CG・VFXがスゴイ映画傑作選 世界的なCG制作会社も紹介
タップできる目次
- 時代とともに進化してきたCG
- 『アリータ: バトル・エンジェル』(2019年)
- 『ライオンキング』(2019年)
- 『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016年)
- 『ジュラシック・パーク』(1993年)
- 『トイ・ストーリー』(1995年)
- 『アバター』(2009年)
- 『パシフィック・リム』(2013年)
- 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(2012年)
- 『トランスフォーマー』(2007年)
- 『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018年)
- 『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』(2019年)
- 『ドクター・ストレンジ』(2016年)
- 『アイリッシュマン』(2019年)
- 世界的VFX/CGスタジオを紹介
- ILM(Industrial Light & Magic)
- CGで広がる映画作りの可能性
時代とともに進化してきたCG
過去・未来・架空の世界を私たちに見せてくれるコンピューター・グラフィックス(CG)。1980年代からは実写映画にも積極的に導入されるようになり、1990年代にはCGで製作したアニメも登場。時代とともに進化を続け、今やあらゆる映画製作に欠かせない技術です。 この記事ではciatr編集部が厳選した、CGの効果に目を奪われる、映画史に残るような傑作をピックアップ。さらに記事後半では、映画のCG技術を支える世界的CG・VFX会社を紹介しています。
『アリータ: バトル・エンジェル』(2019年)
サイボーグ美少女に心奪われるSFアクション
木城ゆきとのSFアクション漫画『銃夢(ガンム)』を実写で映像化したサイバーパンク・アクション大作です。 CGの見どころの1つは、主人公の記憶を失ったサイボーグ少女・アリータの造形のリアルさ。アリータに扮したローサ・サラザールの細かい演技や身体的特徴を保持しつつ、サイボーグのボディに溶け込ませています。 製作は『タイタニック』、『アバター』など数々の独創的な世界観の作品で知られるジェームズ・キャメロン。彼が原作漫画に惚れ込んで2000年に映画化権を獲得したものの製作は難航。2016年に『シン・シティ』のロバート・ロドリゲスを監督に迎えて、スピード感のあるアクション映画が完成しました。
『ライオンキング』(2019年)
CGとは思えないほどリアルな「超実写」映画
1994年公開のディズニー・アニメーションの同名の名作をフルCGでリメイクしたミュージカル映画です。「未来の王」として生まれたライオン・シンバの成長の物語が、実写と見紛う映像で描写されます。 ディズニー公式で「超実写版」と銘打たれた本作は、最新技術を駆使して作られた全編CGアーティストの手になる映像美が特徴。CGアニメでないのは冒頭の日の出のシーンのみです。 視覚効果は「ライフ・オブ・パイ」や『ジャングル・ブック』でアカデミー視覚効果賞を受賞したムービング・ピクチャー・カンパニー。動物の自然な動作を再現するために、人工知能まで導入したそうです。
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016年)
死者も蘇る驚異のCG
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は「スター・ウォーズ」シリーズのスピンオフの1つです。銀河帝国軍の宇宙要塞・デス・スターの設計図強奪を目論む女戦士・ジン・アーソと反乱同盟軍の活躍が描かれます。 本作のサプライズでもありCGの見どころでもあるのは、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の登場人物が復活したことです。1977年に公開された同作からターキン総督とレイア姫が登場しています。 しかしながらターキン総督に扮したピーター・カッシングはすでに亡くなった人。身体の部分は別の俳優が演じ、顔の部分を1977年の映画からCGで取り込んで再現したそうです。
