タップできる目次
- 一見難しそうな不条理映画が実は面白い!
- 1:居場所を失った少年の孤独な世界【1959年】
- 2:傷付きやすい青年期の真理を映し出す奇妙な青春ドラマ【1959年】
- 3:確かなもののない、愛のうつり変わりを描く【1960年】
- 4:ブルジョアを痛烈に批判した、ルイス・ブニュエル監督作【1962年】
- 5:動物パニックものの原点【1963年】
- 6:カルト映画の代名詞、デヴィッド・リンチによる問題作【1977年】
- 7:理想郷を目指す男たちのクレイジーなロードムービー【1981年】
- 8:管理社会を痛烈に皮肉るSF映画【1985年】
- 9:朝起きたら虫になっていた男の孤独と絶望【2002年】
- 10:一人の男の謎に満ちた脱出劇【2009年】
- 11:平凡な日常に降りかかる不条理な死【2012年】
- 12:もう一人の自分が全てを奪っていく【2014年】
一見難しそうな不条理映画が実は面白い!
数あるタイトルを観る中で、「結局どうなったの?」、「これってどういう意味?」などと。観終わった後、答えの出ないモヤモヤ感を抱え続けた経験はありませんか?
しかしそういう作品こそ、観客の間で考察が重ねられ、後世まで名作として語り継がれることも多い模様。皆さんの中にも、強烈な印象が頭を離れず、いつまでも忘れられない映画があることと思います。
劇中に漂うのは、独特の空気感や閉塞感、何とも言えない恐怖と理不尽さ。その中には、監督たちが工夫を凝らして潜ませた、人間の真理やメタファーが見え隠れするのです。唯一の正解を探そうとすると苦痛ですが、素直な感性で見ていくと、十人十色の答えが得られるかもしれません。
1:居場所を失った少年の孤独な世界【1959年】
whentheycry
見よう見ようと思って中々見ていなかった映画。
こうい時代なのでしょうか?こういう愛のない家庭の描かれ方が不思議でした。
最後までもやもやが続くもあのラストシーンはやっぱり印象的。
skr_icj
#movie #eiga
なんでこんなに苛々させられるんだろう...と思ってしまう学校のシーンから始まる。誰が悪いという話では無いのだろうけど、両親の影響は否定できないはず。可哀想...と思いつつも、自分でそっちの道を選んでいる気もするから何とも言えず、苦い気持ちで見つめるしかできない。ほっとできる瞬間があったのに、それも一瞬だけで切ない。
そういえば、人形劇に反応する子どもたちのシーン、すごく良かった。ひとりひとり表情が違うので、何度も観てしまった。
アントワーヌ・ドワネルは、パリの下町に暮らす13歳の少年。学校では不良として目を付けられ、家庭では不仲な両親が口論ばかりしていました。しかしある日、遊ぶ金欲しさに父親の会社のテープライターを盗んだことがバレて、少年鑑別所に入れられてしまいます。
フランソワ・トリュフォー監督の幼少期を投映した、自身初の長編映画作です。意外にも明るく軽快な青春が描かれつつ、事態は段々と悪い方向へ向かい、漂い始めるのは何とも言えぬ閉塞感。その斬新さと自由な発想が称賛され、一躍「ヌーヴェルヴァーグ」の旗手として知られるようになりました。
2:傷付きやすい青年期の真理を映し出す奇妙な青春ドラマ【1959年】
真面目な青年シャルルは、大学受験のためパリに上京し、いとこのポールの計らいで同居することに。勉強に勤しむシャルルとは対照的に、女にだらしがなく、毎日遊んでばかりいるポール。それでも要領が良いため、試験にもあっさりと合格してしまい、シャルルはその理不尽さに苛立ちを募らせていきます。
