2017年7月6日更新

映画『FOUJITA』あらすじ・キャスト・感想まで紹介!【戦争に翻弄された天才画家の半生】

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FOUJITA

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フランス、日本を描く映像が美しい『FOUJITA』予告編

「乳白色の肌」と呼ばれる独特の質感と肌色の裸婦像で知られる日本人画家、藤田嗣治。戦前のフランス・パリに渡ってその才能を開花させ、エコール・ド・パリを代表する画家の一人に数えられました。その華々しい活躍と、戦火を避けるため日本へ帰国した後の生涯を描く『FOUJITA』が、2015年11月14日に公開となります。
「藤田の半生を描くことで、戦争を含め、近代とは何かを問うことになった」
小栗康平監督はこう語ります。本作は、画家・藤田嗣治の伝記映画という部分と、日本が戦争をしていたという事実を突き付けるという二つの面を兼ね備えた作品なのです。ファンタジックな演出も見られ、目で見て楽しめる作品ながら考えさせられる部分も多くあることでしょう。 また、本作は日本とフランスの合作映画であり、前半はほぼフランスロケでの撮影風景が広がり、フランス人キャストも多数出演しています。綺麗な風景が特徴で、フランス・日本共に映像美を楽しめる作品に仕上がっています。

パリ、日本を舞台に描く波乱の生涯。『FOUJITA』のあらすじ

第一次大戦前夜の1913年、単身渡仏した画家の藤田嗣治。パリに拠点を構えた彼は、後に独特の技法を確立、「乳白色の肌」と称される裸婦像をはじめとする彼の絵は大変な人気を得て、藤田は経済的な余裕と名声を手に入れました。フランスで名声を得た彼を支えたフランス人の妻や、その友人たちとの派手な生活が広がっていきます。確かに彼は、画家として成功したのです。 ところが第二次世界大戦がの激化に伴い、日本への帰国を余儀なくされます。帰国後は戦時体制の下、陸軍からの要請で戦争記録画を描くことになるのですが…。 フランスと日本、二つの国を跨いで活躍したFOUJITA。彼の人生の行き着く先は一体どこなのでしょう。

藤田嗣治とその妻を演じる、二人の実力派キャスト!

藤田嗣治を演じるのはオダギリジョー

丹精な顔立ちと独特の存在感でこれまでに多くのテレビドラマ、映画に出演。『アカルイミライ』で映画初主演、『ゆれる』、『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』で日本アカデミー賞・優秀主演男優賞を受賞。本作では主人公である藤田嗣治を演じ、特殊メイク等を駆使してその半生を全てオダギリジョーが演じており、おかっぱ頭、丸メガネにちょび髭という、当時の藤田嗣治そのままの姿に扮し、熱演を見せています。 本作では藤田が招待客を迎えたというパーティー「フジタナイト」のシーンもあり、彼が女装姿を披露しています。また、フランス語の台詞が多いためにオダギリジョーは苦戦したそうですが、なんと全ての台詞を暗記することで乗り切ったそう。長回しも多い中、流石の演技力を見せつけています。

藤田嗣治の妻、藤田君代には中谷美紀

『嫌われ松子の一生』での日本アカデミー賞最優秀主演女優賞受賞ほか、これまで数多くの映画賞を受賞。近年は舞台にも意欲的に出演し、こちらでも高い評価を得ています。またプライベートでのパリ滞在歴が長く、フランス語が堪能なことでも知られています。 中谷美紀は藤田嗣治の妻を演じており、陰ながら藤田を支える後半の重要キャラクターです。

小栗康平監督、10年ぶりの監督作品

「泥の河」「死の棘」「眠る男」など、彼独自の作風で、日本だけでなく世界中で高い評価を得ている小栗康平監督。『FOUJITA』は『埋もれ木』以来、彼にとって10年ぶりの作品であることもあり、非常に大きな注目を集めています。