『ジュラシック・パーク』(1993年)
CGIのランドマークといわれる不朽の名作
1993年に公開された恐竜映画の古典。バイオテクノロジーで蘇った恐竜が巻き起こす惨劇を描いたマイケル・クライトン原作のパニック映画です。 1990年代初頭、実写映画にCGが自然に取り込まれるようになった時代に、CGを駆使して恐竜をリアルに再現して話題になりました。 恐竜の撮影は当初、ストップモーションアニメ(静止している物体を1コマ毎に撮影して動画にする技法)などの予定でした。しかしCGで試作された恐竜の映像にスティーブン・スピルバーグが感動したことで事情は一変。担当のフィル・ティペットは恐竜の動きを1コマずつコンピューターに入力する技法を開発しアカデミー特殊視覚効果賞を受賞しました。
『トイ・ストーリー』(1995年)
映画史上初の長編フルCG映画
1990年代半ば、経営危機に陥っていたCGアニメ制作会社ピクサーが起死回生をかけて作り上げた、世界初の長編フルCG映画です。 自由に話したり走り回ったりするおもちゃの世界を、当時のCGアニメ技術を最大限活用して描いたことに映画ファンは驚嘆しました。ジョン・ラセター監督を始めとする製作陣には、世界初の偉業にアカデミー特別業績賞が授与されています。 カウボーイ人形のウッディとスペースレンジャーのバズなどのおもちゃが生き生きと活躍するストーリーの面白さも見逃せません。 1999年からシリーズ化され、2019年公開の『トイ・ストーリー4』まで約4半世紀のCGアニメの発達史を反映する名作です。
『アバター』(2009年)
俳優の表情や演技までCGに取り込んだ革命的大作
ジェームズ・キャメロンは若手時代の『アビス』(1989年)のころからCGを取り入れていました。『アバター』は同監督が、構想14年、製作期間4年を費やしCG技術を駆使して完成させたデジタル3D大作SF映画です。 22世紀、地球の植民地にされた衛星パンドラの先住民族ナヴィが、地球人の圧政に対して反乱を起こす物語が描かれます。 緑豊かな衛星パンドラの世界が、CGによって細部まで丁寧に作り込まれているのにまず目を奪われます。さらに身長2メートル以上の青い肌の巨人ナヴィもCGで実現。表情を取り込むヘッドギア、マーカー付きのキャプチャースーツで演技を記録するなど俳優の苦労も並大抵ではありませんでした。
『パシフィック・リム』(2013年)
日本の伝統を取り入れたSF怪獣映画
環太平洋地域(パシフィック・リム)の海底から現れる怪獣と戦う巨大ロボットの活躍を描いたSF映画です。ギレルモ・デル・トロ監督は海の戦闘場面で葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」の影響を告白するほど、日本文化の強い影響が見られます。 カラフルな香港での戦闘シーンが圧巻。視覚効果は「スター・ウォーズ」新3部作で知られるILMのジョン・ノールとハル・T・ヒッケルが制作しました。 スーツやヘルメットなどの装備は『アイアンマン』のアーマーも手掛けたシェイン・マハンがデザイン。さらにビデオゲーム開発からはユービーアイソフトの1部門ハイブライド・テクノロジーが参画するなど、視覚効果技術の粋を結集しています。
『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(2012年)
どう猛なトラとの共演もCGで可能に
『恋人たちの食卓』や『ブロークバック・マウンテン』などの卓越したストーリーテリングで知られるアン・リー監督による冒険映画です。 ストーリーの中心は16歳の少年パテル(ニックネーム「パイ」)。動物園を経営するパテル一家は、カナダへ移住する船旅の途中、太平洋で遭難してしまいます。1人生き残ったパテル少年はシマウマ、ハイエナ、オランウータン、トラを乗せた救命ボートで漂流することにーー。 小さな救命ボート上で、どう猛なベンガルトラとの共演を可能にしたのがCGです。『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』の視覚効果で有名なリズム&ヒューズ・スタジオが製作しました。アカデミー視覚効果賞を受賞しています。
