「マッドマックス 怒りのデスロード」の見どころや制作秘話を解説!迫力あるシーンが生まれた秘密は?
ド派手な映画「マッドマックス 怒りのデスロード」の見どころや製作秘話に迫る!
ジョージ・ミラー監督による「マッドマックス」シリーズの第4弾「 怒りのデス・ロード」。本作は2001年に企画がスタートしてから度重なる不運な出来事を乗り越え、ようやく2015年に公開された監督・スタッフ入魂の1本です。 そのかいあって本作は世界中で大ヒットを記録。その年のショーレースで話題をさらい、見事アカデミー賞6冠を勝ち取りました。ド派手で衝撃的な「マッドマックス」の世界をさらに進化させた本作は、見どころも製作秘話も盛りだくさんです。 この記事ではまず「怒りのデスロード」のあらすじを振り返り、見どころや製作秘話を紹介。また本作がフェミニスト映画と噂されていることについても解説していきます。
まずは「マッドマックス 怒りのデスロード」のあらすじを振り返ろう!
石油や水といった資源が枯渇した砂漠の世界をさまよう、1人の男マックス(トム・ハーディ)。彼はこれまでに愛する家族を奪われ、本能だけを頼りに生き延びてきた元警察官でした。 マックスは資源を独占して人々を支配しているイモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)の手下、ウォー・ボーイズに捕らわれます。 そして彼は、ジョーの妻たちであるワイブスを連れ逃亡を図る、フュリオサ大隊長(シャーリーズ・セロン)と遭遇。成り行きで彼女たちの手助けをすることになります。 行き先はフュリオサの故郷「緑の地」。妻を奪われたジョーはウォー・ボーイズを追っ手に差し向け、自らもド派手な軍団を引き連れて執拗に追ってきます。その戦いの中でフュリオサとマックスはいつしか互いを信頼し、協力し合うようになるのでした。
見どころその1:CGを極力抑えて撮ったリアルな映像
「怒りのデスロード」最大の見どころといえば、やはり大爆発連続の超ド派手なカーチェイス。本編ではもちろんCG加工してありますが、メイキング映像では編集前のリアルな実写シーンが公開されています。 爆発シーンや車のクラッシュのシーンには、実際の車体を使って撮影。崖に向かってトラックが突っ込んで横転するシーンも、タンクローリーが大爆発するシーンも実際に撮影されていたというから驚きです! CGに頼りすぎないリアルなシーンがもとになっているからこそ、映像から本作にかける気迫が伝わってくるのでしょう。
見どころその2:クセになる変わった登場人物たち
次なる見どころは、なんといってもクセが強すぎる登場人物たちです。強すぎるヒロインのフュリオサや全身からただならぬオーラを発しているイモータン・ジョーなど、ビジュアルにもインパクトのあるキャラクターは数えればきりがありません。 ジョー軍団が追撃に使うドラムとギターを搭載したトラックで、どんな攻撃を受けてもひたすらギターを弾き続ける、いわゆる「ギター男」もかなりの注目を集めました。 しかしその中でもイチオシのキャラクターといえば、ウォー・ボーイズのニュークス。 初めはマックスを「輸血袋(=輸血ドナー)」にしていた軍団の1人でしたが、逃亡劇で妻たちの1人ケイパブルと心を通わせ、フュリオサたちに協力していくナイスガイなのです。ぜひ彼の活躍にも注目してご覧ください!
見どころその3:凄まじいアクションを見せるヒロイン
イモータン・ジョーの右腕ながら反旗を翻し、自由と「緑の地」を目指して戦い続ける本作のヒロイン、フュリオサ。そんな彼女を演じたシャーリーズ・セロンは、ジョージ・ミラー監督から「マックスと対等の強さ」を求められたといいます。 幼い頃に連れ去られ、その3日後に母親を亡くし、1人で生き抜いてきたフュリオサ。彼女は戦闘的な強さはもちろん、意志の強さも尋常ではない女戦士です。ウォー・ボーイズの執拗な追撃にも冷静に対処し、ジョーに1人で果敢に向かっていく勇気を持ち合わせています。 特にマックスとバディのように協力し合ってジョーに挑むシーンは鳥肌モノ!シャーリーズ・セロン自らフュリオサを「究極の女戦士」と称しています。
アカデミー賞6冠を獲得!それだけの高評価を得た理由は?