本作は、クロード・シャブロル監督作品です。想いを寄せた女性をポールに横取りされ、努力も報われないシャルル。踏んだり蹴ったりな状況の中、やがて訪れる非情な結末を、鮮烈かつ斬新な描写で描き出しました。
3:確かなもののない、愛のうつり変わりを描く【1960年】
元大使の娘アンナは、倦怠期に陥っている恋人サンドロ、親友のクラウディアらと共にヨットで地中海へ小旅行に。しかし、立ち寄った小島でアンナが姿を消し、残された2人は行方を探す旅に出かけます。そんな中、やましさを覚えながらも情事に耽るようになり、新たな恋が始まるかに思えたのですが……。
監督は、ミケランジェロ・アントニオーニ。本作を1作目として、後に「愛の不毛」三部作と称される作品群を制作しました。公開当時、観客の期待を裏切る結末が話題になり、現実でアンナの出頭を呼びかける新聞記事まで出たそうです。
4:ブルジョアを痛烈に批判した、ルイス・ブニュエル監督作【1962年】
Keimiyazato
確かにブルジョワ階級批判としても観れるけれど、自分達の置かれた現状に留まり続ける人々のプロセスを描いていて 多少 砂の女が頭をよぎりました、無意味なカットを挿し込み逆に意味を持たそうとする作品はあるけど ブニュエルの無意味さは本当に意味など無い場合も多いので 意味など考えていると熊が柱を登って出て行きますよ!
とある貴族の館で夜会が開かれ、楽し気に振る舞う列席者たち。ところが、十数人もいた召使いたちは、執事一人を残して次々と辞職。何とか晩餐が用意され歓談を楽しむのですが、なぜか誰もが帰る気を失い、次の朝には部屋から出られなくなっていて……。
ルイス・ブニュエル監督の、メキシコ時代の問題作であり、より不条理に没入していく後期作の魁とされる作品です。閉じ込められた名士たちが醜く争い、人間の本能を剥き出しにしていくという、痛烈なブルジョア批判が込められているとのこと。
5:動物パニックものの原点【1963年】
moco02
なんか久しぶりに観たくなって!
細かいところ忘れていたので、改めて観れてよかった。
最近のホラーは大きな音でびっくりさせるようなものも多いですが、この作品はとても静か。鳥のけたたましい鳴き声こそありますが、音楽や効果音がほとんど鳴らない。静かに恐怖が迫ってる感じが不気味で好きです。ショックな場面に遭遇した時に息を飲むような、そういう雰囲気がうまく出てると思います。
前半が少しもったりするし突っ込みどころも多いですが…それを差し引いても面白いです。
yupiberry
久しぶりだったのであらためてストーリーを追ったけど、ん?鳥が人間を襲う理由はわからずじまいなんだ?ドールフェイスの女優さん、何を考えているかわからない母親など、ヒッチコックらしいキャスティング。徐々に鳥が増えていくシーンは不気味だけど、それだけで終わっちゃう感も。でも初めて観たときは衝撃だったんだよなぁ、やはり。
1970年代に多く見られる、動物パニックものの原点とされる作品です。カモメやスズメなど、日常に存在する平凡な鳥が、突如として人間を襲い始めるという不条理な恐怖を描きました。
監督は、アルフレッド・ヒッチコック。ダフネ・デュ・モーリアによる、同名の短編小説が原作になっています。鳥が人間や建物を襲撃するシーンは、ダイナミックで大迫力!一方で、気付かぬうちに群れを成す様子などは、静かで不気味な恐怖が迫ってきます。
6:カルト映画の代名詞、デヴィッド・リンチによる問題作【1977年】
Satoko_Suzuki
すごい変なモノクロ映画観た〜って印象。
居心地の悪さは、この頃から一貫して居ましたね。訳わかんなさも強烈。でもなんかちょっと笑ってしまうのは何故でしょうか?
