湯浅政明、日本のアニメ原画を支えてきた天才監督に迫る10のこと

2018年6月19日更新

湯浅政明監督をご存知でしょうか。天才と謳われるアニメ監督です。子供からお年寄りまで、誰もが知っている有名なあのアニメ映画から、アメリカのアニメーションまで手掛ける湯浅監督について10の項目に分けて迫ります。

アニメ監督から脚本まで務める湯浅政明

湯浅政明

湯浅政明、と聞いても、ピンとこない方も多いかもしれませんが彼は、アニメ界で大活躍する天才監督です。名前を知らない方でも、彼の手掛けた作品は見たことがあるはず! ぐにゃぐにゃと曲がりくねった線の表現、歪んだ遠近感、斜めの構図、独特の色彩の感性、画面を突き破らんばかりのキャラクターの活き活きとした動きなど、実験的とも言える作風で知られています。 今回はそんな天才アニメ監督、湯浅政明についてのことを10の項目に分けて解説し、その魅力にぐぐっと迫っていきます。

1. 活動3年目で『ちびまる子ちゃん』の原画を担当

ちびまる子ちゃん

1965年に福岡県で生まれた湯浅は、九州産業大学芸術学部を卒業。アニメ会社・亜細亜堂に就職し、まずは動画担当になります。しかし、その能力の高さから原画を担当したほうがいいと評価され、すぐに原画担当に昇格しました。 そして活動わずか3年目にして、1990年に放送開始された『ちびまる子ちゃん』の本編原画を担当するように。また、初代オープニング「ゆめいっぱい」、初代エンディング「おどるポンポコリン」の作画も担当しました。 そうなのです、あのお馴染みの「おどるポンポコリン」の絵を担当したのは、湯浅監督だったのです。 1992年の映画『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』では「1969年のドラッグレース」「買い物ブギ」の音楽シーンにも携わりました。『ちびまるこちゃん』原作者であるさくらももこからは「一見大人しそうに見えてとんでもないことを次々と思いつく」と評価されたそうです。

2. 『クレヨンしんちゃん』には欠かせない存在!

クレヨンしんちゃん シロ編 (アクションコミックス)

フリーランスとなってからは、『クレヨンしんちゃん』に各話作画監督・原画として参加しています。 1993年から始まった「劇場版クレヨンしんちゃん」シリーズは今も毎年新作の公開が続くほど大人気の映画シリーズですね。この第一作目から設定デザイン・原画を担当しながら、要となるもののデザイン、またクライマックスの大切なシーンの原画を担当するなど、現在に至るまで関わり続けているのです。 また1996年に公開された『クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』と、2014年に公開された『クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』においては絵コンテも担当。特に後者では自身の設立したサイエンスSARUが監督自身の絵コンテパートの制作を担当しています。

3. 湯浅政明の担当した作品は、日本を代表するものばかり!

冒頭にも書いた通り、湯浅監督の名前を知らなくても、彼が監督になる前に原画や作画、絵コンテなどを担当した作品は日本を代表するアニメばかりなので、誰もがどこかで目にしたことがあるはずです。 以下にその代表作を紹介します。

キテレツ大百科

1988年から1996年に放送された『キテレツ大百科』では原画を担当しています。

美味しんぼ

料理アニメとして人気を博した『美味しんぼ』も原画を担当しています。放送は1988年から1992年でした。

おそ松くん

2015年より『おそ松さん』としてリメイクされて話題になっている『おそ松くん』ですが、初代は1988年から1989年の放送でした。この作品でも、湯浅監督は原画を担当しています。

ドラえもん

知らない人は、もはやいないのではないかという国民的アニメ、『ドラえもん』。 『クレヨンしんちゃん』と同じく、映画シリーズも人気の作品ですが、そのうち、『ドラえもん のび太のパラレル西遊記』(1988年)、『ドラえもん のび太とアニマル惑星』(1990年)、『ドラえもん のび太のワンニャン時空伝』(2004年)にも湯浅監督は動画や原画として携わっているのです。

4. 究極の異色作『ねこぢる草』

2001年に発売されたOVA『ねこぢる草』で、湯浅は脚本・絵コンテ・作画・演出を担当し、その作家性を見事に開花させました。 1998年に亡くなった漫画家のねこぢるによる漫画『ねこぢるうどん』のキャラクターとシチュエーションを下敷きにした中編アニメですが、ストーリーは全くのオリジナル。 全編台詞は全くなく、夢や臨死体験、生と死を題材にした、不条理でブラックな物語が展開される本作は、一度観ただけで理解するのは難しい、極めて実験的な一作になりました。

5. アニメ映画初監督作品『マインド・ゲーム』

さらに、2004年に公開された、映画初監督作品である『マインド・ゲーム』では脚本も務めました。 この作品は、毎日映画コンクール大藤信郎賞、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞、パリ・KINOTAYO映画祭大賞、モントリオール・ファンタジア国際映画祭でアニメーション部門優秀賞ほか4つの賞を受賞するなど、非常に評価の高い作品です。

6. 次々と名作アニメを世に送り出す!

