2020年4月30日更新

美しさに思わず息をのむ映画13選 映像美に定評のある4人の監督も紹介

ビッグ・フィッシュ
©COLUMBIA

現実には存在しない場所、自分では見に行けない場所、映画の中ではそんな美しい映像を見ることができます。今回は、そんな映像美に注目したい作品を紹介。また、美しい映像を撮ることに定評のある映画監督も選出してみました。

目次

映像美に釘づけ!美しい映画&映像へのこだわりが称賛される監督を紹介

映画の楽しみのひとつに、実際には存在しない場所や、自分では見に行けないような風景を見ることができるということもあります。あるいは、日常の些細な風景が映画を通すと輝いて見えるということもあるのではないでしょうか。 今回は、そんな美しい映像や風景が楽しめる作品を選んでみました。 また、後半では映像美に定評のある映画監督も紹介します。

1. 『2001年宇宙の旅』(1968年)

計算しつくされた映像美!

2001年宇宙の旅
©MGM

言わずと知れた映画史に残る名作『2001年宇宙の旅』は、スタンリー・キューブリックによるSF映画です。木星探査の極秘ミッションに携わる宇宙飛行士たちが経験した、不可思議な出来事を通して、人類の進化と地球外生命体の関係という哲学的なテーマを描き出しました。 本作に登場する宇宙船ディスカバリー号は、船内の構造からインテリア、宇宙飛行士たちの衣装に至るまで完璧に計算しつくされており、その美しさには眼を見張るばかり。また、特撮技術の高さにも驚かされます。 本作は同年、アカデミー賞特殊視覚効果賞を受賞しました。

2. 『アラビアのロレンス』(1962年)

過酷なだけではない砂漠の美しさとともにつづる歴史映画

『アラビアのロレンス』ピーター・オトゥール
©COLUMBIA/zetaimage

オスマン帝国からのアラブ独立闘争を率いた実在のイギリス陸軍将校、トマス・エドワード・ロレンスを描いた『アラビアのロレンス』。衝撃の幕開けからロレンスがアラビアを離れるまでを、広大な砂漠の風景とともにつづる、207分の大作です。 本作は数々の名シーンでも有名で、砂漠に大きな太陽が登るシーンや、敵の要塞を陥落したロレンスが悠然と海岸を歩く場面などがよく知られています。 砂漠という環境下で、その過酷さだけでなく美しさを切り取った映像から、雄大な自然の神秘を感じる事ができるでしょう。

3. 『ビッグ・フィッシュ』(2003年)

父のホラ話は幻想的な美しさに包まれている

ビッグ・フィッシュ
©COLUMBIA

鬼才ティム・バートンが虚構と現実を織り交ぜて親子の絆を描いた『ビッグ・フィッシュ』。虚言癖のある父親にうんざりしながらも、最期を迎えようとしている彼の「ホラ話」に耳を傾ける息子が、嘘のなかにあった真実に気づく物語です。 これまでのバートンの独特な世界観とは少し違った、美しく幻想的な映像が物語を盛り上げます。ポスターなどで見られる一面の黄色い水仙畑のシーンをはじめ、頭上一面に電飾が灯る街など、思わず行ってみたくなるような風景が満載です。

4. 『リトル・ブッダ』(1993年)

輪廻転生譚を美麗な映像が彩る

『リトル・ブッダ』は、『ラストエンペラー』(1987年)などで知られるベルナルド・ベルトルッチが、チベット仏教の輪廻転生をテーマに製作した作品です。ある日、シアトルに住む少年ジェシーのもとにチベットから僧侶が尋ねてきます。彼はジェシーが9年前に亡くなったある高僧の生まれ変わりではないか、と言い少年は父親とともにチベットへと旅立つことに。 それと並行して、シッダールタ王子が悟りを開き、ブッダとなるまでの半生記も描かれます。 輪廻転生という西洋ではあまり馴染みのないテーマを、VFXも活用し、ベルトルッチらしい美麗な映像で描く本作。見ごたえのある映像に息をのむでしょう。 また、シッダールタ王子、のちのブッダを演じるキアヌ・リーブスの美しさにも目を奪われます。

