2020年4月23日更新

芸術の秋に観たい!アート好きにおすすめの映画28選 芸術家が主人公の作品も

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2001年宇宙の旅
©MGM

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美しくてセンスのある、芸術的なおすすめ映画を紹介!

“芸術の秋”とよく言われるように、秋になれば芸術に触れたくなりますよね。映画も芸術のひとつと言え、中でもテーマが深い作品やビジュアルが印象的な作品は、一層芸術的に感じます。 この記事ではそんな芸術性の高い名作の数々をお届け。さらに後半では実在の芸術家を描いた作品を紹介しているので、映画を通してアートに浸ってみてはいかかでしょうか。

『マルホランド・ドライブ』(2002年)

ハリウッドの光と闇を大胆なイメージの連続で綴った、2000年代を代表する一本

本作はハリウッドの山道「マルホランド・ドライブ」で起こった自動車事故をきっかけに、新進気鋭の女優の夢と現実、希望と絶望を悪夢のようなビジュアルの数々で綴ったサスペンス。 アメリカの雑誌「タイム・アウト」やイギリスのBBCによる映画ランキングで1位を獲得した本作は、デヴィッド・リンチの最高傑作との呼び声も高い一作です。 その一見すると支離滅裂とも言える物語は、一度見ただけでは到底理解不能。しかし、二度三度と観るうちに、その底知れぬ物語の魅力に取り憑かれることでしょう。

『ドッグヴィル』(2004年)

白い線を引いただけのセットで繰り広げられるストーリー

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やられました。映画好きな友人の推薦ですが、その賞賛に偽り無しです。随分パンチのある映画ですが僕もみんなにお勧めしたいですね。今年観た一本に。 閉鎖的で寂れた街に一人の女が迷い込む、というお話なのです。根源的な悪に我々人間はどう立ち向かっていくのか、そもそも立ち向かう人間すらも根源的な悪にまみれています。絶対悪というのでしょうか、どこぞの哲学者が言っていた言葉のまさに体現。日本人の”わかっていながら駄目なところ”をピンポイントで突いてきます。コレ観て人生代わる人多いのではないでしょうか。 演劇のような設定の少し変わった映画です。大きな部屋で15,6人が白線を家の仕切りなどに見立てて演技しています。ここにもなにかメッセージは込められてるのでしょう。考えながら観てください。 同監督であれば「ダンサー・インザ・ダーク」の方が有名でしょうか。もちろん秀作に違いないですが個人的にはこちら方が好きです。

『ドッグヴィル』はデンマークが誇る鬼才ラース・フォン・トリアーによる、3時間の大作。 アメリカの炭鉱町ドッグヴィル。保守的なこの町に、ギャングに追われてきた女性・グレースが逃げ込んできます。彼女は、二週間以内に住人全員と打ち解けられればドッグヴィルでかくまってもらえる、との条件を飲み、町の人々のために献身的に動きますが……。 全編録音スタジオに白い線を引いただけの舞台のようなセットで撮影された本作は、一見するとかなり前衛的な映画。 「外から入ってきた異形の者をいかにして受け入れるか」ということをテーマにしており、いつまで経っても目が離せない奇妙な魅力を持っています。

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『惑星ソラリス』(1977年)

ソラリスを覆いつくす海、そこには知的生命体が存在するのか……

Qua_moon 難解だが面白い。ただ一度観ただけでは消化不良。間、退屈な時間が長いことが難点だが、映像の美しさで目が引きとめられる。さすがにタルコフスキーで海の表現が素晴らしく美しい。

本作は、人間の意識や記憶を具現化させるというソラリスの海がもたらす、記憶とノスタルジーについての物語。水や炎、雨、そして人体浮遊といった観念的で静謐なイメージの数々によって物語られる本作は、ソ連が生んだ巨匠アンドレイ・タルコフスキーの最高傑作です。 謎の惑星ソラリスの軌道上で宇宙ステーションからの通信が途絶え、科学者のクリスが派遣されます。そこで見たのは、荒廃と狂気、そして記憶の実体化でした。 記憶のなかで生きることへの憧憬と危うさ、それをも超越した愛を考えさせらることでしょう。

『ニーチェの馬』(2012年)

馬を走らせ、水を汲み、芋を喰らうだけの2時間半。その心は?

