覚醒と精神崩壊、カミーユ・ビダンのことが知りたい【Zガンダム】

2017年7月6日更新

1985年3月から放送された『機動戦士Zガンダム』の主人公、カミーユ・ビダン。ガンダムシリーズにおいて、宇宙世紀史上、最高のニュータイプと称されました。その類い稀な能力の覚醒から、精神崩壊を迎えるまでについてご紹介します。

カミーユ・ビダンは『機動戦士Zガンダム』の主人公

『機動戦士Zガンダム』

1985年3月から放送された、サンライズ制作によるテレビアニメ『機動戦士Zガンダム』。ガンダムシリーズの初代、『機動戦士ガンダム』の続編に当たり、劇場版3部作に連なる物語が描かれました。

地球連邦軍とジオン公国軍による”一年戦争”終結から約7年後、宇宙世紀0087年。地球連邦軍内部のエリート組織「ティターンズ」と、反地球連邦軍組織「エゥーゴ」の抗争は、激化の一途を辿っていました。やがて、”グリプス戦役”開幕の時が訪れて……。

カミーユ・ビダン『機動戦士Zガンダム』

『機動戦士Zガンダム』の主人公カミーユ・ビダンは、ガンダムシリーズにおいて、史上最高のニュータイプ能力を秘めたとされる少年。ある出来事をきっかけにエゥーゴのモビルスーツパイロットになり、グリプス戦役へ身を投じることになりました。

しかし、あまりにも感受性が強すぎたカミーユは、熾烈な戦いの中で精神をすり減らしていくことに。戦死者の思念、悲しみや怒りを受け止め続け、限界を迎えつつあった精神はついに崩壊してしまうのです。

生まれつきニュータイプだったカミーユ

カミーユ・ビダン『機動戦士Zガンダム』

出典: festy.jp

カミーユの両親は、共に連邦軍の技術士官でした。どちらも仕事人間なうえ、他の女性との不倫にふける父親、それに気づかぬふりをする母親への不満を募らせ、寂しい少年時代を送っていたようです。

さらに、「カミーユ」という女性的な名前に対して、強いコンプレックスを抱いていた様子。そのため、小型飛行機のホモアビスやジュニア・モビルスーツなど、”男性的”な趣味に傾倒するようになりました。一方で生活能力に乏しく、幼馴染のファ・ユイリィに依存する部分が大きかったようです。

カミーユは天性のニュータイプ能力による繊細さに加え、家庭環境や名前へのコンプレックスもあり、非常に起伏の激しい性格に育ちました。

名前を馬鹿にされたことをきっかけにエゥーゴに参加

カミーユ・ビダン『機動戦士Zガンダム』

出典: gundamlog.com

宇宙世紀0087年3月2日、かつての一年戦争でホワイトベースを率いた艦長、ブライト・ノアがグリーン・ノアに来訪。それを知ったカミーユは仮病を使って部活動をサボり、ファを連れて宇宙港へ向かいました。

そこで、同僚を迎えに来ていたティターンズの将校、ジェリド・メサと出会うことに。カミーユは「女性のような名前」を馬鹿にされたことに激高し、ジェリドを殴りつけてしまったためMPに逮捕されてしまいます。

しかし、エゥーゴによる「ガンダムMk-Ⅱ」強奪作戦が開始し、ティターンズとの戦闘が勃発。カミーユは個人的な復讐心からエゥーゴに協力し、ガンダムMk-Ⅱを盗み出します。その後、クワトロ・バジーナらとグリーン・ノアを脱出しました。

ガンダムMk-Ⅱでの活躍

ガンダムMk-Ⅱ『機動戦士Zガンダム』

出典: festy.jp

エゥーゴ参加後、カミーユは戦艦アーガマに搭乗。ニュータイプとしての天賦の才を見込まれる中、連邦軍のベテランパイロット、ライラ・ミラ・ライラを撃墜する戦果を挙げます。これにより、アーガマのクルーからは「アムロ・レイの再来」と称されました。

それ以来、カミーユはガンダムMk-Ⅱの専属パイロットに就任。宇宙世紀史上において、最も優れたニュータイプ能力を開花させていきます。また同時期に、ティターンズから転向したエマ・シーンの窮地に気付き、それを救っています。

ニューホンコンでは、連邦軍のベン・ウッダーにより、ブライトの家族とアムロが人質にとられる事件が発生。カミーユは水中用ザクと交戦し、撃破することで人質奪還のきっかけを作る活躍をしました。

最高のニュータイプだが感受性が強すぎるカミーユ

カミーユ・ビダン『機動戦士Zガンダム』

出典: festy.jp

生まれつき天性のニュータイプだったカミーユは、他者との思考を共有したり、死者と思念の交信をする「共感する力」が鋭いのだとか。それはつまり、感受性が強すぎるということであり、繊細で起伏の激しい性格もこの能力に由来していました。

カミーユは熾烈な戦いを経て、戦士として、最高のニュータイプへと覚醒。しかし一方で、類い稀な能力が覚醒するごとにその精神は鬱屈し、疲弊し続けていきます。

物語が終盤に向かうにつれ、ニュータイプの「共感する力」が先鋭化し過ぎてしまい、戦場全体の悪意・悲しみ・人の死をより強く感じ取るようになってしまいます。同時に、ただ殺戮を愉しむ者への怒りによっても、精神を傷めつけてしまうのです。

