映画『八日目の蝉』を原作、ドラマと徹底比較!【ネタバレあり】

2018年1月10日更新

ベストセラーとなった角田光代の同名小説を映画化した『八日目の蝉』。テレビドラマ化もされているこの作品について、映画版・原作・テレビドラマ版の違いをまとめました。

角田光代の人気小説を原作とした映画『八日目の蝉』

不倫相手の娘を誘拐した女性の逃亡劇と、自分を誘拐した女性を母と思って幼少期を過ごし、その後親元に戻って成長した娘の心の葛藤を描いた、角田光代の小説『八日目の蝉』。第2回中央公論文芸賞を受賞するなど話題となり、2011年に映画化されました。

テレビドラマ化されたのは映画公開の前年、2010年。映画版・ドラマ版ともに基本的には原作小説の内容に沿っていますが、少しずつ違いがあるようです。

映画『八日目の蝉』のあらすじ

会社の上司で既婚者の男性と不倫関係にあった野々宮希和子は彼の子供を身ごもりますが、産みたいという願いが叶うことはありませんでした。ある日希和子は、彼の留守宅を訪れます。彼と妻との間に生まれた赤ん坊をただ一目見たいとの思いからでしたが、衝動的に連れ去ってしまいます。

誘拐犯として追われる身となった希和子は、連れ去った子供に「薫」と名付け、二人の逃避行が始まります。各地を転々として過ごした後に小豆島へと流れつき、つかの間、安息の地を得たかに見えた希和子でしたが、警察の捜査の手が迫っていました…。

希和子の逮捕によって「薫」は実の両親のもとへ戻り、「秋山恵理菜」として成長します。家族や周囲とうまく関係を築けないまま大人になった彼女はある日、自分が妊娠していることに気づきます。相手は家庭のある男性でした。期せずしてかつての希和子と似た境遇となった恵理菜は、幼い頃に体験した逃亡生活を辿る旅に出るのですが…。

映画版・テレビドラマ版それぞれのメインキャスト

野々宮希和子役:映画版/永作博美 テレビドラマ版/檀れい

不倫相手の子供を誘拐し逃亡生活を送った女性、野々宮希和子を、映画版では永作博美が、テレビドラマ版では檀れいが演じています。

野々宮希和子役:映画版/永作博美



野々宮希和子役:テレビドラマ版/檀れい

秋山恵理菜(薫)役:映画版/井上真央  テレビドラマ版/北乃きい

生後半年ほどで希和子に誘拐され、幼少期を共に過ごした後、実の親元に返されたという過去を抱えたまま大人になった女性、秋山恵理菜を、映画版では井上真央が、テレビドラマ版では北乃きいが演じています。

秋山恵理菜(薫)役:映画版/井上真央

秋山恵理菜(薫)役:テレビドラマ版/北乃きい

映画『八日目の蝉』と原作・テレビドラマ版との違い

どんな風に物語が進む?

原作では第1章で野々宮希和子の逃亡劇を、第2章では成長した秋山恵理菜(薫)が過去の自分を辿る旅を、それぞれ時系列で描いています。

映画版とテレビドラマ版では、希和子の逃亡劇と大人になった恵理菜(薫)の物語とが交互に、同時進行的に描かれます。

誰が主人公?

野々宮希和子と秋山恵理菜(薫)、この二人が主人公と言える『八日目の蝉』の物語。原作では、希和子と恵理菜(薫)、それぞれの物語に一章ずつ割かれています。

映画版ではどちらかというと秋山恵理菜(薫)の物語がクローズアップされ、時間の制約もあってか、原作にある野々宮希和子のエピソードのいくつかがカットされています。

逆にドラマ版では希和子の姿が多く描かれ、最終話を除き大人になった恵理菜(薫)の出演シーンは少な目です。

映画ではカットされているエピソード・登場人物

原作では、彼女が誘拐された翌年に誕生した妹、真理菜が登場しますが、映画版とテレビドラマ版では秋山家の子供は恵理菜だけの描写です。

また原作では希和子の最初の逃亡先として、周囲から立ち退きを迫られている中村とみ子という女性の家が登場しますが、映画では登場しません。またテレビドラマ版での中村とみ子の家は、ごみ屋敷という設定になっています。

他にも、映画版ではそのエピソード自体がカットされているため、原作では描かれていても映画版では一切登場しない人物が、複数存在します。

映画版・テレビドラマ版だけに登場するエピソード

一方テレビドラマ版だけのオリジナル設定として、希和子に想いを寄せる漁師、篠原文治が登場します。彼は大人になった恵理菜(薫)に、とても大切なことを伝える役割を果たしています。

出所後の希和子の生活は…?

映画では、希和子は出所後に小豆島へ渡ったとされています。ただし、その姿は映像では描かれていません。

原作では、出所後は東京、埼玉、茨城、仙台、金沢へと渡ります。最終的に岡山に定住した彼女は、仕事帰りに、小豆島行きフェリー乗り場で行きかう人を見るのが日課となっています。

テレビドラマ版での希和子は出所後に新潟、大阪、千葉、神戸を転々とし、原作と同様、岡山へとたどり着き、港のコーヒーショップで働いている設定となっています。

これらの設定の違いが、映画版・原作・テレビドラマ版ぞれぞれのラストの違いへとつながっていきます。

大人になった恵理菜(薫)と希和子は再会する?

逃亡中の希和子と薫が身を寄せた施設「エンジェルホーム」。ここから二人が逃げる際、映画版での希和子は、子守歌として「見上げてごらん夜の星を」を歌います。この歌を覚えていた薫は、実親のもとに戻った後「”お星さまの歌”を歌って」とせがむのですが、実親には「見上げてごらん夜の星を」が「お星さまの歌」のことだとは分からず、心が通じ合わないというシーンがあり、これは原作にはないエピソードです。

秋山恵理菜(薫)が希和子との逃亡生活を辿る旅の終盤のストーリーに、映画版・原作・テレビドラマ版とで違いがあります。

まず映画版では、希和子と恵理菜(薫)は再会しません。小豆島にたどり着いた恵理菜(薫)は島内を巡り、忘れていた過去を思い出します。

原作では、小豆島行きフェリー乗り場ですれ違いますが、お互いに相手の存在は気づかないままです。恵理菜(薫)は何かに呼ばれた気がして振り返りますが、また前を向いて歩きだします。また彼女が小豆島へ渡った直後で物語は終わり、映画版のように彼女が実際に島内を巡るところまでは、書かれていません。

テレビドラマ版では、希和子が働く港のコーヒーショップを恵理菜(薫)が偶然訪れます。希和子は彼女が店を出た後を追いかけ、少し離れた場所から「薫!」と大声で呼び止めます。恵理菜(薫)は少し立ち止まるのですが振り返りません。希和子がそこにいたのだと気づいたかどうかは、見る側の解釈にゆだねる形となっています。