lie_de_n
怖かったです(小並感)。
リンチ作品にしては、一回目でなんとなく大枠が掴めた感じ。
怖さや不気味さはピカイチ。
しかし結局よくわからん、けど見入る、んで面白い。
本作の舞台は、フィラデルフィアの工場地域。冴えない印刷屋のヘンリーは、女友達のメアリーに妊娠を告げられるのですが、産まれてきたのは奇形の赤ん坊でした。止まない泣き声にメアリーが逃げ出し、残されたヘンリーは精神的に追い詰められていくようになって……
デヴィッド・リンチが、制作・監督・脚本などを一人で担当した、長編映画デビュー作。ストーリーはシュールな上に難解、視覚的にも不気味なモノクロ映像が強烈です。当初は多くの批判を受けましたが、レイトショーで人気を得て、現実と空想の境界が危うい世界に引き込まれると話題になりました。
7:理想郷を目指す男たちのクレイジーなロードムービー【1981年】
イカ墨同盟を結成した15人の男たちは、ほとんどがサングラスをかけ、全員がフランクという名前の不思議なメンバー。ある者は仲間と、またある者は一人で、思い描く理想郷を目指し突き進む道中を、パンクでクレイジーに描き出しました。
今作は、アキ・カウリスマキ監督の長編第2作目。男たちの旅は希望ばかりでなく、困難な状況に追い込まれる中で、一人ずつフランクが姿を消していくことに。それでも、絶妙な音楽使いと皮肉を織り交ぜたユーモアにより、明るく痛快なコメディに仕上がっています。
8:管理社会を痛烈に皮肉るSF映画【1985年】
tophelos
2012/03/25 Blu-ray
ようやくちゃんと観れた、テリー・ギリアム監督のカルト映画。いまの映画と比べると、CGも無いし、特撮等の技法は稚拙ではあるが、表現される世界観やビジュアルは圧倒的である。独裁者は存在しないがハッキリと統制された管理社会であり、明らかな官僚主義的な社会構造が、いま観てもまったく色褪せる事無く、いやむしろ今だからこそ強く訴えるものが感じられる。また撮影場所に原発が使われているのも、現在との不思議な繋がりを感じてしまう。劇中「スターウォーズ/帝国の逆襲」のオマージュにニンマリw
monoral_stereo
こういうのをメタフィクションって呼ぶんですかね。想像力の集積としての現実って構造。それを暗示する形で随所に現れる過剰な不整合性。
舞台は、コンピューターによる徹底した情報管理がなされる、とある仮想国。情報管理局の役人サムは、テロリストの名をタイプミスしてしまい、善良な市民が誤認逮捕されてしまいます。解決のために尽力しますが、不思議な夢を見るようになってから、様々な出来事が複雑に絡み合っていきます。
管理社会への皮肉が描かれた、テリー・ギリアム監督作品。空想と現実がごちゃごちゃになり、最終的に自らも犯罪者になっていく主人公を生々しくも幻想的に描いています。また、オリジナルの結末は論争を呼ぶことになり、修正版が制作されました。
9:朝起きたら虫になっていた男の孤独と絶望【2002年】
acornkorokoro
フランツ・カフカは大好きな作家の一人。
プラハはいつか旅してみたい都市のひとつ。
息子の変身だけでなく、その家族の心の変身でもあるのですね。
父親の預金だけには手をつけるなという言葉に妙に納得。
ある朝、目覚めると巨大な虫に変身してしまっていたグレゴール。理由がわからないままもがき続けるうちに、家族から向けられる視線も、自然と冷徹なものへ変わっていきます。妹からは残酷な言葉を浴びせられ、絶望したグレゴールはついに……。
カフカの有名な名分で始まる『変身』が、誕生から100年近くを経て映画化。監督は、長編デビューとなるワレーリイ・フォーキン、主演は舞台出身の若手俳優エブゲイニイ・ミローノフです。おぞましい虫に変身してしまった男の、絶望と孤独、愛する家族にすら理不尽に扱われる姿が痛々しく描かれます。
10:一人の男の謎に満ちた脱出劇【2009年】
Ai_Tsuyoshi
松本人志監督・主演。
人間がどうしようもない自体にあった時、どういう反応をするのか。
慌てたり、楽しんだり、たくらんだり、松ちゃんの演技が面白い!
