2019年11月22日更新

「Zガンダム」主人公カミーユ・ビダンのことが知りたい!パイロットとしての才能、そして精神崩壊

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カミーユ・ビダンは『機動戦士Zガンダム』の主人公

1985年3月から放送された、サンライズ制作によるテレビアニメ『機動戦士Zガンダム』。ガンダムシリーズの初代、『機動戦士ガンダム』の続編に当たり、劇場版3部作に連なる物語が描かれました。 地球連邦軍とジオン公国軍による“一年戦争”終結から約7年後、宇宙世紀0087年。地球連邦軍内部のエリート組織「ティターンズ」と、反地球連邦軍組織「エゥーゴ」の抗争は、激化の一途を辿っていました。やがて、”グリプス戦役”開幕の時が訪れて……。 『機動戦士Zガンダム』の主人公カミーユ・ビダンは、ガンダムシリーズにおいて、史上最高のニュータイプ能力を秘めたとされる少年。ある出来事をきっかけにエゥーゴのモビルスーツパイロットになり、グリプス戦役へ身を投じることになりました。 しかし、あまりにも感受性が強すぎたカミーユは、熾烈な戦いの中で精神をすり減らしていくことに。戦死者の思念、悲しみや怒りを受け止め続け、限界を迎えつつあった精神はついに崩壊してしまうのです。

生まれつきニュータイプだったカミーユ

カミーユの両親は、共に連邦軍の技術士官でした。どちらも仕事人間なうえ、他の女性との不倫にふける父親、それに気づかぬふりをする母親への不満を募らせ、寂しい少年時代を送っていたようです。 さらに、「カミーユ」という女性的な名前に対して、強いコンプレックスを抱いていた様子。そのため、小型飛行機のホモアビスやジュニア・モビルスーツなど、”男性的”な趣味に傾倒するようになりました。一方で生活能力に乏しく、幼馴染のファ・ユイリィに依存する部分が大きかったようです。 カミーユは天性のニュータイプ能力による繊細さに加え、家庭環境や名前へのコンプレックスもあり、非常に起伏の激しい性格に育ちました。

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名前を馬鹿にされたことをきっかけにエゥーゴに参加

宇宙世紀0087年3月2日、かつての一年戦争でホワイトベースを率いた艦長、ブライト・ノアがグリーン・ノアに来訪。それを知ったカミーユは仮病を使って部活動をサボり、ファを連れて宇宙港へ向かいました。 そこで、同僚を迎えに来ていたティターンズの将校、ジェリド・メサと出会うことに。カミーユは「女性のような名前」を馬鹿にされたことに激高し、ジェリドを殴りつけてしまったためMPに逮捕されてしまいます。 しかし、エゥーゴによる「ガンダムMk-Ⅱ」強奪作戦が開始し、ティターンズとの戦闘が勃発。カミーユは個人的な復讐心からエゥーゴに協力し、ガンダムMk-Ⅱを盗み出します。その後、クワトロ・バジーナらとグリーン・ノアを脱出しました。

カミーユの活躍を振り返る!パイロットとしての名声から精神崩壊まで

ガンダムMk-Ⅱのパイロットとなり大活躍!

エゥーゴ参加後、カミーユは戦艦アーガマに搭乗。ニュータイプとしての天賦の才を見込まれる中、連邦軍のベテランパイロット、ライラ・ミラ・ライラを撃墜する戦果を挙げます。これにより、アーガマのクルーからは「アムロ・レイの再来」と称されました。 それ以来、カミーユはガンダムMk-Ⅱの専属パイロットに就任。宇宙世紀史上において、最も優れたニュータイプ能力を開花させていきます。また同時期に、ティターンズから転向したエマ・シーンの窮地に気付き、それを救っています。 ニューホンコンでは、連邦軍のベン・ウッダーにより、ブライトの家族とアムロが人質にとられる事件が発生。カミーユは水中用ザクと交戦し、撃破することで人質奪還のきっかけを作る活躍をしました。

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最高のニュータイプだが感受性が強すぎるカミーユ

生まれつき天性のニュータイプだったカミーユは、他者との思考を共有したり、死者と思念の交信をする「共感する力」が鋭いのだとか。それはつまり、感受性が強すぎるということであり、繊細で起伏の激しい性格もこの能力に由来していました。 カミーユは熾烈な戦いを経て、戦士として、最高のニュータイプへと覚醒。しかし一方で、類い稀な能力が覚醒するごとにその精神は鬱屈し、疲弊し続けていきます。 物語が終盤に向かうにつれ、ニュータイプの「共感する力」が先鋭化し過ぎてしまい、戦場全体の悪意・悲しみ・人の死をより強く感じ取るようになってしまいます。同時に、ただ殺戮を愉しむ者への怒りによっても、精神を傷めつけてしまうのです。

最終決戦、そして精神崩壊

宇宙世紀0087年2月21日、グリプス戦役の最終決戦。カツやヘンケン、エマといった親しい人間が次々と命を散らし、カミーユ自身も立ち塞がる敵の命を奪ってしまいます。 多数の戦死者が出る中、戦場に満ちる死者の思念を受け止め続けるカミーユ。繊細で不安定だった精神は限界を迎えつつあり、宇宙空間でヘルメットバイザーを開けるなど、異常な行動が見られるようになりました。 そして死闘の末、ようやく戦争の元凶であるシロッコを討ち果たします。しかし同時に、シロッコが発した断末魔の思念により、肥大化したニュータイプ能力が疲弊した精神を凌駕。カミーユの精神はついに崩壊を迎え、精神疾患を発症してしまうのです。

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カミーユとファとの関係は?

