2017年9月1日更新

クリーチャーデザインの父H・R・ギーガーの世界【エイリアン】

このページにはプロモーションが含まれています

AD

H・R・ギーガーのプロフィール

H・R・ギーガーは、スイス出身で、1940年2月5日生まれ。画家として活動するほか、レコードやCDジャケットのカバーアート、映画のキャラクターデザインなどで名高いデザイナーです。 ギーガーが知られるきっかけとなったのは、1973年に原画を担当したエマーソン・レイク・アンド・パーマーのアルバム『恐怖の頭脳改革』のジャケットでした。 アルバムは世界的にヒットし、グロテスクで美しいジャケットデザインも話題となります。 その後、1979年には映画『エイリアン』のクリーチャーデザインを手掛け、1980年の第52回アカデミー賞では視覚伝達効果賞を受賞。その名を世界に轟かせました。 ほかにも映画のデザインやアーティストのジャケットなどで数々の作品に携わりましたが、2014年5月12日、階段の転落事故により74歳で帰らぬ人となっています。

建築デザインを学び、画家の道へ

ギーガー

薬剤師であったギーガーの父は息子にも自分と同じ道に進むことを望みましたが、ギーガーは1962年にチューリッヒへ移り住み、美術工芸学校で建築と工業デザインを学びます。 インテリアデザイナーとして活躍したのち、サルバドール・ダリやエルンスト・フックスの影響を受け画家へと転向。エアブラシを用いて陰影を強く描く手法で、独自の作風を生み出しました。

AD

人間と機械の融合

ギーガー

その画風は、モノトーンで陰影が強いことに加え、人間と機械が融合したようなデザインも大きな特徴です。 ギーガーは、頭蓋骨や脊椎などの人間の肉体と、チューブなどの機械的なパーツで構成された「バイオメカノイド」と呼ばれる作品スタイルを確立。 そして、「バイオメカノイド」の後には、エロティシズムも組み込んだ「エロトメカニクス」という作品群を発表し世界に衝撃を与えました。 それでは、映画でのギーガーデザインをご紹介していきます。

『エイリアン』【1979年】

エイリアン
©1979 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

リドリー・スコット監督によるSF映画の金字塔『エイリアン』。スコット監督と主演のシガニー・ウィーバーの出世作となった作品です。 ギーガーは、しばしば人間の性器もモチーフとし、『エイリアン』においては、エイリアンとチェストバスターは男性の、フェイスハガーは女性の性器が題材となっているそうです。

「ネクロノームIV」

1977年に出版した作品集『ネクロノミコン』の中の「ネクロノームIV」と題された怪物が、エイリアンデザインのベースとなったと言われています。

『エイリアン』2〜4【1986年~】

 エイリアン3
©1992 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

大ヒットとなった映画『エイリアン』は、第4作まで続編が製作されました。 続編にはギーガーは直接的には関わらなかったとも言われていますが、ギーガーのクリーチャーデザインがしっかりと生きています。

AD

『プロメテウス』【2012年】

プロメテウス
©2012 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

リドリー・スコット監督による、人類の起源に迫ったSF作品です。当初は同監督の1979年『エイリアン』の前日譚として企画されたそうですが、別のストーリーに続く独立した物語として完成しました。 エイリアンのデザインは、1979年『エイリアン』に登場するギーガーがデザインした「ゼノモーフ」をベースとしているそうです。

『デューン/砂の惑星』【1984年】

フランク・ハーバートのSF大河小説『デューン』をデヴィッド・リンチ監督が映像化したSF映画ですが、『デューン』はもともと1975年にホドロフスキー監督が企画したものの様々な理由で頓挫した作品でした。 ギーガーは、ホドロフスキー版『デューン』で敵側ハルコネンの城などのデザインを担当。この時に椅子もデザインしたそうで、後にその「ハルコネンの椅子」がギーガーのインテリア作品の代表作となっていきます。

ハルコネン男爵の城デザイン『デューン』

クリーチャーデザイン『デューン』

『ポルターガイスト2』【1986年】

1982年に公開されたホラームービー『ポルターガイスト』の続編です。 ギーガーが担当したのは、怪物と化した神父や煙の中の悪霊、少女の口から現れる悪霊など。禍々しさを孕んだデザインです。

