アリエル・ホームズのプロフィール
アリエル・ホームズはニュージャージー出身。自身の体験をもとにした映画『神様なんかくそくらえ』で主演を務め、映画界に彗星の如く現れた新進気鋭の女優です。この作品は2014年・第27回東京国際映画祭コンペティション部門で東京グランプリと最優秀監督賞を受賞したほか、各国の映画祭でも物議を醸し出し話題作となりました。
アリエル・ホームズは、アルコール中毒の母、怪我の後遺症に悩まされ不安定な祖母、子供をネグレクトする叔父叔母とその子供達とともにニュージャージーで暮らしていました。アリエルの父親と母は、恋人同士ではなくゆきずりの関係だったそうです。
母に勧められ、12歳の頃にコカインを初体験します。日々の生活にずっと幸せを見つけることができなかったアリエル。薬だけが自分に幸福感をもたらす唯一の手段になり、どんどんのめり込んでいきました。
退廃的な生活から抜け出せず高校も中退。ニュージャージーが退屈でつまらないと感じたアリエルは、より刺激を求めて電車でマンハッタンへ行くようになりました。
頻繁にマンハッタンへ通ううちに路上の若者たちと顔なじみになり、親しいボーイフレンドもできて、新たな人脈を作り上げたアリエル。最初は頻繁にニュージャージーに帰宅していましたが、徐々に帰宅頻度が減っていきます。ある日母親と大喧嘩をしたアリエルは、その日を境にニュージャージーへ帰らなくなりました。
リアルシンデレラ!元々ホームレス少女だったアリエル・ホームズの実体験をもとにした映画『神様なんかくそくらえ』は東京国際映画祭にて二冠を獲得!
のちに『神様なんかくそくらえ』の監督をすることになる、ジョシュア・サフディとベニー・サフディの兄弟は、彼らの次の作品のためニューヨークのダイヤモンドディストリクトでリサーチをしていました。
そこの路上でたまたま出会ったのがアリエル・ホームズ。アリエルを初めて見たとき、長いブラウンの髪、大きくて悲しげな瞳が魅力的で、まさに「ダイヤモンドディストリクト」の名にふさわしい、宝石のような女の子だったといいます。
何気なく会話をしてみると、アリエルの話はとにかくユニーク。路上暮らしの彼女が話してくれたのは、彼女の生い立ちや、ニューヨークでの路上暮らし、セントラルパークで寝起きする友達の話、イリヤというボーイフレンドの話など。一見ハードライフに聞こえるけれど、アリエル本人はそうは思ってないようだったといいます。
彼らとアリエルは定期的に合うように。たわいもない話をする中で、時々出てくる彼女の真意を汲み取ると、学校に行き仕事を見つけ、家を借りてそこに住みたいという前向きな希望があるようでした。
2ヶ月経ったある日、急にアリエルは兄弟の前から姿を消してしまいます。アリエルにために、とあるミュージックビデオのエキストラの仕事を持ってきていた兄弟は非常に落胆しました。
しかしその2週間後、突然アリエルから連絡がきます。なんと恋人イリヤの自殺未遂騒動に巻き込まれて、大変な事態になっていたというのです。
お金がないのにわざわざ公衆電話を使って連絡をしてきたアリエル。ことの顛末をきいた兄弟は「不謹慎だが、なんて映画的な展開なんだ」と思ったそうです。
次の映画の新しいアイディアが急に閃いたサフディ兄弟。アリエルに、彼女の映画的でユニークな自伝を書くようにアドバイスします。そして1ページごとに報酬を払うことも約束しました。
そしてもう一つ。自立しようとするアリエルの足を引っ張るイリヤと、少し距離を置いたほうがよいともアドバイスしました。
その瞬間から彼女の人生は大きく変わり始めます。
アリエルは書くことに熱中し、どこでも仕事をしました。ホームレスのアリエルは、もちろんパソコンを持っていません。そこで彼女は友達のiPadを借りたり、アップルストアのパソコンを使うことにしました。アップルストアでは、9時間もの間、立って書き続けたことがあったそうです。
こうして彼女が書き上げた作品は、でたらめはなく、会話的でありのままの彼女の生活を表現した斬新なものでした。
この作品を試しにアリエルに読ませてみたら、その演技力・表現力は大変素晴らしいものだったのです。演技経験はないけれど、女優は自分に向いているかもという彼女の前向きな発言もあったことから、 そのまま主人公はアリエル自身が演じることに決定しました。
主人公をとりまく友達もアリエルのストリート仲間が演じましたが、ボーイフレンドのイリヤだけは俳優が演じることになりました。本物のイリヤはあまりにも不安定すぎたのです。映画のリハーサル最終日に、イリヤが突然オーバードーズ状態でセットに現れ、救急車を呼ぶ事態になるトラブルもありました。