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モノクロで、2時間半ほとんどセリフがなく、ただ男とその娘と馬の単調な生活を見守るのみ。面白かったと言えば嘘になるが、非常に興味深く画面に吸い込まれた。毎日同じ物を食べ、同じ事を繰り返す。そして最後には絶望が残る。不思議。

ハンガリーの鬼才タル・ベーラによる本作は、哲学者のニーチェがイタリアのトリノで馬の首を抱き、そのまま発狂したという伝説を基に、ニーチェ的な厭世主義に包まれた世界における世界の終焉を、実に静かに描いています。 人里離れたとある小さな家で暮らす年老いた父と娘。彼らは馬を飼い、井戸から水を汲み、ふかした芋を食べるだけの日々を送っていました。しかし徐々に小さな変化が現れ、世界の終焉を予感させていきます。 ほとんどセリフもなく、モノクロの映像の長回しで綴られるため、観る者の忍耐力が試されることでしょう。なお、タル・ベーラ監督は本作をもって引退を宣言しました。

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『2001年宇宙の旅』(1968年)

巨匠スタンリー・キューブリックが映画史に放った、永遠の名作

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自分の中で納得ができるまで評価しない。 俺は死ぬまでこの映画と戦い続ける。

映画史に名を残すスタンリー・キューブリックが手掛けた本作は、人類の進歩に影響を与えた石版・モノリスの謎と宇宙への進出を壮大なスケールで綴った映像詩。 アーサー・C・クラークの原作小説はありますが、物語性を廃したその内容は、一見すると理解が難しいかもしれません。 しかし、1968年に公開されたとは思えない美しい宇宙空間の表現、『美しき青きドナウ』や『ツァラトゥストラかく語りき』をはじめとするクラシック音楽の名曲とのコンビネーション、今見ても前衛的な室内のセットの美術など、視覚芸術としての映画を極限まで追求したその姿勢には、目を見張るものがあります。

『ふたりのベロニカ』(1991年)

自分の片割れの存在を知覚したベロニカの運命とは…

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古くはイザベル・アジャーニとかソフィー・マルソーやシャルロット・ゲンスブールとかのように、当時のイレーヌ・ジャコブありきで、彼女を観るためにあるような…。いや、油絵のような色彩や質感で撮られた街並や、時にダイナミックに動くカメラワークにもうっとりするが、何よりもドラマティックなのがイレーヌ・ジャコブだ。時に物憂げに時に溌剌と、歌ったり泣いたりつまづいたり、その繊細で儚げな表情と一挙手一投足を追うだけで映画になる。ポーランドとフランスに存在する2人のベロニカ、謎めくシンクロニシティはファンタジーというよりも、生々しい肉体を伴った身代わりの幻想。赤と緑が映えるし、既にイレーヌ=赤のイメージは強い。

「トリコロール」三部作で知られるポーランドの巨匠クシシュトフ・キエシロフスキによる本作は、「自分の片割れの喪失」というファンタジックな題材を扱いながらも、最終的には人間の運命がいかにして決まるのか、という普遍的なテーマに向かいます。 同じ年の同じ日に、ポーランドとフランスでそれぞれ生まれたベロニカ。彼女たちは同じ容貌と才能を持っていながらも、互いの存在を知らずに成長します。しかしある日、ポーランドのベロニカが急死してしまったことから、フランスのベロニカは自分の片割れの存在を認識し始め……。 いかにして撮ったのか、と問いたくなるような幻想的な映像の数々と余白を残した結末は、いつまでも脳裏に焼き付きます。

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『ザ・フォール/落下の王国』(2008年)

少女に話し聞かせた物語は、誰のためにあったのか……作中作も味わい深い、眼福の一作

HMworldtraveller まず、圧倒的な映像美には賞賛を贈りたい。旅行が好きで暇さえあれば世界各国に出かけている私にとって、この映像美はさらなる旅への誘いを煽るものでした。自分の目で見た実物にはかなわないけれど、インド、中国、トルコ、ギリシャ、エジプト、USのグランドサークルのナショナルパークなどの風景を彷彿とさせてくれました。storyも着眼点は悪くないです。スタントの仕事で半身不随となり自殺志望のロイが、動けない自分にかわって幼い少女に薬を盗んでこさせるために話して聞かせるおとぎ話が、聞き手の少女との関わりによって、いつしかロイ本人に生きる力を与えるものとなる、というものだけど、途中までは、その構造がわかりにくいですね。映像が素晴らしいだけに、話して聞かせる物語は、空想とはいえ、あそこまで陳腐なものではなく もう少しまともなものであってほしかった。テーマの割に重厚な空気はあまり感じず、むしろ軽妙な感じさえするのは、映像と、ぽっちゃり少女のキャラのおかげかな。