最終決戦・崩壊

カミーユ・ビダン『機動戦士Zガンダム』

宇宙世紀0087年2月21日、グリプス戦役の最終決戦。カツやヘンケン、エマといった親しい人間が次々と命を散らし、カミーユ自身も立ち塞がる敵の命を奪ってしまいます。

多数の戦死者が出る中、戦場に満ちる死者の思念を受け止め続けるカミーユ。繊細で不安定だった精神は限界を迎えつつあり、宇宙空間でヘルメットバイザーを開けるなど、異常な行動が見られるようになりました。

そして死闘の末、ようやく戦争の元凶であるシロッコを討ち果たします。しかし同時に、シロッコが発した断末魔の思念により、肥大化したニュータイプ能力が疲弊した精神を凌駕。カミーユの精神はついに崩壊を迎え、精神疾患を発症してしまうのです。

その後『機動戦士ZZガンダム』でのカミーユ

『機動戦士ZZガンダム』

出典: festy.jp

1986年3月から、『機動戦士Zガンダム』の続編として放送された『機動戦士ZZガンダム』。主人公のジュード・アシータは、先の大戦で活躍した「Zガンダム」を奪って一儲けしようと考え、アーガマと関わりを持つことに。これにより、エゥーゴとの”第一次ネオ・ジオン抗争”へ巻き込まれていくという物語です。

グリプス戦役の直後、カミーユはアーガマ艦内でファに看護され、精神疾患の治療を行っていました。そうした中でも、凄まじいニュータイプ能力は健在の様子。初めてジュードと出会った際には、手を握るだけでニュータイプの資質を覚醒させ、Zガンダムに乗るよう導いています。

カミーユ・ビダン『機動戦士ZZガンダム』

出典: festy.jp

カミーユはその後も、思念の「声」でパイロットに指示を送ったり、仲間の窮地を知らせるといった活躍を見せます。しかし、再び多くの命が失われる悲壮感に苛まれ、グラスゴーへ降下することに。

ファに支えられながら宇宙へ上がるジュードらを見送り、最終決戦の終結に至るまで、思念の力だけで共に戦い続けました。最終話では、献身的な看護によって精神疾患から回復したのか、海岸でファと抱擁し合う姿が描かれました。

劇場版『機動戦士Zガンダム A New Translation』

『機動戦士Zガンダム A New Translation』

テレビアニメ版の完結後、20年の時を経て制作された劇場版『機動戦士Zガンダム A New Translation』。続編ではなく新訳であり、物語の大筋は『機動戦士Zガンダム』と同じものです。ただし、主人公のカミーユが迎える結末に大きな変更が加えられました。

劇場版のカミーユは、無限に拡大するニュータイプ能力による精神崩壊を起こすことなく、シロッコとの決戦後も無事に帰還しているのです。これは、カミーユが他人との触れ合いを大切にし、様々な出来事を成長の糧として受け止めたことが要因なのだとか。

また、精神的な共感だけではなく、ファという大切な女性との肉体的な体感を得たことも大きいとのこと。これにより、ニュータイプ能力や戦場での悲劇と向き合い、昇華する術を身につけたと言えます。

カミーユ・ビダンの残した名言

そこのMP!一方的に殴られる痛さを怖さを教えてやろうか!

カミーユ・ビダン『機動戦士Zガンダム』

出典: festy.jp

カミーユは、グリーン・ノアの宇宙港で自分を逮捕し制裁を加えたMPに対して、盗んだガンダムMk-Ⅱのバルカンを斉射。相手が生身の状態にも関わらず、踏み潰そうとするなどの仕返しをした時の台詞です。

さらには、逃げ惑う相手に対して、「ははははははざまぁないぜ!」とまで言い放つ始末でした。さすがに殺してはいませんが、もはや主人公とは思えない悪役のような所業ですね。

何故そうも簡単に人を殺すんだよ!死んでしまえ!

カミーユ・ビダン『機動戦士Zガンダム』

出典: gunosy.com

こちらも一見すると悪役か、あるいは「お前が言うのか!」とツッコミが入りそうな台詞。しかしこの真意は、戦力を持たない民間人の命を簡単に奪うことへの憤りを表したもの。つまり、カミーユなりの正義に乗っ取って発せられた言葉なのです。

無抵抗の民間人を殺すようなやつは、同じモビルスーツパイロットの自分に殺されてしまえ。ということなのでしょう。少し極端過ぎるようにも思えますが、直情型のカミーユらしい台詞かもしれません。

カミーユの世間での受け止められ方

カミーユ・ビダン『機動戦士Zガンダム』

出典: festy.jp

監督の富野由悠季曰く、テレビアニメ版のカミーユに対して、放送当時の視聴者からは否定的な意見が多かったとのこと。最終回において、主人公が精神疾患を発症するという結末は、視聴者に大きな衝撃を与えたようです。

また、突発的に感情が高ぶり年長者に殴りかかる場面が多数あり、自らを尋問・恫喝したMPに対してガンダムMk-Ⅱで威嚇射撃するなどの常軌を逸した行動の数々から、「異常すぎる」、「あまりにも主人公らしくない」といった声が挙がりました。

後に劇場版が公開された際、富野は「近年ではカミーユのように感受性が強く、激情的で不安定な子供もいる」と、社会的な現象に言及。そのため、カミーユに感情に移入する視聴者は少なくないだろうと語りました。

結末の変更についても、「カミーユの受け止め方を健やかにすることで、現代の子供たちに対するメッセージを送るために、新訳Zのカミーユの解釈を変えた」と明かしています。