5. 『落下の王国』(2006年)

現実に存在する場所とは思えない

『ザ・セル』(2000年)などで知られるインド出身の映画監督、ターセム・シンの長編2作目となった『落下の王国』。第40回サッチェス・カタロニア国際映画祭でグランプリを受賞するなど、高い評価を受けました。 事故で半身不随になってしまったスタントマンは、ある日自分の病室を訪れた少女に自殺用のモルヒネを持ってこさせるため、作り話を聞かせることに。しかし、その作り話は次第に壮大な物語になり……。 構想26年、13の世界遺産と24カ国以上でロケをして、4年かけて撮影された本作。それぞれの場所の美しさ、そしてそれにマッチした衣装など、現実に存在する場所で撮影したとは思えないほど幻想的です。

6. 『ミッドナイト・イン・パリ』(2011年)

1920年代と現在のパリ。どちらも美しい街並みにうっとり

『ミッドナイト・イン・パリ』
©Sony Pictures Classics/Photofest/zetaimage

第84回アカデミー賞で脚本賞を受賞した『ミッドナイト・イン・パリ』は、ウディ・アレンが監督・脚本を務め、パリを舞台にしたファンタジックな作品です。 映画脚本家であり小説家志望のギルは、婚約者のイネスとその両親とともにパリを訪れていました。ある夜、ギルが酒に酔って街をぶらついていると、目の前に1920年代風のクラシックカーが停まり、乗っていた男女からパーティに誘われます。 彼が訪れたパーティを主催していたのは、なんとジャン・コクトー。ほかにもフィッツジェラルドやコール・ポーター、ヘミングウェイなど有名人が集まり、ギルは自分が1920年代のパリに来てしまったことに気づきました。 1920年代のパリと現代のパリを行き来する本作では、パリという街の魅力を充分に堪能できます。特に、夜のシーンが中心となる1920年代のパリは、薄暗いなかにも華やかさがあり、いっそう輝いて見えるでしょう。

7. 『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(2003年)

VFXを駆使した迫力の映像とニュージーランドの大自然が意外にマッチ!

『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』イライジャ・ウッド
© NEW LINE CINEMA/zetaimage

ピーター・ジャクソン監督による「ロード・オブ・ザ・リング」三部作の最終章となる「王の帰還」は、前の2作以上に壮大な映像で、冥王サウロンとの最後の決戦を描きます。指輪を捨てる任務をやり遂げようとするフロドやサウロンに立ち向かうアラゴルンなど、それぞれ戦いや旅はどんな終わりを迎えるのでしょうか。 本作では、VFXをふんだんに使った迫力の戦闘シーンはもちろん、ニュージーランドの大自然の美しさにも注目したいところ。エルフの国の荘厳な雰囲気やホビット庄の牧歌的な情景など、さまざまな風景を楽しむことができます。

8. 『ノスタルジア』(1983年)

絵画のように静かな世界

『ノスタルジア』
© ARTIFICIAL EYE/zetaimage

自殺した作曲家の足跡を追って、モスクワからイタリアにやってきた作家のアンドレイ・ゴルチャコフ。彼の愛と苦悩を描く『ノスタルジア』は、第36回カンヌ国際映画祭で創造大賞を獲得しました。 「映像の詩人」とも呼ばれるアンドレイ・タルコフスキーが脚本・監督を務めた本作は、彼のそのほかの作品と同じく、静かな美を湛えています。イタリアの田舎町の自然豊かな風景、水とそれを照らす光、ゆらめくろうそくの炎など、身の回りにあふれているものに宿る美しさに心を奪われるでしょう。 セリフや動きが少なく、長回しのシーンが多い本作ですが、次第にその張り詰めたような美を眺めるのが心地よくなってきます。