『帝都物語』【1988年】

荒俣宏の同名小説の映画化で、帝都破壊を目論む魔人・加藤保憲と、その野望を阻止しようとする人々を描いた作品です。 ギーガーがデザインしたのは、魔人・加藤保憲が操る神式「護法童子」でした。

AD

『バットマン フォーエヴァー』【1995年】

前作1992年『バットマン リターンズ』から、スタッフとキャストを一新した『バッドマン フォーエヴァー』。 ギーガーは、バットマンが使用する車「バットモービル」のデザインを手掛けていました。しかしギーガーオリジナルデザインは奇抜すぎて不採用になり、代わりに他のデザイナーがギーガー風にデザインしたのだとか。

『スピーシーズ 種の起源』【1995年】

ロジャー・ドナルドソン監督によるSFホラー作品です。DNA操作実験によって生まれた、新たな生命体をめぐる恐怖を描きました。 ギーガーは、グロテスクでエロティックな究極の殺人モンスター「シル」のデザインを担当しています。

『キラー・コンドーム』【1996年】

ラルフ・ケーニッヒの同名コミックを、マルティン・ヴァルツ監督により映画化。男性器を食いちぎるという凶悪コンドームが巻き起こす騒動を描いたブラック・コメディです。 ギーガーは、キラーコンドームのボスである「マザー・コンドーム」のデザインを担当しました。

H・R・ギーガーが後世に与えた影響

ギーガーのデザインは、世界中の画家、デザイナー、クリエイターたちに影響を与えたと言われ、ゲーム業界でも数多くリスペクトされています。 最も有名なのが、PCエンジンから発売されたRPG『邪聖剣ネクロマンサー』。 グロテスクな女性の首、内臓や死体などを模したデザインなど、作品中でギーガーの強い影響が伺えます。 パッケージの剣を咥えた骸骨のイラストはギーガー本人の作品だそうですが、本作のための書き下ろしではなく、先に発表されたイラストをパッケージ用に許諾を受け使用したのだそうです。 また、ファッション業界では、2010年のパリコレにてイギリスのデザイナーであるアレキサンダー・マックイーンが、ギーガーにトリビュートしたエイリアン風ハイヒールを発表しています。

AD

映画以外のギーガーの絵画が見たい!

『恐怖の頭脳改革』/エマーソン・レイク・アンド・パーマー

ギーガーは、映画の他にも、音楽、ゲーム、インテリア、グッズなど、幅広いジャンルでデザインを手掛け、一目でギーガーと分かる作風で異彩を放っています。 ギーガーがその名を知られるきっかけとなったエマーソン・レイク・アンド・パーマーのアルバム『恐怖の頭脳改革』のジャケットは、頭蓋骨をモチーフ(画像右)としています。 観音扉型の表ジャケットを開くと、内ジャケット(画像左)の無機質な美しさの女性が現れる凝ったつくりです。

『アトミック・プレイボーイズ』/スティーヴ・スティーヴンス

1989年のスティーヴ・スティーヴンスのアルバム『アトミック・プレイボーイズ』では、人体と機械を融合させた「バイオメカノイド」に楽器も組み入れました。

『HIDE YOUR FACE』/hide

hideのファーストソロアルバム『HIDE YOUR FACE』ジャケットの仮面のオブジェが、ギーガー提供です。

作品集『ネクロノミコン1』

作品集『ネクロノミコン』からの作品ですが、1よりも2の方が「バイオメカノイド」が色濃く描かれ、エロティックさも強く感じられます。

H・R・ギーガー 絵画

モノクロが主流のギーガーですが、カラーの幻想的な作品も遺しています。

ギーガーデザイン「MAGONO-TE(まごの手)」

変わったところでは、今にも噛み付かれそうな「MAGONO-TE(まごの手)」のデザインも。

「HR GIGER BAR」

また、故郷のスイスには、内装も家具もまさにクリーチャーの世界の「HR GIGER BAR」があり、『デューン』でデザインした「ハルコネンの椅子」に座り軽食を楽しめるのだとか。 実は、1988年、日本の白金台にも「GIGER BAR」がオープンしたのですが、2016年現在は閉店しています。 2016年7月25日からは、展覧会「ギーガー-陰翳の廻廊-」が銀座で開催されることが決定。ギーガーの唯一無二のデザイン作品は、末永く世界中を魅了していくことでしょう。