ファ・ユイリィは、「Zガンダム」の1話から続編「ZZガンダム」の最終回まで、一貫してカミーユを支え続けてくれた女の子です。 グリーン・ノアで隣同士の家に住んでいたファとカミーユは、1話の時点から共に行動する仲でした。ただ、戦争に巻き込まれてアーガマに移った直後は、気持ちのすれ違いから言い合いが増えます。 しかし、フォウとの交流を経て成長したカミーユは、「もう僕らがいがみあっていられるときじゃない」と言うようになり、ファの額にキス。距離が近づいていきました。カミーユの周囲には、フォウ、ロザミア、サラなど、様々な女性が現れましたが、最後まで隣に居続けたのはファでした。 シロッコとの死闘の末に、カミーユが精神疾患になっても、ファの想いは揺らぎません。ファは「ZZガンダム」でも、カミーユの介護を継続。そして最終回では、回復したカミーユがファと海辺で抱き合う姿が描かれました。

クワトロ・バジーナ(シャア)との関係

クワトロ・バジーナ(シャア)とカミーユは、ニュータイプとして影響し合った関係だと言えるでしょう。 民間人だったカミーユがエゥーゴに入ったのは、資質を見抜いたクワトロに声をかけられため。クワトロがいなければ、カミーユはティターンズに捕まっていたはずでした。 一方、カミーユもクワトロに影響を与えています。クワトロがシャアでありながら、責務を全うしないでいると知ったカミーユは、「そんな大人、修正してやる!」と殴りかかりました。 キリマンジャロ基地での戦闘後にも、カミーユは「あなたは、シャア・アズナブルに戻らなくてはいけないんです」と明言。それがきっかけとなり、クワトロは自身をシャアと公言し、議会で演説をするまでに至ります。 その後も、ララァとの関係性を思い出したクワトロが、フォウやロザミアの死を引きずらないように、カミーユにアドバイスするなど、ニュータイプ同士ならではのやり取りをしています。

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「Zガンダム」の続編で描かれたカミーユの“その後”

『機動戦士ガンダムZZ』(1986年~)

1986年3月から、『機動戦士Zガンダム』の続編として放送された『機動戦士ガンダムZZ』。主人公のジュード・アシータは、先の大戦で活躍した「Zガンダム」を奪って一儲けしようと考え、アーガマと関わりを持つことに。これにより、エゥーゴとの“第一次ネオ・ジオン抗争”へ巻き込まれていくという物語です。 グリプス戦役の直後、カミーユはアーガマ艦内でファに看護され、精神疾患の治療を行っていました。そうした中でも、凄まじいニュータイプ能力は健在の様子。初めてジュードと出会った際には、手を握るだけでニュータイプの資質を覚醒させ、Zガンダムに乗るよう導いています。 カミーユはその後も、思念の「声」でパイロットに指示を送ったり、仲間の窮地を知らせるといった活躍を見せます。しかし、再び多くの命が失われる悲壮感に苛まれ、グラスゴーへ降下することに。 ファに支えられながら宇宙へ上がるジュードらを見送り、最終決戦の終結に至るまで、思念の力だけで共に戦い続けました。最終話では、献身的な看護によって精神疾患から回復したのか、海岸でファと抱擁し合う姿が描かれました。

劇場版『機動戦士Zガンダム A New Translation』(2005年)

テレビアニメ版の完結後、20年の時を経て制作された劇場版『機動戦士Zガンダム A New Translation』(2005年)。続編ではなく新訳であり、物語の大筋は『機動戦士Zガンダム』と同じものです。ただし、主人公のカミーユが迎える結末に大きな変更が加えられました。 劇場版のカミーユは、無限に拡大するニュータイプ能力による精神崩壊を起こすことなく、シロッコとの決戦後も無事に帰還しているのです。これは、カミーユが他人との触れ合いを大切にし、様々な出来事を成長の糧として受け止めたことが要因なのだとか。 また、精神的な共感だけではなく、ファという大切な女性との肉体的な体感を得たことも大きいとのこと。これにより、ニュータイプ能力や戦場での悲劇と向き合い、昇華する術を身につけたと言えます。

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カミーユ・ビダンの残した名言

カミーユが男の名前で何で悪いんだ、俺は男だよ!

