2019年1月16日更新

『嘘を愛する女』をネタバレ解説。何が嘘で、何が真実なのか?

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『嘘を愛する女』
(C)2018「嘘を愛する女」製作委員会

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センセーショナルな作品『嘘を愛する女』の奥深いテーマをネタバレ解説

2018年1月に公開された『嘘を愛する女』。「愛する人の存在が全て『嘘』だったら……?」という衝撃的なストーリーを、今をときめく豪華な俳優陣のもとで制作した作品です。 ミステリーとしてだけでなく、ロードムービーやラブストーリーとしても楽しめる本作。今回はそんな本作のあらすじやキャストを紹介し、ストーリーから作品に込められた奥深いメッセージをネタバレありで解説します。

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【あらすじ】実話を元にした物語。ある女性に起きた事件を描く

川原由加利(長澤まさみ)は世の中の人が“憧れの女性”としてイメージする女性像そのものでした。キャリアウーマンとして活躍する一方で、病院で研究員として働く恋人の小出桔平(高橋一生)と同棲しており、幸せな生活を送っていました。 そんなある日、桔平がくも膜下出血で倒れているのが発見され、病院に搬送されます。そしてその過程で警察が彼の身分証などを確認したところ、それが偽造されたものだったことが明らかに。さらに彼の勤める病院にも小出という職員はいなかったことが判明し、その名前や職業も嘘だったことがわかったのです。 眠り続ける恋人は一体誰なのか?それを解明するため、由加利は探偵の海原(吉田鋼太郎)に捜査を依頼。その結果、桔平が執筆していた小説が見つかります。そこには、誰かの故郷に触れた描写と、幸せな家族の姿が記されていました。 その小説の舞台となったのが瀬戸内であることを突き止めた由加利は、桔平の本当の姿に迫るべく、一人で四国を目指します。

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【キャスト】今をときめく人気俳優2人がカップルを演じる

「ヒロイン」川原由加利役:長澤まさみ

幸福に暮らしていたヒロインを襲う“恋人の名前も職業も全て嘘だった”という事件から始まる本作。愛する人の本当の姿に迫ろうとするヒロイン・由加利を長澤まさみが演じました。 可愛らしさとヘルシーな色気で支持を集める人気女優、長澤まさみ。近年の活躍を紹介すると、2017年には『散歩する侵略者』で主演を務め、本作が公開された2018年も『50回目のファーストキス』やドラマ作品『コンフィデンスマンJP』で主演を務めるなど、衰え知らずの引っ張りだこぶりです。 そんな彼女が演じる由加利は、仕事も恋愛も順調だった中で恋人の名前も職業も嘘だったことを知ってしまい、自分への気持ちも嘘なのではないか、という不安を抱えながらも、彼の本当の姿に近付こうとするキャラクター。その高い行動力と勇気を兼ね備えた強い女性像は、長澤の持つ明るいイメージにも合っていますね。

「“全てが嘘だった”恋人」小出桔平役:高橋一生

ヒロインの由加利と幸せな生活を送りながらも、倒れたことで自身がつき続けてきた大きな嘘が明るみに出てしまった桔平。そんな謎に包まれた彼を演じたのは、今をときめく人気俳優の高橋一生です。 テレビドラマ『民王』で一躍俳優としての知名度を上げ、それからは『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』や『カルテット』などの人気ドラマに続々出演。『シン・ゴジラ』や『3月のライオン』などのヒット映画や数々のCMにも活躍の場を広げる、まさに旬の俳優です。

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実は既に共演経験のある二人

『嘘を愛する女』
(C)2018「嘘を愛する女」製作委員会

長澤と高橋という旬の俳優2人にとって、実はこれは初めての共演ではありませんでした。2人は『世界の中心で、愛を叫ぶ』で共演しており、当時から長澤にとって高橋は「憧れの先輩」的な存在だったとのこと。 今回久しぶりに共演したことについて長澤は「不思議な感覚でした」と語り、「感覚としては今回の役柄とは全然違うイメージが既にあったので(恋人役が)恥ずかしいと思ってしまった」とコメントしていました。

「不愛想な探偵」海原匠役:吉田鋼太郎

由加利が桔平の正体を突き止めるために依頼する私立探偵の海原匠。無愛想な性格のために周囲から誤解されることが多く、家族にも誤解されてしまった過去を持つ海原を、実力派俳優・吉田鋼太郎が演じました。 一見無愛想に見えながらも、由加利が桔平の真実に迫るために四国を旅する際には車で駆け付けて彼女の手助けをするなど、心優しく仕事熱心な一面も持つ海原。吉田の味のある演技によって一層深みを持ったキャラクターになっています。

「飄々とした天才ハッカー」木村役:DAIGO

また、海原の部下の天才ハッカー木村を演じたのは、ミュージシャンとしても活躍するDAIGOです。木村は機械に疎い上司の海原を軽くあしらうような飄々とした性格で、ハッカーとしては天才的な腕を持つという独特のキャラクターです。 そんな個性的な役柄を自然に演じてみせたDAIGO。本作の公開前のインタビューでは「もちろん作品ではDAI語を封印しています。HD(俳優DAIGO)ですから」とコメントしていました。

