2020年12月6日更新

中国アニメ映画「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)」が“ヤバイ”理由を解説してみた【2回観た】

羅小黒戦記
(C) Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

2020年11月7日に日本語吹き替え版が全国公開した中国アニメ『羅小黒戦記~ぼくが選ぶ未来~』。本作のクオリティに感激し、すでに2回観に行ったciatr編集者が本作の「スゴさ」を6つのポイントに分けて解説します。

目次

アニメ映画『羅小黒戦記~ぼくが選ぶ未来~』を2回観に行ったciatr編集者がそのすごさを解説

中国で2011年にウェブアニメとして配信され、2019年に公開された劇場版が興行収入49億円で大ヒットを記録したアニメ『羅小黒戦記』。 日本でも同年に字幕版が公開されましたが、2020年には吹替版が公開され、SNSを中心に「すごい!」と話題を集めています。 この記事では、実際に映画を2回観に行ったciatr[シアター]編集者が「ヤバイ!(すごい!)」と思ったポイントを6つに分けて紹介。一体何が「すごい」のか、ネタバレありで解説していきます。 ※本記事は『羅小黒戦記〜ぼくが選ぶ未来』を鑑賞後の読者を想定しています。ネタバレも含みますので、未鑑賞の人はご注意ください。

アニメ映画『羅小黒戦記~ぼくが選ぶ未来~』のあらすじ

『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』
(C) Beijing HMCH Anime Co.,Ltd 

人間と妖精が共存する中国の現代世界。黒ネコの妖精シャオヘイは、住んでいた森を人間に開発され、街や村を放浪する日々を過ごしていました。 ある街で人間に襲われたシャオヘイは、妖精のフーシーに助けられます。 フーシーに都会の霊道を通って連れて来られたのは、人里離れた島。居場所を失っていたシャオヘイは、歓迎してくれるフーシーやその仲間たちとともに、この島で暮らそうと思っていました。 ところが翌朝目が覚めると、島に入り込んだ人間と激しく戦うフーシーたちの姿が。シャオヘイも参戦しますが、一蹴されてしまいます。フーシーたちは逃げ、1人残ったシャオヘイは捕らえられてしまいました。 その人間はムゲンといい、妖精たちが住む「館」の執行人でした。ムゲンはシャオヘイを館へ連れて行こうとし、反発するシャオヘイとの2人旅が始まります。

「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)」のここがスゴイ!興奮したポイントを6つ解説

一見、子ども向けの可愛らしい絵柄なのにガチのアクションが展開したり、小気味よく挟み込まれる笑いのセンスが秀逸だったりと、とにかく緩急がすごい! 自然と人間の「共存」といった深いテーマや自然描写に「ジブリみ」を見せつつも、中国のスケールの大きさに圧倒されるといった、日本人には既視感と新鮮さを同時に感じさせる振り幅の広さ! ここからは鑑賞した編集者が興奮した本作のすごいポイントを6つ挙げ、ネタバレもありで詳しく解説していきます。

1. 子ども向けっぽい絵柄なのにアクションシーンがガチ

『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』無限 ムゲン
(C) Beijing HMCH Anime Co.,Ltd 

本作はざっくり言うと、人間との共存を拒む妖精たちと、人間との共存を目指す妖精たちがバトルを繰り広げるアクションもの。 そこにシャオヘイとムゲンの冒険譚と師弟物語、さらにはシャオヘイの成長物語としての側面も入ってきます。本作の1番の見どころはもう、ガチのアクションシーンと言わざるをえません! シャオヘイを筆頭に可愛すぎるキャラクターたちが登場し、一見子ども向けの作画なのですが、妖精たちのバトルシーンは「鬼滅」レベルのガチ神作画! ヌルヌルと動くキャラクターたちに「アニメーターさん、お疲れ様です」と心の中でつぶやきつつ、「どれだけお金かかってるんだろう」と思いながら見てしまうほどです。 本作のアクションシーンは目が置いてきぼりを食いそうなスピード感に加え、大スケールのアクションに相応しい厚みのある音響も本当に見事です。とくに爆音が鳴り響くシーンから一転、「領界」が発動する瞬間に「ブン」と無音になる演出は至高でした。

2. 中国漫画サークル・幕星社が天才すぎる

本作の冒頭に流れるクレジットに、「幕星社」の名があり「あれ、見たことある!」と驚いた方もいたのではないでしょうか? 幕星社は中国で勢いのある漫画サークルで、日本でも人気を博しているGLウェブ漫画『SQ 君の名前から始まる』やBLウェブ漫画『19天』を手がけていることで知られています。 幕星社の漫画家である壇九、幕斯、old先の3人が、妖精キャラクターとしてウェブアニメ『羅小黒戦記』に友情出演しているようです。 劇場版エンドロールにはウェブアニメのキャラクターたちが登場しますが、そこに漫画家3人の妖精たちとして顔を見せています。