最後はね、何かを超越していた。
Jun_Kibuse
笑い的に大日本よりベタにしてきた感があり、笑い所がハッキリしていたので良かったと思いきや、最後が意味わかんない。
パジャマ姿でおかっぱ頭のある男が、真っ白の壁に囲まれた部屋の中で目を覚まします。脱出を図るその男が、壁や床から出てきた、男性器を模した「しんぼる」のでっぱりを押すと、部屋で様々な事象がおきるのでした。
2007年公開、『大日本人』から約2年の時を経て、お笑い芸人・松本人志が発表した第2回監督作品。松本本人が、企画・監督・主演を務め、内容の詳細は全て撮影中に決定されたとのこと。その結果、主人公と松本が被るようになったそうで、哲学的な視点から読み取られることもある作品です。
11:平凡な日常に降りかかる不条理な死【2012年】
MERC
新宿K'sシネマで再演、と聞いた瞬間に
スケジュール調整してやっと観に行ってきました。
戯曲原作らしい登場人物のやりとりもあれば、
映画らしいつくりもあって、楽しかったです。
作中の音楽も素晴らしい。
田淵ひさ子が弾いてるんだと思うだけで個人的には満足でした。
そして若い俳優陣は、どこのレビューを見ても書いてありますが、
本当に凄まじかった。
あんなに面白く、鮮烈な印象を残して死ぬ役は
彼ら・彼女らにしかできないでしょう!
また別の作品で見かけるに違いないと思いました。
Ayane_Nagato
以前、吉祥寺バウスシアターの
爆音フェスで鑑賞した作品。
最初、疑問が沢山浮かんだけれど、
観てるうちに、みんな死ぬんだ
なんて当たり前のこと思った。
生と死がなんだか身近に感じた。
舞台は、病院に併設された大学キャンパス。都市伝説を研究する学生、三角関係に悩む者やアイドル大学生など。登場人物たちの日常が交互に展開される中、ある女子大学生の突然死をきっかけに、原因不明の最期を迎えていく様子が描かれます。
扱われるテーマはシリアスですが、死に様は鮮烈かつ滑稽で、悲劇的というよりも非常にシュールです。劇中では殺人ウイルスの存在が伺えるのですが、最後まで死因は不明のまま。何気ない日常が一転し、理不尽な死を迎える姿からあなたは何を感じ取りますか。
12:もう一人の自分が全てを奪っていく【2014年】
edinburghttt
影をうまくつかってる映画。ピアノの低単音で進むシーンとかホラーかと思わせるからずっとドキドキしてた。自分と全く同じ顔をした、でも性格は真反対の人間の話。結論言ってしまえば実は同じ人間だったみたい。おちがわからない…設定も内容も分かるけど、オチがよく分からなかった、でもなんか好きな映画。 #ネタバレ
satikuru
メインヴィジュアルがずっと目を引いてた。
あの夜、すんなり会場に入れていたら不器用に恋を進める恋愛映画だったのに、システム社会のせいで…とも言い切れないのは、もうひとりの自分を生み出したのは紛れもなく行為から逃げている自意識過剰な己自身(この点すごく自分に刺さる…)であって、今まで腹に収めていた方法ではなく己を捨てることが必要だ、ということですか、ドストエフスキー先生…。
並んで歩くサイモン・ジェームズ・サイモンは顔が違くてさすがでした。
厳しい管理体制の中で働く、要領が悪く存在感も薄いサイモン・ジェームズ。同僚のハナを覗き見する毎日の中、自分と生き写しのような新人、ジェームズ・サイモンが入社してきます。しかし、外見は同じでも性格は正反対で優秀なジェームズの登場により、サイモンは次第に追い詰められてしまいます。
監督は、コメディアンとしても活躍するリチャード・アイオアディです。ロシアの文豪、フョードル・ドストエフスキーの名作『分身』を、舞台を近未来に置き換え映画化。不穏な空気の中、劇中歌として日本の昭和歌謡が流れるなど、独特で特異な世界観が秀逸です。