『ザ・セル』(2001年)や『白雪姫と鏡の女王』(2012年)で知られるインド出身のターセム・シンが、26年もの構想の末、24ヶ国のロケ地で撮影して作り上げた幻想的な映像叙事詩。 半身不随となり、恋に破れたスタントマンのロイ。彼の病室に、腕を骨折した少女アレクサンドリアが入院してきました。ロイは自殺をするためにアレクサンドリアを利用しようと目論んでおり、作り話を聞かせ始めます。しかし、その物語はやがてどんどん壮大なものになっていき……。 「物語」が持つ力によって登場人物の運命が変わっていく様は、この映画を見て感動する我々とも重なり、人類がその歴史を通して物語を紡いできたことの意味を考えさせられます。

『田園に死す』(1974年)

寺山修司、一世一代の怪作!奇妙な魅力に満ち溢れた映画

『田園死す』は、一貫して「母殺し」を扱ってきた、寺山修司の集大成とも言える一作。 少年時代に恐山の麓に住んでいた「私」は、見世物小屋で見た人々に衝撃を受け、外の世界への憧憬を抱きます。現在の「私」は過去の記憶を映画にしようと考えていましたが、ある時少年時代の自分に出会うのでした。 妖しい見世物小屋のイメージや恐山の情景なども印象的ですが、何よりもその衝撃的な「ラスト」に注目です。

『蜘蛛巣城』(1957年)

黒澤明による戦国時代版『マクベス』

『蜘蛛巣城』は日本を代表する映画監督・黒澤明が監督を務めた作品。シェイクスピアの戯曲「マクベス」を日本の戦国時代に置き換えたストーリーが展開されます。主演を務めたのは三船敏郎。 ある武将は謀反から主を守った後、老婆からある予言を聞かされます。そしてその予言通りに大将に任命されると、男は妻にそそのかされ、主まで殺してしまうのでした。 欲望に狂っていく姿を「能」の様式美を取り入れれ表現した本作。主人公が無数の矢を浴びるラストシーンは圧巻です。

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『時計じかけのオレンジ』(1972年)

カルト的人気を誇る衝撃の問題作

『時計じかけのオレンジ』
©Warner Bros./Photofest/zetaimage

『2001年宇宙の旅』と同じく、スタンリー・キューブリックの監督作。過激な暴力描写が賛否両論を呼んだものの、現在までカルト的人気を誇っています。 近未来のロンドンを舞台に、仲間とともに暴れ回る不良少年のアレックス。やがて暴力はエスカレートしていき、逮捕された彼はある治療法の実験台になり――。 アレックスたちのオムツを履いたような衣装や、彼らのたまり場の独特な内装など、鮮烈なビジュアルが目に焼き付く本作。現代社会や人間の本質を問いかけるようなストーリーこそが、『時計じかけのオレンジ』を名作たらしめていると言えるでしょう。

『パーティで女の子に話しかけるには』(2017年)

恋したあの子は宇宙人?

ニール・ゲイマンの短編小説を映画化した、『パーティで女の子に話しかけるには』。 1977年のロンドン、パンク好きなのに冴えない高校生のエンは、偶然潜り込んだパーティでザンと出会います。大好きなパンクの話で盛り上がり、あっという間に恋に落ちるエン。しかし彼女には48時間しか猶予がなく、時が来ると地球から遠い星へと帰らなければならないと言うのでした。 斬新な設定にもかかわらず、本作はどこか懐かしくも感じる「ボーイ・ミーツ・ガール」に仕上がっています。刺激的なビジュアルに彩られた、切ないストーリーをお楽しみください。

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『神様メール』(2016年)