2016年に行われたアカデミー賞では、作品賞や監督賞を含めた10部門にノミネートされ、見事6冠に輝いた「怒りのデスロード」。本作はその年の最多受賞作となりました。歴代受賞作の傾向から考えると、意外な印象を受けますが、なぜここまでの高評価を得たのでしょうか。 本作がアカデミー賞を受賞した部門は衣装デザイン賞、美術賞、メイク・ヘアスタイリング賞、編集賞、音響編集賞、録音賞と、確かにいずれも本作の世界観を構成するうえで欠かせない要素ばかりです。 監督によれば2001年の撮影スタートから、9・11同時多発テロやイラク戦争など世界情勢の混乱によって、一時製作が滞ったこともあったそう。苦難の道を歩んだ作品だけに、スタッフたちの情熱が傑作誕生の原動力になったのでしょう。
「マッドマックス 怒りのデスロード」はフェミニスト映画とのウワサも?
本作の内容にちょっと待ったの声が!
アカデミー賞で6冠を勝ち取った「怒りのデスロード」。しかしこの映画に対し、Men’s Rights Activists (男性の権利擁護活動家:MRA)が激怒していると報道されました。 彼らの主張は、本作にはフェミニストのプロパガンダが込められており、ハリウッドのリベラル派がまたしても伝統的な「男らしさ」の概念を損なおうとしているというもの。 「MRA運動」の拠点であるReturn of Kingsのサイト上で投稿者のアーロン・クラリーは、「マックスが映画のなかで脇役扱いされ、フェミニズムにへつらうかのように現実にはありえない女性キャラに主役を取って代わられている」と語りました。
ジョージ・ミラー監督の主張
このような批判を受けたジョージ・ミラー監督は、「フェミニズムを訴える気はさらさらなかった。やりたかったのは壮大な追跡劇で、狙う獲物はモノではなく人間。けれど5人の女を男同士で奪い合ったら全く別の話になってしまう。やりたいことを突き詰めた結果がこの作品なんだ」と主張。 しかしこの映画がフェミニズムだといわれる背景には、多くの女性が本作に関わったことも関係しているようです。本作の編集を担当したのは、監督の妻マーガレット・シクセル。彼女は監督が撮りためた480時間にも及ぶフィルムを、ばっさりカットして2時間に収めました。 また本作のコンサルタントとして迎えられたのは、有名なフェミニストであるイヴ・エンスラー。 奴隷の身となった女性を演じる5人の女優たちに、戦争下で行われている女性に対する暴力についてイヴ自身の口から語ってほしいという思いからの起用で、わざわざ彼女を撮影地のナミビアまで呼び寄せたといいます。
「怒りのデスロード」の製作秘話を紹介!
製作延期されたからこそ生まれた迫力抜群の映像
もともと本作は2001年に撮影が予定されていましたが、9・11同時多発テロなどの影響で製作が延期された過去があります。しかしもし本作の撮影がスケジュール通りに行われていたら、「怒りのデスロード」は現在のような作品には仕上がっていなかったかもしれません。 10年という歳月は、テクノロジーの進化において莫大な時間。映画撮影の現場においても、10年前には不可能と思われていたことが、新たな技術を使うことで実現できるようになっています。 たとえば「エッジアーム」を使った撮影技術がなければ、本作で登場する迫力あるカーチェイスシーン映像は撮ることが出来ませんでした。エッジアームはクレーンカメラの一種。アームが約7メートルまで伸び、危険なカースタントでも360度全方向撮影を可能にした優れものなのです。
使用された「輸血袋」はホンモノ?
本作に登場する血液袋はまったくのフィクションではなく、戦時中に実際使われていたものがもとになっています。冷蔵技術がなかったコソボでは囚人から血液を集め、必要な時に直接人から人へと輸血が行われていました。SS(ナチスの親衛隊)はわきの下に血液型のタトゥを彫っていたそうです。 現代では輸血された血液が血液バンクへと運ばれ、仕分けして保管されたうえで、そこから必要な場所へと血液が運ばれて行きます。本作の世界ではそのプロセスを一切排除し、いわば効率的な方法で輸血が行われているというわけです。
フュリオサが左腕を失った理由は?