『トランスフォーマー』(2007年)
日本の変身ロボット玩具の世界観を映像化
日本の玩具大手・タカラトミーが1980年代から販売を続け世界中の子どもに夢を与えてきた変形ロボット玩具「トランスフォーマー」。アニメやコミックでも人気のある世界観を、CG技術を駆使して実写映像化したのが2007年公開の『トランスフォーマー』です。 宇宙からやってきた「サイバトロン」と「デストロン」という対立するロボット種族が地球で繰り広げる壮絶な死闘が描かれます。重量感のある巨大ロボットが見せるスピード感あるアクションが見事です。 CG技術者の腕の見せ所は、ロボットの変身シーン。自動車が空中で分解し、部品が空中で移動してロボットに組み変わるというメカ独特の変身の瞬間を見事に作り上げました。
『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018年)
手書きアニメの温かみを表現できるようになったCG
「スパイダーマン」シリーズの映画としては初めてのアニメ作品です。主人公もこれまでの実写版のピーター・パーカーではなく、ブルックリンに住む高校生・マイルス・モラレスに設定されています。 日本のアニメ・漫画の影響を感じさせる女子中高生ペニー・パーカーをはじめ、独特のスタイルのキャラクターがふんだんに登場します。 コミックの世界に入り込んだようなCGの技法について、製作のフィル・ロードは「完全に革命的だ」と語りました。リアルな俳優の演技をモーションキャプチャーで取り込み、手書き風のCGでコミック風の映像世界に落とし込んだ作品です。2019年アカデミー長編アニメ映画賞を受賞しています。
『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』(2019年)
最新CG技術で飛び交う6万5,000匹のドラゴン
イギリスの児童文学作家クレシッダ・コーウェル原作「ヒックとドラゴン」シリーズの映画化第3弾です。バイキングのリーダーに成長したヒックが、仲間のドラゴンや村人を率いて新天地を求めて旅する物語が描かれます。 製作にあたったドリームワークス・アニメーションは、照明を細部まで操作する「ムーンレイ」というCGツールを本作で導入しました。 ロウソクの小さな光からドラゴンが吐く火炎までさまざまな炎をリアルに表現。一方で夕日に照らされた表情や淡い光に浮かぶ聖地の繊細な表現も印象的です。新技術によって作業時間も短縮され、1つのショットでドラゴンが6万5,000匹も飛び交う迫力シーンが実現しました。
『ドクター・ストレンジ』(2016年)
万華鏡のような空間で展開される魔術師たちの華麗な戦い
「マーベル・コミック」のヒーロー「ドクター・ストレンジ」を実写映像化した作品です。 ドクター・ストレンジは一風変わったスーパーヒーロー。本名がスティーブン・ストレンジという天才外科医でしたが、交通事故のケガから両手がマヒする後遺症を負ってしまいます。ワラにもすがる思いのストレンジ先生はネパールの修行場に入門、過酷な修行の末に魔術師として生まれ変わったのでした。 次々と繰り出される魔術の効果がCGによって華麗に描き出されています。クライマックスは時間と空間を変形させる魔術。ビル街の道路や壁がせり上がり、空間が変形した万華鏡のような世界で繰り広げられる魔術バトルに目を奪われること請け合いです。
『アイリッシュマン』(2019年)
「役者に年なし」を可能にしたデジタル技術
マフィアのヒットマン・フランク・シーランの半生を描いた長編伝記映画。マーティン・スコセッシ監督とロバート・デニーロが22年ぶりにタッグを組んだ力作です。 ロバート・デニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシの主要キャストで問題になったのが「年齢」。70代の俳優が男盛りの年ごろから初老まで演じるとなると、メイクだけでは解決できません。 そこで『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』でも使われた、俳優の顔にCGの映像を重ねる技術の出番です。VFX監督のパブロ・ヘルマンは俳優の顔にマーカーやヘッドギアをつけないで表情を取り込む手法を開発。ロバート・デニーロも年齢が半分くらいにまで若返りました。