ある日届いたのは余命を知らせるメールでした

『神様メール』の世界には、神様が存在します。神様はブリュッセルのアパートに住んでいて、いつもパソコンでいたずらに世界を管理していました。 娘のエアは人間にはもっと運命に縛られずに生きて欲しいと考え、神様のパソコンから世界中の人々へ、余命を伝えるメールを送ってしまうのでした。 そしてパニックに陥った世界を救うために、旅に出るエア。彼女の起こすヘンテコな奇跡は、思いがけず人々のお悩みを解決していきます。観ると幸せな気持ちになれる、痛快なコメディ作品です。

『それから』(2018年)

モノクロで描かれる美しい情景

本作では『3人のアンヌ』(2012年)や『自由が丘で』(2014年)のホン・サンスが監督を務めました。 小さな出版社に勤めることとなったアルム。会社の社長は妻から浮気を疑われており、アルムは出社初日に愛人と間違われてしまいます。そしてその夜、姿を消していた本当の愛人が戻ってきたことで、事態は思わぬ展開に――。 一連の騒動をユーモラスに描いた本作では、モノクロの映像がいい雰囲気を醸し出しています。タクシーの窓から見える、美しい雪のシーンが印象的です。

「芸術の秋」に鑑賞してみたくなる!芸術家の人生を描いた映画

芸術家を描いた映画は有名な美術品の誕生秘話から、その芸術家自身の壮絶な人生を描いたものまで様々。今まで芸術にあまり興味がなかった人も、アーティスト気分に浸れること間違いありません。 ここからは芸術家の人生を体感できる15本の映画を、美術史の流れに沿ってご紹介していきます。

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『アンドレイ・ルブリョフ』(1966年)

ロシアの偉大なイコン画家アンドレイ・ルブリョフの生涯を詩的な映像で綴った

15世紀のロシアの修道士であり、イコン画家(聖像画家)であるアンドレイ・ルブリョフ(1360?-1430? ロシア)。ロシア正教会では聖人とされ、最も重要なイコン画家と言われています。 そんな彼の生涯をソ連のアンドレイ・タルコフスキーが映像化したのが、『アンドレイ・ルドリュフ』です。 当時のソ連は映画に対する国家検閲が厳しく、本作も1966年に完成しながらもソビエトでの一般公開は5年後の1971年となっています。しかしながら本国での公開前の1969年にカンヌ国際映画祭に出品され、見事国際映画批評家連盟賞を受賞しました。 本作の舞台は15世紀のモスクワ。内乱が続く時代に生きたルブリュフの苦悩を、当時の歴史を織り交ぜながら描いた2部構成の作品です。構成の複雑さもあり、批評家からの評価は様々でしたが、各国の映画賞にノミネート及び受賞を果たしました。

『華麗なる激情』(1965年)

西洋美術史に残る天才ミケランジェロ・ブオナローティの半生

イタリアが生んだ偉大なる彫刻家であり、画家、建築家、そして詩人でもあるミケランジェロ・ブオナローティ (1475-1564 イタリア)。ルネサンス期に活躍し、誰もがその名を耳にしたことがある西洋美術史上で多大なる影響を与えた芸術家の一人です。 そんな彼を描いた1965年のアメリカ映画『華麗なる激情』は、『ベン・ハー』(1959年)でアカデミー賞受賞を果たした名優チャールトン・ヘストンがミケランジェロを演じ、アカデミー賞5部門にノミネートされました。 本作ではミケランジェロの生い立ちや、彼がシスティーナ礼拝堂の壁画を描く様子が描かれています。 またチャールトン・ヘストンのほか、『マイ・フェア・レディ』(1964年)で知られるレックス・ハリソンやショーン・コネリー夫人であるダイアン・シレントなど豪華俳優陣の共演も見どころの一つとなっています。

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『真珠の耳飾りの少女』(2003年)

17世紀オランダを舞台にした名作誕生の秘話

バロック時代に活躍したオランダの画家ヨハネス・フェルメール(1632-1675 オランダ)は、写真のような写実性と綿密な空間構成が印象的な絵画を生み出しました。 彼の代表作の一つである「真珠の耳飾りの少女」を題材とした2003年公開の映画『真珠の耳飾りの少女』。この絵画のモデルとなる女性グリートをスカーレット・ヨハンソン、そしてフェルメールをコリン・ファースが演じ、有名な絵画の創作を背景にした男女の複雑な感情のもつれを見事に映し出しました。 本作の華麗な映像美は高く評価され、アカデミー賞の美術賞など3部門にノミネートされ、またスカーレット・ヨハンソンがゴールデングローブ賞の主演女優賞へのノミネートを果たしています。

『ターナー、光に愛を求めて』(2014年)

ティモシー・スポールがイギリスを代表する風景画家を好演!