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「ストーカー女子大生」心葉役:川栄李奈

由加利と海原が桔平の真実を追う中で、ある人物の存在が浮かび上がります。それは、桔平の行きつけであるカフェの店員で、彼のことを「先生」と呼んで一方的な好意を寄せる大学生・心葉(ここは)の存在です。彼女の愛情はエスカレートし、由加利と桔平の家の郵便受けを覗くなどストーカー行為にも及んでいました。 そんな彼女を演じたのは元AKB48のメンバーで、卒業以降は女優としてその実力を高めつつある川栄李奈。ゴスロリファッションに身を包み、自分のストーカー行為が海原に目撃された際に回し蹴りを食らわせて逃げるなど、かなり癖のあるキャラクターを熱演しています。 心葉は、由加利が桔平の真実に迫るうえで大きな役割を担うキーパーソン的な存在です。 川栄は「長澤さん演じる由加利にビンタされるシーンがあるんですが、生きてきて初のビンタが長澤さんだったのは光栄でした(笑)」と、明るく撮影を振り返ったコメントを残しています。

【実話】題材となったのは1991年に起きた事件

実は本作には題材となった事件があるのです。それは1991年の朝日新聞で“私の夫は誰だった?”という見出しで報じられた事件でした。 5年間連れ添った夫が病死したので、死亡届を提出しようとした妻。しかし夫の戸籍が見つからず、妻が持っていた戸籍謄本のコピーが偽物だったことがわかったのです。 実は夫が亡くなる前にも不自然なことがあったとのこと。病気が悪くなる一方なのに病院に行こうとしない夫を不審に思った妻が彼の勤務先である大学に問い合わせたところ、そんな職員はいないと言われ、彼の身分証が偽造されたものだったことが明らかになったのです。 妻は夫にこのことを問い詰めましたが、夫が真実を語ることはありませんでした。そして夫は「死ぬしかなかった。本当は生きていたかったんだ」と言い残し亡くなりました。その後も妻は夫の真実について調べましたが、なにもわからなかったといいます。 本作を手がけたのは、CMディレクター出身の中江和仁監督。中江監督は過去に読んだ辻仁成の作品でこの事件のことを知り、本作の制作に至ったとのことです。

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【結末ネタバレ注意】桔平の真実と彼が嘘をついた理由

『嘘を愛する女』
(C)2018「嘘を愛する女」製作委員会

桔平の本当の姿を知るべく、彼の残した小説に書かれていた内容を頼りに瀬戸内を訪れる由加利。しらみつぶしに小説に登場する「夕方、マッチのようにマッチの見える灯台」を探し始めます。 途中から海原も駆け付け、次第に現れた手がかりを頼りに、時には衝突しながら二人はひたすら調査を続けます。その先にたどり着いたのは「警察が関与しているらしい」ということ。「警察が絡むとだいたいろくなことにならないぞ、それでもいいのか」と海原は由加利を諭します。 長い調査の中で真実を突き止める恐怖や桔平の愛も嘘だったのではないかという不安と、真実を確かめたい強い気持ちの間で揺れ動く由加利。しかし、真実がどんなものであろうとそれを受け入れる覚悟を決めました。 そしてついに、彼女と海原は桔平の隠していた過去にたどり着くのでした。

桔平はなぜ嘘をついたのか?

本作の重要なテーマは、「なぜ桔平は嘘をついたのか」ということでしょう。 家族との悲しい別れを自分の「罪」だと思い、自分自身を責め続けてきた桔平。彼が700ページにわたって記した家族の物語は、彼の後悔と懺悔の念が込められたものだったのです。 だからこそ、由加利が自身に向ける愛情に応えることが不安だった桔平は嘘をついたのです。家族を崩壊させてしまったという「罪」を背負う自分のままでは、由加利の愛に誠実に応えることができないと。

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本作で描かれたのは「前に進む」ことで得られる赦し

桔平は自分の「罪」を隠してでも由加利と生きていくことを望みました。その望みを彼はその小説に込めたと考えられます。 ここまで解説したところで大きな意味を持つのが、由加利と桔平が出会ったのが東日本大震災の日だったということです。 東日本大震災は現代において様々な分野で大きな変化が訪れた、いわば節目のような出来事となりました。そんな震災の日に体調を崩して動けずにいた由加利を、医師である桔平が助けたのが2人の出会いでした。名前を尋ねた由加利に桔平は「小出」と偽名を告げて去ったのです。 その日を境に知り合い、最終的には結婚を視野に入れて交際を始めた2人。多くのものを奪っていった震災から新たな生活に向けて再出発した社会と、家族を失い由加利との出会いをきっかけに新たな人生を歩もうとする桔平の姿には重なる部分があります。 物語の終盤、由加利は眠る恋人に「きっちゃん」という偽名で語りかけ続け、「戻ってきて」と涙を流しました。桔平のついていた嘘を受け入れ、なおも彼を愛する由加利の言葉からは前に進もうとして嘘をつき続けたことへの赦しが感じられます。桔平の「罪」は彼が前に進んだことで赦されたのです。

映画『嘘を愛する女』はミステリー+ロードムービー+ラブストーリー

奥深いテーマが込められた時代性の高い作品

『嘘を愛する女』
(C)2018「嘘を愛する女」製作委員会

ミステリー的な要素も多分に含みながら、ロードムービーやラブストーリーとしての面も強い『嘘を愛する女』。出演陣の名演技にも支えられ、力強いメッセージ性を持った作品になっています。 震災後の社会も描きながら、“愛する人の真実を知っても変わらず愛することができるか?”という問いを投げかけ、「前に進む」ことや「罪を赦す」ことのような奥深いテーマが込められた本作。まさに現代だからこそより大きなものを感じ取ることのできる作品といえるでしょう。