世界的VFX/CGスタジオを紹介
ここからはciatr編集部が厳選した、世界や日本を代表するVFX/CGスタジオを紹介します。 1970年代に設立された、今や老舗といえるスタジオから、2000年以降に加わった新進気鋭のスタジオまで8社を取り上げました。
ILM(Industrial Light & Magic)
1975年、「スター・ウォーズ」の構想を練っていたジョージ・ルーカスがルーカスフィルムの視覚効果部門として設立した会社です。1980年代以来、コンピューターを使った新技術を次々に開発して業界をリード。「スター・ウォーズ」シリーズや「インディー・ジョーンズ」シリーズなど、数多くの映画の視覚効果を手掛けてきました。
Sony Picture Imageworks(ソニー・ピクチャーズ・イメージワークス)
1992年に設立されたソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント傘下のVFX制作会社です。ソニー以外の数多くの映画のVFXにも参加しています。 2005年に『スパイダーマン2』でアカデミー視覚効果賞を初受賞。2002年に始めたアニメーション制作でも、『スパイダーマン:スパイダーバース』がアカデミー長編アニメ映画賞を受賞しました。
Weta Digital(WETAデジタル)
ニュージーランド・ウェリントンに本拠を置くVFX制作会社で、視覚効果とCGIアニメーションを主に手掛けています。 代表作は「ロード・オブ・ザ・リング」3部作で、3作ともアカデミー視覚効果賞を受賞しました。自然なクリーチャーを造形するCG技術が高く評価され、ジェームズ・キャメロン監督の『アバター』にも参加しています。
Digital Domain(デジタル・ドメイン)
1993年にジェームズ・キャメロンが特殊効果スタッフのスタン・ウィンストンとともに立ち上げたVFX制作会社です。 『タイタニック』、『奇蹟の輝き』、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』でアカデミー視覚効果賞を受賞しています。ちなみにスタン・ウィンストンは『エイリアン2』や『ジュラシック・パーク』のスタッフでした。
ピクサー
ILMのコンピューター・アニメーション部門を、1986年にアップルを離れていたスティーブ・ジョブズが買収して独立した会社です。 ディズニーとの共同でCGによるアニメーション映画の製作を手がけてきました。代表作は『トイ・ストーリー』、『ファインディング・ニモ』、『カールじいさんの空飛ぶ家』など。現在はディズニーの完全子会社です。
イルミネーション
20世紀フォックス・アニメーション部門のプロデューサーだったクリス・メレダンドリが独立して設立した会社です。 ユニバーサル・スタジオの子会社になっています。3DCGアニメの製作が中心です。独立後第1作の『怪盗グルーの月泥棒』(2010年)は世界興行収入5億4,200万ドルの大ヒット。怪盗軍団ミニオンの活躍はシリーズ化されました。
白組
1970年代に設立された白組は、長い歴史を持つ日本のVFX制作会社です。CGなどのVFXはもとよりミニチュア制作などの技術もあり、実写からアニメまで幅広く手掛けています。 実写映画の代表作は『ジュブナイル』『ALWAYS 三丁目の夕日』『永遠の0』『ドラえもん』など。『revisions リヴィジョンズ』ではセル調CGアニメの新機軸を打ち出しました。
デジタル・フロンティア DF
2000年に設立された映像全般の企画・製作を行う日本の会社です。CGやVFX制作はもとより、モーションキャプチャも専門に行っています。 3DCGアニメの代表作は『APPLESEED』、『GANTZ:O』など。実写映画では『アイアムヒーロー』といったアクションから『旅立ちの島唄~十五の春~』のような家族映画まで製作しています。
CGで広がる映画作りの可能性
近年のCGの発展のおかげで、現実には不可能な映像も比較的手軽に撮影できるようになりました。監督のストーリーテリングや俳優の演技にも無限の可能性が開かれているといえます。 これからも進化し続ける技術を駆使して未来の映画製作者たちがどのような新しい世界を見せてくれるのか、本当に楽しみですね。