この事件で、監督やアリエルを始め皆落ち込んでしまいましたが、互いに励まし合い、次の日からまた撮影が始まったそうで す。
こうして紆余曲折を経て、映画『神様なんかくそくらえ』が完成しましたが、アリエルの恋人イリヤは2015年4月12日セントラルパークで亡くなっているのが発見されました。
アリエル・ホームズのリアルシンデレラストーリーとは?映画製作までの退廃的な生活
前述の通り、サフディ兄弟に発掘されるまでの彼女は、セントラルパークに住むホームレスでした。
ニュージャージーから出てきたアリエルは、イリヤという少年と出会います。退屈な街から出て刺激を求めていた彼女は、当時ドラッグの売人だったイリヤをイケていて格好いいと思い、二人はいつしか恋人同士に。一緒にヘロインを楽しみようになり、どんどんアリエルは落ちていきました。
刺激をどんどん求めていたアリエルは、 新たなドラッグのコネクションを探しに違う街へ行こうとイリヤを誘ったことも。しかしイリヤは乗り気ではなく、結局アリエルだけが旅立ちました。旅先で新しい仲間に出会い、刺激的な経験を楽しんでいるアリエルの様子を知ったイリヤは、やけになり自分で火をつけて住んでいたアパートを燃やしてしまいました。
イリヤの異常な行動に驚き、アリエルは慌ててニューヨークへ戻りますが、家を燃やし何もかも失った二人は路上暮らしに。ホームレス状態は2年間続きましたが、その間にアリエルのお母さんもおばあさんも亡くなってしまいました。
カップル用のシェルターに入ろうとしたこともありましたが、イリヤが酒と薬で幻覚症状が起き大騒ぎしたため、間も無く 二人で追い出されてしまったそうです。
サフディ兄弟に見出されるまでのアリエルは、公共トイレで髪の毛をあらったり、空腹を満たすためのエナジードリンクを万引きしたり、その日暮らしの生活を送っていました。
『American Honey 』に出演決定
あまりにも衝撃的でユニークな形でデビューをしたアリエル。デビューが衝撃的プラス大絶賛だっただけに、次の作品は彼女の今後を占うことになります。アリエルが次に選んだのは、『フィッシュ・タンク』の女流監督アンドレア・アーノルドの作品『American Honey(原題)』。
全米を旅しながら雑誌を売りさばく一行と行動を共にすることにしたティーンエージャーが、そのいく先々で激しいパーティーや違法行為に狂喜乱舞しつつも、恋愛や人間関係を通して成長する姿を描いた作品です。
主演は『トランスフォーマー』などでおなじみの俳優シャイア・ラブーフ。アリエルはペガンという役を演じます。
撮影中にシャイア・ラブーフがスタントに失敗し病院で治療を受けるトラブルがありましたが、2015年7月に無事撮影は終わり、2016年中の公開が予定されています。
『Winter's Dream』に出演決定
そして快進撃が止まらないアリエルは、新たなジャンルにも挑戦。2307年を舞台にしたSF映画『Winter's Dream』に出演が決まりました。ロボット反乱軍のリーダーを捕まえるために、人間たちが奮闘する姿を描いたストーリーです。
アリエル・ホームズの今後
インディー映画界からメジャーへと、大きく羽ばたこうとしているアリエル。
『神様なんかくそくらえ』のおかげで、彼女は一躍スターダムにのし上がりました。今彼女はプロダクションに属し、マネージャーもつき、ロスの一等地に住んでいます。ニューヨーク時代とは正反対の生活です。
彼女のことを現代版のシンデレラという人もいます。しかし童話の「シンデレラ」とは違い、彼女の人生はファンタジーではなく現実そのものです。
映画撮影中にヘロインを断ち、今は薬から離れているアリエル。しかし、彼女曰く憂鬱な感じとか気だるい不安な感じの根幹がまだ体の中にあるそうで、長かったジャンキー生活の後遺症のようなものがあるのかもしれません。
彼女自身、今の生活がシンデレラのようなハッピーエンドだとは確信していないようです。インタビューで「まだこの生活に慣れない。どうやって人と繋がったらいいかわからない。責任のない自由な生活が恋しい。今の毎日を生き抜くには、頭を常にフル回転しなければならないから疲れる」と語っています。
彼女は今後、ドラッグの後遺症や、幸運過ぎるデビューから生まれる周りの期待と戦いつづけていかなくてはなりません。
「上手にセルフコントロールする方法を見つけて、安定した心でこれからも働いていきたい」と前向きに語っていたアリエル。きっと次回作以降も素晴らしい演技を見せてくれることでしょう。
『神様なんかくそくらえ』は2015年12月26日より日本公開予定です。
今後もアリエル・ホームズの活躍から目が離せません!