1920年代のヨーロッパと1940年代の日本。時間も場所も文化も違う2つの世界を描く

これまでなかなか実現しなかった藤田嗣治の生涯の映画化を、このたび10年ぶりにメガホンをとる小栗康平監督が日仏合作映画としてついに実現。監督自らオリジナル脚本を執筆し、単なる伝記映画にはとどまらない、現代の私たちに問いかける作品となっています。
「僕らがパリに旅行で行って、美術館を巡ったり教会に行ってオルガンが鳴るのを待っていたりして、やっぱりパリはいいなと感じるものは、映画のように独立した同一の時間の中で体験したものとは違う。同一の時空間の中に引き込んで異なるものを見ることができるのは、映画の特権だろうと思うんです。それは今度の企画の一番大きなところかなと思っています」
引用:sankei.com
また、パリでは1ヶ月に渡るロケを敢行するなど、日本、フランス両国を美しく描き出すその映像美にも注目です。絵画を題材とした作品であり、本作自体がまるで絵画のように美しさを放つ映画となっているのです。日仏合作だからこそ出来た、両国にとっての素晴らしいプロジェクトなのではないでしょうか。

感想評価まとめ。本作の鑑賞に当たっては予習が必要かも?

この映画の感想を一言で書くのなら、「教養が足りなかった」です。言いたいことは分かるし、伏線も納得したし、藤田嗣治の凄さも理解した。でもこれ面白いか!?面白いのか!?とずっと悶えていました。『泥の河』以来の小栗康平の傑作と聞いていたので、楽しむつもりマンマンだったのですが、頭脳と気品が足りなかったようです。藤田嗣治については名前は知っていたもののどのような絵を描いてどのような人生を過ごしたのかを知ることが出来たのは新鮮で良かったのですが、どうにも淡々と流れていく時間と、引きが中心のカメラワークで敢えて表面的に描かれる人間像が好みに合わなかったようです。ジャック・タチは好きなのですがどうしてかな…。 また、フランスロケをしているのにも関わらずフランスっぽさがほとんど感じられなかったのも勿体ない気がしました。フランス人が画面にいるだけで優雅さやお洒落さが出ているのはなんだかズルいけれど良かったのに、カメラ位置が総じて低くエスタブリッシングショットも少ないのでフランスの美しさを引き出すような画が無くて日本ロケでも出来るのではないかと思ってしまいました。ただ、芸術的な作品とのことで、普通にヘアヌードが拝めるのも特徴です。決して明るくなく厳かな雰囲気で、ピンと張り詰めた静かな空気感がぴったり。それでいて度々派手でカオスなシーンを挟み緩急をつけているのが良かったです。特に、水を打ったような静けさの中響くペン先の音が特徴的なオープニングは確かに凄い…! この映画はフジタ自身の内面を深く掘り下げるようなタイプでは無く、彼のいたパリの街と芸術たち、そして日本における絵画の存在についてを広く描いた作品のように思いました。何かドラマがあってその起承転結を楽しむような映画では無いので、時空をすっ飛ばしたジャンプカットの連続です。意外にも観念的な所までテーマが遡及していくので時間が長く感じました。中谷美紀を含めた他のキャラクターについては全員脇役レベルでの出演に留まるので、特定の俳優・女優目当てで鑑賞する事はあまりお勧めできません。なんだかんだで最後まで見入ってはしまったのですが、フィックス基調で淡々としていることもあり、面白いと声高にいう事は出来ませんでした。
melancholix666 試写会にて。美大枠参加、映画だけのことを言うとやっぱり物凄く非説明的で観てる側が追いかけるのがむずかしいな。ただ、「布に例えると?」が良かったと、直接オダジョー中谷美紀さん監督に伝えられて感動。会話は独特で素敵。これについて、監督からは「非日常的なものの喋り方や内容を映画では見せたい」というお答えをしっかり頂いたし、私が常考えていた映画をつくる監督の意図とかそういう話も聞けてよかったなあ