18世紀末から19世紀初頭にかけて活躍したイギリスのロマン主義画家ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー。 「トラファルガーの戦い」や「解体されるために最後の停泊地に曳かれて行く戦艦テメレール号」、「雨、蒸気、速度―グレート・ウェスタン鉄道」などに代表される壮麗な風景画を得意とした画家です。 そんなターナーを描いた2014年公開の映画『ターナー、光に愛を求めて』では、「ハリー・ポッター」シリーズのピーター・ペティグリュー役で知られるティモシー・スポールがターナーを演じ、イギリスを代表する監督マイク・リーがメガホンを取りました。 本作では彼の後半生に焦点が当てられ、ロンドンでその生涯を終えるまでが描かれています。ティモシー・スポールはその見事な演技により、カンヌ国際映画祭男優賞を受賞。また、作品自体も大変評価が高く、ロッテン・トマトにおいて支持率97パーセントという高い数字を叩き出しました。

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『百日紅~Miss HOKUSAI~』(2015年)

葛飾北斎の三女・応為を描いたアニメ映画

江戸時代後期に活躍した浮世絵師であり、あの葛飾北斎の三女でもある葛飾応為(かつしか おうい)(生没年不詳 日本)。美人画を得意としており、父・北斎の肉筆美人画を代作したとも言われる人物です。 その応為を描いた2015年のアニメ映画『百日紅~Miss HOKUSAI~』は、日本のみならずアメリカでも公開されました。 本作は漫画家でありエッセイストでもある杉浦日向子の漫画を原作としており、主人公応為(本作では愛称であるお栄)の声を、女優の杏が担当しています。 応為、そして周りの人々が巻き込まれる事件を背景に、江戸時代の庶民の生活が小気味よく描かれた本作は、日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞をはじめ数多くの映画賞を受賞しています。

『炎の人ゴッホ』(1956年)

狂気の天才フィンセント・ファン・ゴッホの生き様

「ひまわり」をはじめとした数多くの作品を残すも、生前は認められず、死後作品が高く評価されるようになったオランダ出身の画家フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890 オランダ)。 自身の耳を切り落とすなどその波乱万丈な生涯から狂気の天才とも言われ、その生涯は現在でも多くの人々の関心が集まるところとなっています。 そんな彼を描いた1956年公開の映画『炎の人ゴッホ』は、「狂気の天才」という印象を世界中の人に定着させた映画と言われています。 本作でゴッホを演じたのは、マイケル・ダグラスの父で『スパルタカス』(1960年)などで知られる名優カーク・ダグラス。またライバル的存在である画家ポール・ゴーギャンを『アラビアのロレンス』(1963年)などで知られるアンソニー・クインが演じ、見事アカデミー賞助演男優賞を受賞しました。 ゴッホが司祭として出発するところから、画家になり、37歳で生涯を終えるまでが忠実に描かれた本作。数あるゴッホを描いた映画の中でも、最も有名なものと言えるでしょう。

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『クリムト』(2006年)

官能的な作品を多く残したグスタフ・クリムトを描いた異色作

世紀末ウィーンの時代に活躍した画家グスタフ・クリムト(1862-1918 オーストリア)。女性の裸体や妊婦などを描いた官能的な作品を多く残した画家であり、生涯結婚しなかったものの、彼の作品のモデルを務めた多くの女性たちと愛人関係にあったと言われています。 そのクリムトの人生を、女性関係に主軸を置いて描いたのが、2006年公開の映画『クリムト』。死の床にあるクリムトが自身の人生を回顧していく形で、その生涯を幻想的に描いた作品です。 クリムトを『マルコヴィッチの穴』(2000年)などで知られる個性派俳優ジョン・マルコヴィッチが務め、また当時のウィーンの豪華絢爛な雰囲気を存分に味わうことのできる作品となっています。

『カミーユ・クローデル』(1988年)