9. 『魚と寝る女』(2000年)

耽美的な映像で描く孤独と愛

第57回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品作品となった、キム・ギテク監督による『魚と寝る女』。釣り堀の管理人をしながら客に体を売って生活している女と、自殺を図った男が愛を育みながらも、破滅へと向かっていく物語です。 ギテクが得意とする耽美的な映像が称賛された本作。一方で、過激な描写も多く、失神したり吐き気をもよおしたりした観客もいたといわれています。賛否両論ながらも、おすすめしたい一作です。

10. 『花様年華』(2000年)

華やかな1960年代香港が舞台

花様年華
© Block 2 Pictures Inc.

『花様年華』は、1960年代の香港を舞台としたウォン・カーウァイ監督による大人のロマンス映画です。主演のトニー・レオンのカンヌ国際映画祭での男優賞獲得をはじめ、モントリオール映画祭で最優秀作品賞を受賞するなど数々の賞に輝きました。 同じ日に同じアパートに引っ越してきたチャウ夫妻とチャン夫妻。隣同士に暮らすそれぞれの夫婦は、やがてお互いのパートナーが不倫していることを知り……。 赤を基調としたアーティスティックな映像が目を引く本作。寂れた香港の街並みもなぜか美しく感じられるような、艶のある空気感を持った作品です。また、チャン夫人を演じるマギー・チャンのチャイナドレス姿も、凛とした大人の女性の美しさを感じさせます。

11. 『リリイ・シュシュのすべて』(2001年)

世界はこんなにも美しくて、残酷

岩井俊二監督による『リリイ・シュシュのすべて』は、岩井本人のほかに、一般人も書き込めるインターネット掲示板を小説にする、という実験的な原作から生まれました。 閉鎖的な田舎町に暮らす、思春期の少年少女たちの残酷な日常を描いています。いじめ、援助交際、万引き、暴力沙汰など、スクールカーストに関係なくそれぞれに息苦しさを感じながら、現実のなかでもがく姿はただただ悲痛。 そんなつらく、衝撃的な物語が、沖縄の海やどこまでもつづく草原など、透明感のある瑞々しい映像美と音楽でつづられ、どこか現実味を欠いたようにも見られます。 また、当時まだ若手だった市原隼人、蒼井優、高橋一生などの演技にも注目です。

12. 『言の葉の庭』(2013年)

梅雨時の淡い想いに雨の美しさが際立つ

新海誠が監督を務めた『言の葉の庭』は、彼が得意とする自然の描写の美しさが印象的なアニメ映画です。 雨の日にしか会えない、靴職人を目指す少年と歩き方を忘れた女性。2人は何度も顔を合わせるうちに、お互いに不思議な想いを抱くようになります。 梅雨の季節が舞台となっている本作の見どころは、やはりアニメーションならではの雨の表現の美しさ。土砂降りの雨から、しとしとと周囲を濡らす雨まで、その多種多様な表現で、登場人物の心情まで表しているかのようです。また、雨に濡れた風景を照らす太陽の光も、その情景を一層美しく輝かせます。

13. 『東京物語』(1953年)

計算された構図が生み出す美

『東京物語』
© New Yorker Films/Photofest/zetaimage

日本を代表する映画監督・小津安二郎の絶頂期ともいえる作品群のひとつ、『東京物語』。本作は「小津調」と呼ばれる彼の独特の映像美、美意識に貫かれています。 尾道から子供たちに会うため、東京にやってきた周吉ととみ夫婦。しかし、すでに成人している長女も長男も、仕事が忙しく、彼らにかまうことができません。寂しい思いをしていた老夫婦に優しく接してくれたのは、戦死した次男の嫁・紀子だけでした。 「小津調」には、カメラを低い位置に固定して撮影すること、ショット内の構図を変えないこと、ワイプなどの映画的な技法を使わないことなど、いくつかの特徴があります。それまでにも用いられていたこの技法は『東京物語』でも顕著に見ることができ、小津独特の映像美に触れるのに最適な作品と言えるのではないでしょうか。

