2017年7月6日更新

『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』傑作OVAについて紹介

このページにはプロモーションが含まれています
『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』

AD

OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』

『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』は、1989年に発売されたガンダムシリーズ初のOVA作品です。それまでシリーズを手掛けていた富野由悠季に代わり、高山文彦が監督を務めました。 シリーズの中でもファンからの評価が高い作品であり、VHSとレーザーディスクで発売された後、1999年にDVDにリメイクされました。全6話で構成されており、ファンからは「0080」「ポケ戦」の略称で親しまれています。

あらすじ

舞台はU.C.0079年末期、地球連邦軍とジオン公国軍が激しく争う激動の時代です。中立コロニーである「リボー」に暮らす男の子、アルことアルフレッド・イズルハは、宇宙港で偶然にも幼馴染で連邦軍パイロットのクリスチーナ・マッケンジーと再会します。 その後日にはザクⅡ改が墜落するのを見て森に駆けつけ、ジオン兵のバーナード・ワイズマンとも知り合いになります。バーニィことバーナードとクリスチーナは、お互いの素性も知らないまま惹かれあっていくのです。 二人をよく知るアルはバーニィとクリスの運命を近い距離で見守り、また戦争がもたらす残酷な現実を身をもって知ることになります。アルという幼い少年を中心に人間の心情にスポットを当てた作品です。

小学生が主人公

主人公のアルフレッド・イズルハは、サイド6に住んでいる小学5年生です。複雑な家庭環境を抱え、成績もあまり良くないアルは戦争ごっこが好きで、戦争が退屈な日々を変えてくれるのではないかと期待を抱いていました。 バーニィと出会ったことをきっかけに、子どもらしい好奇心と行動力でアレックス奪取作戦に参加。歴史の行く末を間近で目撃することとなるのです。 クリスマスの日にジオン艦艇が降伏し、もう戦う必要がないことを伝えに来たアルは、バーニィが乗り込んだザク改がガンダムNT-1の攻撃によって爆散するのを目の当たりにします。 戦争がもたらす凄惨な現実を知ったアルは終戦後、失った友に思いを馳せて涙を流し、一人の人間として成長していくのです。

市井の人々の切ない物語

バーナード・ワイズマン

19歳のバーナード・ワイズマンはジオン公国軍突撃機動軍伍長であり、特殊部隊サイクロプス隊の隊員を務めています。リボーへの威力偵察に参加し初陣を果たしますが、乗っていたザクⅡ改を攻撃され墜落。好奇心で駆けつけたアルと出会うこととなります。 ニュータイプ専用の新型ガンダム・ガンダムNT-1の存在を上層部に報告し在り処を突き止めるという大きな手柄を立てますが、失言によって連邦軍側に正体がばれて隊が壊滅させられてしまいます。 クリスマスにサイド6に核攻撃を行うことが決まり一度は脱出を試みますが、アルたちを守ろうと思い改めてザク改に乗り込みます。友軍の攻撃を止めるため、ガンダムNT-1を破壊しようと一人で突撃していくのです。

クリスチーナ・マッケンジー

地球連邦軍・中尉のクリスチーナ・マッケンジーは、地球連邦宇宙軍・G-4部隊のシステムエンジニア兼テストパイロットです。アルの家を監視していたバーニィを泥棒と勘違いしたことをきっかけに知り合いになり、次第に好意を抱くようになっていきます。 連邦軍秘密工場を襲撃するジオン軍のケンプファーを、新米かつ本職はコンピューター技師とは思えない身のこなしで撃破。その後、現れたザク改と死闘を繰り広げた末、ビームサーベルで撃破し自らも戦闘不能に陥って戦線を離脱しました。 ザク改に乗り込んでいた人物がバーニィであったとは知らず、終戦後クリスチーナは地球へ赴任することとなります。想い人の死を知らないクリスチーナは「バーニィによろしく」とアルに伝え、地球へと旅立ったのでした。

ヘミングウェイに影響を受けた作風

アーネスト・ヘミングウェイとは20世紀のアメリカ文学を支えた小説家で、1954年にはノーベル文学賞を受賞している人物です。独特でシンプルな文体が特徴的で、世界中の読書家から高い評価を得ています。 『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』は、ヘミングウェイの戦争文学作品の影響を大きく受けています。各話のサブタイトルや物語のプロットなどに、ヘミングウェイの作風が取り入れられているようです。 また主人公の少年が敵国の兵士に憧れるなど、映画『太陽の帝国』の影響も受けていると言われています。

ガンダム史上最高の傑作と言われる所以

『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』がそれまでのガンダムシリーズと大きく異なる点は、主人公が非戦闘員であり人間ドラマに重きを置いた作品であるということです。 力の持たない小学生・アルの視点から戦争の凄惨さを語るという切り口は、ロボットアニメ界に大きな反響をもたらしました。ニュータイプではなく人間にスポットを当て、中立を保つサイド6を舞台にしたことがこの作品の大きな特徴となっています。 監督を務めた高山文彦はガンダムに乗って戦いを繰り広げるだけのロボットアニメに疑問を持っており、その結果人間の心情にスポットを当てた作品に仕上がったようです。 またガンダムを乗りこなす地球連邦軍ではなく、それに対抗し倒そうとするジオン公国軍よりの視点を持ったストーリーであることも、他のシリーズと一線を画す要素の一つになっています。