『ケモノヅメ』

ケモノヅメ

2006年にWOWOWで放送された『ケモノヅメ』で、湯浅はテレビアニメの監督としてデビュー。原作とシリーズ構成も手掛けました。 食人鬼を狩るための戦闘集団「愧封剣」の師範代である桃田俊彦は、食人鬼の上月由香と恋に落ち逃亡を決意します。俊彦の弟である桃田一馬は、「愧封剣」の運営し始め、駆け落ちした二人の行方を追い始めます。そんな中、食人鬼の激増による連戦で疲労困憊の隊員達と、なんとか愧封剣を社会にアピールしたい一馬との間で亀裂が生じはじめてしまいます。 食人鬼と人間の禁断の愛に生きる俊彦と組織の改革に狂奔奔走し精神的に追いつめられていく一馬、さらに一馬を支えつつも何かを企てている大葉久太郎、それぞれの思惑が絡み合いながら物語がすすんでいきます。

『カイバ』

『カイバ』

記憶をデータ版に保存することが可能になり、若く美しく新しい肉体に乗り換えることが可能となった世界が舞台となっています。また記憶を管理することが可能になったため、記憶の売買や改ざん、さらには他人の記憶を盗むことなどが可能となっています。 主人公カイバはなぜか記憶を失っており、様々な星で様々な人に会い、記憶を巡る冒険を経て次第に記憶が蘇ってきます。

『四畳半神話体系』

『四畳半神話体系』

京都市を舞台に描かれたお話です。大学生である主人公は一年生の時に選んだサークルによって様々な大学生活を送ります。 各話で「私」はそれぞれ異なるサークルに入ったり組織に所属したりしますが、すべての物語の結末や登場人物が共通していたり関係していたりします。そして第4話では「私」はこれらの並行世界を横断します。

7. 米国カートゥーンの『アドベンチャー・タイム』も手掛ける

湯浅監督の活躍は、日本だけにとどまりません。 「カートゥーン ネットワーク」というチャンネルをご存知でしょうか?これは、スカパーやCATVなどで視聴可能なアニメ専門チャンネルです。このチャンネルには、世界194ヵ国で放送中の大人気アニメ『アドベンチャー・タイム』というアニメが放映されていました。 この世界的カートゥーンに、日本の湯浅政明監督がゲスト監督として参加しました。エピソードのひとつ「Food Chain」を担当しています。彼の絵が海外のアニメーション作家にも認められたため、一緒に仕事をすることになったそうです。 また、その時の湯浅監督のこだわりが、インタビューに現れています。

最後に歌を歌ったりしますので、そのあたりですかね。技術的には、全部フラッシュで作っているんですが、こういうフラッシュの使いかたは日本では珍しいかもしれません。あとゲスト監督ということで、東洋的な雰囲気もちょっと入れてみました。オープニングも少し変わってますので、ぜひ観てもらえたらと思います。
引用:animatetimes

8. 湯浅政明が設立した「サイエンスSARU」とは?

株式会社サイエンスSARUとは、2013年に設立された日本のアニメ制作会社です。設立にあたり、日本のアニメ業界の魅力を維持しながら、作業効率を上昇、作品のクオリティは維持、労働環境の改善、が可能だということを示すことを目標とし、フラッシュアニメーションの導入が行われています。

『ピンポン THE ANIMATION』

『ピンポン THE ANIMATION』

松本大洋による卓球漫画『ピンポン』が『ピンポン THE ANIMATION』のタイトルでアニメ化され、2014年4月より6月まで、フジテレビ「ノイタミナ」枠にて放送されました。 原作の絵をほぼそのまま再現する試みが行われています。本作ではあらかじめ用意された脚本はなく、湯浅政明が絵コンテを作成しながら台詞などを考案しました。

『夜は短し歩けよ乙女』

『夜は短し歩けよ乙女』は、2006年11月に角川書店より出版された森見登美彦による小説で累計売上130万部を超えるベストセラーです。主人公の冴えない男子大学生・先輩と彼が恋する可憐な女子大学生・黒髪の乙女の恋模様を描いた作品となっています。 湯浅政明による本作のアニメ映画が、主人公の声優に星野源を迎え、2017年に公開しました。

9. 自身初のオリジナルアニメーション映画『夜明けを告げるルーのうた』

『夜明けを告げるルーのうた』は湯浅政明による完全オリジナル劇場作品です。キャラクターの原案に漫画家・ねむようこを起用し、キャラクターデザイン・作画監督は伊東伸高が務めることが決定しています。また、脚本は湯浅と共作で吉田玲子が、音楽は『思い出のマーニー』を担当した村松崇継が手がけています。 中学生カイが人魚ルーと出会い心を通わせることをきっかけに、カイが次第に自身の気持ちを他人に表せるようになっていく様子を描いています。

10. ニット帽愛好家な湯浅政明

湯浅監督の作画は独特な線や色使いで有名です。ポップで、童話を思わせるようなキャラクターデザインも多く、特徴的な世界観のある絵を描きます。 しかし、人柄は飄々としており気さくな方だとか。また、インタビューを受ける際など、必ずニット帽を着用していることから、ニット帽愛好家としても有名だそうです。

今後も湯浅政明監督の作品に大注目!

2013年 オタワ国際アニメーション映画祭短編コンペティションノミネート、第42回 アニー賞監督賞(TV部門)ノミネート、第2回 TAAFアニメオブザイヤー グランプリ(TV部門)といったように、近年も世界的に評価され続けている湯浅政明監督。 今後も彼の作品から目が離せませんね!