「マッドマックス」シリーズは説明するセリフが少ないことで有名。多くのファンが作中で語られなかった物語を想像で補完し、登場人物のバックストーリーを考えることを楽しんでいます。 あるファンの説では、フュリオサの左腕が無い理由は女性の側面を失ったことのメタファーであるからだとか。しかし実際には、フュリオサが運転しているシーンは右方向からの撮影が多かったため、右腕ではなく左腕を失った設定にしてCGを節約したようです。
マックスは自己を放棄したアクションヒーロー?
マックスは強い個性を持つ典型的なアクションヒーローとはいえません。彼は辛い過去に絶望し、自己を放棄せざるを得なかった人物です。 そんなマックスも、フュリオサたちとの交流を通して自分を取り戻していくことに。フュリオサと初対峙した時には2人は争っていましたが、次第に互いに信頼し、認め合う存在になっていきます。 瀕死状態のフュリオサを助け、マックスとフュリオサが目を合わせた最後の瞬間、マックスは自我を少しだけ取り戻したのでしょう。
イモータン・ジョーはある意味ヒーロー?
イモータン・ジョーは本作のヴィランですが、ある意味ヒーローとしても捉えることが出来ます。彼は元軍人で、孤児だったコーマドーフ・ウォーリアーを養子として迎え入れて音楽部隊の一員にするなど、絶対的な悪人ではないようです。 しかし長い間土地を支配してきたことにより、知らぬ間に暴君となってしまったのではないでしょうか。水やガスなどをコントロールして人々を支配している理由は、イモータン・ジョーの哲学で秩序を守ろうとしているだけで、悪いことをしているという感覚はなかったのかもしれません。
フュリオサだからワイブズたちを保護できた
脚本家ニコ・ラサウリスとストーリーボードアーティストのマーク・セクストンによると、5人のワイブスの保護をするキャラクターは男性のキャラクターでは成立しなかったそう。 ワイブズたちは女性キャラクターのフュリオサだったからこそ受け入れ、イモータン・ジョーの支配下から逃げ出す決断ができたといいます。
監督は飛行機で本作を観た!
監督のジョージ・ミラーは公開当時、3DのIMAX版「怒りのデスロード」をまだ鑑賞していませんでした。しかし移動中に飛行機の小さなモニターで、ユニークな鑑賞方法を取っていたそうです。 ロンドンからオーストラリアへのフライト中、機内では本作が上映されていました。監督は映像のリズムに興味があったようで、3分の2ほどは音声なしのサイレント映画として楽しんでいたといいます。 また後に監督は「ブラック&クローム」エディションとして、本作の世界観をより美しく際立たせるようなモノクロバージョンの映像も公開しており、彼ならではの独特な感性がここにも表れています。
スタントマン同士でカップル誕生!
実は本作の撮影の現場では、砂漠の真ん中で運命のカップルが誕生しています。正確にいうと、マックスとフュリオサのスタントを務めたスタントマン同士のカップルです。 撮影前にマックスとフュリオサを再現するためにスタントをどうすべきか話し合ったり、格闘やアクションシーンの特訓をしたりと、多くの時間を過ごした2人。互いにパンチやキックを交わしたことで、すでにある種の絆が生まれていたのかもしれません。 さらに1ヶ月ほどで終わる予定だった撮影が、最終的に4ヶ月間も続いたことも、2人の絆を深めるきっかけとなったのでしょう。
見どころや製作秘話を知ってもっと「マッドマックス 怒りのデスロード」を楽しもう!
ジョージ・ミラー監督をはじめ、キャストやスタッフの気合いが込められた「マッドマックス 怒りのデス・ロード」。本作は長い歳月をかけて製作され、その苦労に報いるかのように大成功を収めました。 フェミニズムの要素まで感じられるアクション映画というのも珍しいはず。普段はあまりアクション映画を観ないという女性にもおすすめの作品です。ぜひ苦難の道を歩んだ本作を鑑賞してみてくださいね!