フランスの女性彫刻家カミーユ・クローデルの狂気

19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの女性彫刻家カミーユ・クローデル(1864-1943 フランス)。19世紀を代表する彫刻家ロダンの愛人としても知られる彼女は、ロダンとの関係破綻後、心を病み、精神病院に入ります。数多くの自身の作品を破壊して家族に看取られることなく寂しくその生涯を終えた悲劇の女性でもあります。 そんな彼女の生涯を描いた1988年公開の『カミーユ・クローデル』では、イザベル・アジャーニがクローデルを、ジェラール・ドパルデューがロダンを演じ、アカデミー賞を始め、数多くの映画賞にノミネートしました。 師弟の関係であったロダンと恋愛関係になるカミーユ・クローデル。妊娠し結婚を希望するも、ロダンは妻の元へ。徐々にカミーユは精神を病んでいき、さらにロダンへの憎しみを増してゆく。本作はそんな悲しい生涯を描いた作品です。

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『サバイビング・ピカソ』(1996年)

ピカソをアンソニー・ホプキンスが演じる!

スペインに生まれ、フランスで活動した画家であり彫刻家でもあるパブロ・ピカソ(1881-1973 スペイン)。キュビズムの創始者としても知られ、生涯に1万点を超える油絵、10万点もの版画、300点もの彫刻を制作し、最も多作な美術家としてギネスブックに記録されています。 そんなピカソの恋愛遍歴に焦点を当てて描かれたのが、1996年公開の映画『サバイビング・ピカソ』です。『モーリス』(1988年)や『眺めのいい部屋』(1986年)、『日の名残り』(1993年)で知られ、『君の名前で僕を呼んで』(2017年)の脚本を手がけたジェームズ・アイヴォリーがメガホンを取り、ピカソを『羊たちの沈黙』(1991年)で知られる名優アンソニー・ホプキンスが演じました。 生涯多くの愛人を抱えたピカソが60歳を超えた年齢で出会った、40歳近くも歳の離れた愛人の視点から描かれた本作。偉大な芸術家の隠れた一面を、垣間見ることのできる作品に仕上がっています。

『モンパルナスの灯』(1958年)

ジェラール・フィリップがアメデオ・モディリアーニを好演!

イタリア出身で主にフランスで制作活動を行った、画家で彫刻家のアメデオ・モディリアーニ(1884-1920 イタリア)。首と顔が長く、目に瞳が描かれていない人物画を得意としており、その独特の画風は一見してモディリアーニの絵画と誰もがわかることでしょう。 そんな彼の晩年の退廃的な生活と愛を描いた『モンパルナスの灯』は、「フランスのジェームズ・ディーン」とも称されたフランス映画界の貴公子・ジェラール・フィリップが主役のモディリアーニを好演。 また、モディリアーニと恋に落ち、彼のミューズとなるジャンヌ・エビュテルヌを『男と女』(1966年)で知られるアヌーク・エーメが演じ、フランス映画界を代表する俳優陣の共演が本作に花を添えています。

『FOUJITA』(2015年)

オダギリ・ジョーが藤田嗣治に?小栗康平10年ぶりの監督映画

1920年代に27歳という若さで単身パリに渡り、創作活動を行った画家・藤田嗣治(1886-1968 日本・フランス)。前見出しのモディリアーニと同じ「エコール・ド・パリ」と呼ばれる芸術家たちの一人として、時代の寵児となります。その後帰国し戦争協力画を描くも、晩年はフランスに帰化し、スイスでその生涯を終えました。 その彼の半生を描いた2015年公開の映画『FOUJITA』は、『泥の河』(1981年)や『死の棘』(1990年)で知られる名匠・小栗康平監督が10年ぶりに発表した作品です。 オダギリ・ジョーが藤田嗣治を演じ、高崎映画祭の最優秀男優賞を受賞しています。 世界中が戦争に巻き込まれる中、日本とフランスという2つの国で画家としての人生を全うした藤田嗣治の生き様を描いた本作は、フランス人スタッフ、キャストも多く参加。まるで絵画のような画面で展開される、静かな映画に仕上がっています。

『エゴン・シーレ 死と乙女』(2016年)

