています。

【クロエマの魅力】人の声に疲れた人を、そっと救う物語

ドラマ「クロエマ」
©海野つなみ/講談社 ©2026 WOWOW

迷惑YouTuberが登場するエピソードもそうですが、この作品では、SNSやブログ、インスタなど含め、他人の声や他人の目を必要以上に気にしてしまう人たちの姿がたびたび描かれています。見栄を張らなければいけない空気、周囲の目を意識しすぎてしまうしんどさ、なども物語の中にいくつも織り込まれています。 だから、そうしたことで苦しくなってしまっている人、疲れている人にとっては、最後に出てくるパフェも含めて、ふっと救われるような作品になっているのではないかと思います。作品に触れた人の心が少しでも軽くなってくれたら嬉しいです。

▼取材・文:増田慎吾