1話でジェリド・メサに向かって言った台詞です。 グリーン・ノアで暮らしていたカミーユは、ブライトの船が入港したと知り、ひと目見ようと宇宙港に訪れました。そのとき、偶然居合わせたティターンズのジェリドが「カミーユ」という名前を耳にして、「女の名前なのに……なんだ、男か」と呟きます。 すると、名前にコンプレックスを抱えていたカミーユは、侮辱されたと感じて入場禁止のゲートを無断突破。「なめるな!」とジェリドを殴打します。ティターンズの男たちが威嚇してきますが「カミーユが男の名前で何で悪いんだ、俺は男だよ!」と叫び、さらに相手を殴りつけるのでした。 一般的な作品の主人公では考えられない激しい行動です。

そこのMP!一方的に殴られる痛さを怖さを教えてやろうか!

カミーユは、グリーン・ノアの宇宙港で自分を逮捕し制裁を加えたMPに対して、盗んだガンダムMk-Ⅱのバルカンを斉射。相手が生身の状態にも関わらず、踏み潰そうとするなどの仕返しをした時の台詞です。 さらには、逃げ惑う相手に対して、「ははははははざまぁないぜ!」とまで言い放つ始末でした。さすがに殺してはいませんが、もはや主人公とは思えない悪役のような所業ですね。

何故そうも簡単に人を殺すんだよ!死んでしまえ!

こちらも一見すると悪役か、あるいは「お前が言うのか!」とツッコミが入りそうな台詞。しかしこの真意は、戦力を持たない民間人の命を簡単に奪うことへの憤りを表したもの。つまり、カミーユなりの正義に乗っ取って発せられた言葉なのです。 無抵抗の民間人を殺すようなやつは、同じモビルスーツパイロットの自分に殺されてしまえ。ということなのでしょう。少し極端過ぎるようにも思えますが、直情型のカミーユらしい台詞かもしれません。

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とっくに好きさ、自分の名前になっているもの

この台詞は、新劇場版のものです。TV版20話では言い回しが異なり「好きさ、自分の名前だもの」となっています。どちらもシチュエーションはほぼ共通。フォウ・ムラサメに向かっての言葉です。 カミーユを衛星軌道上に送ろうとするアーガマと、それを阻止しようとするスードリが、空中戦を繰り広げていたとき。カミーユは敵機サイコガンダムに取り付いて、コクピットハッチを開放します。敵機に乗っているのが、香港で心を通わせたフォウだと分かったためです。 フォウもコクピットを開くと、カミーユは心中を打ち明けはじめます。つらかった家庭環境、両親の死、同級生のファのこと……。 その心境吐露を聞いたフォウは、コクピットにカミーユを招き入れ「カミーユって名前、今でも好き?」と尋ねます。対するカミーユが「とっくに好きさ、自分の名前になっているもの」と答えるのでした。 コンプレックスだった名前が、受け入れられるようになったことが分かる名台詞です。

カミーユにはモデルとなった人物がいる!

激動の人生を辿るカミーユですが、実はモデルとなった人物がいます。「機動戦士ΖガンダムLDBOXの公式ブックレット」によるとカミーユのモデルは、フランスの彫刻家カミーユ・クローデル。 カミーユ・クローデルは1864年に生まれた女性で、容姿が美しく彫刻技術も天才的でした。しかし、母親に芸術を理解してもらえず、家族とは一生涯の確執が続いたと言われています また、19歳のときに42歳の彫刻家ロダンと恋に落たものの、相手に内妻がいたため三角関係に。妊娠したカミーユ・クローデルは、中絶することとなり、ショックから次第に精神疾患を発症。精神病院に送られます。 容姿端麗な天才でありながら、家族との確執を抱え、恋は実らず、最後には精神疾患……。カミーユ・ビダンとの共通点は、たしかに多いようです。彼女を元にした『カミーユ・クローデル』というフランス映画が制作されていますので、気になる人はチェックしてみましょう。

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カミーユの世間での受け止められ方

監督の富野由悠季いわく、テレビアニメ版のカミーユに対して、放送当時の視聴者からは否定的な意見が多かったとのこと。最終回において、主人公が精神疾患を発症するという結末は、視聴者に大きな衝撃を与えたようです。 また、突発的に感情が高ぶり年長者に殴りかかる場面が多数あり、自らを尋問・恫喝したMPに対してガンダムMk-Ⅱで威嚇射撃するなどの常軌を逸した行動の数々から、「異常すぎる」、「あまりにも主人公らしくない」といった声が挙がりました。 後に劇場版が公開された際、富野は「近年ではカミーユのように感受性が強く、激情的で不安定な子供もいる」と、社会的な現象に言及。そのため、カミーユに感情に移入する視聴者は少なくないだろうと語りました。 結末の変更についても、「カミーユの受け止め方を健やかにすることで、現代の子供たちに対するメッセージを送るために、新訳Zのカミーユの解釈を変えた」と明かしています。