ciatr厳選!美しい映像に定評のある4人の監督

ここからは、美しい映像を撮ることに定評のある映画監督を4人紹介します。今は亡き伝説的名監督から現役で活躍する監督まで、日本・海外の両方から選出しました。

スタンリー・キューブリック

スタンリー・キューブリック
©Mirrorpix/Newscom/Zeta Image

最初に紹介した『2001年宇宙の旅』などで知られるスタンリー・キューブリックは、完璧主義者として知られ、監督だけでなく、脚本、製作など、作品の全てを自身で掌握することにこだわりつづけました。そしてその作家性、芸術性は今なお高く評価されています。 キューブリックの映像の特徴は、広角レンズの使用やよく動くカメラ、自然光を利用した照明など。また、カメラマンの経験もある彼は、自身でも普通の映画撮影者以上に安定した手持ち撮影もできました。 『時計じかけのオレンジ』(1971年)や『シャイニング』(1980年)、遺作となった『アイズ・ワイド・シャット』(1999年)など、その色彩や構図の完璧さ、鮮烈さには眼を見張るものがあります。

ウディ・アレン

ウディ・アレン
©︎Dennis Van Tine/Future Image/WENN.com

ウディ・アレンは、その独特な感性から生まれるユーモアやコミカルな会話劇の名手として知られています。同時に、ポップでアートな感覚の強い映像でもファンの多い映画監督です。 なかでも彼は、先に紹介した『ミッドナイト・イン・パリ』のように、街を美しく写すことに長けています。地元ニューヨークを舞台とした作品も多く、その風景の情緒を見事に捉えています。 彼の作品群のなかで、街の風景が美しいものといえば『それでも恋するバルセロナ』(2008年)も、スペインの歴史ある街並みや豊かな自然の情景が目を引きます。また『女と男の観覧車』(2017年)では、カラフルな色合いの遊園地からダークな雰囲気のある酒場の風景まで、ストーリーに合わせた美しい映像も見どころのひとつです。

小津安二郎

小津安二郎
©︎ Photofest

『東京物語』の監督・小津安二郎も、美への強いこだわりで知られています。 撮影時には必ず自らカメラを覗き込んで、完璧な構図を決定。一見無造作に置かれた食事のシーンの食器類も、実は形やバランスも含めて全て計算しつくされていました。 また、カラー作品を製作するようになってからは、完璧な構図に加えて、画面になんらかの形で赤を入れるなど、色へのこだわりも見せています。 さらに、小津は撮影に使う骨董品などはすべて本物を使用するということを徹底していました。これについて、小道具のニセ物を置いたときと本物を使ったときとでは、自分や俳優の気持ちが違うと語っています。また、本物はよく写るとも断言しました。 その美へのこだわりから、小津作品は戦後のものでも、焼け跡や汚い風景、服装は一切写っていません。

岩井俊二

『リリイ・シュシュのすべて』や『花とアリス』(2004年)、『ラストレター』(2020年)などの監督・岩井俊二の作品は、「岩井美学」と呼ばれる彼こだわりの映像美が観客の心を捕えます。 思春期の少年少女たちを主人公にした作品を得意とする彼の映像は、登場人物たちのピュアな感性をそのまま映像に託したような美しさ。ダークな物語と透き通るような映像の対比が、余計に観る者の心を揺さぶります。 作品によって、淡い色が画面を覆う独特の手法が岩井作品の特徴です。

映画ならではの美しい映像に酔いしれよう!

現実には存在しないファンタジックな光景、自分ではなかなか見に行くことは難しい外国の都市など、映画ならそんな美しさを気軽に楽しむことができます。 外へ出かけることもままならないとき、これらの作品でその美しさに癒やされてみませんか?また、映像美に定評のある監督の作品を追っていくことで、感性も磨かれるかもしれません。 見たこともない美しい景色を見に、映画の世界に飛び込んでみましょう!