28歳の若さで亡くなった画家エゴン・シーレを描いた

20世紀初頭にオーストリア・ウィーンで活躍した画家エゴン・シーレ(1890-1918 オーストリア)。あからさまな死とエロスを題材に、独自の絵画を追求し、強烈な個性を持った画風は見る人に衝撃を与えつつも、28歳という若さで亡くなった画家です。 そんな彼の半生を扱ったのが、2016年の映画『エゴン・シーレ 死と乙女』。画家仲間たちと「新芸術集団」を結成してから、スペイン風邪で亡くなるまでの8年間を、絵画のモデルとなった女性たちとの関係を中心に描いた作品です。 本記事で7番目に紹介したグスタフ・クリムトも、友人として登場しています。 エゴン・シーレはデヴィッド・ボウイが影響を受けた画家とも言われており、そのスキャンダラスな人生を本作品で垣間見ることができるでしょう。

『ジャコメッティ 最後の肖像』(2017年)

20世紀を代表する彫刻家アルベルト・ジャコメッティを題材にした

スイスの旧100フラン紙幣にその肖像が描かれていた彫刻家アルベルト・ジャコメッティ(1901-1966 スイス)。針金のように極限まで長く引き伸ばされた人物彫刻を数多く残し、また彫刻以外にも数多くの絵画や版画も制作した、スイスを代表する芸術家です。 そんな彼が最後の肖像画に挑む様子を、俳優のスタンリー・トゥッチが監督して描いたのが、『ジャコメッティ 最後の肖像』です。 ジャコメッティを演じたのは、アカデミー賞を受賞した『シャイン』(1997年)や『英国王のスピーチ』(2010年)などで知られるオーストラリア出身の個性派俳優ジェフリー・ラッシュ。本作でも肖像画の制作に苦悩する芸術家を見事に演じ、批評家からもその演技は高く評価されました。

『フリーダ』(2002年)

波乱に満ちた人生を生きたフリーダ・カーロの伝記映画

メキシコを代表する画家フリーダ・カーロ(1907-1954 メキシコ)は、18歳のときに巻き込まれたバス事故により下半身に障害を負うも、懸命に生き続け、独創的な絵画を描き続けた女性画家です。 波乱に満ちた人生を歩み続けた彼女の生涯を、21歳も歳が離れた国民的画家である夫・ディエゴ・リベラとの複雑な夫婦関係を背景に描いたのが、2002年の映画『フリーダ』です。 本作では、同じくメキシコ出身のサルマ・ハエックがフリーダを熱演。彼女は主演だけでなくプロデュースも務め、実に8年の歳月もかけて映画化したと言われています。そしてその年のアカデミー賞では自身の主演女優賞ノミネートを始め、6部門へのノミネートを果たしました。 アルフレッド・モリーナやジェフリー・ラッシュ、アントニオ・バンデラス、エドワード・ノートンと豪華なキャストも話題になった本作の監督をしたのは、ブロードウェイ・ミュージカル版『ライオン・キング』の演出を手がけたジュリー・テイモア。全編を通して鮮やかな色彩感覚を味わうことのできる本作は、観る人をフリーダ・カーロの世界観に導くことでしょう。

『モリのいる場所』(2018年)

30年間ほとんど家を出なかった画家・熊谷守一の世界

明治時代から活躍し、1977年に97歳で亡くなるまで現役で活躍を続けた日本を代表する画家・熊谷守一(1880-1977 日本)。富裕層の出身であるにもかかわらず、貧乏人気質で派手なことを嫌い、芸術家にとっての登竜門でもある「二科展」への出品を続けます。晩年の30年間は家から一歩も出ずに自宅の庭の生き物を描き続け、文化勲章の辞退をしたという、芸術家らしい芸術家でした。 そんな熊谷守一の晩年のとある1日をフィクションとして描いた、2018年公開の映画『モリのいる場所』。 本作は「モリ」こと熊谷守一を山崎務、そしてその妻を樹木希林が演じています。日本を代表する名優二人の演技により心温まる作品に仕上がっており、深まる秋にぜひ鑑賞をおすすめしたい一本です。

芸術映画でアートな気分に浸ろう!名作は映像もストーリーも美しい

この記事では監督のセンスが光る芸術的な映画や、芸術家の人生を描いた作品を紹介しました。 どの作品も美しい映像や革新的な構図が魅力なだけでなく、独創的なストーリーで観客を引き込む映画ばかり。一口に芸術的と言っても、様々なジャンルの作品があると言えるでしょう。 アート好きな方はぜひ、映画を通して芸術をたしなんでみてはいかがでしょうか。