3. 吹き替え版の声優が豪華すぎる

日本での吹き替え版公開にあたって、これでもか!というほど有名声優が配されました。花澤香菜に宮野真守、櫻井孝宏、斉藤壮馬、松岡禎丞に杉田智和……。うん、もうすでに豪華すぎる。 シャオヘイの声優を務めたのは、人気声優の花澤香菜。テレビアニメ『鬼滅の刃』(2019年)では甘露寺蜜璃を、新海誠監督の劇場アニメ『言の葉の庭』(2013年)では主人公のユキノを担当しています。少年の声を当てるのは珍しいような気もしますね。 ムゲン役には声優だけでなく俳優・歌手としても活躍する宮野真守、フーシー役には『鬼滅の刃』で富岡義勇を演じる櫻井孝宏がキャスティングされました。 花澤香菜によれば、中国語の原語版でムゲンとフーシーを担当した声優の声が、この2人に似ていると感じたそう。実際にキャスティングされ「やっぱり!」と思ったとか。 他にも『ヒプノシスマイク』の夢野幻太郎や『ハイキュー!!』の山口忠を演じている斉藤壮馬、『鬼滅の刃』で伊之助を演じる松岡禎丞、『めだかボックス』の黒神めだか役の豊崎愛生、「リゼロ」のレムを演じる水瀬いのりなど、大人気若手声優たちが登場! さらにアニメ『銀魂』の銀さん役でおなじみの杉田智和や、『NARUTO -ナルト-』の自来也を演じた大塚芳忠、『ONE PIECE』のブルックの声で知られるチョーらが脇を固め、いい味を出しています。 中国アニメは初めてという方でも、知っている声優が出演しているということでたいへん観やすくなっているのではないでしょうか?

4. 随所にジブリみをひしひしと感じる【ネタバレ】

『千と千尋の神隠し』油屋
© 2001 Studio Ghibli・NDDTM

本作の自然の描き方には、どこか「ジブリっぽさ」を感じます。最初の森のシーンには、『もののけ姫』(1997年)に出てくる「こだま」のような白い半透明の精霊が登場。これらは後でフーシーの仲間であるロジュやシューファイが飛ばす種霊や精霊魚であることがわかります。 またフーシーたちの隠れ家の島は、植物のつるが巻きついた石造の「ラピュタ」っぽさを感じます。最後に出てくる妖精たちの「館」はまるで『千と千尋の神隠し』に出てくる「油屋」のよう。宙に浮いている感じはラピュタにも通じる「天空の館」といったところです。 館に向かう時にシャオヘイたちが乗って空を飛んでいく大きな白トラは、『となりのトトロ』(1988年)の「ネコバス」を思い出しますね。 こういった「ジブリみ」は随所に感じられますが、だからこそ日本人にはスッと受け入れられる雰囲気をすでに持っているのではないかと考えられます。

5. 一貫したテーマとメッセージが刺さる【ネタバレ】

前述しましたが、本作のテーマは明確に「人間と自然(妖精)の共存」です。それだけでなく、自己と他者の共存をも描いた深い物語でもあります。 シャオヘイは自らの経験から、初めはフーシー側につき、人間にはただ敵対する感情を抱いていました。しかしムゲンと出会ってからは、人間と妖精との関係性にも少しずつ関心を抱くようになります。 シャオヘイの立場からはフーシーVSムゲンは初めは「善VS悪」でしたが、ムゲンと旅する間にそれが逆転します。それでも本作ではフーシーを勧善懲悪の「悪」としては描いていません。 意見の相違はあっても、それだけで「悪」とは言わない。それぞれに想いがあり、時にぶつかることがあっても共存は可能であることを信じたい、そんな意志を感じます。 「領界」と「霊域」の概念にも、自己と他者の共存のテーマが隠れているのではないでしょうか。

6. ちょいちょい挟んでくる笑いのセンスが秀逸

『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』
(C) Beijing HMCH Anime Co.,Ltd 

ここで小気味よく挟まれる笑いのセンスについて解説!かなりの割合で思わずクスッとするような、たわいもなく可愛らしい笑いの場面が展開されています。 例えば普段はクールなムゲンが、シャオヘイに与えた肉や魚が不味くてベッと出すシーン。何でもできるムゲンが料理下手とは!と思わずほころぶ場面です。2人の旅のシーンにはこんな小ネタが満載。 すぐに逃げ出すシャオヘイを、どんな所にいても見つけ出し捕獲するムゲンにもニヤニヤしてしまいます。 島に着いた時に島民に「密航者か?」と聞かれ「迷子です。」としらばっくれるムゲンは、その真骨頂!こういった小ネタが、ムゲンのキャラクターを厚みのあるものにしていっていることにも「上手いな〜」と感じ入ります。 シリアスな場面のすぐ後に、シニカルな笑いを入れてくるのも絶妙。フーシーが自ら樹木に覆われて、ビルごと森のようにしたシーンで、ナタに「(どうせ人間に)材木にされるだけ」と皮肉を言うのも、彼のキャラらしいセリフで嫌味を感じさせませんでした。 キャラクターを大切に造形していることにも好感が持て、なおかつシリアスと笑いの緩急がすばらしい。まったく最後まで飽きさせない巧みな作りに脱帽です!

ciatr編集者がおすすめしたいアニメ映画『羅小黒戦記~ぼくが選ぶ未来~』

中国アニメの革新性を詰め込んだ傑作『羅小黒戦記~ぼくが選ぶ未来~』。懐かしいようで新しい、見たことあるようで見たことない、既視感と斬新さが共存する中国アニメの未来を見たような気がします。 日本語吹き替え版も全国で公開し、観る機会が増えた今、ぜひ劇場に足を運んでいただきたい作品です。